「Switched at Birth」鑑賞


顔も名前も知らない白人のティーンたちがいろいろ出てくるABCファミリーの新作が放送されるようになると、ああ夏が始まったんだなと最近は感じるようになってしまったよ。これもそうした作品の1つ。知ってる顔としては「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のリー・トンプソンが出演していた。

裕福な家庭に育った女子高生のベイは、学校の科学の実験で自分の血液型が両親のものと適合しないことを知り、不審に思ったので病院で調べてもらったところ、何と彼女と両親は血がつながっていないことが判明する。出産時に病院のミスで赤ん坊が入れ替わってしまっていたのだ。それでは自分たちの赤ん坊はどこに?と両親が探したところ、彼女はダフネと名付けられてシングルマザーに育てられていた。そして2つの家族が出会うことになったが、ダフネは幼少時の病気のため耳が不自由だった…というような話。

こうして運命の出会いをしたダフネとベイはプロのバイクレーサーとなって腕を競い合い…という展開は当然起きず、姉妹同然の暮らしをすることになった2人の生活が描かれることになるみたい。もちろん番組のポイントはダフネが難聴者だということで、実際に耳の不自由な俳優を起用している点は評価できるものの、あまりにも話が政治的に正しすぎて、観ててなんか疲れてしまうのですよ。道徳の授業で見せられたビデオみたいな感じ。ベイの父親がダフネに普通の暮らしをさせたくて聾唖学校から一般の学校に転校させようとするのに対し、彼女が「耳が聞こえなくったって普通の人間よ!」なんて反論するあたりはもうクサくって。

これがライフタイム(女性向けケーブル局)のTVムービーとかなら良かったんだろうけど、TVシリーズとしては長続きできそうな要素がまるで思いつかんなあ。

「RUBBER」鑑賞


殺人タイヤの襲撃!というぶっとんだコンセプトのおかげで日本でも(一部で)話題になっていた作品。フランス人監督のカンタン・ドゥピューってミスター・オワゾという名義で活動してるミュージシャンらしいが、知らんなあ。

舞台となるのはアメリカの砂漠地帯で、意識を持った古タイヤがむっくりと起き上がるところから話は始まる。このタイヤ(クレジットではロバートという名前が付いている)は出会ったものを片っ端から破壊していくような気が荒い奴なのですが、いかんせんオンボロのタイヤであるために空き瓶も踏みつぶせない。しかしロバート君には秘密兵器があって、全身を震わせて意識(?)を集中させることで念動力を使うことができ、これで小動物や人間の頭を「スキャナーズ」よろしくボーンと爆発させることができるのでした。この能力をもってロバート君はモーテルや近くの町で惨劇を繰り広げていくのでした…というのが主なストーリー。

これだけ聞くと変なB級ホラーのように思えるかもしれないが、話にはもう1つメタフィジカルなコメディの要素があって、映画の冒頭から町の保安官が車のトランクから出てきて「『ET』のエイリアンはなぜ茶色なんだ?恋愛映画の登場人物はなぜ狂おしい愛に落ちるんだ?(略)それらに理由なんてありはしない。君たちがいまから観る映画にだって理由なんかないんだ。」なんてカメラに向かって語りだす次第。おまけにご丁寧にも10人くらいの「観客」がこの映画に登場していて、ロバート君の行動を双眼鏡でリアルタイムで観察しながら「いまのは念動力だぜ!」なんていらぬコメントをつけてくれたりしている。

やがて上述の保安官がロバート君の事件を担当したり、観客がひどい目にあって保安官のところに向かうなど、メインの話とメタな部分がどんどん絡み合っていくのだが、こういうのってイヨネスコあたりを意識してるんだろうか。でもこういった不条理さとB級ホラーって決して良い組み合わせではないようで、下手な楽屋オチを見せられた気分というか、話が進むにつれて誰が死のうがタイヤがどうなろうが結構どうでも良くなってくるのは否めない。あとタイヤに追いかけられるゴスのフランス娘は意外と可愛いんだが、ここはやはり金髪のスクリームクイーンが欲しかったな。

トレーラーをから真っ当なホラーを期待してると壮絶な肩すかしをくらわせられるし、劇場で金払って観るほどの作品ではないだろうけど、笑えるところは笑えるし、音楽も結構いいのでレンタルビデオとかで観るぶんには悪くない映画かと。

「TEEN WOLF」鑑賞


MTVの新シリーズ。俺らの世代にとって「ティーン・ウルフ」といえば、マイケル・J・フォックスが狼男になってバスケで大活躍したりビーチボーイズ流しながら車の上で踊りまくるアメリカーン!なコメディ映画だったわけですが(あとジェイソン・ベイトマンが主演したマイナーな2作目)、この作品は名前だけが一緒で、あとは上の写真からも分かるように「トワイライト」のバチモンのような、顔色の悪いティーンがすぐシャツを脱ぐ話になっていた。

カリフォルニアの田舎町に住むスコット君は、ある晩に森のなかで狼のような動物に咬まれてしまう。とりあえず応急処置をして翌朝学校に向かった彼ですが(狂犬病の心配くらいしろよ!)、自分の嗅覚や聴覚がものすごく鋭くなっていることに気付きます。さらに持病の喘息も消えてなくなり、運動神経も抜群になってラクロス部ではレギュラーをゲット!転校生の女の子ともいい仲になってノリノリの彼でしたが、満月の夜には凶暴な狼男に変身してしまうのでした…というのが第1話のストーリー。

内気な主人公、よくしゃべる親友、主人公を敵視するジョックとそのビッチな彼女、イヤミな体育教師、転校してきた美少女など、ここ最近のティーン向けドラマのステレオタイプなキャラクターをここまできちんと揃えたことには逆に感服せざるを得ない。第1話の監督がラッセル・マルケイだというのも凡庸さに輪をかけているというべきか。主人公が凶暴化する自分に苦悩するという点では「超人ハルク」に似たものを感じたけど、あれほど面白い作品にはならないでしょうね。あとMTVのシリーズだからかもしれないが、いろんなシーンでかかってるサントラがどうも耳障りに感じたよ。

ここまで内容が別物なら、「ティーン・ウルフ」という名前を使わなくても良かったんじゃないの、と思わざるを得ない作品。

「LOVE BITES」鑑賞


NBCの新シリーズ。といってもこれも製作されてから1年後にやっと放送された訳あり物件。登場人物が「ギャラクティカ」の最終回について語ってたり、BGMに「Great DJ」とか「1901」とかが使われてるのを聴くと、微妙な古くささを感じてしまうね。

内容は要するにテレビ版「ラブ・アクチュアリー」で、アメリカの各都市における男女の恋愛模様がアンソロジー形式で描かれていく。第1話では男をひっかけるために自分は処女だと偽った女性が、いざ男を連れ込んだら相手が気兼ねしてセックスしてくれないという話や、職場をクビになった男性が気落ちして帰宅したら、妻がバイブレーターにハマっていてさらに気落ちしたという話、そしてジェニファー・ラブ・ヒューイットのファンの男性が飛行機のなかでヒューレット本人と同席になり、やがていい仲になってしまい…という話の3つが語られていた。出演はヒューイット本人のほか、クリステン・リッター(はあと)とかクレイグ・ロビンソンなど。

いちおう狂言廻し的なキャラクターもいるようだけど、アンソロジー番組っていまどき地上波で通用するものなのかね?女性向けのニッチなケーブル局なら少しは長続きしそうだけど。NBCもそれを分かっていて放送を遅らせたんだろう。あと時間の都合からか恋愛の過程などはじっくり描かず、話がすべてセックスに直結してるのもどうかと思うけどね。

この調子だと1回あたり2〜3の男女の出会いが描かれるんだろうけど、30数年生きていてろくな出会いを体験したことのない1視聴者としては、「そんな幸運な出会いなんぞねえよ、ケッ!」と画面に悪態をつきたくなるのです。

「探偵<スルース>」鑑賞


以前から観たかったローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインの密室劇。何故か日本やアメリカでは長らくDVDが絶版になっており、イギリス版を買おうかと考えていたらなんとYouTubeに全編がアップされていた。これも日頃の行いのおかげ、ということにしておこう。

郊外の大邸宅に住む老推理作家(オリヴィエ)のもとに美容室を営む青年(ケイン)が招かれる。実は作家の妻と青年は不倫関係にあり、それを知っていた作家は青年を陥れるために自宅の宝石の盗難詐欺の話をもちかけるのだが…というようなストーリー。もともとは舞台芝居で、話の展開から察するに3幕ものかな?

ミステリー仕掛けなのでいろいろドンデン返しなどもあったりするのだけど、あまり謎解きの要素などは強くなくて、邦題にあるような「探偵」も出てこなかったりする。オリヴィエとケインの巧妙かつ辛辣な会話を楽しむ作品といったところか。女性問題からはじまった対決が、いつの間にか階級闘争につながっていくあたりがイギリス映画らしいですね。最初はオリヴィエに手玉にとられていたケインが、徐々に彼に復讐していく流れが巧い。いまでは賢い老人を演じることが多いケインだが、不遜な若者を演じていたこの頃の演技も俺は好きです。

主演の2人以外は出演者が全くおらず、ロケーションも非常に限られている作品だが、オリヴィエが蒐集している人形のショットなどが効果的に絡められ、観ていて飽きない出来になっている。それでも2時間ちょっとという尺は長いと思うけどね。最近ケネス・ブラナーがリメークしたものは89分という出来らしいが、どういう演出がされてるんだろう。あと話の最後に出てくる赤いレインコートの意味を誰か知っていたら教えてください。

ちなみに「This Charming Man」の「A jumped-up pantry boy who never knew his place」ってこの映画からの引用だったのか。