「Hobo with a Shotgun」鑑賞


題名が「ショットガンを持った浮浪者」で、内容もそのまんま。「グラインドハウス」公開時に募集されたフェイクのトレーラーのなかの最優秀作品が長編になったものらしい。

主人公の浮浪者は貨車に乗って気ままな旅を続けていたが、このたび彼がやってきたホープタウンという町では犯罪と暴力がはびこり、犯罪王とその息子たちが公衆の目の前で平然と公開処刑を行っている一方で、警察は彼らと癒着して何もせず、町の住民たちは恐怖のなかで生活をしていた。最初は暴力沙汰に巻き込まれるのを避け、小金をためて芝刈り機を買おうと考えていた浮浪者だが、町の住民への度重なる暴力を目にしてついに激怒し、ショットガンを抱えて町のゴロツキどもを殺していくのだが…というような話。まあストーリーなんてあってないものですが。

ショットガンだけでなくナタや手斧、さらにはモリ銃やスケート靴などで人が次々と殺されていき、血がドバドバと出る光景にドン引きする人もいるかもしれないが、「グラインドハウス」なんてそんなものでしょ。そしてCGを使わないアクションというのが、今となっては逆に斬新に感じられるな。個人的にはもっとおっぱいがあっても良かったような気がするけどね。

彩度のぶっとんだ画作りやシンセサイザーの鳴り響くサントラ、血と内臓の飛び散るアクションは他の「グラインドハウス」作品同様にに70〜80年代のC級アクション映画のパスティーシュになってるが、変にジョークなどを入れ込んだりはせず、あくまでも真面目な映画として作っているところには好感が持てるな。監督はこれが長編デビューになるようだけど、カメラの動きとかがきちんとしていて、安っぽさをあまり感じさせない作りになっている。そして主人公にルトガー・ハウアーを持ってきたところが全体に重みを与えているかと。浮浪者なのに歯が真っ白なのは気になるけど、正義感に燃える主人公をシリアスに演じていて相変わらずカッコいいな。ただやはりストーリーが薄いのと、ラストがちょっとあっけないのはいただけない。

観たあと心に何か残るかというとまったく何も残らない作品ではあるものの、20年以上前にビデオショップで「片腕サイボーグ」とか「SF フューチャー・キル」とかをレンタルしてた世代なら楽しめる作品なんじゃないかな。

なおクレジットから察するにカナダ政府から助成金をもらってノバスコシアで撮影をしたらしいが、こんなお下劣映画に対しても援助するカナダ政府は偉い。

「TORCHWOOD: MIRACLE DAY」鑑賞


ついに始まった第4シリーズ。今回はアメリカのStarzとBBCの共同製作ということで多分にアメリカナイズされた内容になっているが、第1話を観た限りでは非常に楽しめる出来になっていた。

ある日突然、世界中で誰もが死ななくなるという現象が発生する。薬物を注射された死刑囚や交通事故に遭った人までもが、死ななくなってしまったのだ。メディアはこれを「奇跡の日」と呼んで大々的に報じるが、それは地球がやがて人間でいっぱいになってしまう可能性も示していた。そしてこの現象とトーチウッドのあいだに何か関係があると考えたCIAのエージェントはウェールズへ直行し、今では母親となって夫のリーズとともに隠遁生活を送っていたグウェン・クーパーのもとへと向かうが、そこに謎のヘリが現れてグウェンたちを襲撃する。そんなグウェンを救ったのは地球に還ってきたキャプテン・ジャック・ハークネスだった。こうして再結成したトーチウッドはCIAの要請により強制的にアメリカへ行くことになったのだが、地球上の人間がみな不死になった一方で、もとから不死身だったジャックは自分の再生能力が失われたことに気付くのだった…というのが第1話のプロット。

ご存知のように第2〜第3シリーズにかけてメンバーの大半がいなくなったため、前回に引き続き登場するのはジャックとグウェンとリーズのみ。あとグウェンの元同僚とか両親がちょっと出てるくらい。アメリカ勢の新キャラクターとしてはメキ・ファイファー演じるCIAのエージェントや、ビル・プルマン演じる死刑囚などなど。後者は今回の悪役になるのかな。

人々が死ななくなるといっても無敵になるわけではなく、以前のジャックみたいな驚異的な再生能力を持つわけでもないので、ケガしたらケガしたまんまというのが大きなポイントで、重傷を負って首が切断された人でも生き続けるという描写がされている。あとBBCよりもStarzのほうが規制が緩いので「濃厚な男同士のセックス」が後で出てくるそうですが、それはまあいいです。相変わらずラッセル・T・デイビスはやおい趣味に走るよな。

全体的に前作「Children of Earth」のようなダークで不気味な雰囲気を持ったものになっているが、今回は予算が増えたのかアクションシーンが派手で、特に赤ん坊を抱えたまま銃を乱射し、しまいにはバズーカまで撃つグウェン姐さんがとてもカッコいいのですよ。グウェンが頼もしく思えたのって今回が初めてかもしれんな。相変わらずブスだけど。

今回は全10エピドードということで第3シリーズの2倍の長さになり、話をタイトなものにしたことで大傑作となった「Children」の出来に匹敵できるのか不安が無くはないですが、第1話から察するにかなり期待はできそうだ。

「ALPHAS」鑑賞


Syfyチャンネルの新シリーズ。

進化の常識を覆すような能力を持った新しいタイプの人間が現れるようになり、アメリカ政府は彼らを「アルファ」と呼んで、リー・ローゼン博士のもとに集めて彼らの研究を行っていた。ローゼン博士の研究所にはアドレナリンを放出することで怪力を発揮できる男性や、人を暗示にかけられる女性、五感が非常に発達した少女、そして電磁波を視覚化して観ることのできる少年という4人のアルファが揃っていた。そして驚異的な射撃能力によって囚人が暗殺されるという事件が起き、彼らはこのスナイパーがアルファに違いないと考えて彼の確保に動くのだが、その裏では自分たちの能力を悪事に使おうとする闇のアルファたちの陰謀が動いていて…というようなプロット。

まあ「HEROES」とか「NO ORDINARY FAMILY」に続く、普通の人たちがスーパーパワーを持ったらどうなるかという、ここ数年流行っている内容の番組の1つという気もしなくはない。でも第1話は「FAMILY」よりも面白いし、「HEROES」みたいに話が変に複雑になることもなく、もうちょっと気楽に楽しめるアクション番組になるみたい。この手のシリーズだとイギリスの「MISFITS」が面白いらしいですが俺は未見。

この番組のいちばんの強みは、プロフェッサーXのごときローゼン博士の役をデヴィッド・ストラザーンが演じてることじゃないですかね。何やっても基本的に外れのない役者だし、彼がいることで話に重みがついているような。眼光の鋭い彼が好々爺っぽい博士を演じてるのは少し意外でしたが。

「ギャラクティカ」のレベルには遠く達していないとはいえ、今後の展開によっては結構楽しめるシリーズになるかもしれない。

「SOURCE CODE」鑑賞


(以下いちおうネタバレ注意)
「月に囚われた男」で注目されたダンカン・ジョーンズの第2作。日本では「ミッション: 8ミニッツ」というどうも残念な題で10月末に公開されるらしいね。今回の脚本はジョーンズによるものではないが、「もう1人の自分」というテーマは前作に通じるものがあるな。

シカゴ行きの列車が、何者かが仕掛けた爆弾によって爆破され乗客が全員死亡するというテロが発生。さらに犯人は6時間後に核爆弾によるテロを予告する。この緊急事態に対して政府は、死者の記憶を8分間だけ遡って現場の状況を探れるというシステム「ソース・コード」を起動し、空軍パイロットのコルター・スティーヴンスが「過去」へと送り込まれる。限られた時間のなかでスティーヴンスはテロの犯人を捜そうとするのだが、やがて意外な事実が明らかになっていく…というような話。

事故発生の8分前までなら何度でも戻ることができるので、犯人探しに失敗したスティーヴンスはもう1度戻って新たな手がかりを探し、それをもとにもう1度戻って…といったプロットになっているものの、懸念してたほど同じシーンが延々と繰り返されることはなかった。意外と早い時点で最初の謎が明らかにされ、そこから新たな謎が生じるというスピーディーな展開になっているので、観る人を飽きさせないつくりになっている。その代わり最初から最後までストーリーを貫くような大きな謎はないけどね。

そして犯人探しのプロットだけでなく、過去と現在を往復するうちに記憶が錯綜していくスティーヴンスの状態がもう1つの大きなプロットになっているわけだが、ここらへんはフィリップ・K・ディックの小説、特に「ユービック」に似たものを感じたよ。

列車の中と政府のオフィスという限られた空間で話の大半が進んで行くさまは「月に囚われた男」に似ているが、撮影テクニックなどが遥かに向上していて優れたSFサスペンスになっている。惜しむらくは前作と異なり音楽をクリント・マンセルが担当していないことか。

「マイティ・ソー」鑑賞


2Dで観た。原作のソーはキャラクターデザインが大好きな一方で、あのウサンくさい古典英語を話すところがどうしても好きになれなかったのですが、今回はまっとうな(?)英語を話していてひと安心。「Xメン」もそうだったけど、コミック版の口調とかアクセントを排除したのは正解だったな。

ストーリーはファンタジーと現代的なアクションをうまくまとめた出来になっていて、肉親同士の葛藤なんかはケネス・ブラナ—がシェークスピアをベースにしてきっちり描いた、といった感じでしょうか。ロキはもっと狡猾な生活にしても良かったと思うけどね。彼は肉弾戦を好むタイプではないので最後のバトルの相手にはちと力不足かと。というかデストロイヤー弱くない?原作だとムジョルニアを切断するという離れ業をやってたのに。

俳優陣はクリス・ヘムズワースの演技をまっとうに観たのはこれが始めてだが、豪快かつ純朴なソーをうまく演じている。ナタリー・ポートマンは相変わらず無邪気で幸薄そうな女性の役が似合うなあと。また浅野忠信はあの英語力ではハリウッドでは大成できないだろう。そして俺はステラン・スカルスガルドをずっとピーター・ストーメアだと思って観ておりました。

ここ最近のマーヴェル映画のお約束である「アベンジャーズ」への伏線は以前にも増して多めになっているが、セリフなどに巧妙に隠されているのであまり気にならない。ジェレミー・レナーがあの役で登場してたのにはニヤリとさせられましたな。

「ダークナイト」級の傑作ではないものの、「アイアンマン」くらいに気楽に楽しめる佳作。続編の製作が決定したそうですが、ベータレイ・ビルは出るよね?ね?