「MAGIC MIKE」鑑賞


スティーブン・ソダーバーグの新作。

舞台となるのはフロリダ州タンパにある男性ストリッパーのクラブで、主人公のマイクはそこのダンサーの1人。インテリアデザインの才能を持つ彼はクラブなどで稼いだ金をコツコツと貯め、やがてインテリアの店を開くことを夢見ていたが、ダンサーが現金のチップを稼ぐ仕事なのに対してアメリカ社会ではクレジットカードの履歴がものを言うので、銀行からの融資を受けることができず悶々としていた。そんなある日彼は別のバイト先でアダムというボンクラな青年と出会い、彼をクラブに連れて行ったことがきっかけでアダムもストリッパーとして働くことになる。アダムの姉のブルックはそれを好ましく思わないものの、マイクとブルックは恋仲になり…というような話。

題材が題材だがチンコは出てきませんよ。アメリカのストリッパー小屋ってスッポンポンになるのは禁じられてるのかな?でもそれ以外のところはいろいろ披露されまして、体脂肪1ケタ台のおにーちゃんたちによる、軍隊とかカウボーイをテーマにしたショーやダンスがふんだんに盛り込まれている。そういう意味ではミュージカル映画に近いノリがあるかな。

でもショーの部分以外の描写は以外と薄くて、夢を抱いた主人公や、トラブルばかり起こす若者、欲の強いクラブのオーナーなどによるドラマはかなり典型的。ダンサーの日常を描いた、かなりまったりした映画という印象は否めない。マイクのインテリアデザインの話も途中からどこへ行ってしまったような。

主演のチャニング・テイタムは実際に過去にダンサーとして働いてたことがあるらしく、身の上話を前作「エージェント・マロリー」のときにソダーバーグに話したら「それ面白そーじゃん!撮影しようよ!」ということになって映画になったらしい。そういう思いつきで映画を撮り、それなりのキャストを集めてしまうところがソダーバーグの強みというか何というか。ただ「マロリー」同様に、なんか余力で映画撮ってるんじゃないかという気もする。まあ「トラフィック」みたいな大作に比べての話ですが。

アダムを演じるのは「アイ・アム・ナンバー4」のアレックス・ペティファー…って俺なんか嫌いなんだよな彼。俳優よりもファッションモデルという感じがして。そしてマイアミへの出店を目指すクラブのオーナーを演じるのがマシュー・マコノヒーで、火を噴いたりギター弾いたりと、マンガみたいなキャラクターを演じる彼がいちばんおいしい所をとってたんじゃないでしょうか。最後にダンスを披露するのも彼だし。日本の腐女子にとってはマット・ボマーがダンサーを演じてるのがめっけものでしょうが、彼の出番は意外なくらいに少なかったな。あと元WWFのレスラーであるケビン・ナッシュもなぜか裸になってステージで踊ってました。

珍しいビジネスの世界を舞台にしているという点では面白い映画だったものの、ストーリーは平凡だったかな。テイタムは早くも続編を計画しているらしいが、ソダーバーグ並みの監督を連れてこないと、面白い作品を作るのは相当難しいだろうな。

「007 スカイフォール」鑑賞


ネタバレにならないよう軽い感想をいくつか:

・純粋に楽しめる、とてもよくできた映画。前作のグデグデ感を捨てさり、スピーディでアクション感満載ながらも地に足のついた良質のサスペンス映画になっている。
・これは監督のサム・メンデスも認めてるけど、クリストファー・ノーランの「ダークナイト」の影響がかなり見て取れる。苦悩する主人公を手玉にとってあざ笑う悪役の姿はジョーカーそのまんま。
・つうかハビエル・バルデム演じる悪役の計画が緻密すぎる!まっとうに運行してるほうが珍しいロンドンの地下鉄のダイヤまで計算して計画を立ててるんですもの。ボンド映画の悪役はカタワ者、という政治的に正しくない伝統もちゃんと継承してたな。
・おねーちゃんがあまり出てこない、という批判は確かにその通りなのですが、「ダークナイト」同様に男同士の対決をみっちり描くためには女性を省くしかなかったんだろうな。
・作品の大きな特徴として「懐かしの面々」の復活がありまして、Qはおろか最後にはあんな人も出てきたりして、オールドファンには十分楽しめる内容じゃないでしょうか。またボンド映画に詳しくない人でも優れたアクション映画として楽しめると思う。
・あと作品の成功に大きな貢献をしてると思うのが、ロジャー・ディーキンスによるシネマトグラフィー。夕暮れから夜までの描写をあそこまで巧く撮れる人ってそんなにいないのでは。

というわけで十分に楽しめた作品。難があるとしたらアデルによる主題歌が前2作のものに比べて迫力に欠けることかな?また「カジノ・ロワイヤル」でボンド映画の原点回帰やって、早くも3作目で懐かしの面々を復活させるという、まるで平成版ゴジラのような道を辿っているわけですが、こうした回帰&復活はそう何度もできるわけではないので、今後もちゃんと物語を新鮮なものにしていけるのか、一抹の不安を抱かずにはいられないのです。いっそノーランに監督やってもらうとか…。