「The Lost City of Z」鑑賞


タイトルだけ見ると「またゾンビものかい!」と勘違いしそうだが、そんなんでは全くなくて真面目な伝記映画。

アマゾンの秘境の探索に心血を注いだ冒険家パーシー・フォーセットの半生を描いたもので、話は20世紀初頭から始まる。イギリス陸軍に所属していたフォーセットは技量を見込まれ、南米のボリビアとブラジルの紛争調停のために両国の国境線の測量を依頼される。親が没落させた家系の出身であるフォーセットは、家の名誉の挽回を狙って依頼を受託し、うだるような暑さのジャングルの奥地へと向かう。そこでは原住民に襲われたりと苦難に見舞われながらも川をさかのぼり任務を達成した彼だったが、そこで陶器の破片や彫像を発見し、かつてアマゾンの奥地には高度に発達した文明が存在したという確信を抱くようになる。フォーセットはその文明の都市を「Z(ゼッド)」と名付け、帰国したのちに学会で発表するものの、他の学者たちには信用されずに嘲笑されてしまう。しかし彼の信念は揺るぎなく、ゼッドの存在を明かすために彼はふたたびアマゾンへと向かうのであった…というあらすじ。

フォーセットはインディ・ジョーンズやチャレンジャー教授のモデルにもなったという話もある冒険家だが、アマゾンでの発見や冒険よりも未知の都市を追い求めたフォーセットの人生のほうに話の重点が置かれている。ジャングルの川をさかのぼって驚異の経験をする話という点では「地獄の黙示録」、さらには「アギーレ 神の怒り」に近い内容だが、あれらの作品が西洋文化の概念がジャングルの奥地で崩壊していく話であったのに対し、こちらではむしろ野蛮なのは西洋文化(形式にこだわる学会員、仲間を裏切る冒険家、フォーセット自身も参戦した第一次世界大戦など)であり、ジャングルやそこで出会う未知の存在はフォーセットにむしろ安泰を与えてくれる存在として描かれている。

もちろんジャングルではいつも極限状態に置かれるのだけど、結構何度も無事に生還しているので、あまり緊迫感が続かないんだよな(劇中では3回の遠征が行われるが、実際は7回行われたらしい)。2時間20分の長尺だが、第一次世界大戦の描写にあんな時間を割く必要はあったのかしらん。

フォーセットの足取りを追った、「ザ・ニューヨーカー」誌の記者による同名のベストセラーをもとにした映画だが、上記の遠征回数のようにそれなりに脚色が加えられているみたい。また劇中ではアマゾンの原住民の文化に寛大な理解を示すフォーセットだが、実際は神智学の熱心な信者で、ゼッドこそは白人文明の発祥の地だと信じて探索を行っていたという話もあるようで…?

監督はジェームズ・グレイ。前作「エヴァの告白」も高い評価を得てましたが俺は未見。実際にアマゾンの過酷な環境に35ミリフィルムカメラを持ち込んで撮影した映像は美しいですよ。フォーセットを演じるのがチャーリー・ハナムで、彼の相棒の冒険家を演じるのが、最近演技がどんどん評価されているロバート・パティンソン。フォーセットの息子役にスパイダーマンことトム・ホランド。こうして書くとキャストが豪華だな。あとはフォーセットを家で待ち続ける妻役にシエナ・ミラー。なぜかフランコ・ネロもチョイ役で出てました。

興行的には失敗したものの批評家からは高い評価を得た作品だが、ジャングルとイギリスの話を交互に描いたせいか個人的にはテンポが悪いかなと感じました。ジャングルの奥地に向かうことに執念を燃やす男の映画なら、先に「アギーレ 神の怒り」を観ましょう。

「Strike – The Cuckoo’s Calling」鑑賞


J・K・ローリングがロバート・ガルブレイス名義(匿名にするつもりがバレちゃったやつ)で執筆した探偵小説「カッコウの呼び声 私立探偵コーモラン・ストライク」を映像化したBBCのミニシリーズ。

アフガニスタンで軍警察を務めていたコーモラン・ストライクは爆弾で片足を失って帰国し、さびれた事務所で私立探偵をやっている男。キャンセルしたはずなのに派遣会社から秘書としてロビン・エラコットを1週間だけ寄こされた彼は、かつての学友のつてから、謎の飛び降り自殺を遂げたスーパーモデルの死の真相の調査を依頼される。モデルの関係者から調査を行っていくストライクだが、彼女の肉親から手を引くよう忠告され、さらには新たな死者がでることになり…というあらすじ。

原作読んでないので本との比較はできないのですが、ストレートなガムシューものといったところか。ストライクは無骨なようで真面目に聞き込みとかして調査を行うし、謎の死を遂げたスーパーモデルの部屋は完全防音だったので一種の密室殺人事件のようになっている。

真面目な推理ものであるという一方では比較的地味な内容であり、同じくBBCの「シャーロック」みたいな派手な活劇を期待してるとガックリするかもしれない。ストライクは義足なので走れず、容疑者が走って逃げると追いかけられないのですもの。また「シャーロック」のように手がかりがCGで表示されたりもしないから、調査がどこまで進んだのかちょっと分かりにくいところがあるかも。登場人物が多いものの名前だけが呼ばれると「あれそれ誰だっけ?」と困惑してしまったのは単に俺が注意力散漫なだけか?

主役のストライクを演じるのは「マスケティアーズ/三銃士」のトム・バーク。彼の有能な秘書のロビンを演じるのがホリデイ・グレインジャー。あとは特に有名な役者は出ていなかったかな?

3話で完結だけど、原作者の知名度もあるしシリーズ残りの2冊も映像化するんでしょうな。地味な作品ではあるものの手堅い作りになってるので、悪い番組ではないですよ。「シャーロック」(あるいは「ハリー・ポッター」)的なものを期待しなければ楽しめる内容かと。