「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」鑑賞

Birdman
アカデミー候補ということで駆け込み的に鑑賞。4月に日本公開なのでネタバレしない程度にざっと感想を(しかしネタバレするようなストーリーが無いのだが)。

・殆ど切れ目なしの長回しによる撮影で、さらにブロードウェイの舞台裏という設定もあり、1つの芝居を観ているような気分になる。

・演劇界や映画界の内輪ネタみたいなのもセリフのあちこちに散りばめてあって、いろいろ高い評価を受けたのも何となく理解できる。ハリウッドの人たちって自分たちに関する映画が好きだからねぇ。

・でも実際に作品として面白くて、マイケル・キートンの身体を張った演技が見事。あとはやはりエドワード・ノートンがずばぬけて巧いなあと。

・エマ・ストーンはどんどんマンガのような顔になっていっている。あのままCGアニメになっても違和感は無いんじゃないだろうか。

・マイケル・キートンってかつてバットマンを演じた(そしてそれ以降は落ち目になった)役者だよ、という前知識は持っておいたほうが良いでしょう。知らない人はいないと思うが。

・ドラムのみを使ったサントラがセリフとうまく絡み合っていて、ビート・ポエトリーかヒップホップのよう。これ吹替版作るの大変そうだな。

・レイモンド・カーヴァーの短編1本で長編舞台って作れるものなのか(時間的に)?

・最後のシーンを予告編に入れるのはどうかと思うの。

アカデミー賞で最低でも撮影賞は獲得するんじゃないかと。あとはどうだろうね?

「ROSEWATER」鑑賞

Rosewater
先日、16年近くにわたる「デイリーショー」の司会の降板を発表して世界中に衝撃を与え、親会社の株を3億5000万ドル下落させたジョン・スチュワートが、昨年「デイリーショー」を休んで監督した作品。

イランで拘束されたジャーナリストのマジアル・バハリに体験に基づいた内容で、イラン出身のカナダ人であるバハリは2009年にイランの大統領選挙を取材するため、身重の妻を家に残してテヘランへと渡航する。そこで彼はアフマディーネジャードを支持する学生や、対抗馬のムーサヴィーを支持して体制の変革を願い若者たちを取材し、さらには当時イランに来ていた「デイリーショー」特派員のジェイソン・ジョーンズの取材を彼が受けることになる。ムーサヴィーが大勝すると予想されていた選挙はアフマディーネジャードの勝利となり、不正選挙が疑われて各地で暴動が起きるなか、実家で寝ていたバハリは警察に叩き起こされ、西側のスパイだという嫌疑をかけられて刑務所に連行され、そこで激しい尋問を与えられることになる…というストーリー。

おれ上記のジェイソン・ジョーンズのイラン訪問はリアルタイムで観てましたが、イランについてクールに説明していたバハリがそのすぐあとに当局に拘束されたと言うニュースは結構驚きだったんだよな。「デイリーショー」でも彼のことを何度か取り上げていたと思う。その後バハリは強制されて国営テレビで自分の「罪」を告白し、118日間の拘束のあとに釈放されて「デイリーショー」に出演したりもしたわけだが、彼の物語に興味をもったジョン・スチュワートが映画化を企画。最初はほかの脚本家や監督を起用する予定だったものの、ハリウッドに任せてると遅々として話が進まないということで自分で脚本・監督を担当することになったらしい。なおバハリ役はメキシコ人のガエル・ガルシア・ベルナルが演じているが、さほど違和感はない…と思う。

撮影は当然イランは無理なのでヨルダンで行なったらしいが、イラン国内の映像もいろいろ使用されていて興味深い。反体制側の若者たちが衛星放送のアンテナを見つからないように設置して、海外のニュース番組から情報を得ているという描写も面白かったな。

なお題名の「ROSEWATER」とはバハリに目隠しをして尋問した人物がローズウォーターの香水をつけていたことに起因するもの。彼とバハリの間には奇妙な友情のようなものが生まれたりするのだが、獄中のバハリの葛藤の描写がどうしても弱いのよな。過去に彼と同様に収監されていた父親や姉の回想シーンとか、国外ではヒラリー・クリントンなどが彼の釈放を求めていたことなどを絡めているものの、出来事を律儀に描きすぎていて、釈放されるまでの流れが逆にあっけなく感じられたりする。例えばベン・アフレックなんかは「アルゴ」でフィクションを盛りまくってちゃっかりアカデミー賞を穫ってたりするわけだが、そういうことをしないところにジョン・スチュワートの人の良さというか、映画作りの経験の浅さが出ているのではないか。

「デイリーショー」を去ったあとにジョン・スチュワートは何をやるのか、という憶測が早くも話題になっているわけですが、この作品は批評的にはまだしも興行的にはかなり残念な結果になったわけで、映画の監督業をまた試みるのは控えておいたほうが良いのではないかと、1ファンとしては考えてしまうのです。

「THE SLAP」鑑賞

The SlapNBCのミニシリーズ。小説が原作のオーストラリアの番組のリメークだそうな。

ニューヨークの公務員であるヘクターは40歳の誕生日を迎えたが、期待していた昇進を逃し、知り合いの若い女の子(誕生日プレゼントにクリス・ウェアの「Building Stories」をくれるという偉い子)に心を奪われ、どうも憂鬱な一日を過ごしていた。しかし彼の妻子や両親、友人たちがパーティーを開いてくれたために愛想良く振る舞っていたものの、彼の両親と妻の仲が不穏になったり、親戚のハリーと友人のギャリーがケンカしたりとパーティーは波乱含み。しまいにはワガママなギャリーの息子をハリーがひっぱたいたために、そこにいた人たちの関係が一気に最悪なものになり…というプロット。

ハウスパーティーが舞台の群像劇という第1話の展開はインディペンデント映画っぽい作りだな、と思ったら監督が「キッズ・オールライト」のリサ・チョロデンコだった。出演者もピーター・サースガードにブライアン・コックス、ユマ・サーマン、タンディ・ニュートン、ザッカリー・クイントなどとインディペンデント映画に出てそうな俳優が勢揃いしている。

他人の子供を叱る(ひっぱたく)のは許されることなのか?という議論は最近よくアメリカのトークショーなどで耳にするのだけど、まあ時と場合によるよなあ。すぐ親が訴訟を口にしたりするのはアメリカっぽいと思いましたが、これ日本では受け止められ方がえらく違ってくるかもしれない。

他局のミニシリーズ(最近はイベントシリーズと呼ぶらしいね)がSFやアクションに頼っているなか、このような一般家庭を舞台にしたドラマを持ってきた理由は何だろう?とはいえ話の内容は決して悪くはないし、第1話だけでも短編映画を観ているようで面白かった。

「Nightcrawler」鑑賞

Nightcrawler
硫黄の臭いをまき散らしながらテレポートするXメンの話…などでは当然なく、ロサンゼルスが舞台のサスペンス。

鉄線の泥棒をしていたルイスは、ハイウェイでの交通事故を撮影して映像をニュース局に売りさばくカメラマンを見かけたことから、自分もその仕事を始めようとカメラを購入する。交通案内役として高校を出たばかりのリックを雇って警察無線を傍受し、事故現場に急行するルイス。最初はライバル業者に出し抜かれてばかりだったが、やがて撮影した映像が売れてローカル局のプロデューサーであるニナとコネをもつようになる。警察の警告を無視し、必用とあれば事故現場の証拠の捏造も厭わないルイスの映像はやがて高く売れるようになるが、より刺激的な映像を求める彼の行動はさらにエスカレートしていき…というストーリー。

いわゆる「カメラが捉えた決定的瞬間!」的な映像を求める世間とニュース局を風刺した内容になっていて、映像はショッキングなものが好まれ、特に「郊外の白人家庭を脅かす都市型犯罪」というアングルが良いということが劇中でも語られる。視聴率で苦戦している局にいるニナは脱法すれすれのところでルイスの映像をセンセーショナルに流すのだが、アメリカって国が広いせいかローカル局のニュース番組がかなり人気あるんだよな。

主人公のルイスはモラルが完全に欠如した人物(ほぼサイコパス)で、感情を爆発させる瞬間もあるものの、大抵は瞬きせずに自分の目標を淡々と語るような人物。仲間を脅すことも厭わず、ライバル業者を危機に陥れることも平然とやってのける。良いネタになると判断すれば映像の加工も行なうし、人助けをせず警察にウソをついていく。そんな彼のヤバさを承知しながらも、売れる映像欲しさに彼と手を組むニュース局を描くことで現代社会の批判をしているわけだが、結構突き放した視点で物語が語られていくので、あまり風刺という印象は受けないかも(かといってベタな内容にしてたらもっと凡庸になってたろうが)。

ルイスを演じるジェイク・ギレンホールは役作りのために10キロくらい減量したという徹底ぶりで、見事な怪演を見せつけている。そんな彼と手を組むニナをレネ・ルッソが演じていて、彼女って監督の奥さんなのか。いちおうヒロイン的な役割でもあるのだが、うーむ。あとはライバルのカメラマンにビル・パクストンとか、リック役に『FOUR LIONS』のリズ・アーメッドが出演している。

監督のダン・ギルロイは脚本家出身でこれが初監督作で、全体的にちょっと詰めの甘さが感じられるかな。あと15分くらいは短くても良かったと思う。あと海外のレビューを読んでてなるほどと思ったのが、今や事故現場などにはスマホもった素人がハエのように押しかけ、自らYouTubeなどにアップしてしまう世界なわけで、放送局と(いちおう)プロのカメラマンしか出てこないこの映画はすでに時代遅れになっているのかもしれない。

でもギレンホールの演技は凄かったし、一見の価値はある映画かと。例によって日本での公開が未定なのが残念。

「BETTER CALL SAUL」鑑賞

Better Call Saul, Season 1
おととし終了した「ブレイキング・バッド」のスピンオフ作品なのだよ。

主人公は「BB」のイカサマ弁護士ことソウル・グッドマンことジミー・マギルで、彼が「ソウル・グッドマン」と名乗って事務所を開く6年くらい前の出来事を描いたプリクエル作品になっている。ただし冒頭では「BB」最終回のあとの彼も登場するし、「BB」の途中およびその後の彼の姿も描かれることになるみたい。

舞台は2002年のアルバカーキ。さえない弁護士のジミー・マギルは裁判に勝てず、顧客にも逃げられ、ろくな事務所も持てずに最低な日々を過ごしていた。彼の兄のチャックは大手弁護士事務所のパートナーだったが、自分が「電波過敏症」だと思い込み電子機器のない家で長期休職中という始末。ジミーは兄に退職および会社の資産の清算を進めるものの聞いてもらえず、金欲しさに当たり屋の男たちと組んで小金を得ようとするものの、物事はあらぬ方向に進んでしまい…というプロット。

弁護士が主人公だけど法廷ドラマにはならず、「BB」同様にメキシカン・マフィアとやり取りする犯罪ドラマになるのかな?ただし「BB」は主人公が怒りにまかせて底辺からのし上がっていく内容だったのに対し、こちらの主人公はトリックスター的なタイプなので、「BB」よりもブラックなコメディの要素が強いかもしれない。

主人公のジミーを演じるのは当然ながらボブ・オデンカーク。「ネブラスカ」や「ファーゴ」を経て、さらに演技が巧くなっているな。あとは「BB」のマイクことジョナサン・バンクスが出演しているほか、「BB」の他の出演者もちらほら出てくるみたい。新しいキャラクターとしては兄のチャックをマイケル・マッキーンが演じている。

放送前からシーズン2の製作が決定し、初回の視聴率も記録的な数字を稼いだらしいですが、まあ「BB」の大変素晴らしかった第1話と比べるとクオリティは落ちるわな。しかし演技や演出は手堅いし、「BB」と比べなければ十分に楽しめる番組じゃないでしょうか。プリクエルとはいえ話が自在に発展できる余地は多分にあると思うので、「BB」に肩を並べられる作品になることに期待。