「Prince Avalanche」鑑賞


昨年話題になってながらも見逃した映画を、チマチマと拾っていく次第であります。ポール・ラッドとエミール・ハーシュ主演のドラマ。

舞台は1988年のテキサス。前年に起きた山火事によって大きな被害を受けた森林公園の再建作業に関わるため、アルヴィンはガールフレンドの弟であるランスを連れて町を離れ、山奥において道路の整理作業をしていた。幼稚な振る舞いをするランスをあまり快く思っていなかったアルヴィンだが、週末に町に戻ったランスは女性関係のトラブルに遭遇してふさぎ込んでしまう。さらにアルヴィンもガールフレンドとの間に一悶着あり…というようなプロット。

画面に出て来るのはほぼこの2人だけということもあり、いわゆるブロマンスものではあるのですが、その一方では町に残してきた女性たちについてウジウジ悩む男たちの恋愛映画でもある。対象となる女性たちが出てこないという演出が特徴的かな。ちなみに「雪崩の王子様」という題名はストーリーと殆ど関係ありません。当然ながらドクター・アバランシェ(知ってる?)とも関係ないよ。

ストーリー自体はアイスランドの「Either Way」という映画のリメークらしいが、2011年に実際に山火事に遭った森林公園で撮影していることもあり、テキサスの荒廃した森というバックグラウンドがものすごく印象的に使用されている。焼け落ちた家のなかで残ったものを探す女性というのが登場するのだけど、彼女は役者ではなく本当にその家に住んでいた人で、ロケハン中にスタッフに発見されてそのまま映画に出ることになったらしい。ここらへん東北の震災でボランティアやったときの経験と重なって、いろいろ考えさせられましたね。

監督のデビッド・ゴードン・グリーンは最近だと「スモーキング・ハイ」とか大コケした「ロード・オブ・クエスト」といったおバカコメディを撮っていた印象が強いのでこういう作品を撮るのは意外かもしれないが、そもそもは南部を舞台にしたインディー映画を撮っていた人(よく知らんがそうらしい)ので、実はこっちのほうが「実の姿」であるそうな。次作もニコラス・ケイジ主演のダークなドラマなんだって。

アルヴィンを演じるポール・ラッドは口ヒゲに緑のシャツとオーバーオールという格好がルイージそのまんまであるのが難点だが、真面目な役を好演している。この人ってコメディ全開の演技するよりも、こういう真面目な演技のほうが似合うと思うのだが。ランスを演じるエミール・ハーシュはマリオ…でなくジャック・ブラックにしか見えなくて、子供っぽく文句たれながらヘビメタ聴いてる姿はまんまジャック・ブラックなのだが、大人になれないキャラをうまく演じている、と好意的に考えることにしましょう。

たった16日間で撮影されたということもあり、決して金のかかっている作品ではなく、ピンぼけ気味で手ブレを入れた撮影はあまり好きではないかな。とはいえテキサスの自然は荒廃したとはいえ美しく、ポストロックバンドのエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイによる音楽も効果的に用いられている。派手な展開があるわけでもなく観る人によって評価が分かれるかもしれないが、個人的にはいろいろ身につまされる作品でありました。

「SHERLOCK」シリーズ3開始


シリーズ2から待つこと丸2年!しかし「ホビット」とか「スタートレック」などがあったので、キャスト的にはあまり懐かしいとは感じなかったかな?

第1話は当然のごとく『空き家の冒険』がベースになっていて、2年前に建物から身投げして死んだはずのシャーロックが、しれっとワトソンの前に帰ってくるのが前半の流れで、どうやって彼は死を欺いたのか?という解説がエピソードを通して語られるわけだが、その詳細はここでは書きません。そしてワトソンが何者かに命を狙われ、モリアーティに代わる新たな黒幕の存在が示唆されるわけだが、シャーロックの生還と黒幕の登場に多くの時間が割かれ、肝心の謎解きがおろそかになってしまっているのは残念。犯罪者と知能戦を繰り広げる君の活躍を見たいのだがねホームズ君。

キャストは皆が勢揃いで、イギリスのどんより曇った空のもとシャーロックに翻弄されています。新キャラとしてはワトソンの婚約者が登場するが、彼女を演じてる役者さんってマーティン・フリーマンの実のパートナーなのか。あとは薄幸な検死医のモリーさんの出番が今まで以上に多くて、シャーロックにも心を開かれたりするのに、相変わらず不幸せそうな顔をしているのが幸いでございます。

また脚本をマーク・ゲイティスが書いているせいか、彼が演じるマイクロフト・ホームズが登場する場面が多いものの、政府の力を駆使できる彼が活躍するのはちょっとズルいんだよな。それと劇中ではガイ・フォークス・ナイトが舞台になっているけど、最後の犯罪プランってそのまんま「V・フォー・ヴェンデッタ」(コミック版のほう)のパクリでは…?

シャーロックの帰還に時間をとりすぎて、話としてはイマイチなところもあったが、次回から本調子に戻ることを期待しましょう。なおシリーズ3で完結するかと思ってたら、シリーズ4も作られるのかな?とはいえ謎解きを後の話に引きずったりせず、1話できちんと事件が解決される展開を望みたいところです。

謹賀新年


“君の顔なら1000年だって眺めてられる/それは苦痛と歓喜の内戦のよう/しかし君が馬だったなら/僕はその鎖を解き放ち/燃えるたてがみを掴んで/平原をともに駆け抜けよう” sparklehorse – shade and honey

あけましておめでとうございます。

あー俺もう今年40歳だよ。孤独な40年だったなあ。このブログも10月には10周年になるわけで、駄文を書き連ねているとはいえこうも長続きするとは思いませんでした。

個人的には昨年の11月から12月にかけて、目標としていた仕事が一段落したのと、気の滅入る出来事があったこともあり、ここ最近は何とも言えない虚無感を感じているのですが、まあこれが何かしらの節目になるのかしらん。不惑とはいうものの、先行きまったく見えない状態でして、ねえ。

とりあえず今年はケイオス・マジックとジャグリングを学びたいと考えております。今後もよろしくお願いいたします。

2013年の映画トップ5

今年は別に不作の年でもなかったが、無理して10本を選ばずに5本に絞ってみました。観た順で順位は特につけません。

ゼロ・ダーク・サーティ
そのモラルの闇を見つめるさまは決して居心地が良いものではないが、ラスト30分の襲撃シーンの重々しさは見事だった。

Upstream Color
いや、実のところ何を言いたいのかよく分からないんですけどね、でもその映像美と世界観が良いなあと。

パシフィック・リム
娯楽映画としてはこれが今年のベストでしょう。

Escape From Tomorrow
ディズニーランドでゲリラ撮影したというギミックだけが強調されがちだが、撮影は意外なほどしっかりしているし、ウルトラQ的な幻想に浸れる良く出来たファンタジー。

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
3部作のなかではいちばん弱いような気もするが、それでも今年のコメディのなかでは圧倒的な入念さをこめて作られていた。細かいネタを見落としたいずれまた観ます。

他には「フライト」「セブン・サイコパス」「ホーリー・モーターズ」とかが良かったかな。一方で世間的の評判の高い「アルゴ」「ゼロ・グラビティ」「Frances Ha」などはさほどでもなかったかと。「The Act Of Killing」が年内に観られなかったのが残念。一方で見逃している作品もたくさんあるわけで、そこらへんは悔い改めながら後日機会があるときに観ていきます。

リアリティ番組6番勝負

iTunesストアとかで無料だったリアリティ番組とかをセコセコ集めていたら、いつの間にか72時間分くらい溜まってしまったので、ちょっとは消化しようとポテトチップス片手に6本を続けて観る。最初は10本くらいいけるかなと思ったけどさすがに無理でした。どれも初めて観るもので、ざっと感想を書いていく:

「The Hero」(TNT)
ホストを務めるのはザ・ロック様ことドウェイン・ジョンソン。全米から集まられた一般市民が過酷な試練に挑戦して、誰がいちばんのヒーローであるかを競うという内容。高層ビルからぶらさがったりと派手なことはやってるものの、そこらのゲーム番組と大差ないような。全員が試練に挑むのではなく協議のうえ数人が参加する、というシステムがまどろっこしい。あとその回の勝者が、賞金を独り占めするか皆で分配するか選択できるという心理的な駆け引きもあるのだが、そういう姑息さってヒーローとかけ離れてるのでは。

「Joe Rogan Questions Everything」(Syfy)
コメディアン(だそうな)のジョー・ローガンが超常現象などを調査するという内容で、今回はビッグフットを扱っている。ビッグフットに遭遇したという人や、足跡やフンなどを研究しているという博士などが出て来るのだが、みんなウサンくさくて…。思わせぶりな展開を披露しておいて、「実はフンから検出されたDNAは別の動物のものでした」などとオチをつけるのがやはりSyfyだなあと。まあこんな低予算の番組でビッグフットが見つかったりもしたら大事なのだが。

「Boston’s Finest」(TNT)
ドニー・ウォールバーグがナレーターを務める、ボストン警察の活躍を追った番組。シーズン2なのだがボストンマラソンの爆弾事件の後ということもあり、全体的に警官たちの言葉に重みが加わっているような。ただ内容は普通に「COPS」みたいな感じ。あっちの警察って、警官を見て逃げ出した人物を追いかけて手錠をかけることができるんですね。

「Cook Your Ass Off」(HLN)
HLNなんてチャンネルがあるのか。「健康的なジャンクフードを作ろう」をテーマに3人のシェフが腕を競う番組。つうかそもそもジャンクフード自体を食べなければいいじゃん!あとサモサってジャンクフードなのか?作られた料理はカロリー計算とかされてヘルシーさが競われるのだが、あっちの人たちの炭水化物を親の敵のごとく嫌う姿勢はよく理解できんな。それぞれの料理のレシピが公開されてご家庭でも調理できる配慮がされてる一方で、ダチョウの卵を使ったコンテストなんてのも行なわれていた。そんなのスーパーに売ってないだろ!

「10 Things You Don’t Know About」(ヒストリー)
ホストはヘンリー・ロリンズ。相変わらずいろんなことやってんなこの人。とあるテーマに関する10のトリビアを紹介していく内容で、今回はアメリカ大統領の暗殺に関するもの。安易に陰謀論などを語ったりはせず、ガーフィールドの死因(医者の不手際)とかを真面目に語っていく。大統領への暗殺未遂って意外と多く行なわれてるんですね。

「Idris Elba: King of Speed」(BBC)
これはBBCのiPlayerで視聴。イドリス・エルバことストリンガー・ベルが、車に対する情熱を語っていく全2回の番組。彼の故郷の東ロンドンから始まり、アメリカに渡ってローライダーに乗ったり、NASCARのサーキットを疾走したりする。彼がイギリス訛りで陽気に喋る姿ってなんか違和感があるが、「トップギア」並みの美しい撮影と車への愛情に満ちた内容になっている。