「THE FALL」鑑賞


BBCのさらなる暗い刑事ドラマで、主演は「Xファイル」のジリアン・アンダーソン。

舞台となるのは北アイルランドのベルファスト。若い女性が何者かに絞殺されるという事件が起き、数週間が経っても解決の糸口が見えなかったことから、ロンドンからギブソン警視(アンダーソン)が調査のために派遣されてくる。その一方で犯人である人物は心理カウンセラーを勤める1児のよき父親だったが、心に大きな闇を抱え、さらなる犠牲者を出そうとしていた…とかいうプロット。

古きは「第一容疑者」とか、最近では「刑事ジョン・ルーサー」とか「Broadchurch」などとイギリスの刑事ドラマは暗い内容のものが珍しくないのですが、これは俺が観てきたなかでも突出して暗いような。第1話では警察が捜査らしきことを殆ど行わないまま、犯人のドロドロとしたサイコっぷりが描かれ、そのまま犠牲者が出てしまうんですもの。まるで犯人が主人公のような扱いだったな。それを調査するべきギブソン警視は仏頂面で被害者のビデオとか見てるくらいだし、若い刑事に自分のホテルの部屋番号とか教えて、あんた何やってんの、という内容であった。さらにベルファストという政治的に微妙な土地柄も加わって暗さが増しているわけだが、今後はもっと警視と犯人の心理戦みたいなものを期待していいんでしょうか?

でもこれ何故か前評判が高くて、BBC2でも数年ぶりの高視聴率をたたき出したらしく、シリーズ2の製作が早くも決まったみたい。イギリス人の好みはよく分からんなあ。ジリアン・アンダーソンはアメリカだと「Hannibal」に出演してるみたいですが、今後は主演作であるこっちのほうに力を入れていくことになるのかな。

刑事ドラマならね、もうちょっと掴みとなるような要素が欲しかったと思う。

「UPSTREAM COLOR」鑑賞


タイムラインが最大9つも重なる複雑さでカルト的人気を誇る「プライマー」のシェーン・カルースによる、約9年ぶりの作品。話の仕組みについて語らないとどうにもならないので、以降はネタバレ注意。

まず冒頭に出てくるのは、特定の蘭に巣食う小さなイモムシ。このイモムシは人間の体内に入るとその人の精神を操る能力を持っていた。そしてその力を悪用した「泥棒」によって、クリスという女性が精神を乱され、貯金をすべて「泥棒」に奪われてしまう。そしてクリスは正気に返ったあとに体内のイモムシを取り出そうとするが失敗する。そんな彼女の前に現われたのが、自然のさまざまな音を録音し、養豚場を経営する「サンプラー」という男性だった。彼によってクリスのイモムシは取り除かれ、とある豚にそれが移植される。そして日常生活に戻ったクリスは、ジェフという男性と出会い、やがて彼と恋仲になる。しかしジェフもまた、イモムシに寄生された経験を持っていた。そしてクリスとジェフのあいだではやがて精神がつながり、お互いの記憶が共有されていく…というようなストーリー。

あらすじをとてもざっくり書くと一応こんな感じだが、劇中では登場人物の意図などは一切説明されず、抽象的なセリフとイメージの積み重ねがひたすら続く、かなり難解な内容になっている。そして「プライマー」同様にカルースはこの映画の内容について明確な解説をせず、ネット上では例によってさまざまな見解が飛び交っているみたい。いちど前知識なしに観たあとに、そうした見解や監督のインタビューを読んでから再度観るといろいろ細かい設定や手がかりに気づくかもしれないが、それでも話の全貌が明らかにされることは「プライマー」と同様に無いだろうな。

いちおう「蘭・ブタ・人間」というつながりがあり、それぞれに「蘭の採集者・サンプラー・泥棒」といった人たちが関わっていることは示唆されてて分かるのですが、それらが何を意味しているのかは明確に分からず。あと途中で出てきた不和なカップルは何だったんだろう。また豚とクリスのあいだに何かしらのつながりがあることは明白で、この世における自然の大きなサイクルと、そこからの離脱が作品の大きなテーマになっているみたい。こうした万物のつながりをテーマにし、CGを使わずに化学的な特殊効果映像を用いているあたりは「ザ・ファウンテン」に似ているかとも思いました。

クリスを演じるエイミー・セイメッツという女優さんはインディペンデント系作品でいろいろ活躍している人のようで、ティナ・フェイを丸顔にしたような美人。このあとHBOのシリーズや「THE KILLING」の新シーズンに登場するらしいので、今後さらにブレークしていくんじゃないかな。そしてジェフ役を演じるのはシェーン・カルース本人。カルースは出演と監督・脚本のほかにも撮影や音楽などもこなす多才ぶりを発揮しているのですが、その映像も音楽も大変素晴らしいのですよ。「プライマー」は16ミリで撮影したテキサスの暑い日ざしが印象的だったが、今回はおそらくデジタル撮影をしていて、フレアを効果的に使った非常に美しい映像になっている。また「プライマー」では聞き取りにくかった音声も今回ははっきりしていて、サンプラーが録音・作成する音も劇中で重要な意味を与えられていた。

十分に楽しむには内容が難解すぎるきらいはあるものの、今後もその内容について多くの解釈が論じられ、新たな発見がされていく作品になるんじゃないだろうか。サンダンスで話題になったものの大手配給会社を通さず、カルース自身が直接配給を手がけていくとのことなので日本での公開はどうなるか分からないが、観ておいて損はない作品じゃないですかね。またこの作品の前にカルースは「A Topiary」という作品を長年企画していて、費用の関係などで製作を断念しているのだが、その映像らしきものがこの作品に少しだけ挿入されていて、それが大変面白そうなのですよ。こっちも映画化してくれないかなあ。なお今年の夏には早くも新作の撮影にとりかかるそうなので、また10年近くも待たされることにはならないでしょう。

「JUDGE MINTY」鑑賞


なんか知らぬ間にとつぜん作られていた「ジャッジ・ドレッド」のファンフィルム。クレジットから察するに、非営利目的での利用を条件に、キャラクターの使用を「2000AD」側に認められたのかな?「2000AD」に掲載されたストーリーが原作になっているらしく、主人公はドレッドでなくミンティという初老のジャッジ。ドレッドも冒頭にちょっと出てきてます。

ミンティはメガシティ・ワンで長年にわたって法を裁いてきたジャッジだったが、年をとったことで判断力が衰えたことが明白になり、引退を勧告される。彼はアカデミーでの教職の座を断り、メガシティ・ワンの外の無法地帯「カースド・アース」に法をもたらすためにジャッジがそこを死ぬまで放浪する「ロング・ウォーク」に出ることを決意する。そしてジャッジたちに見送られてカーズド・アースに出たミンティだったが、さっそくミュータントの荒くれ者たちに身を狙われることになり…というプロット。

低予算の作品なので映像のクオリティとか小道具の出来とかに安っぽい感じもするのだけど、それを補ってありあまるくらいにファン精神にあふれ、細かく作り込まれた作品なのですよ。ローマスターバイクのデザインなんて過去の映像化のなかでいちばん原作に近いんじゃないだろうか。冒頭にはチョッパーも少し出てくるぞ。ただ最後のトカゲ(?)の設定がよく分からなかったので、詳しい方いたら教えてください。

カール・アーバン版の「ドレッド」のほうは興行成績があまり良くなかったために続編の製作は打ち切りになってしまったらしいが、こういう良質な作品を低予算で作ることができるのなら、今後はいろんなキャラクターをフィーチャーした短編を作る方向にシフトするのもありなんじゃないかと。「2000AD」の元の話はどれも比較的短いものばかりだし、無理して長編の話を作るよりも適合性があると思う。

「FAMILY TOOLS」鑑賞


ABCの新作シットコム。イギリスの「WHITE MAN VAN」なるコメディのリメークらしい。

トニーはリフォーム業務を営んでいたが心臓発作を起こしてダウンしてしまい、仕方なくボンクラ息子のジャックを呼び戻して家業を継がせることにする。何をやってもダメな人生を送っていたジャックは、これで親の信頼が得られると思い喜々として仕事に就くものの、物事はなかなか上手くいかず…というプロット。

ボンクラ息子が周囲に迷惑をかけまくる愉快なコメディかな、と思いきや口うるさい叔母とそのクソガキ、携帯で話してばっかりで仕事しない同僚、一家をバカにする隣人、さらには病院から復帰して仕事にケチをつける父親など、次から次へと不快な人物たちが登場する展開に驚く。ボンクラ息子がとつぜん一番まともな人間に見えてしまうのですもの。とはいえ主人公にボンクラゆえの魅力があるわけでもなく、視聴者が共感できるキャラクターが1人もいないというのは問題だろう。

親父のトニーを演じるのがJ.K.シモンズで、有名どころでは一家の隣人をアダム・アーキンが演じてるのだが、なんか才能の無駄遣いだよなあ。アーキンなんてテレビの監督業で引っ張りだこの人のはずなのに。あとホームセンターの店員役のダニエル・ニコレットという女優は結構キレイだな。

こんな時期に始まり、しかも13話製作の予定が10話に削られたそうなので、たぶんABCもあまり期待してないんじゃないかと。よっておそらく長続きはしないでしょう。J.K.シモンズは早く「The Legend of Korra」シーズン2に取りかかるように!

「アイアンマン3」鑑賞


3Dなんかで観てやんないですよーだ。
ネタバレにならない程度に感想をざっくり:

・パラマウントのロゴはいつまで出すんだ。
・いちばん不思議なのはクリスマスの時期を舞台にしていることで、「夏の大作だけど、冬の話でもいいよね?」と言って企画が通るものなんだろうか。
・皆が中国におべっか使ってるご時世に、中国人の悪役を起用するとは大胆な…と思ってたらマンダリンは中国人ではないのか。ならばなぜマンダリンという名前なんだろう。
・ガジェットに重きを置きがちだった「2」に対し、あくまでも生身のトニー・スタークに焦点をあてることで、話を新鮮にすることに成功しているかと。
・ただ敵のアジトに侵入するくだりなどは、90年代のコップムービー的というか、シェーン・ブラックは脚本使い回してない?とも思いました。
・最初から最後までマーク42のアーマーが大活躍なのですが、やっぱりデザインが好きになれんのだよな…。シルバー・センチュリオン型とかではいけなかったんだろうか。

いちおうマーヴェル映画の、アベンジャーズ後を描いた「フェーズ2」の第1弾となる作品だが、後に続くような伏線が張られていることもなく、前作に比べてもスッキリと楽しめる良作。「アイアンマン」シリーズに出るのはこれが最後だとダウニーJr.自身は仄めかしてるらしいが、「アベンジャーズ2」には何かしらの形で出演するだろうし、エンドクレジットに「TONY STARK WILL RETURN」とデカデカと書かれてたので、数年後には必然的にイケメンが主演するリブートが待ち受けているのでしょう。