「トゥルー・グリット」鑑賞


やはりコーエン兄弟はコメディでなく真面目な作品を撮ったほうがずっと面白いことを再確認。この時代にこの映画をリメークする意義はよく分からんが、変なギミックも無いストレートなウェスタンで大変楽しめたのでありますよ。「ノーカントリー」のように無慈悲で暗いシーンを描きつつ、会話のあちこちにドライなユーモアを混ぜる手腕も円熟さが感じられますね。父親を亡くして復讐の旅に出た娘が、やがて老保安官のなかに父親像を見いだす過程もさりげなく描かれていて巧いなあと。

演出だけでなく役者の演技もみな素晴らしく、特にジェフ・ブリッジスは「クレイジー・ハート」なんかよりもずっといい演技だったんじゃないの。腹の底から捻り出すような声での演技が実に渋い。話の要となるヘイリー・スタインフェルドも非常に良い。難点があるとすれば親の仇であるジョシュ・ブローリンの役が意外とヘタレであることか。バリー・ペッパー演じる悪役のほうが凄みがあったような。

これだけの作品なのに東京でも公開館が少ないのが惜しい。ウェスタン好きな人には観ることをおすすめします。

THE GOVERNATOR!


すごくカッコ悪い… シュワルツェネッガーってこの世で最も声優に向いてない俳優じゃないだろうか。ここ数十年まっとうな仕事をしてないスタン・リーが企画に絡んでるというのも不安を感じてしまう…。

「ブラック・スワン」鑑賞


ダーレン・アロノフスキーって「ファウンテン」や「レスラー」と続いてちょっとは明るい人になったかな?と思ってたのですが(あくまでも以前の作風に比べてだけど)、これは「レクイエム・フォー・ドリーム」の悪夢路線を踏襲する内容になっていた。

独特の雰囲気を持った非常によく出来た作品ではあるんだが、少女マンガを読んだり昼メロを観たあとにどっと疲れが出るのと同じで、観てていろいろしんどいところがある映画であった。「レクイエム」もしんどかったけど、あちらは最強の原作に支えられていたのに対し、こちらはやはり話が少女マンガの域を出ていないような。ドロドロした雰囲気はよく出ているので、そういうのが好きな人にはたまらんでしょうが、そういう人たちってアロノフスキーの映画は観ないよな。

役者はナタリー・ポートマンが文字通り体を張った演技を見せつけていて、アカデミー賞を穫ったのも納得できる。表情が硬いのは役のせいなので仕方ないけど、暗黒面に堕ちたさまをもう少し見たかった気もする。彼女と対照的なキャラを演じるミラ・キュニスは奔放でいい感じ。どの映画でも同じような役を演じている気もするけどね。個人的にいちばん良かったのはバレエのコーチを演じるヴァンサン・カッセルで、高圧的なエロ親父の役がハマりすぎ。ウィノナ・ライダーは「スター・トレック」並みのチョイ役だったので何とも言えんな。むしろ主人公の母親を演じるバーバラ・ハーシーのほうがずっと怖い女性を演じていた。

しかしどうもうまく説明できないんだが、今までのアロノフスキーの作品と比べて何かが足りない気がするのは何故だろう?主人公がその役柄ゆえに観る人も拒絶して感情移入させてくれないせいなのかな、あるいはクリント・マンセルの音楽がチャイコフスキーの「白鳥の湖」に遠慮してるせいか?ここはぜひ女性の感想を聞いてみたいところです。

「TREME」鑑賞


TREMEと書いて「トレメ」と読む。「トリーム」じゃないよ。

「ザ・ワイヤー」においてボルチモアの困窮を鋭く描いたデビッド・サイモンによる新たなシリーズで、舞台となるのはハリケーン・カトリーナに襲われてから3ヶ月後のニューオリンズのトレメ地域。水害により住人たちは苦しい生活を余儀なくされていた。それでも従来の暮らしを取り戻そうと、少しずつ街を再建していこうとするのだが…というような内容で、その日暮らしのトロンボーン奏者やその元妻、避難先から戻ってきたマルディグラ・インディアンのチーフ、「洪水は人災だ!」と激高する大学教授、反体制的なDJといったさまざまな登場人物の生活が交差していくさまが描かれていく。

出演する役者は「ザ・ワイヤー」のウェンデル・ピアースやクラーク・ピーターズをはじめ、カンディ・アレキサンダーやメリッサ・レオといったサイモンの過去の作品に出てた人たちのほか、ジョン・グッドマンやスティーブ・ザーンといった有名どころも顔を連ねている。またニューオリンズの音楽シーンが多分に描かれているだけあって、エルビス・コステロやドクター・ジョンといったミュージシャンもカメオ出演するみたいだ。

第1話を観た限りでは、「ザ・ワイヤー」よりも弱冠ストーリーが明るくて小ぢんまりしてる感じかな。もちろんここから話がいろいろ発展してくのでしょうが、字幕が無いと相変わらずスラングとかが聞き取りづらいので、いずれDVDのボックスセットがでたらまとめて観ようかな。

しかし昨年放送が始まったときは「外国での物語」としか考えてなかったけど、こないだの震災を経験したあとでは、災害から立ち直ろうとする人々の姿を観ると複雑な気分になってしまうなあ。むろん被害の規模はケタ違いなんだけど、この番組のキャッチコピー「WON’T BOW, DON’T KNOW HOW(屈したりはしない、やり方も知らない)」はいまの我々にも通じるものがあるわけで、いずれ東北の被災地も立ち直ってテレビドラマとかが撮影されるようになって欲しいところです。

「ザ・ファイター」鑑賞


雑記的な感想をいくつか。マーク・ウォールバーグって他の主演映画を観れば分かるように1人できちんと映画を支えられるほどの技量を持った人ではないけれど、今回はクリスチャン・ベールとメリッサ・レオの怪演がそれを十分に補っていることで楽しめる映画になっている。むしろ役者としてのカリスマのなさが、兄と母のエゴに翻弄される主人公の役に今回はうまくはまっている感じか。

一方のクリスチャン・ベールは以前にも何度も減量して痩せ男を演じているので今回の役作りはそんなに驚くほどでもないが、むしろ後頭部にちゃんとハゲをつくっているところにプロの根性を感じましたよ。ただしあまりにも外見的な役作りのインパクトが強いため、いつ画面に出てきてもそれは「痩せたクリスチャン・ベール」であって「ディッキー・エクランド」には見えないのが残念。彼は実在の人物を演じるのには向いてないタイプなのかもしれない。彼らの母親を演じるメリッサ・レオは、ジョン・ウォーターズの映画に出てきそうな格好で、同じ姿の娘たちを何人も引き連れて歩く姿が圧巻。それに比べるとエイミー・アダムスが至極まっとうな人物に見えてしまうせいか、レオがアカデミー賞穫ったことは理解できるものの、アダムスがノミネートされたのはちょっとどうなんだろうとも思ったな。

実際の話を追った脚本はうまく随所にクライマックスを練りこんで退屈させない出来になっているものの、主人公たちの目指すものがいまいち分かりにくいところが難点。主人公がマイナーな試合に勝って小銭を稼ぎたいのか、世界的なボクサーを目指してるのかが読みにくいというか。また肝心のボクシングの試合はパンチの音がみんな同じに聞こえるし、最後のクライマックスでスローモーションになるタイミングもなんかずれていたような?すべてのボクシング映画が「レイジング・ブル」のようにスタイリッシュであるべきでもないだろうが、試合中のボクサーの心境をもっと映し出しても良かったんじゃないかと。

とまあいろいろ書いたけど、ベールの怪演はやはり見ものだし、欠点はあるけれど悪くはない映画ですかね。