「HARVEY BIRDMAN, ATTORNEY AT LAW」

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カートゥーン・ネットワークの15分アニメ「HARVEY BIRDMAN, ATTORNEY AT LAW」のシーズン1をDVDで観る。 数年前にカートゥーン・ネットワークは深夜帯に日本のアニメや「フューチャラマ」や「FAMILY GUY」といった他局のアニメ、およびオリジナルのアニメで編成された「ADULT SWIM」という大人向け(エロに非ず)の番組枠を設けてみたわけだが、これが大ヒットしてジェイ・レノやデビッド・レターマンのトークショーに匹敵するくらいの視聴率を稼ぎだし、ちょっとした社会現象になってしまった。

「HARVEY BIRDMAN」はそのオリジナル・アニメの1つで、他にも「THE BRAK SHOW」「SPACE GHOST COAST TO COAST」「SEALAB 2021」などが製作されている。これらの作品の特徴はハンナ・バーベラの昔のマイナーなアニメを今風にアレンジして使っているところで、例えば「SEALAB 2021」は70年代のアニメ「SEALAB 2020」のパロディだし、「HARVEY BIRDMAN」も「BIRDMAN AND THE GALAXY TRIO」というアニメの主人公を流用しているが、内容とか設定はまったく別物。ヒーローだったはずの主人公ハーヴェイ・バードマンは現在なぜか法律事務所で弁護士として働いていて、才能はゼロに等しいものの、訴訟されたキャラクターたちのために裁判で熱弁をふるうのだった…というのが各エピソードの大まかなパターン。

とにかくギャグがシュール。ひたすらシュール。突然キャラクターが踊りだしたり、ビルから落ちたりするし、ストーリーと何の脈絡もなくピエロが現れて風船人形を作ってそのまま消えたりする。よく考えて作ってんだかどうか実に分からないアニメなのだ。しかもバードマンのところにやってくる顧客はハンナ・バーベラ作品の常連たちで、みんな変にパロディ化されているのが最高に笑える。例えばフレッド・フリントストーンはマフィアのボスだし、シャギーとスクービーはマリファナ所持の疑いで逮捕されるし、スーパーフレンズのアパッチ・チーフは熱いコーヒーを股間にこぼして「巨大化できなくなった!」と駆け込んでくるし…。日本でもCMとか同人誌なら「グレたタラちゃん」とか「風俗にハマったのび太」くらいのパロディはありそうだけど、実際にシリーズ化してしまうところがすごい。よくハンナ・バーベラも許可したよなあ。ちなみにあるエピソードに「SHOYU WEENIES」という日本人のポップグループが登場して、ちゃんと(カタコトの)日本語で吹替えがされてるんだけど、これって何か元ネタはあるんでしょうか。

よっぽど予算が少ないのか、アニメのクオリティはとってもショボいのだけど、逆にそのチープさが話の内容とマッチして、実に何ともいえない雰囲気を醸し出している。そうかと思えば突然実写になって着ぐるみのバードマンが登場したりと、変なところで凝ってるのもナイス。「ADULT SWIM」の視聴者はラリッた学生が大半だという話を聞いたことがあるけど、確かにビール片手に何も考えずにダラーッと見るのには最適な、脱力感に溢れた怪作になっている。

あと「ADULT SWIM」のオリジナル・アニメには、ミートボールとミルクシェイクとフレンチフライが主人公の「AQUA TEEN HUNGER FORCE」があるけど、これはあまりにも内容がシュールすぎてついてけませんでした。こんなのが大ヒットしてるっていうんだから、アメリカのアニメ事情は侮りがたい。

「THE DAILY SHOW with Jon Stewart」

通称「真実を伝えるウソのニュース番組」。コメディ専門チャンネルの「コメディ・セントラル」で放送されているニュース番組…ということはつまりコメディ番組なのだけど、最新のニュースを分かりやすく説明したうえで痛烈に風刺するスタイルが人気を呼び「普通のニュース局よりもためになる」とまで言われるようになった番組。以前はクレイグ・キルボーンが司会をキャスターを務めていたが、1999年にジョン・スチュワートに代わってから人気がグングン上がっていくようになった。 番組の形式はまず最新のニュースをスチュワートが伝えることから始まり、話題の政治家や芸能人のクリップに彼が絶妙なツッコミを入れて徹底的に風刺していく。また他局のニュース報道もよくコケにして、特に極右で知られるフォックス・ニュースなんかは格好のえじきにされているようだ。それから世界各地の“特派員”たち(本当はスタジオのブルースクリーンの前にいるだけ)とのやりとりが行われ、ここでも政治や芸能、宗教といった幅広いネタが風刺されていく。政治家のウソやメディアの偽善に鋭くツッコミながらジョークを入れるスタイルは、観てて爆笑するとともに胸をスカッとさせてくれる。真面目なニュース局と異なり、あくまでもコメディという立場をとっている「デイリーショー」のほうが、変に信用性とか確実性にこだわらずに事の真相を突くことができるというのはちょっと皮肉。

番組の後半にはゲストが登場してスチュワートと談話するのだけど、このゲストが実に多様で、ハリウッドの芸能人をはじめポール・クルーグマンのような学者やコリン・パウエル、ジョン・ケリー、はてはビル・クリントンといった政治家たちまでがやって来て興味深い話を聞かせてくれる。ここで感心するのは、元来コメディアンであるスチュワートがきちんと政治や経済情勢について下調べをしてきて、ゲストの専門的な話にもちゃんとついていっているところ。彼の明晰さはかなりのものがあり、特にCNNの討論番組に出演して司会者2人と真っ当に議論したことは語り草になっている。俗っぽいニュース番組でおざなりの司会をやってる日本の漫才師たちとはケタが違うのだよ。

番組では民主党も共和党も関係なくコケにするものの、そのスタイルは明らかにリベラル寄り。これは観客も同様で、ブッシュ批判のジョークが決まると大きな歓声を上げたりする。日本ではいまだに「電波の公共性」なんて唱えて放送内容の公平さを求める人がいるけど、放送局なんて結局は視聴者よりもスポンサーや政治家の顔色しかうかがってないんだから、むしろどの局も政治色・スポンサー色をハッキリと打ち出し、視聴者に腹の内を見せたほうがいいんじゃないでしょうか。まあアメリカでも地上波ネットワークでは報道の縛りがキツいのかもしれないが。

この番組の面白さをうまく文章で説明できなくて申し訳ないが、このサイトに過去のクリップがいろいろ置かれているので、興味があれば観てみてください。

ちなみにテーマ曲「火のついた犬(DOG ON FIRE)」はボブ・モールドが作曲で演奏がゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツという、ちょっと意外な組み合わせによる軽快な曲になっている。

寒い

この前はうだるくらいに暑かったのに、数日前に雨が降ってからはやけに寒い日が続いている。 長袖の服なんかはもうカバンに詰めてしまったので、仕方なく捨てる予定だった服を毎日着て寒さをしのいでいる。

これで日本に帰ったら極端に暑くなりそうでイヤだなあ。

「ARRESTED DEVELOPMENT」

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現在放送されているシットコムのなかではダントツに面白いシリーズ。その斬新なストーリーテリングの手法により、もはや従来のシットコムの枠を飛び出したと言ってもいいくらいの傑作になっている。 物語の中心となるのは、カルフォルニアに住むブルース一家。家長であるジョージが営む不動産企業の収入により一家は気楽な暮らしを送っていたものの、ある日汚職の容疑でジョージが逮捕され、一家の資産は凍結されてしまう。おかげで今までろくに働いたこともない一家の面々は大混乱に陥ってしまい、家族のなかで唯一の常識人である次男のマイケル(ジェイソン・ベイトマン)はどうにか家業を復興させようと努力するが…というのがシリーズの大まかな設定。

とにかくこの家族が一癖も二癖もある連中ばかりで、刑務所の中から自己啓蒙のビデオを発売する父親や見栄っ張りの母親をはじめ、売れない手品師でセグウェイを乗り回す長男ジョブや、過保護に育てられたために人前ではパニックを起こす三男バスター、マイケルの双子の妹でチャリティ運動に生半可に手を出すリンゼー(「アリーmyラブ」のポーシャ・デ・ロッシ)、リンゼーのマヌケな夫のトバイアス、リンゼーとトバイアスの娘でおませなメイビー、マイケルの息子でいとこのメイビーに恋心を抱くジョージ・マイケルたちが巻き起こす騒動がとにかく抱腹絶倒ものなのだ。また準レギュラーとしてヘンリー・ウィンクラーやライザ・ミネリが登場したり、ベン・スティラーやヘザー・グラハムといった豪華な面々もゲスト出演をして話に華を添えている。そしてプロデューサーでもあるロン・ハワードが飄々としたナレーションを担当して、それなりにややこしいストーリーをうまく取りまとめている。

疑似ドキュメンタリーの手法を使い、ラフトラックもないまま進行中のストーリーに過去の「記録映像」がいろいろ挿入され、ナレーションとテロップも使って細かいシュールなネタがこれでもかといわんばかりにバンバン視聴者に投げられるさまは、まるで黄金期の「シンプソンズ」(第6シーズンあたり)を観ているよう。「シンプソンズ」がアニメでやれたことを、実写で行っているのには感心せずにいられない。製作者のインタビューによると、「従来のシットコムはシーン数が8つくらいで、「サインフェルド」の約30シーンというのは革命的だった。でも「ARRESTED DEVELOPMENT」は60シーンくらい使ってる」だとか。それに他のシットコムが触れない時事ネタも平気で使い、イラクでの捕虜虐待なんかも風刺してしまってるのが立派。第2シーズンではジョージの双子の弟が登場したり、バスターが片手をオットセイに噛み切られたりと、ストーリーがさらに暴走していったのが面白いのなんのって。

その練り込まれた脚本が批評家に受け、第1シーズンにしてエミー賞を獲得するという快挙を遂げたものの、従来のコメディ番組とは違い過ぎるスタイルと、それまでのエピソードを観てないと十分に話が理解できないことが災いして視聴率は決して高くない。おかげで打ち切りのウワサが常に絶えないシリーズだけど、このたび無事に第3シーズンの製作が決定された。次シーズンはどこまで話が無茶苦茶になるのか、今から待ち遠しい。

「バットマン・ビギンズ」鑑賞

本日公開の「バットマン・ビギンズ」をさっそく観てくる。入場料がちょと高いIMAXに行けば混んでないかな、と思ってたら何とほぼ満席状態。広いIMAXシアターが人で溢れてる光景はなかなか壮大ですね。映画の開始時、バカでかいスクリーンにDCの新ロゴが映し出されたのにも感動。 そして作品の内容は、もう最高。コミックに比べて人物設定などが多少違ってるものの、原作の本質的な要素をうまく取り出して昇華することに成功した傑作となっている。

内容は「バットマンの成り立ち」を扱ったものなので、最初の1時間くらいは主人公ブルース・ウェインの幼少時代や修行の光景が描かれる。バットマンのアクションを冒頭から期待してると肩すかしをくらうかもしれないが、いかにブルースが悪と戦うことを決意したかということと、この作品のテーマである「恐怖の克服」についてが深く語られ、観ててどんどん話に引き込まれていく。極端な話、この映画ってアクション以上に人間ドラマの方が面白かったりするのだ。

主演のクリスチャン・ベールは今までの誰よりもブルース・ウェインを的確に演じきり、バットマンとしてゴッサム・シティから悪を追放しようとする熱意がよく伝わってくる。リーアム・ニーソン演じるヘンリ・デュカードってコミックだとゴルゴ13みたいな孤独なヒットマンなのに対し、この作品ではブルースを鍛える師匠のような役割になっている。そして彼のボスである渡辺謙もなかなかミステリアスな雰囲気があっていい。でもやはり英語が出来ないと、今後の海外での活躍の支障になるかな。彼の演じるラーズ・アル・グールはもっとも原作とかけ離れたキャラクターになってるが、あまり詳しくは説明しません。

他にもモーガン・フリーマンやゲイリー・オールドマン、トム・ウィルキンソンにルトガー・ハウアー御大と、実に渋いオヤジたちが次々と登場してストーリーを盛り上げている。特筆すべきはマイケル・ケインで、他の役者を圧倒するような存在感をもって執事のアルフレッド役を好演。すました演技から真剣な演技まで何でもござれといった感じで、この人の巧さにあらためて感心してしまった。

一方若者ではキリアン・マーフィーが悪役スケアクロウとして登場。公開前は「何故スケアクロウみたいな比較的マイナーな悪役が出るんだ?」と思ってたけど、恐怖ガスをまき散らすという彼の戦法が、前述した「恐怖の克服」にうまく結びついていて納得。やられ方はカッコ悪いけど。紅一点のケイティ・ホームズも、抑え気味の演技でもってブルースの幼なじみを好演している。

悪名高いシューマッカー版バットマンのみならず、世間では比較的高い評価を得ているティム・バートン版のバットマンも監督の趣味が出過ぎてるようで個人的には好きではなかったんだが、「バットマン・ビギンズ」はもう、これこそがバットマンだ!という感じで非常に楽しい。製作者が原作の魅力をちゃんと理解し、アクション大作だからって変に家族向け映画にせず、シリアスな作品にしたことに拍手を送りたい。ちなみにミスター・ザズがちょろっと出てたり、「バットマン:イヤー・ワン」そっくりな展開があったりと、原作のファンならニヤリとするようなシーンもあります。

あえて不満を挙げるとすれば、前述したように人間ドラマに比べるとアクションの部分がどうしても凡庸に見えてしまうことかな。特にバットモービルでのカーチェイスはやり過ぎかと。あんな目立つ車で逃走しようとするのは無理があると思うんだが…。バットマンにはオフビートなアクションが似合うと思うけど、まあ大作映画なんだし仕方ないか。

とにかく観て損はない映画。THE DARK KNIGHT HAS RETURNED!!