MOORE SLAMS V FOR VENDETTA MOVIE

主演のナタリー・ポートマンがスキンヘッド姿でカンヌに現れたことで、知名度がグンと上がった感のある「V FOR VENDETTA」だが、原作者のアラン・ムーアが映画の脚本を批判してるらしい。全体主義下のイギリスが舞台の作品なのに、例によってイギリスのことなんか何も知らないハリウッドの連中がトンチンカンな設定を創作しているんだとか。あと製作のジョエル・シルバーが勝手に自分の名前を挙げて宣伝に使ったのにもムカついてるらしい。
ムーアが人の悪口を言うのは決して珍しいことではないが、今までは自分の作品が映画化されても「俺には関係ねーや」的な態度で通してきた彼が、脚本を批判するのは異例のことだ。映画化は大丈夫なんだろうか…? ムーアの作品でも「リーグ・オブ・レジェンド」こと「LEAGUE OF EXTRAORDINARY GENTLEMEN」なんかは原作通りに映画化することは出来っこないと最初から腹をくくっていたので、ジェームズ・ロビンソンがどんなアレンジを加えるかな、という見方ができて結構楽しめた(たぶん、「ウォッチメン」もこんな感じになるだろう)けど、「V」は努力すれば原作通りに映画化できる作品だと思うので、ぜひウォシャウスキー兄弟たちには頑張ってほしい。本当はBBCあたりがミニ・シリーズ化するのが一番いいとは思うけど。
前にも何度か書いたが、どうも過大評価されてる感のある「ウォッチメン」よりも「V」の方が個人的には優れていると思う。初めて読んだ時には、アナーキズムを扱った作品の内容に大きな衝撃をうけたものだ(ムーアのアナーキズム観については、オニオンのインタビューが非常に面白い)。

ちなみにこれに関連して、DCの指図に嫌気がさしたムーアは「EXTRAORDINARY GENTLEMEN」の第3シリーズをDC傘下のワイルドストームではなく、別の出版社から出すことにしたとか。ムーアがDCを徹底的に嫌ってることは周知の事実だったので、こういうことが起きるのは時間の問題だったのかもしれない。しかし「EXTRAORDINARY GENTLEMEN」って第2シリーズの最後でチームが解散(うち2人は死亡)してるんだけど、第3シリーズはどんな展開になるんだろう???

更新停止の予告

カナダで映画ばっかり観てのんびり暮らしてるのはいいんだけれども、いずれは日本に帰ってサラリーマン暮らしを再開せねばなるまい、ということで来月の23日に帰国のフライトを予約しました。 帰国したら職探しやら部屋探しなどで相当ゴタゴタすると思うので、当ブログは不特定期間停止することになるでしょう。実家暮らしではロクにネットに接続できない環境になると思うので、当ブログに対するコメント等ありましたら、今のうちに書いておいてくださいませ。

トロントにいられるのもあと1ヵ月か…。

フライシャー版「スーパーマン」鑑賞

アメコミ・アニメの金字塔として名高い、フライシャー・スタジオ製作のカートゥーン「スーパーマン」全17エピソードをDVDで観る。 これは1941年に製作された古典的シリーズであり、当時としては破格の1話あたり10万ドルという製作費をもって作られたエピソードの数々は、21世紀になってから観ても十分に面白い。公開時はテレビじゃなく劇場で放映したんじゃないかな?
1エピソード10分という短い時間ながら、「あれは鳥か?飛行機か?」というおなじみのフレーズから始まり、最後に「スーパーマン、悪人を逮捕する」といった新聞記事の見出しで終わるまでがスリルとアクションに満ちていて楽しい。マッド・サイエンティストやハイテク強盗団、あるいは自然災害といった様々な脅威にさらされる人々を見て、「これはスーパーマンの出番だな」という決めゼリフとともにスーパーマンに着替えるクラーク・ケントや、特ダネを追うためにいつも危険にさらされるロイス・レーンなどの描写も非常にいい感じ。戦時中に作られた作品ということで、丸メガネに出っ歯の日本人が悪役として登場するのはご愛嬌。

アニメーションの出来も60年以上も前に作られたとは思えないほど滑らかで、口しか動かないような日本の紙芝居アニメとは大違いだ。最近では3次元アニメが主流になってしまって、天下のディズニーも2次元アニメ映画の製作をとりやめたようだけど、人間の微妙な表情なんかは2次元アニメのほうがまだまだ優れてると思うんだよなあ。人物の影を効果的に使ったショットとか、黒煙を吐く船の煙突が火山にオーバーラップする場面転換のシーンなんかはとても斬新に感じられる。あと宮崎駿が「ラピュタ」とかに転用した飛行ロボットをはじめ、メカのデザインがずいぶんカッコいいのもこの作品の特徴か。

せっかくのDVDとはいえ何の特典も付いておらず、映像や音声のクオリティもあまりよくないのは残念だが、歴史的にとても貴重な作品だろう。

「MARIA FULL OF GRACE」鑑賞

昨年いろいろ話題を呼んだ「MARIA FULL OF GRACE」こと「そして、ひと粒のひかり」をDVDで観る。何すか、この邦題は? 麻薬を詰めた袋を胃の中に何十個も入れ、コロンビアからアメリカへ密輸する「ドラッグ・ミュール」つまり「麻薬ラバ」となるティーンの女の子の物語で、内容は決して明るくない。というかひたすら暗い。

主人公のマリアはコロンビアの町工場で働く少女だが、ろくでもない彼氏のおかげで妊娠してしまう。貧しい家の出身である彼女は妊娠したことを家族に告げることもできず、お金を得るためにドラッグ・ミュールとなってアメリカへ麻薬を運ぶ仕事を引き受けるのだが…。というのが主なストーリー。当然ながら怖そうなお兄さんたちもいろいろ出てきて、麻薬が税関で見つかれば逮捕・麻薬の運送に失敗すれば家族が殺される・麻薬の袋が胃の中で破裂すれば即死、という極限の状態に置かれた少女の姿が淡々と映し出されていく。誤って体外に出た袋をまた飲み込む、なんてシーンもあります。

主演のカタリーナ・サンディノ・モレノはこれが映画デビュー作にしてアカデミー主演女優賞にノミネートされるほどの評価を得たわけだが、ニューヨークに1人でやってきて、右も左も分からない状態で不安感に苛まれながらも、どうにか道を切り開いていこうとする女性を好演している。監督/脚本のジョシュア・マーストンもこれが実質的なデビュー作であり、今後もこの2人の活躍が期待される。

こないだニューヨークに行ったとき「相変わらず皆がスペイン語しゃべってんなあ…」と思ったけど、そうした人々はこの映画の登場人物のような、貧しいがために故郷を捨ててアメリカにやってきた、という人が大半なんだろう。少しショッキングなラストも含めて、いろいろ考えさせられる映画だった。