「Parade’s End」鑑賞


今をときめくベネディクト・カンバーバッチ主演の、BBCとHBOが共同製作したミニシリーズ。ということは当然HBOでも放送されるんだろうが、こういうイギリスの時代物の番組ってアメリカのどこらへんの視聴者層が観るんだろうね。「ダウントン・アビー」などがヒットしてるので需要があることは分かるんだが。フォード・マドックス・フォード(って誰だ)の4部作の小説が原作で、脚本はトム・ストッパード。冒頭で物語の時系列が前後するあたりは、ストッパードらしいと言えるのかしらん。

舞台となるのは20世紀初頭。主人公のクリストファー・ティージェンスは裕福な名家の出身で才能ある公務員だったが、自由奔放なシルヴィアという女性と情事を持ったために彼女が妊娠し、嫌々ながらも結婚する羽目になる。その後もシルヴィアは家事や育児を放ったらかして他の男性との不倫を平然と行い、クリストファーの鬱憤は募るばかり。そんなとき彼は女性運動に関わるヴァレンティンという若き女性と出会い、彼女に惹かれていくのだが…というようなプロット。

頭脳明晰なシャーロック・ホームズとはうってかわって、2人の女性のあいだでオロオロする男をカンバーバチが好演。彼を手玉にとるシルヴィアをレベッカ・ホールが演じているんだが、どことなくスカーレット・ヨハンソンに似ていてビッチな演技がよく似合ってる(要するにスカヨハがビッチということです)。あとは主人公の友人をスティーヴン・グレアムが演じてるけど、あの人は役にとけ込むのが上手すぎてすぐに彼だと分からないんだよな。

今後は主人公が第1次世界大戦に出征したりして派手な展開があるようなのですが、第1話は優柔不断な展開が続くメロドラマといった感じであまり好きにはなれなかったよ。カンバーバッチはこういう他の番組出る前に、まず「Sherlock」を撮り終えようよ!

XTCの知られざる名曲たち

8月ももうすぐ終わりだが夏休み特集ということで、俺が愛してやまないイギリスの老舗バンド、XTCのアルバム未収録曲を(ほぼ)リリース順に紹介していくのだよ。XTCはシングルB面やホームデモにも名曲がたくさんあるバンドで、古くは「BEESWAX」や「Rag and Bone Buffet」、最近では「Coat of Many Cupboards」などと未発表曲を集めたコンピレーション・アルバムも出されているものの、それにも収録されてない曲やバージョン違いのデモとかがあって、なかなかコレクター泣かせのバンドなんだよね。そんな中でも個人的に好きなのは以下の通り:
Hang on to the Night

まだキーボードにバリー・アンドリューズがいたころの曲。この頃のサイケなXTCに影響を受けたバンドって沢山いると思う。1:30あたりのキーボードソロが好きです。

2枚目のアルバム「GO 2」のときはダブのミックスを加えたボーナスアルバムやアンディのソロアルバムなども出てるのだが、あれらは出来が良くないので割愛。

The Somnambulist

4枚目のアルバム「ブラック・シー」からの比較的異色なB面曲。彼らはB面にいろいろ実験的な曲を詰め込んでいた。この頃は後に「Homo Safari」としてまとめられる一連のインスト曲もB面に入れてたけど、あれらはあまり好きではないです。

Tissue Tigers (The Arguers)

大ヒットしたシングル「Senses Working Overtime」のB面に収録されてた曲。へたなバンドのA面シングルよりも名曲だろ。

Blame the Weather

同上。コリン・ムールディングの哀愁あるボーカルが渋いね。

Desert Island

6枚目のアルバム「ママー」はフォーク調で地味なので見過ごされることも多いが、俺は好きだ。この頃の曲では「Toys」もお勧め。

The Troubles

透明ビニールを使っていた12インチ版「The Meeting Place」のB面曲。プロデュースされてないホームデモなのにこのクオリティ。歌詞も結構好きです。

ちなみに8枚目のアルバム「スカイラーキング」は「ディア・ゴッド」というB面曲がアメリカで何故か大ヒットして、彼の国ではXTCの代表曲のように扱われてるのですが、あれあまり良い曲でもないよねえ。

Everything

「オレンジズ&レモンズ」の頃のデモ曲。ファンクラブ限定のカセットテープで俺が最初に聴いたのと、上の動画のものは弱冠バージョンが違うような気がする。

Cherry In Your Tree

XTC最後の名曲だと俺が勝手に思っている曲。PCゲームのイメージアルバムという変な媒体で発表されたもので、彼らの公式なアルバムには収録されてないんじゃないかな?

他にもお勧めしたい曲はたくさんあるのですが、かつてはレコード屋を探索したり通販で取り寄せてた曲も最近ではYoutubeなどで一発で検索できるようになったので、興味がある方はいろいろお探しあれ。最後におまけでアンディによるロックンロールの歴史を:

「ザ・レイド」鑑賞


あまり良く知られてないインドネシア映画「ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~」の監督(ウェールズ人)&主演(東南アジアの格闘技シラットの達人)のコンビによる新たなアクション映画。

ストーリーは極めて単純で、ジャカルタの麻薬王とその部下たちが住むスラム街のビルに、彼らの撲滅を計画した機動隊の一隊が奇襲を試みるものの、鉄壁の守りを誇るゴロツキたちの前に彼らのことがバレてしまい、逆に狩られる身になってしまう。そして機動隊の隊員は1人また1人と殺されていき、どうにか生き残った主人公とその仲間たちはビルからの決死の脱出を図るのだが…というようなプロット。

最初の30分くらいは機動隊とゴロツキどもの銃撃戦がメインで、血と肉が飛び散るFPSゲームばりのアサルトライフルによるガンファイトが繰り広げられるぞ。そして機動隊員の数が減り、彼らの弾薬が尽きたところでゴロツキたちも都合よく銃を使わなくなるんだが、そこから先は主人公を中心としたシラットによる肉弾戦が続き、壁を破り床を突き抜けるバトルが堪能できる。当然ながらワイヤーアクションなどは皆無だし、カンフー映画に比べて技がコンパクト(肘打ち・ヒザ蹴りが多い)なものの、主人公の動きがハンパじゃないうえにカメラワークも巧みで拍手したくなるくらいに見事な格闘を見せてくれるぞ。主人公に負けじと機動隊の隊長も熱い戦いをするんだが、あの役者は柔道の選手だったのか。

なおラスボス的な人(すんごく強い)は「タイガーキッド」で準ラスボスみたいな役を演じてた人で(エレベーターの人)、またお前と戦うのかよ!といった感じでしたが、ああいうアクションが出来る人が少ないんだろうね。実生活ではシラットのインストラクターやってる大ベテランらしい。

麻薬王の登場シーンが「白いランニング着てラーメン食ってる」というのはどうもカッコ悪いし、ビルの中に主人公の○○がいるというのは都合良すぎる気もするけど、細かいことは考えずにひたすら続くアクションを楽しみましょう。あと「タイガーキッド」もそうだったけど、敵はたくさんいるのにみんな1人ずつ襲ってくる展開が多かったかな。1人対複数のバトルの演出が今後のさらなる課題かもしれない。

インドネシアはおろかアメリカでもヒットを記録し、続編やアメリカ版のリメークの製作も企画されているとのことで、バイオレンス描写がOKな人は観ておいて損しない作品でしょう。

「Animal Practice」鑑賞


NBCがオリンピック閉会式の中継を中断してまで放送した新シットコム。やっていいことと悪いことがあるだろうにねえ。

ジョージは敏腕な獣医だが無愛想で、人間よりも動物が好きという人物。今日もペットのドクター・リゾというサルを引き連れて動物病院の診察を行っていた彼だが、元恋人のドロシーが彼のもとを訪れる。ドロシーの祖母は病院のオーナーであり、彼女が他界したことでドロシーが病院の運営を引き継ぐことになったのだ。こうして動物たちと元恋人たちの微妙な関係の生活が始まり…というようなプロット。

主人公を演じるジャスティン・カークって「WEEDS」とかに出てた人か。あと出演作がどうも長続きしないタイラー・ラビンなども共演してるぞ。さらにヤマモトというアジア人のキャラクターがいるんだけど、主人公にコキ使われてオドオドしてるというカッコ悪い役。番組のクリエーターの1人は日系人なんだから、もっとステレオタイプを破ったアジア人を登場させればよかったのに。ちなみにドクター・リゾを演じるサルって、imdbにもエントリーがあるような売れっ子のサルだったのか!俺よりいい稼ぎを得てるんだろうな。

動物の生活スタイルになぞらえてジョージの恋愛観とか人生観がいろいろ描かれていくんだけど、こんなシットコムが10年くらい前になかったっけ?犬を飼ってる男たちが主人公の番組。あれも短命で終わったよな。動物のネタでずっと引っ張っていくのは難しいだろう。

あと人嫌いの主人公と病院のオーナーの微妙な関係というのは「HOUSE」に似てるかも。2人の恋愛に関する真面目なシーンがあったりする一方で、シットコムと呼ぶにはコメディのシーンが少ないような?最近のシットコムって単純に笑えるドタバタの割合が減ってきたような気が個人的にするのですが、これってシングルカメラのスタイルが主流になってきたことと関係してきてるのだろうか。

ドラマとして観れば決して悪い作品ではないのですが、オリンピックの中継を止めてでも放送するような番組ではないな。

「Dragons: Riders of Berk」鑑賞


かの名作「ヒックとドラゴン」のTVシリーズ版。劇場版のTVシリーズ化、特にアニメーション作品の場合は予算の都合でかなりショボいものになるんじゃないかと危惧してたんだが、意外とよく出来た内容になっていた。

劇場版の続きを追った内容になっていて、バイキングとドラゴンたちが共存するようになったものの、どうしても生じてしまう両者の軋轢とか、武具作りが不要になった鍛冶屋の話とか、なかなか巧いところに焦点をあてたストーリーも面白い。シリーズになって脇役キャラたちが活躍する時間ができた結果、主人公のヒックとトゥース(特に後者)の影が薄くなってしまったのはご愛嬌。また新キャラとしては「シンプソンズ」のバーンズ社長みたいなドラゴン嫌いのガンコ爺さんが登場したほか、今後は他の部族のバイキングたちも登場するのかな?

ジェラルド・バトラーやジョナ・ヒルなど一部の役者を除けば劇場版と同じ声優が起用されているほか、CGの出来もかなり良かった。表情の表現などが劇場版ほど凝ってない気がするものの、TVシリーズでここまで出来れば十分でしょう。

劇場版がほぼ完璧な終わり方をしていただけに、蛇足といえば蛇足のようなシリーズではあるのだけど、これくらいの出来なら劇場版観てない人でも楽しめるんじゃないですかね。あとは再来年に公開されるという劇場版の続編の出来も優れていることを願うばかりです。

YouTubeで最初の2話が公開されてるぞ: