「ディストピア パンドラの少女」鑑賞


原題は「The Girl with All the Gifts」で日本では7月公開。これマイク・ケアリーの小説が原作なのですね。ケアリーといえばコミックのライターとしてDC/ヴァーティゴの「ルシファー」のストーリーを担当してたり、ファンのあいだでは評価の低いポール・ジェンキンズのあとを継いで「ヘルブレイザー」を担当して人気を復活させたという人だが、俺はそんなに作品を読んだことがないかな。以降はネタバレ注意。

舞台となるのは近未来。謎の真菌類が世界中に蔓延し、それに感染した人々はゾンビ化して生身の人間の肉を喰らう怪物となっていた。生き残った少数の人間は軍事基地に避難してゾンビの侵攻に耐えていたが、ゾンビ化した母親から生まれた子供たちは、人肉への食欲を持ちながらも、高い知性と学習能力を備えていることが判明し、彼らを用いてゾンビ化に対するワクチンの研究が進められていた。子供たちの中でも特に高い知性を示した少女メラニーは教師のヘレンと仲良くなるものの、基地がゾンビたちによって陥落。メラニーとヘレンはワクチンを研究していた博士や数人の兵士とともに基地を脱出し、他の基地に合流しようとゾンビたちの蔓延するイギリス本土を旅することになるのだった…というあらすじ。

劇中のゾンビたちは「ゾンビ」ではなく「ハングリーズ」と呼ばれ、通常はじっと立った休眠状態でいるものの、匂いや音に過敏に反応し、人肉(動物もあり)を嗅ぎつけると全速力で追いかけてくるという存在。アリに寄生して行動を変化させる実在の真菌類をモデルにしてるのかな?彼らに噛まれると当然自分もハングリーズになります。

話の中心となる少女メラニーは第2世代のハングリーズとして人肉への渇望を抱きつつ、ヘレン先生たちを安全地帯へ導こうとする存在だが、彼女を研究対象とみなす博士や、彼女を怪物扱いする兵士たちとの葛藤が道中で描かれていく。イギリス作品のせいか、アクション中心のゾンビ映画というよりも、「28日後…」みたいなアートシネマっぽい描写もあり。

メラニーを演じるのは新人のセニア・ナヌマで、ヘレン先生をジェマ・アータートンがノーメイクで演じてます。兵士たちのリーダー役がパディ・コンシダインで、基本的に彼が出ている作品はハズレがないですな。あと観るまで知らなかったのだが、博士役にグレン・クローズ。今になって彼女をイギリスのゾンビ映画で見かけるとは思わなかったけど、体をはった熱演をしていて、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」よりもずっといい役でした。

監督のコーム・マッカーシーはテレビ番組のを監督を多数手がけてきた人で、これが初の劇場作品だとか。チェルノブイリの上空をドローンで空撮した映像を荒廃したロンドンの光景に使用したりと、大変な低予算作品ながらもいろいろ効果的なショットが用いられています。終盤のBTタワーとか非常に良かったですね。

非常に革新的というわけではないものの、ゾンビ映画に新しい観点を加えた良作。SF映画としても楽しめるし、ゾンビ作品に食傷気味の人でも楽しめる作品ではないでしょうか。

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