「ブラックベリー」鑑賞

昨年高い評価を得ていたカナダの映画。日本ではいつ公開されるのかと思っていたらしれっと配信スルーになっていた。しかし評判通り面白かったので感想をざっと。

舞台は2000年代初頭のカナダ。アグレッシブなセールスマンのジム・バルジリーは勤めていた会社をクビになったあと、以前にピッチを受けたリサーチ・イン・モーション(RIM)社の携帯端末に出資してRIMの共同CEOの座に就く。RIMはCEOのマイク・ラザリディスを筆頭に気弱なオタク開発者だらけの会社だったが、バルジリーに尻を叩かれてセールスに力を入れていく。そしてラザリディスの開発した端末のモデルがベライゾンに気に入られ、これがスマートフォンの元祖であるBlackberryとなって大成功し、RIMは瞬く間に大企業へと成長する。その後はPALM社による買収の試みやネットワークのクラッシュといった危機を乗り越えるものの、アップルがiPhoneを発表したことでBlackberryの人気はダダ下りになり…というあらすじ。

今でこそiPhoneやAndroidといったスマートフォンを皆が使ってるけど、当時はPALMとかのPDA端末(死語)がいろいろ開発されてたのよな。Blackberryはろくに日本に導入されてなくて、外国の金持ちが使ってる高級デバイスという印象だった覚えが。劇中では端末開発の描写はあまりなくて、RIM社はBlackberryのよってあっという間に成功し、iPhoneの登場によってすぐさま廃れていく。起死回生を試みるような展開もなく、自国の会社の没落を描いた映画に政府が資金を出しているのがカナダらしいのかな。これがアメリカや日本だったらもっとサクセスストーリーっぽい内容にしていたかもしれない。

失敗した企業の話なので面白くないかというとそんなことはなくて、RIM社のドタバタを描いたテンポが良いので非常に楽しめる内容になっている。特にキャスティングが絶妙で、技術開発の能力はあるものの気弱なマイク・ラザリディスを演じるのがジェイ・バルチェル。カナダに留まってハリウッドに出てこないのでどうも地味な感じもある役者だけど、「ヒックとドラゴン」シリーズや「俺たち喧嘩スケーター」などヒット率は高い人だよな。そしてジム・バルジリーを演じるのがグレン・ハワートン。シットコム「It’s Always Sunny in Philadelphia」の人かー。今回はハゲ頭になって、常にピリピリして周囲を罵倒しつつ裏ではNHLのチーム買収を画策する狡猾なビジネスマンを熱演していて非常に素晴らしい。またラザリディスの相棒で、ビジネスセンスが皆無でオタク趣味に走りまくってる開発者が出てくるのだけど、それを今作の監督であるマット・ジョンソンが演じている。あとはカナダ映画だからかマイケル・アイアンサイドも出ているし、ケイリー・エルウィスやマーティン・ドノヴァンなんかも出演している。

本国では好評を受けて3分割したミニシリーズとして配信もされたそうだけど、追加された映像は15分ほどらしいので劇場版を観ても大差はないでしょう。企業の内情を描いた映画なら、ベン・アフレックの「AIR」なんぞよりもずっと面白い作品だった。