ジョージ・クルーニーのハワイのやつじゃないよ、HBOとBBCが共同製作した、クリストファー・ゲストの新シリーズだよ。ゲストの作品なので当然のごとくモキュメンタリーのスタイルで撮られたコメディ。
交通事故の過失を調査する仕事をしているトムは、姉とともに久々に父親の家を訪れたところ、彼の大叔母にあたる女性が亡くなったことを父親から伝えられる。そして大叔母は一家に伝わる品々が入った箱をトムに遺しており、その中で彼は自分の祖先らしき人物の古い写真を発見し、彼が誰であったかを調べようとするのでした…というプロット。
主人公のトムが自分の親族に関わるいろんな事実を発見していく、というコンセプトの番組で、やがて海を渡ってアメリカに行ったりするらしい。いろいろエキセントリックな人たちが出てきて笑えるところは笑えるんだけど、小市民のペーソスみたいなものが根底にあって、トムは自分の先祖が偉大な人かもしれないという期待が裏切られてばかりだし、彼の父親はろくに動作もしない発明品に凝っている有様で、姉のビーにいたっては心の鬱憤をうまく吐き出すことができず、腹話術を使って猿の人形に罵詈雑言を言わせる癖をもった女性だったりする。
ゲストが監督した映画「みんなのうた」でも男女ふたりの儚い名声とその後の生活の描写がとても哀しかったけど、どこか精神的に脆い人々をバカにするわけでもなく、賛美するわけでもなく、絶妙なスタンスで描いているのがクリストファー・ゲスト作品の巧いところですかね。エンドクレジットで流れるロン・セクスミスのオリジナルソングも異様にメランコリックでいいぞ。
トムを演じるのは「IT CROWD」のクリス・オダウド。他にもゲスト作品の常連としてマイケル・マッキーンやフレッド・ウィラード、さらにゲスト本人が出てくるほか、エド・ベイグリー・Jr.とかケビン・ポラック、エイミー・セイメッツなどが出演しているらしい。あとビーを演じるニナ・コンティって本当に腹話術で有名なコメディアンで、猿の人形も彼女のスタンダップ芸からの拝借らしい。
批評家の評判は良いものの、HBOで放送されたときはかなり視聴率が低かったらしく第1シーズンで打ち切りではないかとの憶測が飛び交っているようだけど、良い作品だと思うのでもうちょっと世に知られて欲しいところです。