「Fortitude」鑑賞

Fortitude
「LOW WINTER SUN」(イギリス版の方な)のクリエーターによる、英スカイ発のTVシリーズ。アメリカではPivotとかいう謎のネットワークで放送されてるみたい。

舞台となるのはノルウェーの北極圏にある小さな町フォーティチュード。さまざまな人種の住民が暮らすその町では誰もが職をもち、盗みや殺人もなく静かに暮らしているはずだったが、裏では暗い謎めいた思惑が蠢いていた…というような設定で、登場人物がかなり多かったりする。ざっと紹介すると:

・海辺で何者かがホッキョクグマに襲われるなか、それを傍観していた(らしい)保安官。
・その保安官の同僚で、肝臓ガンで余命わずかの老人。
・謎の病気によって昏倒し、数日後に突然目覚める少年。およびその両親。
・その少年に奇妙な治療を施す医者。
・護身用のライフルも持たずに、雪原をどこかに向かって歩いていたロシア人と黒人。
・廃れていく炭鉱業に代わって、観光業に力を入れようとする町長。
・凍ったマンモスの遺骸を発見する2人の炭坑夫。
・マンモスの死骸を売りつけられる学者。彼はそのあと死体となって発見される。
・その学者を殺した容疑をかけられる新参の学者。
・殺人事件の調査のために、あまりにも早いタイミングでロンドンから派遣されたアメリカ人の警視。

などなど。彼らはなにかしら暗い秘密を抱えていることが示唆され、主役っぽい扱いの保安官や警視が実はかなり怪しげな振る舞いをしていたりする。小さな町の殺人事件を扱ったTVシリーズは少なくないが、「ファーゴ」ほどのブラックジョークはなく、「ツイン・ピークス」ほどオカルトっぽくはなく(それらしきシーンはある)、「ブロードチャーチ」ほどストレートな刑事ものではない感じ。ヨーロッパの番組だからか「THE RETURNED」に雰囲気が似ている気がしたな。

地上波ネットワークの番組ではないがキャストはやけに豪華で、スタンリー・トゥッチにマイケル・ガンボン、クリストファー・エクレストンに「Call the Midwife」のジェシカ・レインなどなど。エクレストンってアメリカで「The Leftovers」撮影してなかったっけ。今後はどれだけ出演するのかな。あとは音楽も印象的な使われ方をしていて、担当のベン・フロストって来日もしてる有名なミュージシャンなの?

話の展開が今後どうなるかはてんで予想もつかないのですが、雰囲気の盛り上げ方などはかなり優れた作品だと思う。とりあえずこの後もチェックしてみます。

Milestone Media再始動?

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久しぶりにアメコミの話をば。

今週のワシントン・ポスト紙に「マイルストーン・メディアが再び活動するよ」みたいな記事が載っていて、アメコミ業界でちょっと話題になったわけですが、このマイルストーン・メディア(別名マイルストーン・コミックス)というのは1993年に立ち上げられたアメコミの出版社でして、当時のアメコミ業界ってかなりバブルだったものですから、イメージ・コミックスを筆頭に、ヴァリアント・コミックスとかダークホース・コミックスが次々とスーパーヒーローもののコミックを打ち出し、独自のユニバースを構築していたわけですな。

そしてマイルストーンもそんな新興出版社の1つだったわけですが、彼らの特色は黒人のクリエーターたちが集まって「有色人種のスーパーヒーローたち」を創造したことで、よって各タイトルの主役はみんな黒人。スーパーマンのアナローグであるアイコンや、アイアンマンに似たハードウェア、スーパーパワーを持ったギャングであるブラッド・シンジケート、電気を自在に操る少年のスタティックを主役とした4つのタイトルが創刊され、あとからアジア人が主役でアラン・ムーア御大も褒めたという「XOMBI」や白人が主役の「コバルト」などが加わわり、架空の都市「ダコタ」(実在のダコタとは異なる)を舞台にストーリーを展開していったんだよな。
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登場人物の肌の色を的確に表現するために独自のカラーリング方法を起用し、現実の黒人社会の犯罪問題などを反映させた内容は、「Grim and Gritty」と呼ばれる暗くて暴力的なヒーローたちが「リアル」な存在として流行っていた当時においてはちょっと異質で、個人的には好きだったのです(もちろんマイルストーンの作品もGrim and Grittyの影響を多分に受けているのだが)。

中でも俺の好みは「スタティック」で、スタティックことヴァージル少年は内気ながらも気のいい少年で、パブリック・エネミーとかが好きで、白人(ユダヤ系)のガールフレンドがいて、普通のティーンの目線で街のチンピラたちと戦っていく姿がとても斬新だったわけですね。それまでのティーンのヒーローって、大人のヒーローに鍛えられたエリートみたいな連中が殆どだったから。
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今となっては意外に聞こえるかもしれないが、90年代のアメコミってまだまだ保守的なところがあって、マーベルのノーススターが92年にゲイであることを「カミングアウト」してものすごい論議が巻き起こったりしてたわけなんですね。そんななかで白人のガールフレンドがいる黒人とか、ゲイのキャラクター(ブラッド・シンジケートに一人いた)とかを登場させたマイルストーンって、他社の暴力的なヒーローよりもずっと革新的だったと思う。

またジョン・ポール・レオンやハンベルト・ラモス、JH・ウィリアムス3世といった現在でも活躍してるアーティストが、まだ新人のときにマイルストーンの作品を担当していたことも特筆されるべきだろう。

ただしそのコンセプトゆえか、あるいはDCコミックス(当時は古くさい会社という印象を持たれていた)に販売委託をしていたせいか、他社の派手な作品に比べると業界紙とかでの扱いも低かったような気がする。そしてDCユニバースとのクロスオーバー・イベントも行なわれたものの人気はぱっとせず、アメコミ業界のバブルの収縮にともなって、他社と同じように3〜4年ですべてのタイトルは打ち切りとなってしまった。日本でも「あんなの映画『マルコムX』に便乗してるだけでしょ」なんて言った奴もいたな。

でもキャラクターの権利の管理はちゃんと行なわれていて、「スタティック」は「スタティック・ショック」という名前でアニメ化されたし、2000年代後半にはDCユニバースに吸収される形でキャラクターが「ティーン・タイタンズ」なんかに登場したんだよな。フレイザー・アーイングがアートを担当した2011年の「XOMBI」なんて本当に面白い作品だったのに、DCがろくにサポートしなかったせいか6話で打ち切られたのが残念。
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そして冒頭の記事に戻りますと、マイルストーンの創設者であるレジー・ハドリン(「ジャンゴ 繋がれざる者」のプロデューサーな)やデニス・コーワンなんかが集まって、またマイルストーンのキャラクターたちを復活させようね、と話し合ったというもの。まだ具体的な作品などが発表されてないので何とも言えないが、今年のコミコンで発表があるのかな?

過去のスタッフではアニメの脚本とかも書いててキャリア的に絶好調だったドウェイン・マクダフィーや、「スタティック」のライターだったロバート・ワシントン3世が数年前に若くして亡くなっているのが惜しまれるが、90年代に比べるとアメコミの世界はずっと多様性が広がっていて、いろんな人種やセクシャリティや宗教のキャラクターが活躍しているわけですね(売れ行きが苦戦したのもあるけど)。そういう意味ではいまマイルストーンが復活すればより多くの読者を獲得できるのではないかと、往年のファンとしては期待してしまうのです。

「The Nightly Show with Larry Wilmore」鑑賞

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昨年末に終了した「コルベアー・レポー」の後番組で、ホストを務めるのは「デイリーショー」の「黒人特派員」ことラリー・ウィルモア。日本では知られてない人ですがハリウッドで「The PJs」や「The Bernie Mac Show」などをヒットさせた、プロデューサー兼ライター兼コメディアンというマルチタレントなのですよ。

当初は「コルベアー・レポー」にあやかって「Minority Report」(レポーなのかレポートなのかは知らない)という番組名になると発表されてたのだけど、やはり映画の「マイノリティ・レポート」と紛らわしいということで今の名前に落ち着いたらしい(ちなみにあっちもTVシリーズになるみたいね)。

初回を観た限りでは、前半が時事ネタに関するモノローグで、後半が「特派員」やゲストを招いてのパネルディスカッションという形になるみたい。ゲストにはタリブ・クウェリや議員のコーリー・ブッカーなんかが登場していた。パネルディスカッションという点ではビル・マーの番組に雰囲気が似てるかな?ウルトラ保守というキャラクターを演じていたコルベアーに対し、ウィルモアはもっと普通のホストといった感じ。飄々として毒を吐くスタイルは「デイリーショー」のときから変わってませんね。

マイノリティに焦点をあてた話が続くため日本人にはとっつきにくい内容になるかもしれないけど、最近のアメリカでは黒人がホストを務めるトークショーがことごとく打ち切りの目に遭っているので、コメディ・セントラルという(比較的)マイナーなチャンネルであっても長続きして欲しいところです。毎日がお祭りのようだった「コルベアー・レポー」を超える番組になるかは分かりませんが、俺は見続けます。

「12 Monkeys」鑑賞

12 Monkeys, Season 1
Syfyチャンネルの新シリーズで、テリー・ギリアムが監督した1996年の映画のTVシリーズ版。ただしギリアムはこっちには何も関わってないみたい。

大まかな設定は劇場版と同じで、近い未来において何者かが放ったウィルスによって人類の大部分は死滅し、2043年には地球上の文明は崩壊していた。残った人間たちは使える道具などを漁って暮らしていたが、過去に人を送り込むことができる装置を発見する。そこで彼らはジェームズ・コールという男性を2015年に送り返し、ウィリスを散布したと思われる科学者を抹殺するよう彼に命じるのだったが…というようなプロット。

劇場版とはキャラクターの名前が少し違っていて、コールが過去で出会う女性科学者がキャスリンでなくカサンドラになっているのは劇場版でカサンドラ・コンプレックスが言及されてたことに由来するんだろうな。またブラッド・ピットが演じてたメンタルな人の役は女性が演じることになるみたい。

また劇場版でコールを過去に送る科学者たちは冷酷で人間味の無い存在として描かれていたが、こちらではもっとコールに協力的になっている。過去と未来の行き来も比較的容易にできるようだし、いずれコールが1970年代に行くことも示唆されてるので、コールが時空を股に冒険する「タイムマシーンにお願い」みたいな内容になるのかなあ。

Syfyの番組としてはまあ悪い出来ではないと思うのだけど、「12モンキーズ」の看板を抱えているとどうしても劇場版と比べてしまうのよ。あちら(およびその元になった「ラ・ジュテ」)は時間を超えた愛と死というペーソスが根本にあったのに対し、こちらは単なるSF番組になっているというか。というわけでこの番組の内容に興味をもった人はまず劇場版を鑑賞しましょう。ギリアムの新作「ゼロの未来」もやっとこさ5月に公開されるよ!

「Marvel’s Agent Carter,」鑑賞

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「エージェント・オブ・シールド」に続く、マーベル・コミックスのTVシリーズ第二弾な。

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のスピンオフ的な番組で、主人公はあの映画でヒロイン役だったペギー・カーター。キャプテン・アメリカが海の藻くずと消え、戦争が終わったあと、彼女はシールドの前身組織であるSSR(Strategic Scientific Reserve)のエージェントとして働くのだが、まだ女性の社会進出が珍しかった時代において男性の同僚たちには相手にされない状況であった。そんななか、ハワード・スタークが開発していた秘密兵器が闇市場に流出したという情報が入り、カーターは同僚たちを差し置いて単独で調査をはじめるのだが、謎の組織による陰謀が彼女を待ち受けていた…というような展開。

カーターを演じるのは劇場版と同じくヘイリー・アトウェル。ハワード・スタークも引き続きドミニク・クーパーが演じているけどすぐに海外に去ってしまうのでレギュラー出演はしないみたい。代わりにスターク家の執事であるエドウィン・ジャービスが彼女の補佐につき、いい感じの凸凹コンビを構成している。あとは「アイアンマン2」で言及されてたアントン・ヴァンコが登場したりと、マーベル映画とのつながりがいろいろ出てくるようだ。映画とTVシリーズを連結させたユニバースっていずれ整合性が破綻すると個人的には考えてるのだけど、これは1940年代が舞台ということもあり比較的自由に話が進められるんじゃないかな?ジャービスとアイアンマンのJARVISの関係とか、シールド創設の話とかがいずれ語られるのかも。あと「ウインターソルジャー」だとカーターは結婚したことになってたんだっけ?まあ海に沈んだ童貞男のために操を守り続けるわけにもいかないだろうから、ロマンスなども描かれるのでしょう。

気になるのはSSRの他のエージェントたちで、一人を除いて皆がカーターを露骨に差別し、お茶汲み係程度にした扱ってない始末。そんな彼らを尻目にカーターがさっさと事件を解決してくさまは見てて楽しいんだが、他のエージェントたちは無能すぎるんじゃないの。しかも政府の組織なのにあまり給料が良くないのか、カーターは一人暮らしせずにルームメイトと同居してるのだが、仕事の内容が内容だけに悪党が家までやってきてルームメイトが殺されてしまうという展開。エージェントに安全な家くらい与えろよ。ハイドラに乗っ取られたシールドの脇の甘さはSSRの時代から続いていたのだな。

40年代のアメリカのセットもよく出来てるし(グリーンスクリーンだけどね)、女性が活躍するライトな冒険活劇としては十分に楽しめる内容かと。第1話では『ザ・ファースト・アベンジャー』の映像がずいぶん使い回されてたが、キャップの知名度に頼らなくてもすぐに独自の人気を集めるようになるんじゃないかな。