「シン・シティ 復讐の女神」鑑賞

Frank Miller's Sin City_ A Dame to Kill For
9年ぶりの続編。以前から公表されていた通り、原作のうち「A DAME TO KILL FOR」を主軸に置いたもので、語られる話は4つ。前作と異なりうち2つは映画版オリジナルの脚本となっている。セグメント順に説明すると:

「Just Another Saturday Night」
1話読み切りのやつが原作。タイトル前のちょっとした短編ですね。マーヴを演じるのは前作に続いてミッキー・ローク。

「The Long Bad Night (Part I)」
映画オリジナルの話。というか出版されなかった原作の話を使ってるのかな?ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるギャンブラーが街にやってきて、悪徳政治家に賭けを挑む。抜群の賭けのセンスを持つギャンブラーはカッコいいんだけど…。

「A Dame to Kill For」
これがメインの話。ドワイトを演じるのはクライヴ・オーウェンに代わってジョシュ・ブローリン(いちおうオーウェンにも打診はしてたらしい)。まあ原作通りの話かな。前作の「The Big Fat Kill」の前日譚だけどコンテュニュイティーがちょっと変なのは気にしないように。

「The Long Bad Night (Part II)」
メインの話をブックエンドするような形で続きが語られる。パート1ではカッコよかったギャンブラーがどんどんヘタレになっていくような…。終り方もしっくりこないのよな。

「Nancy’s Last Dance」
前作の「That Yellow Bastard」の続編。ハーティガン刑事の仇をとるために、復讐計画を企てるナンシーの話。殴り込みに加担するマーヴが強すぎるのと、ナンシーを演じるジェシカ・アルバのアクションの演技がなっちゃいないので、なんか長過ぎる蛇足のような話であることは否めない。

ミッキー・ロークやジェシカ・アルバ、ブルース・ウィリスなどは前作に引き続き同じ役を演じているが、9年のあいだに鬼籍に入った人もいるので(マイケル・クラーク・ダンカンとか)、一部の役はキャストが変更になっている。デボン青木が演じてたミホはジェイミー・チャンが演じてるが、あの能面顔はデボン青木のほうが似合ってましたね。強大な黒幕のウォレンキストをステイシー・キーチが演じてるが、あんなコテコテのメークを施したのなら誰が演じても同じだったろうに。なおジェシカ・アルバが相変わらず脱がないストリッパーを演じているのに対し、「DAME」役のエヴァ・グリーンはすっぽんぽんで頑張ってます。あとはクリストファー・ロイドとかロザリオ・ドーンとか、キャストは豪華なのよキャストは。

結末を知らない映画オリジナルの話のほうが楽しめるかと思ってたけど、脚本がなんか拙いのよな。最初の短編はテンポがよくて面白かったものの、後半になるとかなり失速してしまっているような。単純に原作の「Family Values」(珍作「To Hell And Back」は忘れよう)あたりを映像化すれば良かったのに。そうするとドワイトづくめになるから外したのだろうか。

ビジュアル的にはカッコいいし、皆のオーバーすぎる演技もそれはそれで似合ってるんだが、どうも全体的に盛り上がりに欠けているんだよな。いちおう3部作にする予定らしいけど、本作が興行的に失敗だったので続きは作られないかも。個人的に好きな「Family Values」が映像化されてないのがちょっと残念。

「SIMPSORAMA」鑑賞

THE SIMPSONS Meets ÒFuturamaÓ in a Special Crossover Episode!
過去に2〜3回打ち切られた「フューチュラマ」がまた帰ってきた!

といっても残念ながらシリーズがまた始まる訳ではなく、これは「シンプソンズ」におけるクロスオーバー的エピソード。「シンプソンズ」はこないだ「ファミリー・ガイ」ともクロスオーバーをやったのでギミックにばかり頼ってんなあ、という気はするもののプラネット・エクスプレスの面々がまた拝めるのは嬉しいこってす。

雷雨の夜にシンプソンズ家に現われた侵入者、それは31世紀からやってきたベンダーだった。ビール好きなことで彼とすぐに意気投合するホーマーだったが、実はベンダーの指名はホーマーを殺すことだった。しかしベンダーはそれに従えず、代わりにリーラやフライたちが過去にやってくる。実は31世紀のニュー・ニューヨークはホーマーのDNAを持った怪物たちに占領されており、壊滅状態なのだという。その原因を調べることにしたシンプソン一家とプラネット・エクスプレスのクルーたちだったが、怪物たちがタイムマシンを破壊したことで今度は皆が31世紀に行ってしまい…というプロット。

まあ「シンプソンズ」の黄金期(3〜8シーズンあたり)に比べるとジョークの密度も薄くなってて、ネタもベタになってはいるんだけど、記念すべきエピソードとして大目に見てあげましょう。「フューチュラマ」の主要キャストはみんな出演していて、ファンズワース教授とプロフェッサー・フリンクのマッドサイエンティストのコンビとか、通常はハロウィン回にしか登場しないカングとコドスがオミクロン星の大王様に出会ったりと、クロスオーバー回ならではの貴重なシーンが出てくるぞ。あとはバーンズ所長とマムの面会シーンとかがあれば完璧だったかな。フライの忠犬シーモアとか、「30世紀フォックス」のロゴなんていう小ネタも見逃せない。

実のところフォックスは「シンプゾンズ」をそろそろ終了させて、「フューチュラマ」をまた復活させるべきだと勝手に考えてるのだが…ダメですかね?

「TO BE TAKEI」鑑賞

To Be Takei
第二次大戦中は日系人の強制収容所で育ち、60年代に「スター・トレック」のスールー役として世界の人気者になり、そして2000年代になってからカミングアウトしてゲイのアイコンとなり、77歳にしてSNSで膨大なフォロワーを誇るという実は唯一無二の人生を送ってきたジョージ・タケイについてのドキュメンタリー。

旦那であるブラッド・アルトマンとの睦まじい夫婦(夫夫?)仲を紹介しながら、彼の生い立ちが語られていくもので、東京生まれでアメリカにやってきた父と、アメリカ生まれだが人種で隔離された学校を避けて日本で教育を受けた母とのあいだに生まれたジョージは、第二次大戦の勃発により一家の家財がアメリカ政府に没収され、カリフォルニアからアーカンソーの強制収容所に運びこまれ、終戦までそこで暮らすこととなる。ここらへんは日本人にとっても興味深い証言じゃないかな。

そして終戦後に解放された一家はカリフォルニアに戻り、父は中華料理屋の皿洗いから始めて再び家庭を支えることになる。青年になったジョージは当時から男性に興味があったわけだが、ここらへんのセクシャリティの目覚めについては結構フランクに語ってるのね。さらに彼は演技にも興味を持って役者を目指すのだが、最初にやった仕事は「空の大怪獣ラドン」のアメリカ版吹替の声優だったのか!それからテレビ番組の脇役としてあちこちに出演するようになり、やがて「スター・トレック」のスールー役を演じて世界的に名が知られるようになる。ジョン・チョウやBD・ウォンといったアジア系の役者が彼の影響についてコメントしてるけど、確かにアジア人の役者って当時少なかったからね。おれが初めて「スター・トレック」を観た80年代半ば当時でも、そんなにいなかったんじゃないのか。

役者の仕事のほかにも、博愛主義者だった父親の影響を受けて政治活動に関わるようになり、強制収容された日系人たちへの補償を求める運動も積極的に行なうようになる。そしてクリントン大統領に任命されて日米友好基金の理事をつとめ、日本政府からは旭日小綬章を授与されるのだが、式典に出るために東京へ行ったら、ブラッドが男性であるために式典への同席を拒否されたという話が明かされる。意外なところで日本の差別意識が指摘されたというか。

役者としての活動に影響が出ることを恐れ、長い間カミングアウトすることを控えていたものの(でも「トレック」のキャストにはバレてたし、当時からハリウッドにもハッテン場があったらしい)、シュワルツネッガーが知事として同性婚を認める法案を拒否したことに憤激してカミングアウトを決意し、それ以降はゲイの人権擁護のためにも積極的に活動。またハワード・スターンのラジオ番組の準レギュラーに起用されたことでさらなるファンを獲得し、Facebookを通じて数多くの人々と交流するさまが紹介されていく。

自由奔放なジョージと、良い人なんだけど心配性でカメラを常に気にしているブラッドのかけあいが漫才コンビのようで微笑ましい。その人柄から本当に多くの人たちに愛されているのが明らかで、コミコンとかに出ても大勢のオタクどもにあちこちで歓迎されているのがよく分かる。なおコミコンでウィル・ウィートンと再会したときに「太ったね」と言ったらウィートンが露骨に落ち込むシーンが出てくるのだが、どう見てもあいつ太ったからなあ…。

まあ自分の生い立ちや活動については以前からインタビューなどで積極的に語っていたし、ファンにとっては目新しい内容ではないものの、彼の経歴を紹介する意味では格好のドキュメンタリーではないでしょうか。いま日本のテレビでは「海外で活躍する日本人」をとりあげるのが流行ってるみたいだけど、彼も取り上げればいいのに。ジョージ・タケイほど世界で愛されてる日系人はそういないよ!

「TOO MANY COOKS」鑑賞


なんかアダルト・スイムが、インフォマーシャルばっかり流してる朝4時にとつぜん放送した動画らしいが…70年代のシットコムのオープニングの無邪気なパロディかと思いきや、だんだん変な方向に向かっていって、ついでに刑事ものやSF番組ものパロディになって、人がどんどん惨殺されるという…。グロとナンセンスはアダルト・スイムのお家芸ではあるのだが、何の告知もなしにしれっと放送してしまうセンスがいいな。12分と少し長めだが、観てるうちにちょっとラリってくるので周りに人がいないときに観るのをおすすめします。高画質版はこちら

「Life Itself」鑑賞


昨年亡くなった映画評論家ロジャー・イバート(エバート)の伝記ドキュメンタリー。晩年に執筆した同名の自伝を基にしたもので、映画論などよりも人としてのイバートに焦点をあてた内容になっている。

若い頃からジャーナリズムに興味のあったイバートは、大学卒業後に地元イリノイの新聞社シカゴ・サン=タイムズに雇われ、そこで映画批評の記事を書いて若いうちから頭角を示していく。イバートのナレーションや知人たちへのインタビューによって当時のことが語られていくのだが、なぜ彼が突然ラス・メイヤーの映画に共感し、カルト映画「ワイルド・パーティー」の脚本を書くことになったのかについては、未だに知人たちが当惑しているのが興味深い(「おっぱいだよ!」という明確な説明もされるのだが)。

そして1975年には映画評論家として初めてピュリツァー賞を受賞し、それからライバル新聞社の評論家であるジーン・シスケルと組んで「Two Thumbs Up!」で有名な映画番組「At The Movies With Gene Siskel & Roger Ebert」を製作してお茶の間の人気者になっていく。シスケルとは長年のパートナーでありながら、性格的にも映画の好みも正反対で、番組の挨拶を撮影するのも口喧嘩して何度も撮り直ししてるのが印象的であった。番組は全国規模のものになりながらも、自分が気に入った作品は公開館が少ないものでもきちんと紹介し、若手作家たちの映画もイバートはきちんとチェックしていた。また無名時代のマーティン・スコセッシをきちんと評価し、彼が有名になったあとでも評価できない作品(「ハスラー2」)についてはしっかり酷評したとスコセッシ自身が語っている。

なお冒頭から晩年の彼の入院シーンで始まり、彼の健康状態が決して良いものでないことが明確にされているわけだが、ガンによって下あごの骨を摘出し、顔の下半分はただブラリと顔に垂れ下がり、苦痛で顔を真っ赤にして看護婦から気管の吸引を受けている姿などは実に痛々しい。すべてをさらけ出したいというイバートの意向によりリハビリの光景なども撮影されており、奥さんがとにかく献身的で偉いんですよ。しかしガンが転移していることを知り、「このドキュメンタリーの完成を目にすることはないだろう」と悟ったように語るシーンが物悲しかった。声を失ってからもtwitterなどでは精力的な書き込みをしており、大統領選挙などについても的確なコメントをしてたのだけど、その裏では苦しい闘病生活をしていたのだなあ。

観ることによって新しいことを発見できるようなドキュメンタリーではないものの、ロジャー・イバートという芯の通った映画評論家がいたんだよ、ということを後世に伝えるものとしては最良の作品でしょう。