「From Dusk Till Dawn: The Series」鑑賞


ロバート・ロドリゲスが立ち上げたヒスパニック向けケーブル局「El Rey」初のオリジナルシリーズだそうな。ロドリゲスが監督した1996年の同名映画のシリーズ化だけど、こないだの「ザ・ファーム」といいこんどの「ファーゴ」といい、90年代の映画のTVシリーズ化が最近顕著なのは何なんだ?オリジナルを劇場で観たアラフォー世代あたりを狙ってるのか?でも20年近く前の映画の内容なんてあまり憶えてないよう。

いわゆる名義貸し的な作品かと思いきやロドリゲスがガチで絡んでいて、第1話の脚本と監督を担当していた。文字通り夕暮れから明け方までの半日を舞台にしていた劇場版をシリーズ化しているために当然ながら話がものすごく引き延ばされていて、第1話では例のナイトクラブなどは登場せず、その前の酒店におけるゲッコー兄弟と保安官とのスタンドオフがみっちりと展開されていく。

いちおう吸血鬼らしき存在も出てくるものの、内容は完全なガンアクション。気になるのはゲッコー兄弟が平気で人を殺すサイコパスとして描かれているところで、極めて不快。あれを主役にしてしまうのは無理があるのでは。むしろ彼らに復讐を誓う若き保安官が主役扱いになるのかな?ゲッコー兄弟も保安官も比較的無名の役者が演じているが、第1話にはドン・ジョンソンがゲスト出演していたほか、ロバート・パトリックがこのあと登場してくるみたい。

劇場版を知ってると展開がたるい気がするのは否めないが、出来はそんなに悪くないかと。しかし本当にどうやって話を引き延ばしていくのだろう?

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」鑑賞


コーエン兄弟の新作。5月に日本公開されるらしいので、ネタバレにならない程度に感想をざっと。

1961年の冬の1週間を舞台に、売れないフォークシンガーであるルーウィン・デイヴィスの放浪のさまを描いたもので、ルーウィンはセッションに声がかかる程度のミュージシャンではあるものの出したレコードは売れず、家もないので知人のところに転々として泊まり、金やタバコをせびっている始末。ミュージシャンのとしての熱意も消え失せ、以前やっていた船員の仕事に戻ろうかとも考えているくせに、妥協してCMソングを演奏することも渋っているような彼が、仕事を求めてニューヨークのイーストビレッジからシカゴまで旅するのだが…というような話。

これは決して「夢見て努力するミュージシャンの話」ではないですよ。もっとドツボにはまった男の物語で、ある程度はルーウィン自身の不遜な態度に問題があるというものの、ダメ男が主人公だとつい感情移入してしまいますね。もともとデュオで活動していた彼がソロに転向したことがストーリーに大きく影響しているわけだが、その理由についてはここでは触れない(つうかトレーラーでバラしてるね)。フォークソングが何曲も披露され、そのあいだに会話があるといった感じでセリフの量は多くないものの、ネコの名前やトイレの落書き、アクロンの元彼女、ラストでルーウィンがステージを降りたあとに登場する人物、といった象徴的な要素が各所に散りばめられ、いろいろ考えさせられる内容になっている。これはとても円熟した脚本ですね。

不条理なほどに主人公が不運に見舞われるさまは「バートン・フィンク」や「シリアスマン」に通じているし、「部屋の奥にいる老人」やジョン・グッドマンが登場するあたりは典型的なコーエン兄弟作品であるものの、今回は撮影をロジャー・ディーキンスが行なっていないせいか全体的な雰囲気がちょっと異なったものになっている。冬のニューヨークや夜中のヒッチハイクのシーンなどがとても印象的。ルーウィンを演じるのがオスカー・アイザックで、ウェールズ系の主人公をグアテマラ人の彼に演じさせた意図はよく分からないが、シンガーでもある彼はルーウィンの曲を吹替え無しに熱演している。彼の友人を演じるジャスティン・ティンバーレイクも同様で、歌える俳優の本領発揮ですね。その友人をキャリー・マリガンが演じていて、彼女とアイザックは「ドライブ」で夫婦役を演じていたが、ここではまた違ったかけ合いを見せてくれる。マリガンを良いなと思ったのって「ドクター・フー」以来じゃないかしらん。あとネコかわいいよネコ。

有名な曲が披露されるわけでもないし、とっつきにくい題材のため観る前は懸念していたものの、実際はいろいろ身につまされる作品であった。あてもない日々を過ごしている人におすすめ。

「BELIEVE」鑑賞


こないだアカデミー監督賞を穫ったアルフォンソ・キュアロンが製作と第1話の監督を務めるNBCの新作ドラマ。プロデューサーとしてJJエイブラムスも関わっているみたい。

少女のボーは幼いころから超常的な能力を発揮することができ、その能力を謎の組織に狙われたために里親を転々としていた。彼女を守る別の組織に属するウィンターは死刑囚のテイトに目をつけ、彼を脱獄させる代わりにボーを保護するように命じる。仕方なしにボーと出会ったテイトだったが、そこにボーを狙った女殺し屋が現われたことから、ボーとテイトの長い逃避行が始まる…というストーリー。

なんか80年代にあった超能力少女マンガっぽいような…。池上遼一の「舞」ってこんな話じゃなかったっけ?ボーは人の感情を読み取ったり漠然とした予知能力を持っていることが示唆されるのだが、感情が高まるとさらに過激な能力をつかうことができ、要するに「イヤボーンの法則」ですな。日本のマンガだけでなく「キャリー」とかもそうだけど、ちょっとクリーシェ感が強いかと。

冒頭にちょっと長回しっぽい演出が使われているものの、それ以外は比較的普通の演出だったかな。CGのチョウとかがいかにも作り物なのが興醒め。テイトを演じるのがジェイク・マクラフリン、ってよく知らんな。ボーを演じるのはジョニー・セクオヤ(Sequoyah)という女の子なんだけど、女性なのにジョニーというのね。あとはウィンター役にデルロイ・リンド、その助手にジェイミー・チャンと手堅い役者で脇を固めている。あとはボーを狙う黒幕をカイル・マクラクランが演じてるのだが、携帯電話で指示を出して「フフフ…。」とほくそ笑んでいるだけなので今後はどう話に絡んでくるのか分からず。

決して革新的な作品とかではないものの、アルフォンソ・キュアロンのネームバリューもあるので日本でもどこかで放送されるんじゃないかな?ただ今年の新作ドラマはSFものが多い一方でどれも苦戦してる印象があるので(Agents of SHIELDとか)、まず本国でどこまで頑張れるかが人気の分かれ目になるでしょう。

「MIND GAMES」鑑賞


ABCの新作ドラマ。

前科持ちの元詐欺師であるロス・エドワーズは、双極性障害を患っているものの有能な心理学者である兄のクラークと組んで、心理操作を用いて諸々の問題を解決する会社を立ち上げる。懐疑的なクライアントに心理と人間の行動の関係について説明しようとするロスだったが、クラークの突拍子もない行動のためにうまくいかない。さらにロスの元妻やクラークの元恋人が会社に加わったことで話がややこしくなり…という設定。

劇中に出てくる心理操作というのがいまいち良く分からんのだが、要するに人に暗示をかけるようなものかな?マインドコントロールではないと明言されてるんだけどね。「アドレナリンが放出されて気分が高揚した直後は暗示にかかりやすくなる」などといったもっともな説明がされたりするんだが、どこまで本当なのだろう。さらに結局はクラークの知識よりもロスの手腕に頼ってたりして、それって心理操作というよりも単なる詐欺ではないの?という気がしなくもない。

クリエーターはカイル・キレン。って「LONE STAR」と「AWAKE」の人か…かなり低い打率を誇っているような。さらにロスを演じるのがクリスチャン・スレーター。彼も出演したシリーズはことごとく短命で終わっている人なので、なんか不安だな。そしてクラークを演じるのがスティーブ・ザーン。俺は彼がとても好きなので頑張って欲しいところですが、長続きするかな…。

なんか話がいろいろ詰め込まれすぎで、それはそれで悪いことではないのだけど、視聴者の多くはついてけないんじゃないでしょうか。兄弟ふたりもケンカしてるばかりだし。もうちょっと頑張る必用があるであろうシリーズ。

「それでも夜は明ける」鑑賞


ネタバレにならない程度に感想をざっと。

・その題材や主人公の経験する物事は確かに過酷なものなんだけど、圧倒的な映像美や役者の巧みな演技によって、意外と角がとれて観やすい内容になっていた。あまりクセがなくて歴史もので感動のドラマ、という点では確かにアカデミー好みの作品ではあるな。

・主人公が精神的かつ肉体的な試練を受けるという内容は、監督の前作「シェイム」よりもその前の「HUNGER」のほうに似ていると思いました。

・キャストは豪華なんだけど、いろいろ出過ぎてみんなの出番は比較的短いよ(ファスベンダーは除く)。マイケル・K・ウィリアムスなんて冒頭に出てきたかと思いきやどこかに行ってしまったし。

・ルピタ・ニョンゴの演技は巧いが、アカデミー賞とるほどのものか?マイケル・ファスベンダーのほうがずっと鬼気迫る見事な演技をしていたぞ。

・ポール・ダノはかん高い声でわめくとっちゃん坊やの役ばかり最近は演じてるような。

・そしてプロデューサーもやってるブラッド・ピットはちゃっかりおいしい役を演じてんなあ。

・黒人は当時からaskをaksと発音していたのか?あれヒップホップ文化のスラングだと思っていた。

最初に書いたように良くも悪くもクセがないけど、良い作品ですよ。自国の恥ずべき歴史を描いた映画に賞をちゃんと与えるところが、アメリカの懐の深いところですかね。