「FROGGER」鑑賞

地上波放送では史上最低の視聴率を叩き出した東京オリンピックに続いて米PEACOCKが送る、素人参加型のスポーツゲーム番組。日本のコナミが1981年に出したアーケードゲーム「フロッガー」をもとにしていて、あれ日米で人気が高くていろんな機種に移植されてるし、リメークも出たりしてるのでプレーしたことのある人が多いと思うが、タダでも遊べるので興味がある人はどうぞ。

番組では参加者がゲームにおけるカエルとなって、ステージに張られた水に落ちないように、ハスの葉やカメや岩を模したポリウレタンだかプラスチックの上を飛び移ってゴールを目指すのだが、ゲームと違ってステージは縦長でなくて四角い屋内をぐるっと回る感じだし、ステージの種類もいくつかあって宇宙ステージとか海賊ステージなんてのも存在する。それで1エピソードあたり6人の参加者が3つのステージを2人ずつ競い合い、それぞれのステージでの勝者(ゴールまで着かなくても、より遠くまで進んだほうが勝ちとなる)の3人が最終ステージで競い、勝者が賞金1万ドルをゲットするというルールみたい。

とにかく下に落ちないように足場を跳び移って進んでいくゲーム番組、という点ではNetflixの「Floor is Lava」(未見)に近いのかな?ただ参加者はゲーム同様に3つまでライフを与えられているので一発アウトのスリルがないのと、体が水に落ちても足場に手がかかってればセーフと見なされるので、参加者が二本足でテンポよく跳び移るのではなく上半身から倒れるような形で足場を移っていくのがちょっとトロいな。カエルのように跳んでいるといえばそれまでなのだが。横から水が吹き出ているコースが結構エグくて、そこで早々に脱落してる人が多いあたり、全体的な難易度の調整はまだまだ必要かと。

番組の司会/コメンテーターはデーモン・ウェイアンズJr.と、スポーツキャスター&俳優のカイル・ブラント。ウェイアンズJr.って「ニュー・ガール」とか「Happy Endings」といったシットコムで活躍してるのだから、こんなゲーム番組の司会しなくても良いと思うのだが…。まあふたりの陽気なかけあいと、編集によってそれなりに楽しめる番組にはなっているんじゃないでしょうか。失敗しても製作費はオリンピックの数億分の1くらいだろうし。

しかしオールドゲーマーとしては、ステージのゴールが1つしかなくて、ゲーム版の「左端のゴールがとてつもなく到着しにくい」設定が反映されてないのが気にくわんな。でももしこれが人気を博したら、次は風船に吊り下げられた参加者が戦いあう「バルーンファイト」、落とし穴をつくってお互いを落とそうとする「平安京エイリアン」、ステージに潜んだ猛獣と麻酔銃で戦う「トランキライザーガン」あたりがゲーム番組化しやすそうなんだが、いかがでしょう?

「FRENCH EXIT」鑑賞

良い評判を聞いていた作品。日本では「フレンチ・イグジット 〜さよならは言わずに〜」の題名で配信スルーだそうな。

裕福な寡婦のフランシスは身勝手な性格で、息子のマルコムを12歳の頃から放任主義で育ててきた。そんな彼女は財産がすぐに底をつくことを銀行より知らされる。財産が尽きる前に死ぬつもりだった彼女は「死ななかった」のでニューヨークのアパートを売り払い、パリにある知人のアパートにマルコムと移り住むことになる。こうして母と息子と猫1匹のパリ生活が始まるのだが、やがて彼らのアパートには様々な人が集まり…というあらすじ。

ヨーロッパを舞台にしたアンサンブルコメディ、という点ではウェス・アンダーソン作品に似てなくもないが、あっちよりも金銭問題とか恋愛関係とかがリアルに描かれていて、もうちょっとアダルトな雰囲気。色彩も当然アンダーソン調ではないが、パリの風景が美しく撮影されていて良いですよ(モントリオールでも撮影したらしい)。パリのウェイターが横柄なところもちゃんと描写されている。

題名の「French Exit」というのは、例によってフランス貶しの表現の1つで、「断りもなしに急に去ること」を指すのだそうな。この作品も急に登場したと思いきや、突然去っていく人たちがチラホラ。まあ人生にすっきりとした別れなんて無いということか。フランシス本人が前述したように人生の退出タイミングを間違えたような人で、金の切れ目が人生の切れ目であるかのように、残った資産を惜しみなく人に与えたりして退出に向かっていく。

タバコをスパスパ吸ってる有閑マダムのフランシスを演じるのがミシェル・ファイファー。おれ彼女ってあまり好きな役者ではなかったのだけど(実を言うと、夫のデビッド・E・ケリーの最近の作品が好きになれないのが大きな理由だが)、今回の役は実にハマっていて、絶賛されているのもよくわかる。そんなフランシスを怪訝そうに見守る息子のマルコム役のルーカス・ヘッジスもいい感じ。マルコムの婚約者役にイモージェン・プーツ。フランシスたちと勝手に友人になる未亡人をヴァレリー・マハフェイが演じていて、おれこの人知らなかったのだけど非常に良い演技でした。

原作は「The Sisters Brothers」のパトリック・デウィットの小説をデウィット自身が脚本化し、「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」のアザゼル・ジェイコブスが監督。最近のクドくなってきたウェス・アンダーソンの作品よりこっちのほうが好きかも。良作。

「シャン・チー/テン・リングスの伝説」鑑賞

まだ公開したばかりなので感想をざっと。いちおうネタバレ注意。マーベル・コミックスの原作のキャラクターにはそんなに思い入れがなくて、「燃えよ!カンフー」やブルース・リーに始まる70年代のカンフーブームに便乗して登場した、アジア人から見たら違和感を感じるアジア人キャラ、というのが最初見たときの印象だったな。ポール・グレイシー&ダグ・メンチによる一連の作品は面白いらしいですが。

ポール・グレイシーの連続コマ、カッコいいよね!

70年代のスタイルだと流石にもはや政治的に正しくないので、近年になってからはもっとスポーティな若者ルックになって登場して、それが今回の映画版のもとになってるようです。

内容もきちんとアジア人に配慮したものになっていて、サンフランシスコの中国系コミュニティから話が始まり、マカオに移って、それから謎めいた部族が長い間守り続ける秘境の存在が明らかになって、そこを守るために主人公は立ち上がる…ってこれ「ブラック・パンサー」のプロットじゃないか?あれもカリフォルニア→釜山→アフリカと話が移っていったし、外部からの襲撃に備えて部族が武装するあたり、「これ前にも観たぞ?」と思ってしまったよ。

それを考えるとアフロフューチャリズムでテーマが一貫していた「パンサー」と異なり、こっちはスーパーヒーロー映画、カンフー映画、ファンタジー映画、ついでに最近のディズニーが好きなハリウッド風エスニック映画の要素をいろいろ盛り込んできて、結局はすべてにおいて中途半端に終わっている感じだった。テン・リングスの仕組みとか、最後の敵とか、もうちょっと細部を詰めれば良かったのに。テレパシー?が使えるならさ、単に暴れさせるだけじゃなくて自分の野望とか語らせれば良かったんじゃないの。

デスティン・ダニエル・クレットン監督の過去作は未見。「ショート・ターム」とか評判良いのだけどね。主役のシム・リウはコミックのシャン・チーに比べておっさん顔のような気もするが、トロント出身のアジア人ということで個人的には応援します。オークワフィナもいい役者になったよな。彼女とミシェル・ヨーとロニー・チェンと、「クレイジー・リッチ!」に出てきた役者が3人もいるあたり、ハリウッドにおけるアジア人俳優の層ってやはり薄いんだろうか。シャン・チーの妹役のメンガー・チャンはこれが映画デビュー作?なんでこんな大役にいきなり起用されてるの?この作品の中国公開が決まってないことを考えると、中国市場に媚を売るためとも思えないしなあ。

そして役者としてはやはりトニー・レオンがいちばん巧くておいしい役を演じていて、むしろ彼を主役にしたほうが良かったんじゃないの。「ブラック・パンサー」もそうだったがヒーローに対して複雑な感情を抱く敵役のほうがずっとキャラクターとしては面白いのだけど、ディズニーはそういったキャラを主役には持ってこないだろうね。

マーベルのスーパーヒーローもの、というよりはディズニーのファンタジー作品という印象が強くて個人的にはどうも好きにはなれなかったけど、シャン・チーは今後もマーベル映画に登場してくるでしょうから、アジア人ヒーローとして活躍してくれることに期待します。

「レミニセンス」鑑賞

日本だと来月公開ですがHBO MAX経由でお先に。監督がリサ・ジョイ、製作がジョナサン・ノーランという「ウエストワールド」の夫婦コンビによるSF作品。以降はネタバレ注意。

舞台は近未来のマイアミ。国境を跨いだ何らかの大規模な戦争があったことが示唆され、その影響により海面が上昇して街の半分がヴェニスのように水に沈み、一部の金持ちだけが乾いた土地に住んで一般市民の反感を買っていた。そんな街でニックは相棒のワッツとともに、特殊な機械を用いて顧客に過去の思い出を追体験させる商売を営んでいた。そんな彼の店にメイという謎めいた女性が現れ、ニックと彼女は恋に落ちるのだが彼女は謎の失踪を遂げ…というあらすじ。

ニックの店にある機械は、顧客がヘッドバンドをつけて水槽に横たわり、ニックの音声ガイドとともに電流を流すことで、顧客が自分の好きな思い出を追体験することができる、という仕組みらしい。この思い出はニックを含めて他の人が外部から見ることができるので、ニックとワッツは警察にも呼ばれて容疑者の記憶探りなども手伝ったりしている。というかなんでそんな重要なテクノロジーを政府が管轄してないで、小汚い店などで運営できているのかはきちんとした説明なし。

技術を通じて現実逃避するというコンセプトは「ウエストワールド」に通じるものがあるし、ノーランつながりで言えばクリストファー・ノーランの「インセプション」に雰囲気はよく似ている。ただし人が現実から逃れて過去の甘美な思い出に浸りたがるというテーマの掘り下げが不十分で、ニックの機械が単なる「過去に何があったのか」の種明かしマシーンになっていたような。2時間以下の尺に近未来のコンセプトとかワッツの物語とかをきっちり入れ込んだ脚本は手堅いが、セリフが微妙に説明口調なのと、1つの手がかりから別の手がかりへと話が進んでいくあたりが、映画というよりも「バイオショック」みたいなPCゲームを見ているような気になってしまったよ。

主演のニック役はヒュー・ジャックマンで、ワッツ役が「ウエストワールド」のタンディ・ニュートン。フェミ・ファタールのメイ役がレベッカ・ファーガソンで、ほかにクリフ・カーチスなんかが出演している。キャストは豪華だしマイアミのセットも凝ってる一方で、アクションシーンが微妙にショボかったりして、これは予算の関係なんだろうか、それとも監督の手腕によるものなんだろうか。

これだけの独創的なコンセプトを打ち出しているので、いろいろもっと深堀りできるところはあっただろうし、そういう意味ではどうしても中途半端な印象を抱いてしまうのだが、手堅く作られたSF作品としては十分に楽しめる映画じゃないでしょうか。

「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」鑑賞

『“極”悪党、集結』とか言われてもそんなダサい邦題、誰も使わんがな。本編でも字数の関係からか、チーム名を「決死部隊」とか訳していて何だかなあと思ったり。「ジャスティス・リーグ」を「正義同盟」とは呼ばんでしょ。公開したばかりなので感想をざっと:

  • 「スーサイド・スクワッド」に何を求めるか?といえば、やはりキャラクターが使い捨てでバンバン死ぬなかでどうにかミッションをこなしていく姿でして。そういう点では「貴重な」キャラが多かった前作に比べて、今回はC級・D級のキャラがいろいろ出てきて冒頭からどんどん死んでいくあたり、ジェームズ・ガンのお下劣テイストとあわせて、作品のセールスポイントをうまく捉えていたんじゃないですか。
  • ストーリーが比較的シンプルで大きなヒネリがない一方で、時系列がたまに過去に戻ったりする演出はちょっと気になったものの、ヒーローのモラルとかジレンマを説かずに、ただただカッコいいアクションと映像を映し出すスタイルは嫌いじゃないですよ。
  • 前作はチームの一員がヴィランであったことで、いまいちヴィランとの戦いも煮え切らないところがあったか、今回はヴィラン戦がまんま怪獣映画なので勧善懲悪のスカッとする感じがありますね。いまでこそコミックのほうでもスターロってコミックリリーフみたいになったけど、昔はまっとうなヴィランだったのだぞ。小スターロが一般人の顔にひっつく描写とかが見れて満足。
  • マーゴ・ロビーとかジョエル・キナマンとかも前作より軽快な演技していて良いんじゃないですか。あの何をやってもクドいジャレッド・レトのジョーカーがいなくなった効果は大きいな。初登場のイドリス・エルバことストリンガー・ベルと、ジョン・シナの掛け合いなどもナイス。なぜピースメイカーがスーサイド・スクワッドにいるのかよく分からんが、あのムキムキの筋肉はやはりヒーロー映画向きだな。これだけキャストが多いのにアメリカ人俳優が少ないのもハリウッド映画ならではか。ピーター・カパルディ、スコットランド訛りが全開でしたな。

観たあとに何か心に残るような作品でもないし、微妙にグロいので万人に勧められるものではないけれど、イカしたサントラにあわせてカッコよく決めたヒーローたちが暴れるアクション映画としては十分に面白かったと思う。初週の興行はパッとしなかったようだけど、ピースメイカーのTVシリーズが面白くなることに期待。