「BAADASSSSS!」鑑賞

こないだ「スウィート・スウィートバック」を観たんで、その撮影の舞台裏を描いた作品「BAADASSSSS!」をDVDで観る。監督・脚本・主演はマリオ・ヴァン・ピーブルス、つまり「スウィートバック」を作ったメルヴィン・ヴァン・ピーブルスの息子。彼は自分自身の父親を演じ、いかにメルヴィンが様々な障害を乗り越えながら「スウィートバック」を完成させたかを力強い演技で見せつけてくれる。

舞台になるのは1970年。大手スタジオのために「WATERMELON MAN」を撮り終えたメルヴィンは、次の映画は黒人を前面に押し出した作品にしようと決意する。しかしどのスタジオもそんな映画を作ることを認めようとはしなかったため、彼は独力で映画を完成させようと製作にとりかかる…。というところから話がスタートして、組合の縛りから逃れるために黒人用のポルノ映画を作ってると申請したとか、音楽を担当したアース・ウィンド&ファイアーへの報酬に金がなかったので空手形を書いて渡したとか、カメラを持ってた黒人のクルーが「バズーカを持っている」と勘違いされて逮捕されたとか、いろいろ面白いエピソードが列挙されていく。

ストーリーには黒人が主人公の映画を作ることに関する主張なども多分に含まれているけれど、インディペンデント映画の黎明期における映画製作の大変さを描いているという点で特に興味深い作品になっている。プレミア公開は客が入らずガラガラだったけれども、やがてブラック・パンサー党員などが大挙して押し掛けてきて記録的な大ヒットを飛ばすラストなどは非常に印象的だ。

この作品も「スウィート・スウィートバック」同様に低予算で製作されたらしいが、「スウィートバック」の映像やスタイルを各所にうまく取り込みながら、全体的にとても洗練された雰囲気に仕上がっている。作品そのものは「スウィート・スウィートバック」よりもずっと優れているんだけど、「スウィートバック」を観てないと理解しづらいのは仕方ないことか。

ブルージェイズ 対 デビルレイズ

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あんまり面白みのないカードなんだけれども、火曜日は2ドルという激安の入場料で試合が観れることもあり、友人を連れて対デビルレイズ戦を観に行く。野茂は出ず。

序盤は2点先行されてたものの、相手方の暴投や死球の連発によって棚ぼた的に点を稼ぎ、ホームランを2度くらったにも関わらず7−5でジェイズの勝利。好プレーはなかったものの、まあ悪い試合ではなかったかと。

ファウルボールを追っかけてきた子供の目の前で、ビール持ったオヤジがボールを手にしたたとき、「子供に渡せ!」って感じで球場内で大ブーイングが起きて、結局子供がボールをもらったという出来事があったのが面白かった。

「ザ・インタープリター」鑑賞

シドニー・ポラック監督の「ザ・インタープリター」(THE INTERPRETER)を観た。個人的には「つかみ」が何も感じられない作品だったんだけど、まあショーン・ペンが出ているということで。

ストーリーはアフリカのマトボ共和国の出身で、現在は国連の通訳として働いている主人公シルビア(ニコール・キッドマン)が、独裁者として悪名高いマトボの大統領を暗殺するという何者かの会話を国連本部内で偶然耳にしてしまう。シルビアはすぐに当局に通報するものの、まるで誰かが彼女の命を狙っているような出来事が身の周りで頻発するようになる。そしてシークレット・サービスのエージェントであるトービン(ショーン・ペン)は事件の調査に乗り出すものの、やがてシルビアが過去に活動家であったことを知り、彼女に対する疑念を深めていく…といったもの。
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トロント コミコン

寒波がやってきてやけに冷えきった日だったものの、ダウンタウンでコミックのコンベンションがあったので出かけてみる。

規模はそれなりに大きく、30くらいのブースがあって様々なコミックが大量に販売されていたものの、今日一日だけの開催であり、トロント最大のコミコンは7月くらいに行われるようだ。会場の奥の方では有名・無名のアーティストたちが自分たちのスケッチを披露したり、ファンにサインをしたりしていた。一番の大物は「Xメン」のクリス・クレアモントで、彼の前にはかなりの長蛇の列が出来上がっていた。個人的には「SEAGUY」を描いたキャメロン・スチュアートのサインが欲しかったのだけど、ここも列が遅々として進まない(ファンのスケッチブックにずっと絵を描いたりしてた)ので諦める。彼は5月の末にあるコンベンションにも来るらしい。

会場ではゴールドエイジやシルバーエイジのコミックから最新のものまでが販売されており、その他にも日本のアニメ関連のグッズやフィギュアなどがいろいろ扱われていた。最近はペーパーバックでいろんな作品が読めるようになったので、個人的には大枚をはたいてまで入手したいタイトルって実はあまりなかったりする。とりあえずバーゲンコーナーでウルフマン&ペレス時代の「NEW TEEN TITANS」とかハワード・チェイキンの「BLACKHAWK」が1ドルとか50セントで購入できたので良かったかなと。

ちなみに客層は若者も当然いるものの、中年の男性なんかもずいぶん多かった。アメコミの購読層は30代の男性(含む俺)が多いという事実を考えれば別に驚くことではないけど、日本の客層とはずいぶん違うのかな。
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「WHERE THE BUFFALO ROAM」鑑賞

かなり遅れての追悼という意味で…という訳でもないが、ビル・マーレーが故ハンター・S・トンプソンを演じた「WHERE THE BUFFALO ROAM」(1980)をDVDで観る。マーレーが「ゴーストバスターズ」以前、つまり比較的無名だった頃に出演した映画で、ストーリー上では主人公を演じているものの、クレジットのトップは相棒のカール・ラザロ(モデルはオスカー・アコスタ、つまり「ラスベガスをやっつけろ」のドクター・ゴンゾ)を演じるピーター・ボイルに与えられている。直接の原作となった記事(「THE GREAT SHARK HUNT」に収録されてるらしい)は未読だが、それなりにフィクションも含まれているようだ。

ストーリーはあってないようなもので、1968年のヒッピー裁判、70年のスーパーボウル、72年の大統領選挙などを背景に、当時「ローリング・ストーン」誌の名物記者だったトンプソンと異端の弁護士であるラザロの巻き起こす珍騒動を愉快に描いていく。酒とクスリでラリってばかりで、ホテルの部屋などを徹底的に破壊していくトンプソンの姿が面白い。面長のトンプソンに比べてマーレーって丸顔すぎる気もするが、周囲の迷惑を顧みずに自分流のゴンゾ・ジャーナリズムを貫くトンプソンの姿をうまく演じきってると思う。

ただトンプソンってその奇行ばかりが注目されがちだけど、ちゃらんぽらんな文章を書いているようで実はアメリカの政策や情勢に関する鋭い観点を持っていたからこそ人気があったわけで、この映画は彼の滑稽な部分だけにしか焦点を当てていないのが残念なとこだ。一応トイレで出会ったニクソンに演説らしきものをぶつ場面もあるのだけど不発に終わっている。テリー・ギリアムの「ラスベガスをやっつけろ」もそうだったけど、トンプソンの文章にある冗談と真剣さの微妙なバランスって、映画だとなかなか表現しにくいのかもしれない。現在は彼の数少ないフィクション小説「ラム酒日記」が「ウィズネイルと僕」のブルース・ロビンソン監督により映画化が進められてるらしいので、そちらに期待しよう。

ちなみに主題歌はニール・ヤングが歌っている。彼は作品中の音楽にも関わってるらしいのだが、なんかサエない曲が多いな…と思っていたら、どうもDVD版はオリジナルやビデオ版に比べて曲が差し替えられてるらしい。使用料の問題によるものだろうけど、元はヤングやジミ・ヘンドリックスの曲などがずいぶん使われていたらしい。何か損した気分。