TIGER UNLEASHED

アップルの次期OS「TIGER」のリリースが4月29日に決定したとか。手元にバックアップのデバイスがないのと、高い税金を払うのがイヤなので日本に帰ってから購入するつもりだが、新機能がどれだけ使えるのか今から楽しみだなあ。個人的にはRSSを搭載したサファリとか、新コーデックの「H.264」とかを試してみたい。目玉の検索機能「SPOTLIGHT」は日本語でどれだけ検索が正確に出来るか興味津々。

「REINVENTING COMICS」書評

コミックの持つ豊かな歴史や独特のスタイル、情報の伝え方などを実に分かりやすく分析してコミック業界外でも大絶賛を得た「UNDERSTANDING COMICS」(邦訳があるんだって?)の著者スコット・マクラウドによる続編「REINVENTING COMICS」を読む。前作ではエジプトの壁画から現在のグラフィック・ノベルに至るまでのコミックの歴史やスタイルの変化などを斬新な観点から地道に語っていったのに対し、本著では現在のコミック業界が抱える問題点や、デジタル時代を迎えたコミックの今後のありかたなどについて語っている。前作が「事実の検証」だったとしたら、今作は「理想の表明」といった感じが近いかもしれない。刊行は2000年。

本の内容は2部に分かれており、第1部はいかに現代社会でコミックが軽視されているかを簡単に述べたあと、現在のコミック・ビジネスがいかに利益をもたらさない構造になっているかを著者自身の経験を例に挙げながら説明している。そして著者は「作家の権利」や「ジャンルの多様性」「コミックのイメージ向上」といったさまざまな要素を挙げながら、作家や出版社がまんべんなく利益を得るにはどのような革新が望まれているのかということを解説していく。

第2部はデジタルの時代におけるコミックの立場、特にパソコンの普及およびインターネットの拡大とコミックとの関連性について解説している。パソコンの黎明期からインターネットの生い立ちまでを詳しく説明している前半部分はそれなりに有益な情報が含まれているものの、コミックとはあまり関係ない。しかもコンピューターの進歩はコミック業界を遥かにしのぐ速度で進んでいるため、2000年に出た本を現在読むとかなり古くさく感じてしまう。そして後半、作品を作家から読者へ直接届けることのできるインターネットの利点を活かした、低額(25セントとか)のオンライン購読システムにコミックの将来があると著者は提案する。ここは後のiTunesミュージックストアの出現と成功を予言してるようで興味深い。ただ音楽と違ってコミックはやはり「紙」という媒体があってこその芸術表現であり、スクリーン上で読むとコミックの魅力が半減してしまうと思うのだが。オンライン・コミックスについてはマクラウドのホームページでいろいろ例が載っているので見てみてください。

「UNDERSTANDING COMICS」ほどの傑作ではないが、コミックに関するビジネス本としてはいろいろ参考になる一冊。

「SLACKER」鑑賞

ケヴィン・スミスと並ぶ90年代のインディペンデント映画界の雄、リチャード・リンクレイターの実質的デビュー作品「SLACKER」をDVDで鑑賞する。1991年に公開された本作はスミスに「クラークス」を撮らせる触発を与えた映画であり、90年代のインディペンデント映画の元祖的作品のはずなのだけど…正直言ってかなり退屈な映画だった。

ストーリーの展開は無いに等しく、テキサス州オースティンの1日を舞台に、いろんな若者の姿をダラダラ追ってるだけ。まあ題名が「SLACKER(ダラけた奴、という意味)」なのでそれがコンセプトなんだろうけど。映画の構成は緩やかにつながった短いシーンの連続で成り立っていて、あるシーンでAとBが話してれば、次はBとCが話してるシーンになり、次はCとDが…といった感じで映画が進んでいく。登場する人物はみんな口が達者で陰謀論とか哲学を何気ない顔でベラベラ喋りまくるような連中ばかりで、どのシーンも演技よりもセリフ主体になってるため全体的に頭でっかちな印象を受ける。ジム・ジャームッシュの「パーマネント・バケーション」みたいな感じかな。そしていかにも90年代的な、「私ってinsecureだから…」と言ってる奴とか、「レザボア・ドッグス」の冒頭よろしくポップ・カルチャーの脱構築をしてる連中が出てくるのを見ると、90年代は遠くになりけりと変に実感してしまった。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのレコードを久しぶりに聞いてみたらものすごくカッコ悪かった、というような感じ。俺も年だなぁ。

リンクレイターはこの作品の次に場外満塁ホームラン的大傑作「バッド・チューニング」を世に出すことになるのだが、あの映画の原型となるような要素(ユルい若者たちの24時間、とか)が随所に見られるのが興味深い。監督のペダンチックさがこの映画でうまく消化されて、「バッド・チューニング」の爽快感に昇華されていった、ということか(語呂合わせでなく)。

ちなみにクライテリオン版のDVDは2枚組で、リンクレイターの短編映画とかコメンタリーが山ほど収録されている。低予算映画のノウハウを学びたい人にはいい教材になるんじゃないでしょうか。

「BATTLESTAR GALACTICA」 シーズン1最終話

傑作SFシリーズ「BATTLESTAR GALACTICA」のシーズン1最終話を観た。
前にも書いたようにイギリス・アメリカに遅れての放送なので話の展開は既に分かってしまってるのだが、衝撃のラストはなかなか見応えがあった。最終話ということでいろんな話を詰め込みすぎてた部分もあったけど。今夏放送予定のシーズン2が待ちきれない。

ただこれって異様にテンションが高い番組なので、そのクオリティを高いものにしておくためには人気がどれだけあろうともシーズン3くらいでスパッと終わったほうがいいかな、と思うのだがどうだろう。

「BOTTLE ROCKET」鑑賞

「天才マックスの世界」や「ロイヤル・テネンバウムズ」を手がけたウェス・アンダーソン監督のデビュー作「BOTTLE ROCKET」をDVDで観る。主演&共同脚本はアンダーソン作品ではお馴染みのオーウェン・アンダーソンで、他にもルーク・ウィルソンやアンドリュー・ウィルソン、クマー・パラーナといったアンダーソン作品の常連がいろいろ出ていて楽しい。あと何故かジェームズ・カーンが出てたりする。

神経衰弱のため精神病院に入っていたアンソニー(ルーク・ウィルソン)が悪友のディグナン(オーウェン・ウィルソン)と再会し、友人のボブも含め3人で書店に強盗に入る。金を奪った彼らは田舎町のモーテルに逃亡するが、そこでアンソニーはイネスというメイドと恋仲になってしまう。しかし彼らは再び故郷の街に戻ることになり、ディグナンのボス(カーン)に誘われるがまま、ある工場の金庫から金を盗むことにするのだが…というのが大まかなストーリー。前半はアートっぽい映画かな、と思わせておいて中盤は「サイドウェイ」みたいになり、後半は「ライフ・アクアティック」ばりのドタバタ劇になる話の流れはかなり一貫性に欠けているが、テンポの速いストーリーと凝ったカメラワークによって飽きがこない内容になっている。

後のアンダーソン作品のトレードマークとなる絶妙な選曲のBGMはあまり聞けないものの、音楽と映像のタイミングの合わせ方などはなかなか見事。プールでのショットやスローモーションで終わるラストなどにも、後に確立される彼のスタイルの片鱗が見てとれる。

それなりに低予算の映画なんだけれど、ツボをしっかり押さえた内容になっているし、27歳の若さにしてこれだけの作品を仕上げた監督の技量には感服する。彼のファンなら観て損はしない作品かと。

(4月20日に「アンソニーのハッピー・モーテル」という邦題でDVD発売されるとか)