Mixed Reaction To New FCC Boss

国連大使に「国連なんか役立たずだ」と言った奴を任命したり、世界銀行のトップにイラク戦争で大赤字を出した奴を任命したりと、最近は実にラディカルな人選をしてるブッシュだが、FCC(米連邦通信委員会)のトップにケヴィン・マーティンを任命したことは業界の予想通りだったらしい。何せマーティンは妻とともにブッシュの忠実な腹心で、放送の倫理規制に積極的であり、従来は倫理規制が緩和(免除)されてきたケーブル局や衛星放送にも規制をもたらそうとしている人間なのだから。

ここ数年のあいだにアメリカでは倫理規制に抵触した放送局への罰金がウナギ上りになり、罰金の限度額もこないだ大幅に上がったばかりだが、マーティンの任命により、ブッシュの支持層であるキリスト教右派の放送局への締め付けはさらに勢いを増しそうだ。

こうしてアメリカのテレビはさらにつまらなくなっていくのですね。

地元の恥

「狭山事件」第2次再審請求、最高裁も棄却。俺の育った土地である埼玉県狭山市で1963年に起きた「狭山事件」で、犯人として誤認逮捕された石川一雄さんの特別抗告が棄却されたとか。

実家とは少し離れた地区での出来事だということもあり、恥ずかしながら大学生になって興味を抱くまで詳細を知らなかったのだが、これは部落差別や女子高生の(強姦?)殺人といった日本社会ではおおっぴらに議論できないような要素が絡んでいる非常に特異な事件である。身代金を取りに来た犯人(とされる人物)を逃してしまった警察が名誉回復にやっきになったこともあり、部落出身の石川さんがスケープゴートにされたというのが真相らしい。

実は石川さんの逮捕後も関係者の奇怪な死が相次いでいるのだが、被害者が農家の出身であり、農村特有の閉塞性が関連しているという説もある。また被害者の人間関係などをもとに真犯人を指摘するような書籍やホームページもあるが、あくまで推測の域を出ない。
ただ地元の人間からしてみると、一部の人々が挙げている陰謀説や黒幕説はちょっと誇張されすぎかな、という印象も抱く。部落解放同盟や暴力団がうごめいてるほど大きな土地ではないので。ちなみに石川さんが徒歩で被害者(自転車に乗っており、見知らぬ人に付いていくような性格ではなかった)を連れ回したとされるルートは、実際に通ってみるとかなりの距離があり、これだけでも警察の主張の信憑性は疑わしいと思う。

石川さんが「再審請求中の無期懲役囚としては、異例の仮出獄をし」とあるように、検察側も石川さんが無実であることは認識しているものの、この事件の再調査が行われると部落問題などの日本の暗部に日の目が当たってしまうことから、このまま「仮出獄させたんだから、とりあえず犯人のままでいてください」と物事をうやむやにしてしまいたい気持ちがあるのではないか。

現在の狭山はベッドタウンとして団地が立ち並ぶ土地になったが(堤義明のおヒザ元でもある)、その陰でひっそりと被差別部落や農村が残っている。数十年前のこととはいえ、市民を護るはずの警察がこのような誤認逮捕を行ったことは地元民にとって大きな恥である。この恥を消すためにも、石川さんの一刻も早い無罪証明が望まれる。

アメコミ映画ニュース

ハリウッドでは相変わらずアメコミの映画化が盛んなようだが、ワーナーの「ワンダー・ウーマン」の脚本&監督が「聖少女バフィー」のジョス・ウィードンに決定したらしい。短命に終わったシリーズ「FIREFLY」の映画版「SERENITY」を現在作ってるはずだから、そのあとに取りかかるのだろう。スーパーヒーローの映画はまだしも、スーパーヒロインの映画ってどれだけ需要があるのか不明だけど、アメコミのライターでもあるウィードンなら結構いいものが作れるかもしれない。

んで「Xメン3」の監督が、ガイ・リッチーの一連の映画のプロデューサーであり、監督デビュー作「LAYER CAKE」がそろそろ公開されるマシュー・ヴォーンに決定したらしい。監督としての技量は未知数だが、個人的にはストーリーが「ダーク・フェニックス・サーガ」を下敷きにするのかが気になる。俺あの話は嫌いなんだが…。

「Xメン」の1と2を監督したブライアン・シンガーは現在「スーパーマン」を撮影中。ケヴィン・スペイシーがレックス・ルーサーでヒュー・ローリーがペリー・ホワイトをそれぞれ演じるというのが渋い。

そして「シン・シティ」の新トレーラーが公開されてた。あれって映画化は無理な作品だと思うのだけど、どんな出来になるのだろう。

NEW ORDER: KRAFTY

ニュー・オーダーの新シングル「KRAFTY」が結構いい。

相変わらずシンプルなビートに単純な歌詞(「毎日働いてちゃダメだよね、たまには外に出ないとね」というだけの内容。ビデオもそのまんま)が乗っかってるだけで、お世辞にもあまり進歩の見える出来ではないのだが、変に凝ってた感のある前作「GET READY」の曲よりも80年代当時のスタイルに近いような素朴な雰囲気があるのだ。

芸のなさが芸になってる好例でしょうか。

THE WEATHER UNDERGROUND


70年代の左翼ゲリラ「ウエザーメン(別称ウエザー・アンダーグラウンド)」を扱ったドキュメンタリーで、アカデミー賞にもノミネートされた「WEATHER UNDERGROUND」をDVDで観る。大学間の学生団体から過激派が脱退し、当時世界中で起きていた革命や暴動に感化されてウエザーメンが結成されたいきさつから始まり、その活動や衰退などを当時のメンバーが淡々と語っていく内容。ちなみに作品中の音楽にはフガジのイアン・マッケイが関わっていた。

ボブ・ディランの歌詞「風向きを知るのに天気予報士はいらない」からとった団体名や、ヒッピーのグルであるティモシー・リアリーの脱獄などでアメリカでの知名度は高いウエザーメンだが、他に行ったことはマニフェストの朗読や無人の政府施設の爆破くらいで、他の団体ほど凶悪なことはあまりやってない(異論はあるだろうが)。ブラック・パンサー党にも刺激をうけ、白人の若者の間に革命思想を広めようとするが、当のブラック・パンサーには嫌われていたとか。確かにメンバーは白人ばかりだし、田舎の金持ちの娘などが所属してたわけで、政府により幹部が組織的に暗殺されていったブラック・パンサーにとってみれば甘っちょろい若造の集団に見えたのだろう。その過激な口調のマニフェストなどが逆にニクソン政権にうまく利用され、ベトナム戦争から国民の目をそらすのに使われたという指摘は興味深い。

作品中でイラク戦争のことは特に言及されないが、記録映像で映し出されるベトナム戦争時のアメリカと、現在のアメリカの類似点は誰の目にも明らかだろう。長引く海外での戦争と積み重なる犠牲者に嫌気がさした若者たちがアメリカ政府に宣戦布告する、という出来事は現在でも十分起きかねない。ただ当時はアメリカ側の残虐行為や戦死者がそれなりに大きく報じられ、それが全国的な反戦運動につながっていったのに対し、現政権は報道を制御することによってうまく戦争の真実から国民の目をそらしてるかな、という感はあるが。

そしてベトナム戦争やニクソン政権の終焉ともに、ウエザーメンの活動もまた終わりを迎える。左翼ゲリラのキリのいい終わり方なんて、革命に実際に成功するか警察に全員射殺されるかくらいしかないわけで、そういう意味ではメンバーが次々と自首していくウエザーメンの終わり方は非常に寂しいものがある。でもFBIの捜査が違法な手段を用いていたために、彼らの多くが釈放されたという話には驚いた。しかもメンバーうち何人かは現在教師をやってるとか。どんなこと教えてるんだ?

観たあとの感想としては、彼らの活動内容に関心したというよりも、むしろ若気の至りで始まった集団の盛衰の物語を観たという感じである。意義のあるドキュメンタリーだとは思うが。メンバーの1人が最近のテロリズムを例に挙げ「自分たちが道徳的に勝っていると信じ込むことは非常に危険であり、恐ろしい結果を招くことになる」と語っているのが印象的だ。