在留届

カナダに来て3ヵ月以上たったし、事故にあった時に家族と連絡がつかなくなったりすると困るので、日本大使館のトロント支部へ在留届を書きに行く。オフィス街にあるビルの一室なのだけど、入ったとたんに日本の役所にありがちな、生暖かいケダルさにやられる。カウンターには防弾ガラスらしき仕切りが付いてたけど、あれって何か感じ悪いよな。

在留届も本籍を忘れた(知らない)ので記入しなかったら、案の定あとで通知してくださいと言われたけど、本籍って一体何の役に立つんだ?俺が事故に遭った場合、あの人たちは本当に助けてくれるんだろうか。それとも俺の「自己責任」?

Mirromask

鬼才アメコミ画家(イギリス人だけど)デイヴィ・マッキーンが監督した映画「Mirromask」のトレーラーが公開されていた。公式サイトはこちら

脚本は例によってマッキーンの親友であるニール・ゲイマン。トレーラーを観た限りでは「ラビリンス」に近いような感じがする。ジム・ヘンソン・カンパニーが関わっているからだろうか?以前アップルのサイトでもこの映画とマッキーンのことが紹介されていて、ずいぶん低予算なので大変だった、みたいなコメントがあったけど、ぜひ成功してもらいたいものだ。

ミリオンダラー・ベイビー

ウェスタン時代から現在に至るまで、クリント・イーストウッドってものすごく映画業界に貢献した稀有の人で、現在受けている賞賛でも足りないくらいの偉大な存在だと個人的には思っているのだけど、この作品はかなりハズレだった。一見するとボクシング映画のようで、実はボクシングというものはストーリーの刺身のツマでしかないことが上映開始1時間半ほどで分かってくるのだが、それに関する「ひねり」があまりにも突然というか、「何でそうなるの」的にやってくるため、その後の展開にどうしても感情移入ができなくなってしまう。もちろん単なるスポ根映画でないことは事前に承知してたつもりだが、ああいう展開になるとは…。イーストウッドの前作「ミスティック・リバー」は少なくとも観たあとに重ったるい「やるせなさ」が胸に残ったが、この作品には何も残るものが感じられないのだ。

映画としてはキャスティングや演技は悪くないし、照明の効果的な使い方は見事だったが、どうも脚本に奥行きが足りない気がして仕方がない。決して短い映画ではないのに(137分)ストーリーがやけに駆け足で進み、最初は女性にボクシングを教えることに反対していたイーストウッドはいつの間にかヒラリー・スワンクをコーチしてるし、ボクシングの経験がない30代のスワンクはあれよあれよとチャンピオンへの道を駆け上っていき、貧乏ジムの出身なのに国際試合までこなしてしまうのだけど、どうも話の細かいところにリアリティが感じられなく、前述した「ひねり」の起き方も何かヘンなので、観てる側としては変にシラケてしまうのだ。1番シラケたのが、スワンクのローブに書かれたゲール語を見た大勢の観客が彼女に肩入れし、それが世界中に広がっていく…というシーン。ゲール語が分かる観客ってどの会場にも数えるほどしかいないと思うんだが。よく分からない脇役のデンジャー君は最後まで意味不明の存在だったし。モーガン・フリーマンがマンガばかり読んでるのには笑ったが。

でもこれって今年のアカデミー賞候補の1つだし批評家たちに絶賛されてるわけで、俺のような意見はごく少数なんでしょうか。前述したようにイーストウッドは大好きだし、個人的に「許されざる者」はとてつもない大傑作だと信じて疑わない。彼はどのような理由でこんな映画を撮ったのだろう...。せっかくフリーマンも出てるのだから、「許されざる者」みたいに「旧友を街のチンピラに無慈悲に殺された老ボクサーが、2度と人は殴るまいという誓いを復讐のために破り、その鉄拳で悪党どもを血祭りに上げていく…」といった内容の映画だったら、ものすごくカッコ良かっただろうに。

アカデミー賞

朝っぱらから湖畔で雪に足をとられて転倒し、背中にかついでたPowerBookが少しヘコむ。動作に異常はないのだが、もうパソコンを持って外に出るのはやめよう。

アカデミー賞のノミネート発表を生放送で見る。主要な賞だけを発表するので、案外と簡素な感じだった。既に多くのメディアが報じているが、今年はこれといった目玉作がないぶん、中堅どころの作品がひしめいていて面白いといえば面白い。マイク・リーとか「Maria Full Of Grace」の主演の人とかなんて、普通の年だったらノミネートされないよな。個人的には「Mr.インクレディブル」のブラッド・バードが脚本でノミネートされたのが嬉しい。

午後はオスカー候補の1つである「Million Dollar Baby」を観に行く。イーストウッドはすごく才能のある人だと思うけれど、これはちょっと、という感じだった。

夜になってからはマンガ教室へ。ここしばらく忙しかったので、宿題になっていた絵をきちんと仕上げることが出来なかったが、まあ次から頑張ろう。リッチ・バックラーとロブ・リーフィールドがいかに他人のスタイルをパクっているか、という話で(一部の人が)盛り上がる。アメコミがバカにされず、きちんとアートとして語りあえるなんて、なんていいクラスなんだ。

拾った女

夜に映画のクラス。前半は脚本を書くにあたってのキャラクターの人格形成のコツや、カナダにある映画団体について学ぶ。

後半はB級映画の研究、ということでサミュエル・フラーの「拾った女」を鑑賞。B級映画といっても出来はすごくいいんだが。脚本から撮影から演出まで、とてもしっかりした作品だと思う。赤狩りの頃に作られてるんで「スリであっても、アカには協力しない奴」が主人公なのはご愛嬌。