「ヴェノム」鑑賞


いや笑った笑った。凸凹コンビのバディ映画ではないか!

・よく目にする評判としては「最近のマーベル映画に比べて、20年くらい前のテイスト」というものだが、奇しくも20年くらい前(映画の元になった「Venom: Lethal Protector」が出版されたのが93年)ってコミックでもヴェノムの人気が出すぎて、単なるヴィランからアンチヒーローに転換させようとマーベルが苦心していた時期なので、この映画のモンスターをヒーローに仕立て上げようとするノリと重なるものがあり、やけに懐かしい感じがしてしまったよ。

・最初の1時間は展開がタルくて、主人公がヴェノムになることなんてみんな知ってるわけだから、主人公が自分の体の変化に戸惑うあたりはまどろっこしく感じられたが、いざヴェノムが登場すると主人公とのどつき漫才!変に気遣いのきくシンビオートとのかけあいは面白く見させていただきました。「俺は落ちこぼれだった!」とか突然言い出すのですもの。

・異なる性格(?)のふたりが手を組むという典型的なバディものの話だったので、何かに似てるなあ…とずっと思いながら見ていた。ハル・クレメントの「20億の針」よりも、藤子・F・不二雄のSF短編っぽい感じ?

・主役を演じるトム・ハーディはヴェノムの声も担当してるので結果的に一人ボケ&ツッコミを演じていて大奮闘。コミックのエディ・ブロックに体型的にはまあ似てるけど、TVレポーターを演じるには滑舌が悪すぎるような?ヒロインのミシェル・ウィリアムズはこないだ「アイ・フィール・プリティ! 」を観たばかりなので、なんかコメディエンヌになってきたなあ、という印象を受けました。

・アンゼたかし、「Karma is a bitch」を「因果応報」と訳すのは適切だと思うけど、なぜ「カルマイズアビッチ」とかルビを振るんだろう?キーワードかジョークなのかと思ったらそうでもなかったし。

・最近のマーベル映画に比べると確かに見劣りするものの、金曜ロードショーとかでサクッと観るぶんには楽しめる作品なのではないですか。アメリカでも批評家の評判は散々だったものの興行的には大成功してしまったわけで、これにより他のスパイダーマンのスピンオフ映画製作に拍車がかかることになるんだろうか。でもこういう映画のノリって、狙って作れるものではないような気がするのです。

「A PRAYER BEFORE DAWN」鑑賞


日本では「暁に祈れ」の邦題で12月に公開される作品。

タイの刑務所に3年ほど服役したイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝を映画化したもの。タイに流れ着いて麻薬中毒になっていたムーアは現地の警察に逮捕され、劣悪な環境の刑務所に送られる。そこでは殺人やレイプや汚職が平然と行われ、言葉も通じずに自暴自棄となったムーアは数々のトラブルに巻き込まれるが、やがて刑務所のムエタイのクラブに入ったことで再び格闘技に打ち込むようになり、外国人として初めて刑務所間のトーナメントに出場することになる…というあらすじ。

話の設定だけ聞くともろに刑務所エクスプロイテーション映画のようで、主人公が拳ひとつで刑務所をのし上がっていくような内容を期待してしまうけど、A24スタジオの作品ということもあり完全にアート寄りの映画になっていた。

アート寄りの内容であっても、例えば「ザ・レイド GOKUDO」なんて似たような設定の傑作もあったし、それなりに暴力シーンも出てくるのだが、いかんせん主人公の心境とかバックグラウンドが全く説明されず、出来事が淡々と描写されていくという作りになっているため、ものすごく突き放されたような感想を抱いてしまう。「ドライヴ」みたいに主人公が謎めいていてストイックであってもいいよ、でもこの話は刑務所において主人公がいかに変わっていったかを描く作品なのだから、そこらへんを説明しないのはいかんのではないか。

原作の自伝はベストセラーになったらしく、そこでは主人公にまつわる状況がいろいろ語られてるのかもしれないけど、映画においてはまるで説明がされず、ただ次々とトラブルに見舞われているだけ。ムーアは麻薬で逮捕され、刑務所においても麻薬を入手して吸引しているようなダメ男なわけで、それに対してもっと感情移入させるような試みは必要だっただろう。なお例によって、映像化にあたってはいろいろフィクションも混じっているようです。

それでこの説明不足な内容に拍車をかけているのが、周囲のタイ人服役囚(実際の元服役囚をキャスティングしたらしい)のセリフが訳されていないこと。英語版で視聴したけど、ストーリーを理解するために必要なごく一部のセリフを除いては字幕がついておらず、タイ人たちはイレズミだらけで何を言ってるか分からない、不気味な存在として描かれている。「猿の惑星」の猿たちのほうがもっと文化的に描かれていたような。刑務所で唯一の外国人であるムーアも最後までタイ語を話さないし、なんか自分がバカやって刑務所に入れられてるのに、タイ人がやたら野蛮な人種であるかのように扱われているのが気になったよ。「クライジー・リッチ!」同様にアジア人だらけの映画ではあるものの、扱いはこうも違うものか。

監督はジャン=ステファーヌ・ソベールで主演はジョー・コール、ってどちらもよく知らんなあ…。題材をもっとうまく料理すればずっと面白い作品になれたと思うし、なんか観たあとにモヤモヤするものが残る映画でありました。

機内で観た映画2018 その2

先月と同じ航空会社を使ったせいか、あまり作品の入れ替わりがなかったような?おかげで映画を観ないでゴルフや麻雀のゲームをやってることも最近は多くなりました。ANAのゴルフゲーム、グリーンオンしてからのボールの転がり方が極端じゃないか?まったくピンの近くにボールが止まらないぞ。まあいいや:

・「オーシャンズ8」:なんか普通のケイパーものといった感じ。犯罪が計画されて、その実行がダラダラと描かれていくような。ソダーバーグの11〜13もすべてが傑作ではなかったものの、もうちょっとスタイリッシュに撮れてて話にメリハリがあっただろ。せめて音楽だけでもデヴィッド・ホルムズに任せるべきであった。

・「モンスター・ホテル クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!」:ゲンディ・タルタコフスキーのアニメは2Dのほうが好きだけれども(「Sym-Bionic Titan」もな!)、CGになっても彼なりの動きというかスタイルは顕著なので、そんなに悪くはなかったっす。でも話のネタが枯渇している感じはヒシヒシとするのよな。かつて「シュレック」が通った道というか。これ興行的にはかなり成功してしまったのだが、もう4作目はいいよね…?

・「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」:話のつかみにトム・ハンクスの「ビッグ」が流れるせいかもしれないが、なんか全体的に80年代的なノリがあるというか、別にいま作る必要があったんか?というような内容だった。頭を打った主人公が、自分を美しいと思い込むシーンで、実際に美しくなった姿をCGなどで描写しなかったのは偉いと思うけど。あと最近は真面目な役が多いミシェル・ウィリアムズが、頭の弱そうな会社社長役を演じてたのが面白かったかな、その一方でエイミー・シューマーのここ一連の出演作ってどれも評価が低いわけで、真面目な役を演じて高い評価を得ているメリッサ・マッカーシーのように、そろそろ毛色の違った役を演じるべきじゃないのか。

・「TAG」:いい年になっても鬼ごっこに興じる男性たちを主人公にした、実話を基にした物語。まあ設定は悪くないし、ジョン・ハムとかエド・ヘルムズ、ジェレミー・レナーなどいい役者は揃ってるものの、なぜ彼らが鬼ごっこを続けるのかということをきちんと掘り下げていないのでは。登場人物がAAに通っている理由もきちんと説明されないし、そうしたサブプロットをちゃんと汲み取っていれば、もっとよくできたバディ映画になっていたはずなのに残念。

しかし最近は飛行機に乗るたびに離陸が遅れるようになっていて、なんか疲れるなあ。

「ドクター・フー」シリーズ11開始


というわけでついに登場しましたよ、13代目にして初の女性ドクター。いろいろ論議を呼んだキャスティングだけど、正直なところ今までのドクターに比べてそんなに違和感がなかった。そもそもドクターって性的なものに興味がないというか、アセクシュアルなキャラクターであるわけで、男が女になったからといって性格がそんなに変わるわけでもなし。劇中でも女性になったことは簡単に触れられる程度で、あとはおなじみの冒険が始まっていく。

今回のドクターを演じるジョディ・ウィテカーって素はヨークシャー訛りが結構キツいので、セリフが何言ってるか分からないんじゃないかと心配してたが、劇中ではそんなに訛ってなかったような。団地の中というか室内に入ると、以前の出演作「アタック・ザ・ブロック」の人、のように見えてしまうのはご愛嬌。第1話は例によって前のドクターであるピーター・カパルディの衣装で大半を過ごすのだが、若くて活発的なこともあり、むしろ11代目のマット・スミスを彷彿とさせるかな?肉体が再生したばかりでも味覚は11代目にくらべて普通なようで、エッグサンドウィッチを欲しがったりします。全話で最後に発した「Aw, Brilliant!」が新キャッチフレーズになるかと思ったけどそうでもないみたい。

主役交代に加えて番組のショウランナーも、長年勤めたスティーブン・モファットから「ブロードチャーチ」のクリス・チブナル交代。「ドクター・フー」の初心者でも楽しめるような内容にされているとうことで、あまり過去の歴史などへの言及はなし。日本でも「ドクター・フー」入門編としていいんじゃないですか(日本でいつ放送するかは知りませんが)。第1話は意外にも最後までターディスが登場しなくて、前話の終わりで行方不明となったターディスを探すのが今シーズンのテーマになってくるのかな?ターディスがないため、ドクターは身近にある素材を用いて新しいソニック・スクリュードライバーを自作したりしてます:

話は冒頭からグングン進んでいって、なんとオープニング・クレジットもなし。シェフィールドに謎の物体が落ちてきて、それに関わった男女数人が謎の機械生物に遭遇。そこにドクターが登場し、さらに別のエイリアンが現れて…といった展開。製作予算が増えたのか、特殊効果もかなり迫力のあるものになってるぞ。今回のコンパニオンは、運動障害があって自転車に乗れない少年ライアン、その義理の祖父のグレアム、ライアンの元同級生で警官のヤスミンになるみたい。従来のドクターに比べてコンパニオン(BBCのサイトによると「フレンズ」が新しい呼び名になるのかな?)の数が多いあたり、ウィテカーだけでは番組を支えられないと製作陣が考えたのかと勘ぐってしまうが、真相はわかりません。

シーズンの予告編では、アラン・カミングやクリス・ノスといった今後登場する役者が紹介されるだけで、ダーレクをはじめとするおなじみの敵役などが登場するのかは一切不明。新規ファンが楽しめるようにした一方で、オールドファンには少し物足りない気もするが(オープニング・クレジットはつけて欲しかった!)、新しいドクターは十分魅力的だし、これからどんな冒険が待ち受けているのかに期待しましょう。

新作シットコム6本レビュー

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アメリカでは秋の新作ドラマシーズンが始まったのに、いろいろ忙しくて殆どチェックしてないのですが、それではいかんと思って新作コメディを6作ほど一気見したのですよ。以下はその簡単な感想:

「SINGLE PARENTS」(ABC)
「NEW GIRL」のプロデューサーふたりによるシングルカメラ作品。子育てに奮闘するシングルペアレント5人の生活をテーマにしたもの。「NEW GIRL」が若者の恋愛と結婚までを描いたものとすれば、まあこれに続きますかね。「キリング・ガンサー」タラン・キラムが能天気なパパで、ブラッド・ギャレットが無愛想なパパを演じている。「NEW GIRL」に比べれば凡庸な作品かな?
(評価:B-)

「THE NEIGHBORHOOD」(CBS)
「NEW GIRL」のシュミットを演じたマックス・グリーンフィールドが出演。黒人だらけの地区に白人家族が引っ越してきたことで、慌てふためく隣の黒人家庭を主人公にしたもの。その一家の父親にセドリック・ザ・エンターテイナー。そんなにキツい人種ネタなどはなくて、まあ穏やかな感じ。でもテーマとしてはまあまあ面白いか。
(評価:B)

「HAPPY TOGETHER」(CBS)
同じく「NEW GIRL」に出ていたデイモン・ウェイアンズJr.主演。平凡な会計士とその妻のもとに、彼のクライアントである超有名なポップスターがスキャンダルを逃れて転がり込んできたことで生活が一転するという内容。今回のなかでこれがいちばん典型的なシットコム(居間が舞台のマルチカメラ)っぽかったかな。それはつまり凡庸という意味ですが。
(評価:B-)

「THE COOL KIDS」(FOX)
クリエーターは「フィラデルフィアは今日も晴れ」のチャーリー・デイ。題名とは裏腹に、老人ホームで暮らす男3人と女1人が、管理人の目を盗んで巻き起す騒動を描いたもの。ちょっとだけネタがキツめかな?俺は主演のデビッド・アラン・グリアーが好きなので点を甘くする。
(評価:B+)

「REL」(FOX)
「ゲット・アウト」で主人公の親友を演じてたリル・レル・ハウリーが主役。シングルカメラっぽいけどラフトラックがついている。床屋に自分の妻を寝取られた主人公が、男としての威厳を取り戻そうと頑張る内容。主人公の父親をシンバッドが演じていて、久々に顔を見たな!コメディとしてはまあまあ。
(評価:B)

「I FEEL BAD」(NBC)
老いを感じつつも、仕事と子育てを頑張るママさんが主人公のシングルカメラ作品。ヒスパニックの両親がいる家庭の部分と、ゲーム会社でオタクどもと働く職場の部分がなんかつながってなくて、2種類のコメディを見ているような感じ。幼い娘が「MY HUMPS」にあわせてエロく踊るのを見て仰天する、って10年前のネタかよ!
(評価:C)

というわけで全体的にパッとしない作品ばかりでございました。シットコムって話数が進むうちにスタイルがこなれていって面白くなるケースも多いので、第1話で評価するのは酷kもしれないが。あとはやはり子育てのネタになったりすると、個人的には全くピンとこないのよね…。