新作シットコム6本レビュー

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アメリカでは秋の新作ドラマシーズンが始まったのに、いろいろ忙しくて殆どチェックしてないのですが、それではいかんと思って新作コメディを6作ほど一気見したのですよ。以下はその簡単な感想:

「SINGLE PARENTS」(ABC)
「NEW GIRL」のプロデューサーふたりによるシングルカメラ作品。子育てに奮闘するシングルペアレント5人の生活をテーマにしたもの。「NEW GIRL」が若者の恋愛と結婚までを描いたものとすれば、まあこれに続きますかね。「キリング・ガンサー」タラン・キラムが能天気なパパで、ブラッド・ギャレットが無愛想なパパを演じている。「NEW GIRL」に比べれば凡庸な作品かな?
(評価:B-)

「THE NEIGHBORHOOD」(CBS)
「NEW GIRL」のシュミットを演じたマックス・グリーンフィールドが出演。黒人だらけの地区に白人家族が引っ越してきたことで、慌てふためく隣の黒人家庭を主人公にしたもの。その一家の父親にセドリック・ザ・エンターテイナー。そんなにキツい人種ネタなどはなくて、まあ穏やかな感じ。でもテーマとしてはまあまあ面白いか。
(評価:B)

「HAPPY TOGETHER」(CBS)
同じく「NEW GIRL」に出ていたデイモン・ウェイアンズJr.主演。平凡な会計士とその妻のもとに、彼のクライアントである超有名なポップスターがスキャンダルを逃れて転がり込んできたことで生活が一転するという内容。今回のなかでこれがいちばん典型的なシットコム(居間が舞台のマルチカメラ)っぽかったかな。それはつまり凡庸という意味ですが。
(評価:B-)

「THE COOL KIDS」(FOX)
クリエーターは「フィラデルフィアは今日も晴れ」のチャーリー・デイ。題名とは裏腹に、老人ホームで暮らす男3人と女1人が、管理人の目を盗んで巻き起す騒動を描いたもの。ちょっとだけネタがキツめかな?俺は主演のデビッド・アラン・グリアーが好きなので点を甘くする。
(評価:B+)

「REL」(FOX)
「ゲット・アウト」で主人公の親友を演じてたリル・レル・ハウリーが主役。シングルカメラっぽいけどラフトラックがついている。床屋に自分の妻を寝取られた主人公が、男としての威厳を取り戻そうと頑張る内容。主人公の父親をシンバッドが演じていて、久々に顔を見たな!コメディとしてはまあまあ。
(評価:B)

「I FEEL BAD」(NBC)
老いを感じつつも、仕事と子育てを頑張るママさんが主人公のシングルカメラ作品。ヒスパニックの両親がいる家庭の部分と、ゲーム会社でオタクどもと働く職場の部分がなんかつながってなくて、2種類のコメディを見ているような感じ。幼い娘が「MY HUMPS」にあわせてエロく踊るのを見て仰天する、って10年前のネタかよ!
(評価:C)

というわけで全体的にパッとしない作品ばかりでございました。シットコムって話数が進むうちにスタイルがこなれていって面白くなるケースも多いので、第1話で評価するのは酷kもしれないが。あとはやはり子育てのネタになったりすると、個人的には全くピンとこないのよね…。

「クレイジー・リッチ!」鑑賞


公開したばかりなので感想をざっと。あまり客が入ってないという話も聞いたけど、休日の六本木で観たせいか席もいっぱいで客のノリも良かったでよ。

・ラブコメって劇場であまり観たことはないのですが、安心して観られるラブコメの王道のような作りだし、皆で笑えるところもいろいろあって面白かったでございます。

・経済的格差の激しいカップル、という設定に加えて、家のためにどこまで自分を犠牲にできるのか、という要素を持ってきているところがアジア的なのかな。そして家のために尽くすわけでもなく、かといってアメリカンな個人主義を貫くわけでもなく、うまく話を着地させてるところが巧いなと。

・ボーイフレンドが寛大すぎるんじゃね?という見方もあるでしょうが、それの比較対象としてもう一組の夫婦を持ち出してきて、勇気を出して問題に立ち向かわないと失敗するよ、というのをきちんと描いてましたね。

・全体的に小道具の使い方が上手で、麻雀稗は当然のことながら、指輪やイヤリングを使って登場人物の心境を説明しているのも良かったな。

・姑役のミシェル・ヨーは適材適所。もっと怖くてもよかった気がするけど。主役のコンスタンス・ウーは「Fresh Off The Boat」では中国語訛りのある役を演じているので、訛りのない演技を見たのは新鮮でございました。アジア人女性であることに加えて、あの貧乳でハリウッド映画の主役を務めたことはかなり画期的だと思いますが、あまりそこには触れないようにします。

・マレーシア人のヨーと台湾系のウーに加えて、韓国系のアクアフィーナとか中国系のジェマ・チャンとか、ひとえにアジアンズといいつつも様々な系統(?)のアジア人俳優が集まっているのがいいですね。個人的にはソノヨ・ミズノがいつばん魅力的だと感じましたが、日系だからなのかしらん。

・日本のレビューでは例によって「中国資本のプロパガンダ」と見なす輩もいるようだけど、大金だしてシンガポールの宣伝をするほど中国政府は暇じゃないっす。あとアメリカで大ヒットしたことを「アジア系に受けた」というのも正しくはないような。3週間も興収1位になったということは、アジア系に限らずいろんな人種の観客に受けたということでしょ。

・シンガポールが舞台なのにインド系とかムスリムが登場しない、という批判は確かにその通り。でもやはりハリウッドのメジャースタジオ作品において、キャストがみんなアジア人の映画が大ヒットしたというのは歓迎すべきことでしょう。これがハリウッドにおけるアジア系俳優が抱えている問題のすべてを解決するものではないけど、大きな躍進となった作品だと思います。

「DAVE MADE A MAZE」鑑賞


低予算のファンタジー・コメディ映画。日本では「キラー・メイズ」の邦題で10月に公開予定。

週末を留守にしていたアニーがアパートに帰ってくると、同居しているデイヴが部屋の中心にダンボールで巨大な迷路をつくっていた。呆れたアニーは迷路のなかに入り込んでいるデイヴに出てくるように伝えるものの、デイヴ曰くこの迷路は外見よりも内部が巨大になっており、彼はそこで3日間閉じ込められたままだという。困ったアニーは友人のゴードンを呼び、さらにドキュメンタリー撮影のクルーや浮浪者、観光客なども部屋にやってきてしまう。しびれを切らしたアニーは、迷路の中に入るなというデイヴの警告を無視し、皆を引き連れて迷宮のなかに入り込むものの、そこは確かに巨大な摩訶不思議な空間が広がっており、さらに危険な罠が彼女たちを待ち構えているのだった…というあらすじ。

登場するダンボール製の迷宮は「アントマン&ワスプ」の冒頭に出てくるようなやつで、日本では高校の文化祭でクラスルームに作られそうなチープなもの。内部の壁もダンボールでできているようで、「レイダース」ばりに空飛ぶ刃が仕込んであったり、巨大な折り紙のツルが襲いかかってきたりと危険がいっぱい。そこで殺された人間は紙吹雪の血を撒き散らして死んでしまうのだ。

発想的には奇抜で悪くないんですよ。子供のごっこ遊びのイマジネーションをそのまま映像化した感じというか。ただじゃあ迷路が意味するものは何か?という説明ができてなくて、ただ中に入った人たちが迷路のからくりに翻弄されるさまが次々と映し出されるだけで、80分という尺ながらも少し冗長に感じてしまった。タルコフスキーの「ストーカー」までとは言わないが、迷路が登場人物の心理に与える影響みたいなものをもっと描くべきではなかったか。いちおうデイヴが今まで何も完成させたことがなく、それに対する気持ちで迷宮を作ったことや、デイヴとアニーの微妙な関係なども語られるものの、どれも話の本筋につながるものではなくて中途半端。もうひと捻り欲しかったなあ。これもっと面白くなった可能性は十分にあるのに。

監督の名前はビル・ワターソンだそうだけど「カルビン&ホッブス」の作家ではないです。長らく俳優をやってる人で、これが監督デビュー作らしい。出演者は比較的無名な人が多いかな。「REVIEW」のジェームズ・アーバニアクがドキュメンタリーの監督を、「REVIEW」のプロデューサーとほとんど同じ感じで演じてます。このドキュメンタリー、このご時世に4:3のアスペクト比で撮影してるのは何故なんだろう。あとはWWEのプロレスラーとかOK GOのベーシストとか、なんかよく分からない人たちが出演していた。

なおエンドクレジットでは「折り紙はここから寄贈された」と全米各地(?)の折り紙協会(そんなものがあるのか!)がクレジットされていて、折り紙の作成者の名前もずらずらと並べられている。そんなに折り紙が出てきたっけ?とも思ったけど、「ORIGAMI CREATED BY」というクレジットがある数少ない映画であることは間違いないだろう。

「ザ・プレデター」鑑賞


公開中なので感想をざっと。ネタバレ注意:

・まー気楽に観る分にはいい映画なんじゃないでしょうか?劇場にいながらも日曜洋画劇場を吹替で観ているような感覚に陥ってしまたよ。プレデターが出てきて、アクション満載で、ツッコミどころは多いのだけど楽しめる作品というか。観客が何を期待しているかは理解している作り方ですかね。

・その一方で、観客が本当に「プレデター」という作品に何を期待すべきなのか、ちょっと考えさせるものでもあった。「エイリアン」はリドリー・スコットが復帰したし、「ターミネーター」はシュワルツネッガーが復帰したことでフランチャイズとしての筋がそれなりに通っているかもしれないが、「プレデター」はそれがないので焦点がブレている気がするのよな(シュワはカメオ出演の依頼を断ったらしい)。

・でまあ今回は地球人にそこそこ友好的なプレデターが登場したり、プレデターと意思疎通ができたりという新展開が起きるわけだが、ジャングルで人を狩る謎の宇宙人、という第1作のコンセプトから遠く離れたものになったのは仕方ないことか。ただラストのあれはなー。「インデペンデンス・デイ」みたいにはなって欲しくないのです。

・初週の興行成績がさほど大きくなかったことと、シェーン・ブラックのキャスティングが物議を醸したことなどから、このままの監督とキャストでの直接の続編が作られる可能性は低いんじゃないだろうか?新作が企画されるころにはFOXとディズニーの合併も行われているだろうし、いちどフランチャイズを完全リブーとしても眉をひそめる人はそんなにいないんじゃないかと思います。

機内で観た映画2018 その1

ちょっと長いフライトに乗ったので、機内で観た映画の感想をざっと。R指定の作品が多かったので、劇場版にくらべて内容がどの程度カット・編集されてるかはよくわかりません:

・「UPGRADE」:ジャンル映画界隈で話題のSFアクション。暴漢に妻を殺されて自分は四肢麻痺になった男が、首に実験的なコンピューターチップを埋め込まれて運動機能を取り戻し、自分を襲った者たちに復讐していくというもの。チップに身を任せることでケンカのプロとなるあたりがちょっとコメディっぽいけど、意外と真面目にSFしている作品ではありました。変に自動運転車のようなSFガジェットを出さず、もっと現代的な描写にしても良かったと思うけど。「ハードコア(・ヘンリー)」が好きな人なら楽しめるのでは。

・「クワイエット・プレイス」:アメリカでは大ヒットしましたけどね。被災地で音を立てずに歩くのなら裸足でなく分厚いスリッパ履けよ、とか電気はどこから持ってきてるの?といった設定の細かい点がなんか気になってしまった。ストーリーも捻りがあるかと思いきやそうでもなかったし。お金のかかった「トワイライト・ゾーン」の1エピソード、といった感じ。

・「LEAN ON PETE」:父親を失った少年が、殺処分されそうな競走馬を連れて遠くの親戚の家に行こうとする青春ロードムービー。批評家の評判が良いので観てみたけど、まあ普通のドラマといったところかな。スティーヴ・ブシェミにクロエ・セヴィニー、スティーブ・ザーン、エイミー・サイメッツといったインディペンデント映画の名役者がちょっとだけながらも顔を揃えているのは凄いんだけどな。

・「タリーと私の秘密の時間」:マニック・ピクシー・ドリーム・ガール(死語)の新たな発展系か?と思ってたらまさかの結末。うーん。この監督・脚本・主演なら「ヤング・アダルト」の方が良かったな。ロン・リビングストンはいつだって好きですが。