アステリックスの新作

フランスの国民的コミック「アステリックス」の創刊50周年を記念して、新作「Asterix and Obelix’s birthday – The Gold Book」がこないだ発売されたらしい。前作「Asterix And The Falling Sky」がダメダメだったので今回の出来が気になるところですが、どうも「Asterix and the Class Act」のように短編が集められた番外編的な内容になってるらしい。まっとうな長編を期待してたので残念。

最近の「アステリックス」の出来についてはBBCが厳しい記事を載せていて、要するにルネ・ゴシニがストーリーを担当してた頃は面白かったけど、彼の死後にアーティストのアルベール・ユデルゾがストーリーも書くようになってからダメになっていったというもの。まあ確かに近年の作品の出来は悪くて、変にフェミニズムを取り入れた「Asterix and the Secret Weapon」とか「Asterix and the Actress」や、「スパルタカス」の変なパロディだった「Asterix and Obelix All at Sea」は昔の作品に比べると非常にツマらなかった。でもその前の「Asterix and the Magic Carpet」や「Asterix and Son」は結構面白かったので、ユデルゾのストーリーを全否定する気にはなれないんだよな。あと彼がマーチャンダイジングで儲けてることも批判してるけど、それはまあ仕方ないでしょ。マーチャンで儲けなかったコミック作家なんてビル・ワターソンくらいのものだし。

そしてユデルゾは自分の死後も「アステリックス」が続くことを希望してるらしくて、既にアートの大半を息子が担当しているという話を聞いたことがあるけど、ここ最近の作品のクオリティが続くようならいっそ終わらせてしまったほうが良い気がする。

ちなみに俺のお気に入りは「Asterix and the Normans」「Asterix at the Olympic Games」「Asterix and the Chieftain’s Shield」「Asterix and Son」あたりかな。面白いコミックなのに日本ではまるで知られていないのが残念。

ディズニーがマーヴェルを買収

晴天の霹靂。金持ってんなネズミ。

ネズミ嫌いの俺としてはこのニュースがあまり歓迎できなくて、ワインシュタイン兄弟がいた頃のミラマックスみたいに、過激な内容の作品にケチつけてくるんじゃないかと心配なのです。「マーヴェルマン」とか復刊できないじゃん。あとコミックの映画化についても今までは複数のスタジオへ権利を売れたのが、今後はディズニーに一本化されて製作本数が減ってくるんじゃないかと。ここらへんはワーナー参加のDCがそうだからね。

契約の詳細を知らないからあまり何とも言えませんが、せめてユニバーサルとかに買収されてほしかった。

「100 BULLETS: WILT」読了

傑作クライム・コミック「100 BULLETS」の最終巻。全12話を収録という大ボリュームのなか、最後のクライマックスに向けた怒濤のストーリー展開が語られていく。

ここ数年の「100 BULLETS」の問題として、世界を牛耳る集団「トラスト」のメンバーたちとエージェント・グレイヴス率いるミニットメンたちの対立・駆け引きが深まるにつれ、金持ちの白人連中が酒を飲みながら今後の出方を語り合うという場面が多くなり、連載開始時の大きなテーマだった「ごく普通の人が100発の銃弾と復讐の機会を与えられる」というアングルから離れていったことが挙げられる。不幸にあえぐ市井の人々の描写がこの作品では傑出してたんだけどね。当然ながらこの最終巻ではトラストとの全面対決に焦点があてられるため、金持ちの豪邸を舞台にした密室劇の場面が多分に描かれるんだが、アクションの場面がうまく挿入されていることや、話がグングン進んでいくことから今までほどは気にならなかったかな。また物語の結末はすべての謎が解き明かされるようなものではなかったものの、長らくついてきたファンを満足させてくれる終わりかたであった。

そしてエデュアルド・リッソによるアートは相変わらず最高。貧しいスラムから高級住宅、ゴロツキから美人の富豪までが巧みに描き分けられ、アクション満点のシーンからドラマチックな場面までが、影を効果的に用いたスタイルによってページに描かれていく。今後彼がどんな作品を手がけことになるのか知らないけど、何であれ彼の作品なら手にする価値はあるだろう。というか今後も「100 Bullets」の外伝的作品が作られるかもしれないという噂は本当なのかな。

ここ10年くらい読んできたシリーズが終わってしまうのは残念な限りだが、最後まで読み応え十分の作品を作りだしたブライアン・アザレロとエデュアルド・リッソに感謝。

ただ一つだけ言わせてもらうと…レミ・ロームがヘタレすぎ!最後に覚醒したミニットメンという身分から、どんな凄い奴なんだろうと思っていたら単に口の達者な若造で、俺の好きな登場人物を間違って殺すし、自身のやられ方もカッコ悪いし、最後まで情けない奴であった。奴の兄貴も頼りがいがあるようでヘタレだったし。あの2人がもっと興味深いキャラだったらシリーズの後半はもっと面白くなってたと思うんだがなあ。

マッドハウス版「アイアンマン」


日本のアニメ製作会社マッドハウスがマーヴェルと組んで、「アイアンマン」をはじめとするマーヴェルのキャラのアニメを4つ作るのだそうな。個人的に日本のアニメってあまり興味がなくて、特に上のトレーラーのような黒の多い画は好きじゃないのですが、ストーリーを担当するのが「GI JOE: RESOLUTE」のウォーレン・エリスだというのは期待できそうかも。ただしエリスは以前にコミックで「アイアンマン」を手がけた際は発刊が遅れに遅れグダグダになった前科があるので、今回はもっとマシなものにしてほしいところです。一方「ウルヴァリン」のほうはかなりヒドい出来になってますが。

日本のアニメといえば、天下のニューヨーク・タイムズに、日本の「二次元萌え」に関する長い記事が載っておりまして、聞き慣れたような話であっても英語で「Furnace of Child Love」なんて書かれたりすると確かに引くものはあるよな。読者のコメントにもあるように、こういうのはあくまでも極端な例であることを皆が理解してくれればいいんですが。

「SUPERMAN: RED SON」鑑賞

マーク・ミラー&デイヴ・ジョンソンによるコミックのモーション・コミック版。世間的には評価の高い作品だけど、前に読んだときはあまり面白いとは思わなかったかな。いわゆる「もしも…」の世界を描いたエルスワールズもので、スーパーマンがアメリカではなくソビエトで育ったという設定のもと、冷戦における最終兵器としてのスーパーマンと、彼を打ち負かそうとするレックス・ルーサーの勝負を描いた内容になっている。

アーティストのデイヴ・ジョンソンって「100 BULLETS」の表紙絵とかで知られる人で、要するに動きのある描写よりも表紙のような静止画を得意としてるわけだが、そのスタイルはコマごとに細かく切り抜かれて動きがつけられるモーション・コミックには合ってないような気がする。またマーク・ミラーは長ったらしくて皮肉のきいたセリフを書くことで人気があるライターだけど(おかげで最近の彼の作品は口の達者なキャラばかりが登場することになった)、実際にそれらのセリフが音読されると非常に長くてわざとらしいものに聞こえてしまう。アートの動き具合も「ウォッチメン」とかに比べて堅いところがあって、DCコミックスのモーション・コミックとしては出来が悪い作品であった。