「Batman: White Knight」や「Chrononauts」(ストーリー:マーク・ミラー)、さらにこないだ映画化が発表された「Tokyo Ghost」(ストーリー:リック・リメンバー)といった人気コミックを連発し、勢いに乗っているアーティストのショーン・マーフィーによるSFファンタジーコミック。1年前にIndiegogoでのクラウドファンディングに出資してな、完成品が届いたのだよ。
舞台となるのは電子書籍を管理するプログラムの中の世界。毎日数多くの書籍がそこに投入され、エド(エディター)と呼ばれる老女が実際に本の中の世界に飛び込んで必要な校閲を行って書籍を管理していたが、謎のウィルスのよって多数の書籍が破壊されていることに彼女は気づく。ウィルスに対抗するために彼女は様々なジャンルの本から優秀な戦士たちを集め、「プロット・ホールズ」というチームを結成してウィルスを撃退しようとするのだが…というあらすじ。本の世界と現実世界(プログラムだが)が交錯するさまはマーフィーがグラント・モリソンと組んだ「Joe The Barbarian」に少し似ているかな。
主演はマーベル古参のヴィラン、Mental Organism Designed Only for Killing(殺害のみを目的として設計された知的生物)ことモードック。60年代にジャック・カービー御大によって創造されたキャラで、悪の科学組織A.I.M. (Advanced Idea Mechanics)のメンバーが人体実験によって超人的な知性を取得し、その知性をもってスーパーヒーローたちを長らく苦しめてきた悪役なのであります。しかしそのいかつい名前(カービーはキャラクターの命名については直球勝負の人だった)とか、でっかい頭に小さな手足がついているデザインが徐々に時代遅れになっていって、最近はコミックのほうでも面白キャラ扱いされていたような。
このように画面の左右に黒みが入ったまま、話は幕を開ける。前作「バットマン vs スーパーマン」で殺されたスーパーマンの断末魔(とてもうるさい)が世界中に響き渡り、3箇所に隔離されていたマザーボックスがそれによって覚醒する(なぜ?)。そしてマザーボックスを狙ったステッペンウルフが地球にやってくる、というのが話のはじまり。マザーボックスは原作の「生きた(治療用)コンピューター」という設定と大きく違っていて、ステッペンウルフの親分であるダークサイドがそれを用いて惑星を征服するという、マーベルのギャラクタスの惑星エネルギー吸収マシンみたいなものになっていた。
このステッペンウルフの目的を阻止するためにヒーローたちが集うのはウィードン版と同じ。ただ2時間も長いのでいろんなキャラクターが登場したり、設定に肉付けがされている。一番良かったのはザ・フラッシュの登場シーンで、高速で移動することで止まってる人たちを助ける描写は「Xメン」のクイックシルバーの「Time In A Bottle」のシーン並みに良かったですね。さらにフラッシュ以上にサイボーグのバックストーリーに時間が割かれていて、彼がなぜああいう姿になったのかとか、父親との関係などがじっくりと説明されている。
そしてステッペンウルフとの最終決戦のあと(最後のあれ、リチャード・ドナー版スーパーマンを連想した人います?)、ちょっとガラリと展開が変わるエピローグが加えられてるのですが、あれは俺に続編を作らせたらこんなのできるぜ、というスナイダーのアピールなんだろうか。まあアクアマンもワンダーウーマンもソロで活躍しちゃってるし、バットマンも役者が交代してるので、スナイダー版の続編は作られることはないだろうな…。なおエピローグでの「Congratulations by the way」が何を意味するか、分かりますよね?