ドジで愉快なテロリストたちの姿を描いた、クリス・モリスの映画「FOUR LIONS」のトレーラーが公式サイトにあがっていた…というかイギリスでは今週公開かよ!観たいなあ。日本で公開される可能性ってあるんだろうか。最近は観てみたいイギリス映画がずいぶん増えたような気がする。
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「プレデターズ」の展開を勝手に予想する
意外にも日米(ほぼ)同時公開ということで7月10日に「プレデターズ」がやってくるわけだが、ストーリーは異星に連れてかれた8人の人間(プラス1名)がプレデターによって狩られていく、というリアリティー番組のような展開をもったものになるらしい。というわけでトレーラーの内容とSF映画のクリーシェを判断基準にして、誰がどの順番で狩られて誰が生き残るのかを自分なりに推測してみたいと思うのですよ。
ウィキペディアによると異星に連れてかれるのは以下の8人。彼らの生存の可能性をそれぞれ考えてみよう。
・ロイス(元傭兵):エイドリアン・ブロディが演じる主人公。シュワルツネッガーみたいに筋肉に頼るタイプではなく、チームワークを使う策士だそうな。主人公なので当然終盤まで生き残るだろうが、最後まで生きているのか、それとも他の人間を守るために最後で華々しく散るのかの見極めが難しいところ。続編も視野に入れてるだろうから恐らく生き残るのでは?
・エドウィン(医者/連続殺人犯):医者というのがポイント。傷ついた仲間を治療する役として中盤くらいまで生き残るのでは。でも実は殺人犯だというのがバレて周囲に信用されなくなり、自分を証明するために我が身を犠牲にして皆を助ける、というような展開が待っているだろう。
・クチロ(麻薬カルテルのメンバー):トレーラーで「俺らにチームワークなんて関係あるのかよ!」なんて言ってる時点で死亡フラグ立ちまくり。協調性を無視した報いとして真っ先に狩られるであろう。ただしダニー・トレホはロドリゲスの次回作で主演を務めるので、それなりにカッコいい見せ場が用意されているかもしれない。
・イザベル(スナイパー):紅一点。よって終盤まで生き残る。スナイパーという遠距離攻撃型なのも利点だな。もっと幼い少女ならば絶対に生き残るんだけど(「エイリアン2」)、「アバター」のミシェル・ロドリゲスみたいに終盤でやられるかも?ヒロインとしてのキャラがどこまで立つかが生死の分かれ目になるだろう。
・モンバサ(シエラレオネの兵士):SF映画の黒人って大抵は使い捨て要員だったんだけど、最近はそうでもないかな?(「ピッチ・ブラック」)ただしよりハクのある黒人俳優(下を見よ)がいることと、暗殺団の兵士という肩書きが災いして長生きはできないだろう。
・ニコライ(ロシアのコマンドー):なんか特徴のなさそうなキャラ。よって早い段階で狩られるのでは。
・スタンズ(死刑囚):演じるウォルトン・ゴギンズは「JUSTIFIED」で素晴らしい演技を見せているので長生きしてほしいところですが、いかんせん悪人顔なので生き残りはしないだろう。でも死刑囚がすぐ死んでしまっては面白くないので、中盤くらいまでは生存するかな。
・ハンゾウ(ヤクザ/ニンジャ):たぶん日本人にとってはいちばん見るのが苦痛なキャラでは?せめて日本人俳優を使えよ!日本刀を使ってプレデターと戦うあたりは「お、やるじゃん」と思わせるキャラかと。でも中盤か終盤あたりでさすがに力不足となってやられると思う。
・ノーランド(元兵士):上記の8人よりも前に惑星に連れてこられて、ずっと生き延びてたベテランという扱いらしい。演じるのがローレンス・フィシュバーンということもあり準主役的な存在では?でもラスボスの強さを強調するための噛ませ犬となって終盤に散ることになるであろう。
というわけで彼らが狩られる順番を予想すると:
1、クチロ
2、モンバサ
3、ニコライ
4、スタンズ
5、ハンゾウ
6、エドウィン
7、ノーランド
8、イザベル(生存)
9、ロイス(生存)
となるかな?うまく当たったらご喝采。でも本当にこの通りだったらクリーシェだらけの映画というわけなので、むしろ良い意味で裏切って欲しいところもあるな。
そしてラストはやはりあれですよ!生き残った主人公たちが地球に帰ろうとすると、彼らの目に入ったのは朽ち果てた自由の女神だった。なんと彼らがいた惑星は未来の地球だったのだ!という展開。同じフォックス作品だし、これやってくれたら俺はロドリゲスを一生リスペクトするよ!
「JONAH HEX」トレーラー
なんかツマらなそう…試写の評判も悪いようで。普通にハードボイルドなウェスタンやってくれればいいのに、派手なアクションとかスーパーナチュラルな要素を入れられてもどうかと。ジョン・マルコヴィッチってチープなこういう悪役をやたら引き受けてるよな。「THE WIRE」のランス・レディックが出ている点は期待できそうだけど。
ピストルズちょっといい話
マルコム・マクラーレンの死に関して、ロジャー・イバートのブログに70年代にマクラーレンがラス・メイヤーを雇ってセックス・ピストルズの映画を撮らせようとしたときの話が記されていて、非常に興味深い内容になっている。
ことの発端はメイヤーの「ワイルド・パーティー」をマクラーレンが気に入ったことで、彼にピストルズ版「ハード・デイズ・ナイト」を撮らせようとしたことにある。早速メイヤーとイバートはLAでマクラーレンと会い、彼とメイヤーはウマが合わなかったものの、とりあえず20世紀フォックスも絡め、イバートが脚本を書いて映画を作ることになったそうな。
キャスティングもマリアンヌ・フェイスフル(!)がシド・ビシャスのヘロ中の母親を演じる話があったそうで、打ち合わせのために今度はメイヤーとイバートがロンドンに行き、そこでジョニー・ロットンとシドに出会ったらしい。当時のロットンはマクラーレンがろくに金を渡さなかったせいでガリガリに痩せていたそうだが、それを見たメイヤーが彼に分厚いステーキを奢ることにした時のやりとりが面白い。メイヤーって従軍経験を非常に楽しんだ人なんだけど、こんな感じ:
メイヤー:ジョンよ、お前さんのそんな細い腕では軍隊に入ったら1日ともたんな。
ロットン:何で俺が軍隊なんかに入らなきゃならないんだよ!
メイヤー:よく聞けこのクソガキ、わしらはお前たちのためにバトル・オブ・ブリテンを戦ったんだぞ!
イバート:(実のところアメリカはバトル・オブ・ブリテンに参加していないことが頭に浮かんだが、私はとりあえず黙っていることにした)
そのあとこの映画の話は例によってスタジオが手を引いたり、金のことでモメたりして立ち消えになってしまったのだが、後にジュリアン・テンプルが監督した「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」にメイヤーが撮影したショットが使われてるんだとか。ラス・メイヤーによるセックス・ピストルズの映画ってのは観てみたかったなあ。でもブログにあるイバートの脚本の抜粋を読む限り、なんかツマらなそうな話ではあるんだけどね。
「Operation Filmmaker」鑑賞
前から興味のあったドキュメンタリー。事の発端はアメリカが侵攻してから1年後のイラクから始まる。ムサナ・モハメドは映画監督になることを夢見る25歳の青年だったが、通っていた映画学校は爆撃で破壊され、映画関係の本を市場で漁るしがない日々を送っていた。しかし彼の姿がアメリカのMTVで放送されたことで彼の生活は一変する。その番組を見ていたリーヴ・シュレイバーが彼に興味を抱き、自分が監督する映画「僕の大事なコレクション」のスタッフとしてプラハにムサナを招くことにしたのだ。突然訪れた幸運に目を輝かせるムサナ。そしてこのドキュメンタリーは彼の努力を映した感動的なものになるはずだったのだが…。
悲しいかな、イラクの中流家庭でスポイルされて育ったムサナはあまりにもエゴが強く、他力本願な若者であった。自分の境遇に感謝しつつも、撮影現場では雑用ばかりやらされると愚痴をこぼし、簡単な編集の仕事を任されてもパーティに遊びに行ってしまったりして、徐々に彼は周囲の人間に迷惑をかけていくことになる。シュレイバーをはじめとするスタッフたちは彼を招いた手前もありムサナにきつく当たるようなことはしないものの、ビザの期限が迫っても具体的なことを何一つしない彼の扱いに皆が困惑していることがよく分かる。
おまけにイラクの情勢はどんどん悪化し、家族にさえも国に帰ってくるなと言われたムサナは映画の撮影が終わってもプラハに塩漬けになり、アメリカへ行くことを画策する。どうにかプラハに留まる許可をもらった彼は前の現場で得たコネで今度は「ドゥーム」の撮影に携わることになるのだが、そこでも彼は大した仕事をしなかった。しかし彼は人の行為に甘えることについては天性の才能を持っていて、イラク人である境遇を言葉巧みに訴えながら、何と「ドゥーム」の主役であるザ・ロックにイギリスの映画学校の学費を払ってもらうことに成功する!
こうして彼はイギリスへ渡るのだが、相変わらず生活費が無いのに働くのが嫌でバイトもせず、あらゆる知人に電話をして金を無心してばかり(しかもそれなりの額)。さらにはこのドキュメンタリーの監督にまで金をせびるのだからたちが悪い。おかげで最後のほうはムサナと監督のケンカが続くという展開になってしまっていた。結局のところ監督が(それまで渡していた金に加え)手切れ金のようなものを渡す形で両者は別れて映画は幕を閉じるわけだが、現在でもムサナはイギリスでどうにかやっているらしい。
ムサナがろくな人間でない事は序盤から明らかになるわけだが、彼を単なる悪人としてとらえることには抵抗感があって、不思議と魅力的な人間ではあるんだよな。だからプラハでガールフレンドを作ってたりするし、彼の映像を見たニューヨークの映画学校の職員が「僕も家が貧しくて苦労した。だから僕は彼の気持ちが分かるんだよ!」と感激したり、その学校のディレクターが「彼ってハンサムね。私だったらどんな映画にも出演させるわ」なんて言ったりするわけだ。
またアメリカ人のほうにもムサナを利用する魂胆があるのが明らかで、このドキュメンタリーが撮られた当初の理由がそうだし、ザ・ロックもカメラの前で彼に学費を負担することを伝えてたりもする。「僕の大事な〜」のプロデューサーはムサナの話を「エンターテイメント・ウィークリー」誌に売り込むんだけど、彼がジョージ・ブッシュを支持しているのを知って絶句する場面もあったりする。要するにみんな彼をダシにして美談を作りたかったのよ。
ただアメリカの批評にあるような、これをイラク戦争のアレゴリーとして見る考えはどうかと思うけどね。国が戦争になったからって人の性格が突然変わるわけでもないだろうから。俺もむかしアイルランド政府の金でダブリンに移住していたボスニア難民で、すごく性格が悪い奴に会ったことがあるっけ。とにかく善意が悪い方向に進むとどうなるかの一部始終をしっかりとらえたという意味では、非常に興味深いドキュメンタリーであった。