「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン 」鑑賞


実は前2作をまっとうに観てませんでして、マイケル・ベイの映画を観るのって「パール・ハーバー」以来になるのです。

観てて実感したのは、マイケル・ベイって根本的に「溜め」が作れない人だなということ。せいぜいアクションシーンにスローモーションをかけるくらいで、話の流れに緩急がつけられないから話が盛り上がるべきところで盛り上がらず、ただただ同じペースで話が進んでしまうんだよな。悪役のディセプティコンが「オートボットどもを地球から追い出せ!」と命じ、人類がそれにすぐ従ってオートボットを追放する一連の流れもさらっと描かれてるから違和感を感じてしまうし、このためオートボットが戻ってきたときも抑揚感がまるで感じられないのですよ。重要なキャラクターが裏切るシーンなんかもきちんとした前振り的な演出がされてないから、ものすごく唐突な印象があったし。こんな演出でもアクションシーンはまだ観てて飽きないところがあるものの、人間同士のドラマのシーンになったりすると目も当てられない状態になっていて、みんな大声で叫ぶだけで感情の盛り上がりなどが徹底的に欠けておりました。

そんな演出がされている出演者たちですが、主人公の小僧は奇声をあげているだけでカッコよさはまるでなし。ヒロインのクチビルオバケ(演技経験なし)は2度と映画に出るベきではないだろう。脇役にはフランシス・マクドーマンドやジョン・タトゥーロ、ジョン・マルコヴィッチ、ケン・チョンなどといったいい俳優を揃えてるのに、とても適当な演技しかしてないのが残念なところ。というかマルコヴィッチとチョンって出る意味なかったんじゃないか?あのストーリーに無縁なキャラクターがいなければ尺も20分くらいは削れたんじゃないかと。そして悪役を演じるマクドリーミーはいつ見ても殴りたくなる顔をしている。

こういう映画に大金がかけられて製作されるのって何かおかしいと思うよ。うーん。

「ランゴ」鑑賞


実はゴア・ヴァービンスキーの映画観るのってこれが初めてだったりする。彼が監督してジョニー・デップが主役の声を演じたCGアニメ。

演技好きなペットのカメレオンが、飼い主の車から放り出されて砂漠をさまよっているうちに動物たちの暮らす町に辿り着く。そこで彼は自らを「ランゴ」と名乗り、持ち前のハッタリと運の良さに助けられて町の保安官に任命され、町の貴重な水の蓄えを盗んだ連中を追跡するのだが…というような話。

最初はリアルに人間が出てくるものの、いつの間にか動物たちが人間のように暮らす町が出てくるわけだが、そういう細かいところにいちいち突っ込んでられないほど話が奇妙というかぶっ飛んだ映画だったよ。主人公のランゴの性格からして何かヤバいくらいに天然だし、話の展開も荒唐無稽。プロット自体はシンプルなのでストーリーが破綻しないで済んでいるものの、ピクサーやドリームワークスのアニメとは明らかに違った出来のものになっている。あの2社の作品のルーツがディズニー作品にあるとしたら、こっちのはもっとブラックなルーニー・チューンズやハンナ・バーベラ、あるいはもしかしたらラルフ・バクシの作品にあるんじゃないかと。

そしてプロットは「チャイナタウン」やマカロニ・ウェスタンをベースにしているし、「ラスベガスをやっつけろ」とか「地獄の黙示録」とかのパロディもあって、対象年齢は40代以上か?といった感じ。ランゴ以外のキャラクターの造形も結構グロテスクで、ヒロインにいたっては日野日出志のキャラクターみたいだったぞ。よって子供向けだとかジョニー・デップのオサレな映画だと思って観にいくとドン引きすることになるかもしれない。

でもアニメ映画としては比較的長尺ながら話のテンポも良いし、アクションシーンもすごくスピーディーであるほか、アニメーションの出来も夜や夕方のシーンが素晴らしかった。個人的にはかなり楽しめる作品でしたよ。今までのアニメ映画とは異なったところを突いていて、これを作ったILMはピクサー/ディズニーとドリームワークスに次ぐ第三の勢力になるかも(まあ他にもブルースカイとかもありますが)。

カメレオンのランゴになんでヘソがあるのかとか、「西部の精神」がなぜあんな格好をしてるのかとかいろいろ意味不明のところもありますが、それを補ってありあまる勢いを持った怪作。

「Grant Morrison: Talking With Gods」鑑賞


スーパーヒーローの歴史と存在意義を説いた著作「Supergods」がこないだ刊行され、9月のDCコミックスのリブートでは中心的役割を務め、ハリウッド映画の脚本も執筆中ということで最近絶好調のコミック・ライターであるグラント・モリソンに関するドキュメンタリー。

彼の生い立ちとコミック業界での経歴を追った内容になっていて、反戦活動家の父親のもとで冷戦の脅威を感じながらグラスゴーで育ち、その恐れを吹き飛ばす存在としてのスーパーヒーローに出会った幼少時代から話は始まる(ここらへんの経験は、こんどやっとペーパーバック化される「FLEX MENTALLO」に反映されてるらしい)。そしてアートスクールを落第になったあとにライターを目指し、それと同時にサイケデリック・バンドで活動し、「2000AD」などで執筆したあとにDCコミックスにスカウトされて「アーカム・アサイラム」で大ヒットを飛ばし、それからさまざまなコミックを手がけていった経歴が説明されていく。

また彼の趣味であるケイオス・マジックにも多くの言及がされ、カトマンズで神秘体験をした話とか、いかにコミックの出来事と現実の生活がシンクロされているかなどについても語られていく。かつてはとてもシャイな若者だった彼が、やがて自分自身を変えていき、ピリっとした服をきてアルコールやドラッグを服用し、コミックのキャラクターと自身を重ね合わせていき、ついにはコミックのなかに自分の分身を登場させてしまうくだりも面白かったな。

相変わらず破壊的なグラスゴー訛りで話すモリソンだが、言ってることはおおかた理解できた。彼以外にもフランク・クワイトリーやフィル・ヒメネス、マーク・ウェイド、カレン・バーガーなどといった業界関係者によってモリソンのことが語られていくんだが、元弟子のマーク・ミラーは出ていなかった。どうも不仲説は本当らしい。

あくまでもコミックに重点を置いているので「The Mindscape of Alan Moore」ほど哲学的ではなく、今までのモリソンの作品とそれに対する彼の考えをまとめた(現時点での)集大成的な内容になっているかな。ただし彼の作品に詳しくないと、語られることはまったく理解できないだろうから入門的なドキュメンタリーではないかな。

さて、次は「Supergods」を読まねば。

「SOURCE CODE」鑑賞


(以下いちおうネタバレ注意)
「月に囚われた男」で注目されたダンカン・ジョーンズの第2作。日本では「ミッション: 8ミニッツ」というどうも残念な題で10月末に公開されるらしいね。今回の脚本はジョーンズによるものではないが、「もう1人の自分」というテーマは前作に通じるものがあるな。

シカゴ行きの列車が、何者かが仕掛けた爆弾によって爆破され乗客が全員死亡するというテロが発生。さらに犯人は6時間後に核爆弾によるテロを予告する。この緊急事態に対して政府は、死者の記憶を8分間だけ遡って現場の状況を探れるというシステム「ソース・コード」を起動し、空軍パイロットのコルター・スティーヴンスが「過去」へと送り込まれる。限られた時間のなかでスティーヴンスはテロの犯人を捜そうとするのだが、やがて意外な事実が明らかになっていく…というような話。

事故発生の8分前までなら何度でも戻ることができるので、犯人探しに失敗したスティーヴンスはもう1度戻って新たな手がかりを探し、それをもとにもう1度戻って…といったプロットになっているものの、懸念してたほど同じシーンが延々と繰り返されることはなかった。意外と早い時点で最初の謎が明らかにされ、そこから新たな謎が生じるというスピーディーな展開になっているので、観る人を飽きさせないつくりになっている。その代わり最初から最後までストーリーを貫くような大きな謎はないけどね。

そして犯人探しのプロットだけでなく、過去と現在を往復するうちに記憶が錯綜していくスティーヴンスの状態がもう1つの大きなプロットになっているわけだが、ここらへんはフィリップ・K・ディックの小説、特に「ユービック」に似たものを感じたよ。

列車の中と政府のオフィスという限られた空間で話の大半が進んで行くさまは「月に囚われた男」に似ているが、撮影テクニックなどが遥かに向上していて優れたSFサスペンスになっている。惜しむらくは前作と異なり音楽をクリント・マンセルが担当していないことか。

「マイティ・ソー」鑑賞


2Dで観た。原作のソーはキャラクターデザインが大好きな一方で、あのウサンくさい古典英語を話すところがどうしても好きになれなかったのですが、今回はまっとうな(?)英語を話していてひと安心。「Xメン」もそうだったけど、コミック版の口調とかアクセントを排除したのは正解だったな。

ストーリーはファンタジーと現代的なアクションをうまくまとめた出来になっていて、肉親同士の葛藤なんかはケネス・ブラナ—がシェークスピアをベースにしてきっちり描いた、といった感じでしょうか。ロキはもっと狡猾な生活にしても良かったと思うけどね。彼は肉弾戦を好むタイプではないので最後のバトルの相手にはちと力不足かと。というかデストロイヤー弱くない?原作だとムジョルニアを切断するという離れ業をやってたのに。

俳優陣はクリス・ヘムズワースの演技をまっとうに観たのはこれが始めてだが、豪快かつ純朴なソーをうまく演じている。ナタリー・ポートマンは相変わらず無邪気で幸薄そうな女性の役が似合うなあと。また浅野忠信はあの英語力ではハリウッドでは大成できないだろう。そして俺はステラン・スカルスガルドをずっとピーター・ストーメアだと思って観ておりました。

ここ最近のマーヴェル映画のお約束である「アベンジャーズ」への伏線は以前にも増して多めになっているが、セリフなどに巧妙に隠されているのであまり気にならない。ジェレミー・レナーがあの役で登場してたのにはニヤリとさせられましたな。

「ダークナイト」級の傑作ではないものの、「アイアンマン」くらいに気楽に楽しめる佳作。続編の製作が決定したそうですが、ベータレイ・ビルは出るよね?ね?