「A Lonely Place For Dying」鑑賞


スラッシュドットの記事で知った、現在寄付を募りながら製作されているというインディーズ映画の第1パート。公式サイトから無料でダウンロードできるよ。5パート揃って完成、ということらしい。

内容は政治サスペンスになっていて、KGBを裏切ったエージェントのニコライは、ワシントン・ポストの編集長に頼んでメキシコの収容所跡で記者と会おうとするのだが、CIAのエージェントがそこに現れて…というような話なんだが、正直なところ話がよく分からなかったよ。非常に政治的なシチュエーションのど真ん中から話を始める手法は分からんでもないのだが、観る人の興味をつかむのには成功していないような?

ワシントン・ポストの編集長役でジェームズ・クロムウェルがちょっと出演しているほかは、出演者はみんな無名の人たち。廃墟となった収容所で撮影したり、凝ったアングルを使ったりとそれなりに努力してるのは感じられるんだが、どうも素人っぽさが残ってしまったような。引きのショットばかりのせいか、映画というよりもゲームの合間に挿入されるムービーを観ているようであった。あと編集が拙いところがあって、電話で話すシーンでいちいち話している側に切り替わったりするのが目障りだったな。

最近は撮影や編集の機材がどんどん安価になってきて、そこらへんではプロとアマの違いは無くなってきていると思うんだけど、低予算でも何かしら目を引きつけるものを持った映画と、この作品のようなものを分つ要素って何なんだろうね。脚本?演出?監督の熱意?それら全て?それが分かれば誰も苦労しないのですが。

A Lonely Place For Dying 投稿者 ecufilmfestival

「スーパー8」鑑賞


俺がJ・J・エイブラムスの作品をどうしても好きになれない理由として、彼自身はすごく才能があってアイデアも豊富な人なんだろうけど、それが災いしてあまりにも手堅くきちんとした作品を作ってしまう点があって、要するにちょっと出来の悪いところがあったとしても「俺はこの映画を撮りたかったんだ!」というような情熱というか才気の爆発みたいなものが感じられないんだよな。そんな意味ではこの「スーパー8」はエイブラムスが撮るべきして撮った作品かと。だって作品の目的が「いかにスピルバーグ的な映画を撮れるか」なわけだから、スピルバーグの作品をきちんと勉強して律儀にオマージュを捧げれば立派なものは作れるだろうけど、どうしてもそれは「よく出来た模造品」であり、本物ではないという感が拭えなかったよ。

もちろん以前にもスピルバーグ的な映画を作った監督はいたわけだが、例えばジョー・ダンテ(あとたぶんゼメキス)なんかは自身の作家性が滲みだしていたのに対し、この作品はスピルバーグのスタイルを追うことだけに終始していたような(尤もエイブラムスの作家性が何なのか俺には分からないのだが)。よって結局のところ「どこかで観たことあるような映画」になってしまい、あれだけストーリーが謎にされた作品でありながら、先の展開が読めるものになってしまっていた気がする。そしてスピルバーグというのは模倣では絶対に超えることの出来ない天才であるわけで、おかげでスピルバーグとエイブラムスの力量の差を実感させられる内容になっていた。父親との屈折した関係や、女の子への童貞まるだしの憧れなんてのはスピルバーグならもっと巧く描けたはず。ここらへんはエイブラムスが崩壊家庭で育ってない(らしい)からなのかな。

とはいえ最初に書いたように相変わらず手堅いつくりの作品であることは間違いないわけで、観ていて楽しめないというわけではない。役者はエル・ファニングがずいぶん大きくなったな、という感じ。クリーチャーはCGなので例によって重量感がないのがマイナス点。結局のところオマージュと模倣のバランスが微妙な作品といったところですかね’。70〜80年代のスピルバーグを観てない人や世代などはまた違った感想を抱くのではないかな。

「世界侵略:ロサンゼルス決戦」鑑賞


とてもひどいダメ映画。アメリカで酷評されたので覚悟して観たけど、予想をはるかに下回る出来だった。とりあえず観ててダメだと思った点をいろいろ挙げていく。ネタバレがあるかもしれないがどうでもいい:

・話に起伏がない。というかストーリーが殆どない。たまにちょっと静かなシーンがあってもお決まりの展開(死に行く肉親とか)が披露されるだけで、あとは最初から最後までドンパチが続くだけ。
・キャラクターが全く立ってない。主人公にちょっとだけバックグラウンドがあるだけで、あとは誰もが一緒に見える。軍隊だからみんな同じ服装なのでさらに見分けがつかない。かといって戦闘のプロかというとそうでもなくて、攻撃されるとみんなパニックに陥ってるのは情けない。
・エイリアンがカッコ悪い。普通なら「相手はどんな格好してるんだろう?」といった好奇心を抱かせてくれるはずだが、この作品はエイリアンの解剖シーンがありながらもエイリアンの外見がよく分からないというお粗末さ。おまけに彼らが用いる兵器や乗り物も地球のものに良く似ていて面白みなし。
・役者がみんな叫びっぱなし。演技なんかが入る余地なし。ずっと大声で叫んでるだけ。

他にもいろいろあるんだがここらへんでやめとく。なんか敵がエイリアンだという必要はなかったんじゃないの?とまで思ってしまった。何が目的で侵略してるんだかよく分からないし(冗談のような推論は紹介される)、こうした侵略ものって圧倒的な戦力を持つエイリアンを人間側の機知でどうやって倒すかが大きな醍醐味だと思うんだが、ここでは力で力を制しているだけ。話にヒネリも何もない。

戦争ものと侵略ものの映画なんてのは今まで数多とつくられてきたわけで、参考になるネタとかはいくらでもあったはずなのに、なんでこんなゴミ作品が大金をかけて作られたのかは理解に苦しむよな。もうこの監督は2度と映画を作るべきではないと思う。同じロボット(?)との戦闘なら、「ギャラクティカ」のシーズン3冒頭のほうがはるかに迫力があったしストーリーも豊かだったぞ。

「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」鑑賞


マシュー・ヴォーンは「キック・アス」が個人的にダメだったのでちょっと不安だったんだが、これは純粋な娯楽作品として楽しめた。60年代の007映画のパスティーシュ的なノリが良かったのかな。ただしアメコミに関する結構な知識を求められる内容になってると思うので(まさかアザゼルが出てくるとは思わなかった)、原作を知らない人には意味不明のところがあるかもしれない。

前の3部作よりも良いという意見も見かけるけど、プロフェッサーXとマグニートーとの関係に限って言えば、やはりパトリック・スチュワートとイアン・マッケランというベテラン俳優同士の対決のほうが優れていたかな。ジェームズ・マカヴォイはチビで童顔なのが災いして、指導者というよりも部活のマネージャーのように見えてしまうのが難点か。でも両者のイデオロギー違いが明確になり袂を分かつ流れはうまく描かれていたと思う。尤もこの映画にイデオロギーなどをあまり期待してはいけないわけで、「差別は良くない!」と言っときつつも黒人キャラは全く活躍しないし。あとアメリカ政府はレイ・ワイズにマイケル・アイアンサイドにオリバー・プラットといった俺好みの俳優を揃えておきながら、数人のミュータントに手玉にとられてしまうのが情けないのう。

突出してこれが良かったというような点は無いものの、ストーリーのテンポもよくて無駄がなく、見せ場もきちんと作られている快作。プリクエルであるがゆえに話が少し制限されている感じがするが(特にミスティークまわり)、いっそもう前の3部作は無視して自由に話を進めたほうが良いんじゃないのかな。フォックスは新たな3部作を作る気でいるらしいけど、ここから話はどう展開してくんだろう?次はベトナム戦争を背景にフォージが登場するとか、福島広島出身のサンファイアが出てくるとか?人類とミュータントが結束してヒッピーと戦う、なんてのもいいかもしれない。

「RUBBER」鑑賞


殺人タイヤの襲撃!というぶっとんだコンセプトのおかげで日本でも(一部で)話題になっていた作品。フランス人監督のカンタン・ドゥピューってミスター・オワゾという名義で活動してるミュージシャンらしいが、知らんなあ。

舞台となるのはアメリカの砂漠地帯で、意識を持った古タイヤがむっくりと起き上がるところから話は始まる。このタイヤ(クレジットではロバートという名前が付いている)は出会ったものを片っ端から破壊していくような気が荒い奴なのですが、いかんせんオンボロのタイヤであるために空き瓶も踏みつぶせない。しかしロバート君には秘密兵器があって、全身を震わせて意識(?)を集中させることで念動力を使うことができ、これで小動物や人間の頭を「スキャナーズ」よろしくボーンと爆発させることができるのでした。この能力をもってロバート君はモーテルや近くの町で惨劇を繰り広げていくのでした…というのが主なストーリー。

これだけ聞くと変なB級ホラーのように思えるかもしれないが、話にはもう1つメタフィジカルなコメディの要素があって、映画の冒頭から町の保安官が車のトランクから出てきて「『ET』のエイリアンはなぜ茶色なんだ?恋愛映画の登場人物はなぜ狂おしい愛に落ちるんだ?(略)それらに理由なんてありはしない。君たちがいまから観る映画にだって理由なんかないんだ。」なんてカメラに向かって語りだす次第。おまけにご丁寧にも10人くらいの「観客」がこの映画に登場していて、ロバート君の行動を双眼鏡でリアルタイムで観察しながら「いまのは念動力だぜ!」なんていらぬコメントをつけてくれたりしている。

やがて上述の保安官がロバート君の事件を担当したり、観客がひどい目にあって保安官のところに向かうなど、メインの話とメタな部分がどんどん絡み合っていくのだが、こういうのってイヨネスコあたりを意識してるんだろうか。でもこういった不条理さとB級ホラーって決して良い組み合わせではないようで、下手な楽屋オチを見せられた気分というか、話が進むにつれて誰が死のうがタイヤがどうなろうが結構どうでも良くなってくるのは否めない。あとタイヤに追いかけられるゴスのフランス娘は意外と可愛いんだが、ここはやはり金髪のスクリームクイーンが欲しかったな。

トレーラーをから真っ当なホラーを期待してると壮絶な肩すかしをくらわせられるし、劇場で金払って観るほどの作品ではないだろうけど、笑えるところは笑えるし、音楽も結構いいのでレンタルビデオとかで観るぶんには悪くない映画かと。