「ブロック・パーティ」鑑賞

いまだに復帰するんだかどうなんだかよく分からないデイヴ・シャペルが2004年に主催した、ブルックリンでの無料コンサートの姿を追ったドキュメンタリー。シャペルの地元のオハイオから近所のオバサンや大学のブラスバンドを招いたり、ヒッピー夫妻の家の前の区画を借りてステージを建てたあと、カニエ・ウェストやエリカ・バドゥ、モス・デフ、ジョン・レジェンドといった一流アーティストたちが揃ったコンサートが行われていくのが観ていて微笑ましい。個人的にはビッグバンドであるザ・ルーツが一番良かったかな。というかクエストラブは殆ど一日中ドラムを叩き続けてるのが凄いな。あと大トリのフージーズが皆よりも別格な扱いを受けている気がしなくもないが、まあ7年ぶりの再結成ということだから仕方ないか。

日本ではミシェル・ゴンドリーの監督作品という点が売りにされてたようだけど、映画の中心となるのは明らかにデイヴ・シャペル。相変わらず人種に関する際どいジョークを連発してるけど、このコンサートをすべて自費で賄ったという彼の人柄がよく分かる内容になっている。というか彼、コメディアンやるには性格が優しすぎるのかもしれない。この映画の公開と前後して神経衰弱(?)になって大人気番組「シャペルズ・ショー」を降板してしまったわけだが、最近また動向をチラホラ聞くようになったのでぜひ皆の前に復帰してほしいところです。

特にハプニングとかも起きないので弱冠まったりしている感じがするけど、とても良い映画でした。

「ザ・シンプソンズ MOVIE」鑑賞

今まで観るのをド忘れしていた作品。俺にとってのシンプソンズってそんなものになってしまったのかなあ。昔はテレビでやってたらかかさず観てたのに。でも悪い作品ではなかったよ。なんか惰性で続いている感じのする最近のTVシリーズ版のエピソードよりもずっとネタが詰まっていて、大声で笑った箇所もいくつかあったし。映画版ということで予算もかかってて作画のレベルも非常に高かったし。

ただしTVの話よりも3倍近く尺が長いこともあって、話の流れがどうも微妙にズレて感じられたかな。「シンプソンズ」のエピソードって話の導入部が結構長いことで有名で、ある事柄から始まった話が曲がりに曲がってやっとその話の中心テーマに辿り着くところが(当初は)斬新だったわけだが、劇場版では逆にどんな話になるのか冒頭だけでは分かりにくく、ストーリーが流れにのるまで少し時間がかかりすぎてたような気がする。あとやはりシンプソン一家はスプリングフィールドの住人たちとドタバタやってるのが一番楽しいわけで、彼らを町の外に出してしまったことでその楽しさが半減してしまったような。

大金をかけて劇場版をつくらなくても、TVシリーズのほうで上質のエピソードを作ってくれれば俺は何も言いません、

「ZOMBIELAND」鑑賞

邦題は「ようこそゾンビランドへ」になるんだっけ?アメリカ人が「ショーン・オブ・ザ・デッド」を作ったたらこうなりました、というような映画。良くも悪くもストーリーが一本調子で、良くも悪くもキャラクター設定が皆無だったりする。要するに深く考えずに笑って観ろよ、ということなんだろうけど。

謎の原因により世界中の人々がゾンビになってしまったなか、奇跡的に生き残った主人公は女の子とキスもしたことがない内気な少年だったが、自分なりの生存のルールを身につけ、それに頼ることでゾンビの襲撃から逃れていた。彼は銃とトゥインキーをこよなく愛するタフな男に出会って一緒に旅をするようになり、さらに狡猾な姉妹に遭遇して西部を目指すのだが…というのが大まかなプロット。ただし具体的に主人公たちが何かを目指すといった目的が欠如しているため、90分弱の尺ながら中盤のビル・マーレイが出てくるあたりは結構話がダレていたような。

ウディ・ハレルソンの暴れぶりは面白いし特殊効果もよく出来ているし、笑えるところも多々あるものの、ゾンビ・コメディとしては「ショーン〜」に遠く及ばないかな。あっちはキャラクター設定がしっかりしていて登場人物にきちんと感情移入することができたからね。こちらは主人公がどうにか女の子と仲良くなろうとドギマギする点が面白いものの、ジェシー・エイゼンバーグは「イカとクジラ」や「アドベンチャーランド」で全く同じことをやってたので目新しさはなし(逆に言えばハマリ役なわけだが)。

もうちょっと脚本や演出を練れば傑作になったかもしれないのに、普通のポップコーン映画に留まってしまったのは残念なところ。続編の噂もあるみたいなので、次はもっと熟練した監督に任せればいいんじゃないかと。

ちなみにゾンビ映画をみる度に思うのですが、なんでみんなショットガンを使うんだろう。もっと連射が効く銃のほうが効果的じゃない?猟銃だから入手しやすいということなのかな。

「運命のボタン」鑑賞

「ドニ・ダーコ」のリチャード・ケリーが、ジャンル映画のネタの宝庫であるリチャード・マシスンの短編をもとに作ったもの。この原作は既に「トワイライト・ゾーン」でも一度映像化されてるんだとか。
(以下ネタバレあるかも)

舞台は1976年のリッチモンド。ノーマとアーサーの夫妻はウォルターという息子とともに幸せな生活を送っていたが、経済的には困窮していた。そんなある日、彼らのもとにボタンがついた箱が送り届けられる。不思議に思う彼らのところにスチュワードと名乗る、顔に大きな傷を負った老人が現れ、箱に関する話を伝える;「箱についたボタンを押せば100万ドルが手に入る。しかしあなたたちの知らない誰かが命を失うことになる」と。彼の話を不気味に思うノーマとアーサーだが、ついにノーマがボタンを押してしまい…というようなプロット。

1976年当時のデザインのほか画面の色調とかカメラワークから察するに、これって70年代のSF/ホラー映画のパスティーシュになってるのかな。ただああいうのはテレビ東京で90分以下にカットされたやつを観るのが楽しいのであって、2時間近い尺で1つのプロットを延々と映していくのは厳しいものがあるなあ。NASAの火星探査の話とかが絡んできて、意外と真面目なSF映画になるか?と思いきやそうはならず、3つのゲートの選択の意味もよく分からないまま話が進み、どうも微妙なところに話が着地して終わったような。主人公たちが自分たちの運命についていろいろ情報を得ているにも関わらず、あまりなす術がなくて変に予定調和を迎えるのもどうよ。

リチャード・ケリーの映画って観てるときよりもむしろ観たあとの謎解きが楽しいわけで、あの大傑作デビュー作「ドニー・ダーコ」はホームページなどに散りばめられた情報を集めてストーリーを解読していくのが面白かったし、前作「サウスランド・テイルズ」もプロット自体は破綻していたもののあの世界観や結末に関する論議を掲示板とかで読んだりしたんだが、どうもこの作品はあまりそういう気にならないんだよな。微妙に謎解きが劇中で完結されてしまってるせいなのか、あるいは単に興味を惹く謎が無いからなのか。

あと音楽はアーケイド・ファイアの人たちが担当したらしいが、いろんなところで音楽が鳴りっぱなしで俺にはずいぶん耳障りに聞こえた。大げさな曲調も70年代のパスティーシュかも知れないけど、もっと抑え気味でも良かったんじゃないの。音楽が話の邪魔したらダメでしょ。

サスペンスに満ちた描写とかは十分にあるし、決して悪い作品だとは言わないが、リチャード・ケリーの作品のなかでは一番の不発かな。あの人もっと実験的なことをやるべきだと思うんだけど。シリアスでハードなジャンル映画をお求めの型には、これよりも「月に囚われた男」のほうをお薦めします。

「JUSTICE LEAGUE: CRISIS ON TWO EARTHS」鑑賞

マーヴェルに比べコンスタントに優れた作品を出している、DCコミックスのアニメーション・ムービーの最新版。

DCコミックスのファンならお馴染みのパラレル・アースをテーマにしたもので、別の次元にあるもう1つの地球ではスーパーヒーローと悪役の立場が逆になっており、悪のスーパーマン(「ウルトラマン」という名前だよ)や悪のワンダーウーマンが率いる悪の集団クライム・シンジケートが世界征服を達成しようとしていた。これに反抗した「善人」のレックス・ルーサーは次元移送装置を使い、スーパーマンたちが住む我らの地球へと助けを求めにやってくる。彼の話を聞いたスーパーマンおよびジャスティス・リーグはクライム・シンジケートの魔の手から人々を救うため、ルーサーの地球へと向かうのだが…というようなプロット。

TVシリーズ版「ジャスティス・リーグ」の脚本も手がけていたドウェイン・マクダフィの脚本はテンポがよく、ニヤリとさせられる場面も多く見ていて飽きがこない。戦闘シーンが多くてプロットが少し弱い気もするものの、きちんと押さえるところは押さえて話を盛り上げることに成功している。また演出も素晴らしく、前半の雲の中での戦闘シーンなんかはここ最近のハリウッド映画のアクション・シーンなんかよりもずっと上手く描けてるんじゃないだろうか。

キャラクターの設定もよくできていて、特にマーシャン・マンハンターにきちんとサブプロットを割いたところが良かったな。悪役版のデトロイト・リーグやアウトサイダース、キャプテン・マーヴェル・ファミリーといった非常にレアなキャラクターたちも出てくるぞ。パラレルワールドの大統領を意外な人物がやっていたのも良かったな。なお声優はウィリアム・ボールドウィンやマーク・ハーモンといったテレビ畑の役者が揃っているほか、ジェームス・ウッズなんかも参加してたりする。

これ「NEW FRONTIER」を別とすれば、いままでのDCコミックスのアニメのなかでもトップクラスに入る出来じゃないかな。お薦め。今回はiTunesストアでレンタルしたんだけど、DVD版にはザ・スペクターのショート・ムービーが含まれているとのことなので、それもぜひ拝見したいところです。