「エアベンダー」鑑賞


せっかく上質の素材をお膳立てされて、いくらでも優れた作品になる可能性があったのに、あらゆる点で失敗してしまったような作品。その責任はやはり脚本・製作・監督を務めてるM・ナイト・シャマランにあるよなあ。

脚本はまだしも演出とキャスティングが不味い。主人公のガキンチョは物語を通して成長していくさまがまっとうに描かれず、最後になっても眉間にシワをよせてオドオドしているだけ。俺は原作を未見なので、本国で問題になった人種が異なるキャスティングは気にならなかったけど、エスキモーの格好をした白人というのは違和感があったかな。そして敵役にはデーヴ・パテールにアーシフ・マンドヴィ、クリフ・カーティスという実に渋い面子を起用しておきながら、ことごとくミスキャストになっているのはどうしたことかと。パテールは「スラムドッグ・ミリオネア」の素朴な青年のイメージが強すぎるし、マンドヴィは過去にもシリアスな役を演じたことがあるとはいえ、今では「デイリーショー」でコメディやってる人ですからね。あのカン高い声で悪役を演じられても全然凄みがないのよ。

彼ら以外の出演者もみんな手を抜いたようなセリフまわしだし、無駄なクローズアップが多用されているうえ、どうも全体的にせこせこしていてストーリーにメリハリがないんだよな。だから城塞とかが出てきてもスペクタクル感がなくて、箱庭のごとき雰囲気を与えているんじゃないかと。そして「トロイ」を観た時も思ったが、城塞戦を映画で描こうとする人は「王の帰還」を100回くらい観て、攻める側の脅威と守る側の不安をきちんと醸し出さないとダメだよね。そもそも海に面した城塞に船でやってきた連中が、地中から城塞に潜入するのっておかしくないか?

実はシャマランの映画を観るのって「サイン」以来なので、ここ数作で手法がどう変化したかは把握してないんだけど、昔はオチこそひどいものの「何かすごいことが起きているに違いない」という雰囲気を盛り上げて人を引きつける、いわば山師的なサスペンス作りの腕前は一級の人じゃなかったっけ?この作品ではそうした才能が微塵とも感じられなかったぞ。ただしシャマラン作品ということで弱冠の期待をしてしまったところもあるけど、無名の監督による無難な子供向けアクション(春休みの昼間にテレビで放送されるようなやつ)として観ればそこまで悪くはないかも。あと画面が暗いので3Dで観るのは止めたほうがいいかもしれないが。

唯一の収穫は、原作のアニメは面白いかもしれないということが分かった点かな。キャラクター設定とかストーリー自体は興味深いところがあったので。今度機会があればチェックしてみよう。

「プレデターズ」鑑賞


とりあえず以前に予想したことの結果を白文字で書きます:

ノーランド以外ピッタリ当たったじゃないかよ!それだけクリーシェ満載の映画だったということか?

でも個人的にはそこそこ楽しめた。大げさな音楽やあまり深みのない脚本とかが逆に功を奏して、往年のフォックスのSFアクション映画を彷彿とさせているというか。1800円払って劇場で観るべきかは微妙だが、日曜洋画劇場で放送されるとみんな観そうだとか、創元推理文庫からゲームブックが出るんじゃないかとか、なんかそういうノスタルジックなものを感じさせる出来になっていた。

もちろん脚本は穴だらけでツッコミどころ満載だし、敏腕の兵士たちがコンパスや双眼鏡も持ってないのかといった疑問はいくらでも出てくるんだけどね。早くも続編の話が持ち上がってるらしいが、何をやっても矛盾が増えるだけの展開になりそうな気がする。「気付いたら異星にいた」なんて強引な展開はこれ1度しかできないでしょ(もっともフォックスのことだからDVDムービーで死ぬほど搾取するかもしれないが)。

演出は可も不可もなし。エイドリアン・ブロディ演じる主人公が万能すぎるかな。もっと非肉体派というか臆病なタイプかと思ってたんですが。あと各人のキャラは立ってるんだけど、もうちょっと性格描写とかを深く掘り下げても良かったんじゃないかと。特にあの医者とか。2人くらい登場人物を削って残りの人物に厚みを与えたほうが、彼らが犠牲になったときのインパクトが大きくなったんじゃないかな。

ちなみにこの映画の教訓は「日本人はプレデターと同じくらい強いけど、ユダヤ人はもっと強い」ということでいいのかな?

「THE LOSERS」鑑賞


本国での評判がイマイチだったのでなるべく期待せずに観たんだが、それでもダメだった…。

以前にも書いたようにアンディ・ディグルとジョックによるDCコミックス/ヴァーティゴのコミックが原作のアクション映画で、クレイ率いる米軍の特殊部隊がボリビアで麻薬組織殲滅のミッションを行っていたところ、マックスと名乗る謎の男によってミッションは妨害され、幼い命が多数失われる結果となってしまう。おまけにアメリカ政府によって米軍との関わりを否定され、死亡した扱いになってしまったクレイたちはアイーシャという謎の女性の手を借りてアメリカ本土に戻り、マックスに復讐を試みるのだが…というような話。

まあ普通のB級アクション・ムービーといった出来か。メジャースタジオが関わってるだけあって爆発シーンとかは金がかかってるけどね。原作にあった政治的なトーンは鳴りをひそめ、意外な秘密を持った悪役だったマックスも普通のサラリーマンのような人物になってしまっているのが非常に残念なところ。あと続編を意識した作りにするのはいいけど、あそこまでラストをほのぼのとしたものにする必要は無かっただろうに。何でクレジットに「Don’t Stop Believin’」なんかが流れるんだよ!原作では華々しく散っていったルーザーズの面々に対して失礼でありますよ。

じゃあ原作を知らない人なら楽しめるのかといったらそうでもなくて、全体的に話の展開があわただしくて、派手なアクションシーンがあっても何の余韻もなしに次のシーンに移るものだから話の流れににメリハリがなく、役者の演技についても「とりあえずシーンごとに演技をしました」という感じがして感情移入できないんだよな。復讐に燃えているはずのクレイはホテルで休んでばっかだし、アイーシャの行動も不可解なところがあったかと。ピーター・バーグ(脚本)って人物描写はもっと上手い人かと思ってたんだけどな。監督のシルヴェイン・ホワイトが力不足なのか?あとアクション・ムービーにしてはやけに彩度が強いカラーコレクションがされてるのも気になった。ボリビアの町中なんて「スラムドッグ・ミリオネア」みたいだったぞ。

でもまあロケットランチャーをぶっ放すゾーイ・サルダナなどはやはりカッコ良いし、派手なドンパチもあるし、酒でも飲みながらDVDをレンタルしてみる分には楽しめる作品かと。今夏公開の「Aチーム」はこれに比べてどのくらいの出来なんでしょうかね。俺はとりあえず原作コミックスを読み直して、ガッカリした気分を直すことにします。

「GREENBERG」鑑賞


「イカとクジラ」のノア・バームバック監督最新作。

神経衰弱のため精神病院に入っていたロジャー・グリーンバーグは、LAに戻ってきて兄夫婦の家に泊まることになる。そこで兄のアシスタントであるフロレンスと出会い、2人は恋仲になるのだが、グリーンバーグの排他的な性格が災いして、なかなか2人の関係は進まず…というようなお話。

そもそも25歳の娘が40歳の男と出会ってすぐに恋仲になるか?という最大の疑問はまあ忘れよう。主人公のグリーンバーグは人付き合いが苦手で、企業や役所に苦情の手紙を送るのが趣味で、不快なことがあるとすぐ友人や恋人に怒鳴り散らすような最低の奴なんだが、それでもどこか繊細な部分があって、心に不安を抱えている姿をベン・スティラーが好演している。彼とは対照的に明るくて人に好かれるフロレンスを演じるグレタ・ガーウィグの演技も素晴らしい。

これで主人公が20代とかだったら典型的なサンダンス系映画になるんだろうが、40歳だというのが結構ポイントで、親友に再会しても昔に組んでいたバンドのことしか話せず、何もしてないことから同世代の人には「あなたその歳で度胸あるわね」とまで言われ、かといって若い世代とも話が合わず、人生が空回りしている姿には共感できるところがあった。

決して退屈な映画ではないけれど、話の起伏が少ないため万人向けの作品ではないかな。また「イカとクジラ」のほうがキャラが立っているという意味では面白かったかもしれない。あとサントラをLCDサウンドシステムのジェイムズ・マーフィーが担当してるけど、あまりLCDっぽい曲は使われてなかったような。

30〜40代の人に観てもらいたい、小ぢんまりとした良品ですよ。

「HOT TUB TIME MACHINE」鑑賞

その題名およびストーリーのアホらしさがアメリカでは公開前から話題になり、エド・ヘルムズ同様に「デイリーショー」出身であるロブ・コードリーが出てることから、第二の「ハングオーバー」になるか?と期待されてたんだけど、いざ公開されたらすぐに失速してしまった感のあるコメディ。でもあまり期待せずに観たら結構面白かったよ。

LAに住むアダムはさえない中年男性で、ガールフレンドに振られてばかりのロクでもない人生を送っていた。彼の幼なじみであるルーとニックも同様に不遇な暮らしをしており、気分転換をしようと考えた彼らはアダムの甥のジェイコブを連れて、かつて彼らが80年代に乱痴気騒ぎをしたスキー・リゾートへとやってくる。しかし昔は栄えていたそのリゾートはすっかりさびれており、さらに彼らは暗い気分になってしまう。とりあえず部屋の外にあるホットタブは使えるということで、そこに入って酒を飲み明かす4人。しかしそこで原因不明の事故が起き、彼らは1986年の過去にタイム・スリップしてしまう!ここで過去を改変して未来に影響を与えてはいけないと考え、過去のとおりに1日を過ごそうとする彼らだったが、物事は予想もつかない展開を迎え…というのが大まかなプロット。

笑いのネタは90%くらいが「80年代ってカッコ悪かったよね〜」というスタンスに基づいたものなので、まあ30代以上の人じゃないと観てもウケないんじゃないのかね。その他は下ネタばかりだし、脚本を練ればあと2割くらいは面白くなったんじゃないの、という気がしなくもない。でもなんか全体的に微笑ましい雰囲気があって嫌いにはなれないんだよな。どうにか人生をやり直そうとする中年男たちの姿が俺の心の琴線に触れただけなのかもしれませんが。

いちおう主役はジョン・キューザックなんだけどあまり目立ったことはしてなくて、ロブ・コードリーが完全に主役を食ったバカっぷりを見せてくれるぞ。俺は「デイリーショー」の頃から彼のファンなのであります。さらには脇役でクリスピン・グローヴァーが出ていて、相変わらずの怪演を披露している。2000年代に××だった彼が、80年代でいつそうなるのか?というギャグがね、ちょっとブラックだけど非常に面白いのですよ。しかし同じく脇役で出演しているチェビー・チェイスはあまり面白くなかったかな。

ラストも呆れるくらいに能天気だし、くっだらねーと思いつつも笑える映画であった。劇場で観るほどのものでは無いかもしれないけど、家で友達と一緒に観るのには適した作品かと。