「NEW ROSE HOTEL」鑑賞

クリストファー・ウォーケンとウィレム・デフォーという2大個性派俳優を主人公に、ウィリアム・ギブソンの短編小説をアベル・フェラーラが映画化した「NEW ROSE HOTEL」を鑑賞。他にもアーシア・アルジェントや(なぜか)天野喜孝が出演してるほか、坂本龍一やジョン・ルーリーなどもチョイ役で出てる。なぜこんなキャストが揃った映画が日本未公開なのかはよく分かりません。IMDBをはじめいろんなところで酷評されてる作品だけど、個人的にはかなり面白かった。

2つの巨大企業がしのぎを削る近未来、天野喜孝演じる天才科学者をライバル企業から引き抜くため、ウォーケンとデフォーはアーシア・アルジェントの色仕掛けを使うことにするが…というのが話のプロット。ギブソンの小説ってあの体言止めだらけの文体が苦手で「ニューロマンサー」しか読んだことないんだけど、全編モノローグである(らしい)原作にちゃんとセリフをつけ、チープなSFXなどを使わずに低予算ながらもエキゾチックな(舞台は日本)雰囲気を醸し出してるのは巧い。さすがに終盤の20分ちかいフラッシュバックは長すぎると思うが、深夜に酒でも飲みながら観るには格好の映画かと。もっと評価されていい作品。

それにしてもウォーケンが相手だと、デフォーのような役者でもごくマトモな人に見えてしまうんですね。

「SUPERMAN DOOMSDAY」鑑賞

観たぞ。キャラクターデザインと声優がアレだったので、ダメかと思って観てたら結構面白かった。以前にも書いたように「スーパーマンの死」のストーリーラインはドゥームズデイとの戦いよりもその後の復活劇のほうが面白いわけだが、このアニメ版でも「SUPERMAN DOOMSDAY」と名乗っておきながら実はドゥームズディが刺身のツマのような扱いであり、その後の展開に重点を置いているところが製作陣よく分かってらっしゃる、といった感じ。PG13で内容が暗めになっているのは賛否両論あるだろうが、テレビシリーズ版との差別化という意味では成功してるかと。

不満としては冒頭にも挙げたように、スーパーマンの顔のデザインがなんかヤダ。アメリカでもいろいろ文句言われてるけど、あの頬の線は余計だよな。ヤンキースの松井みたいだ。あとルーサーも「ジャスティス・リーグ」のほうが良かったかと。声優はロイス役のアン・ヘッシュがキャラクターにあまり合ってない。日本の才能なきタレントと違ってハリウッドの役者が吹替をやることにそんなに異議はありませんが、アン・ヘッシュってのは微妙だな。あとペリー・ホワイトがなんかイヤな編集長になってるのが違和感ありまくり。原作だともっと信頼されてる親父ってキャラじゃん。

とまあ不満はあるものの、マーヴェルのオリジナルムービーに比べれば10倍くらいは優れた出来。そして次回作はいよいよ「NEW FRONTIER」でございますよ。DVDについてる予告編を見る限りではかなり良さそうな出来。期待してまっせ。

「注目すべき人々との出会い」鑑賞

ロシアの神秘思想家グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を鑑賞。グルジェフなんて学生時代にちょっとかじったくらいで著作も思想も殆ど知らないんだが、とりあえず観てみた。

どこぞの宗教団体の映画みたいな「うちの師匠はこんな偉いんだぞ」的な描写はまるでなく、啓蒙を求めて謎の「サルムング教団」を探し求めるグルジェフの半生が淡々と描かれている。むしろロードムービーに雰囲気は近いかな。逆に内容があまりにも地味すぎて、グルジェフがなぜ教団を求め、教団から何を学んだのかといったことには殆ど触れてないため、この映画を観てもグルジェフの思想はよく分からなかったりする。

アフガニスタンで撮影されたという映像はなかなかエキゾチックで興味深い。セットもそこそこ凝ってるし、テレンス・スタンプが出てたりするからそれなりに製作費はかかってるみたいだ。残念なのはDVDの画質がものすごく悪いこと。粗悪なテレシネをしたVHSマスターからそのまま起こしたんだろうけど、字幕が映像に焼き付いてるDVDって初めてみたぞ。

なお終盤における舞踏(ムーヴメンツ)のシーンは短いながらもなかなか圧倒的。これだけでも観る価値のある作品だと言えるかもしれない。

「NAPOLEON DYNAMITE」鑑賞

あまりにも非道くてここには名を出すことも憚られる邦題を持った映画「NAPOLEON DYNAMITE」を鑑賞。やはりダメ男が主人公の映画は他人事とは思えんなあ。

まずあのユルさが素晴らしい。近所のビデオ屋で安売りされてた20年前の無名映画をVHSで観ているような、80年代フレーバーに溢れたあの感覚は何なんだろう。カッコ悪い主人公に感情移入させつつも、変に心の葛藤とかを描いてウェットな内容にせず、絶妙な距離をおいてキャラクターを眺めているところが巧いな。主人公や仲間たちだけでなく、学校の人気者たちも結局はみんなチープな田舎者だというのが異様に斬新でもある。去年青森に行ったときも思ったんだけど、車がないとどこにも行けない土地に住む高校生の青春というのはいろいろ面白い題材になるんじゃないのかな。

あの邦題のために日本ではイロモノ扱いされてる作品だけど(俺も同僚に見せたら笑われた)低予算ながらも優れた作品なので多くの人に観てもらいたいもんです。ちなみにアメリカでは人気が高じて今度TVゲーム化されたらしいぞ。何だそりゃ。

「ストーリーテリング」鑑賞

トッド・ソロンズの「ストーリーテリング」を鑑賞。冒頭からセルマ・ブレアーのおっぱいが拝めてラッキー、といった感じ。もっと豊満なイメージを俺は勝手に抱いてましたが。「ダーティ・シェイム」のせいかな。

まあ確かに観ててかなりシンドイところのある作品ではあった。2部構成になってて、第1部は大学における理想と現実の冷酷な衝突という内容が「アートスクール・コンフィデンシャル」に通じるものがあるな。現実をもとにした小説なのにフィクションとしてしか見なされない、というポイントはなかなか興味深い。

そしてポール・ジアマッティがドキュメンタリー作家を演じる第2部は、こないだの「AMERICAN MOVIE」へのアンチテーゼとして作られたという話を聞いたんだが、あまりそれらしきメッセージは感じられなかったかな。マーク・ボーチャートの相棒を出演させてるあたり、かなり意図的なものがあるんだろうけど。撮影の対象をドキュメンタリー内でバカにすんな、ってことですかね。

キツい内容を絶妙なブラック・ユーモアで包んでいた「ハピネス」に比べると直球勝負に出過ぎているような感があるけど、希少価値を持った作品であることは間違いない。北米版のトレーラーではソロンズの意向により第1部からの映像を一切使用してないんだけど、商業的にここまでトンガった監督はそういませんぜ。普通だったらセルマ・ブレアーを使って客の気を引きそうなもんだけどね。