「NOTHING ナッシング」鑑賞

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ヴィンチェンゾ・ナタリの2003年の映画「NOTHING ナッシング」を観た。まあ可も不可もなし。

同監督の「CUBE」や「カンパニー・マン」とかに比べると拍子抜けするくらいに脳天気な作品ではある。「何もないところ」を舞台にした物語なんだけど、話のネタになるようなものが本当に何もないので、90分の作品なのに冗長的に感じられるかも。コンセプトはむしろ短編アニメーションに向いていると思うんだけど、それを実写の長尺で見せられてもねえ。悪い作品ではないですが。

ちなみに撮影場所はトロント。舞台となる家が建っている場所の比較的近所に俺は住んでいた。

「ATROCITY EXHIBITION」鑑賞

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J.G.バラードの小説「残虐行為展覧会」を映像化した作品「ATROCITY EXHIBITION」を観た。監督はジョナサン・ワイス…って誰だ。音楽はジム・フィータスことJ.G.サールウェルが担当。

俺が原作を読んだのはもう10年以上前だから、内容はまるで覚えていない。そもそもプロットらしきものが存在しない実験小説なんだけどね。映画版でも確固としたストーリーはなくて、失踪した科学者とその上司、およびフェム・ファタール的な女性を軸に、いかにもバラード的な車の衝突、コンクリートの構造物、整形手術の光景、戦争の犠牲者、そして無機質なセックスなどの映像が重ねられていく。もちろんロナルド・レーガンもちょっと顔を出してます。

とにかくこれらの映像の使い方が非常に素晴らしいんですよ。一歩間違えればアート気取りのスノビッシュな作品になりかねなかったはずだが、印象的な風景やストック映像を巧みに混ぜ合わせ、独特な雰囲気をもった音楽をのせることで低予算の映像作品とは思えない出来になっている。観ていてものすごく不穏な気分になるんだけど、それでも目を離すことができない映像美だとでも表現すればいいのかな。あと原作には当然なかった、チャレンジャー号の爆発事故の映像を効果的に使っている点も興味深い。

題名通りグロい映像もあって万人に勧められる作品ではないものの、隠れた傑作であることは間違いない。

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「NEW ROSE HOTEL」鑑賞

クリストファー・ウォーケンとウィレム・デフォーという2大個性派俳優を主人公に、ウィリアム・ギブソンの短編小説をアベル・フェラーラが映画化した「NEW ROSE HOTEL」を鑑賞。他にもアーシア・アルジェントや(なぜか)天野喜孝が出演してるほか、坂本龍一やジョン・ルーリーなどもチョイ役で出てる。なぜこんなキャストが揃った映画が日本未公開なのかはよく分かりません。IMDBをはじめいろんなところで酷評されてる作品だけど、個人的にはかなり面白かった。

2つの巨大企業がしのぎを削る近未来、天野喜孝演じる天才科学者をライバル企業から引き抜くため、ウォーケンとデフォーはアーシア・アルジェントの色仕掛けを使うことにするが…というのが話のプロット。ギブソンの小説ってあの体言止めだらけの文体が苦手で「ニューロマンサー」しか読んだことないんだけど、全編モノローグである(らしい)原作にちゃんとセリフをつけ、チープなSFXなどを使わずに低予算ながらもエキゾチックな(舞台は日本)雰囲気を醸し出してるのは巧い。さすがに終盤の20分ちかいフラッシュバックは長すぎると思うが、深夜に酒でも飲みながら観るには格好の映画かと。もっと評価されていい作品。

それにしてもウォーケンが相手だと、デフォーのような役者でもごくマトモな人に見えてしまうんですね。

「SUPERMAN DOOMSDAY」鑑賞

観たぞ。キャラクターデザインと声優がアレだったので、ダメかと思って観てたら結構面白かった。以前にも書いたように「スーパーマンの死」のストーリーラインはドゥームズデイとの戦いよりもその後の復活劇のほうが面白いわけだが、このアニメ版でも「SUPERMAN DOOMSDAY」と名乗っておきながら実はドゥームズディが刺身のツマのような扱いであり、その後の展開に重点を置いているところが製作陣よく分かってらっしゃる、といった感じ。PG13で内容が暗めになっているのは賛否両論あるだろうが、テレビシリーズ版との差別化という意味では成功してるかと。

不満としては冒頭にも挙げたように、スーパーマンの顔のデザインがなんかヤダ。アメリカでもいろいろ文句言われてるけど、あの頬の線は余計だよな。ヤンキースの松井みたいだ。あとルーサーも「ジャスティス・リーグ」のほうが良かったかと。声優はロイス役のアン・ヘッシュがキャラクターにあまり合ってない。日本の才能なきタレントと違ってハリウッドの役者が吹替をやることにそんなに異議はありませんが、アン・ヘッシュってのは微妙だな。あとペリー・ホワイトがなんかイヤな編集長になってるのが違和感ありまくり。原作だともっと信頼されてる親父ってキャラじゃん。

とまあ不満はあるものの、マーヴェルのオリジナルムービーに比べれば10倍くらいは優れた出来。そして次回作はいよいよ「NEW FRONTIER」でございますよ。DVDについてる予告編を見る限りではかなり良さそうな出来。期待してまっせ。

「注目すべき人々との出会い」鑑賞

ロシアの神秘思想家グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を鑑賞。グルジェフなんて学生時代にちょっとかじったくらいで著作も思想も殆ど知らないんだが、とりあえず観てみた。

どこぞの宗教団体の映画みたいな「うちの師匠はこんな偉いんだぞ」的な描写はまるでなく、啓蒙を求めて謎の「サルムング教団」を探し求めるグルジェフの半生が淡々と描かれている。むしろロードムービーに雰囲気は近いかな。逆に内容があまりにも地味すぎて、グルジェフがなぜ教団を求め、教団から何を学んだのかといったことには殆ど触れてないため、この映画を観てもグルジェフの思想はよく分からなかったりする。

アフガニスタンで撮影されたという映像はなかなかエキゾチックで興味深い。セットもそこそこ凝ってるし、テレンス・スタンプが出てたりするからそれなりに製作費はかかってるみたいだ。残念なのはDVDの画質がものすごく悪いこと。粗悪なテレシネをしたVHSマスターからそのまま起こしたんだろうけど、字幕が映像に焼き付いてるDVDって初めてみたぞ。

なお終盤における舞踏(ムーヴメンツ)のシーンは短いながらもなかなか圧倒的。これだけでも観る価値のある作品だと言えるかもしれない。