「捜索者」鑑賞

ジョン・フォード&ジョン・ウェインのコンビによる「捜索者」を鑑賞。ジョン・ウェインってあんまり好きじゃないんだけど、この映画についてははいい評判をよく目にしていたので。

最初は頼れるタフガイだったウェインが、コマンチェ族への憎悪のあまり、彼らに「汚された」自分の姪を殺そうとするあたりから、観る人に「もしかしていちばんヤバいのはインディアンでなくウェインじゃないか?」と考えさせる展開は見事。ただし重厚なテーマが根底にあるだけに、ところどころに出てくるコメディ・タッチの描写がえらく気になってしまうんだよな。インディアンのカミさんとか、結婚式での殴り合いとかを省いていればもっと傑作になったと思うんだが、どうよ?やはり50年代の活劇大作ってこういう娯楽的要素を含まないといけなかったのかしらん。フォード作品の最高傑作の1つとして語られる映画だけど、俺は「駅馬車」とか「怒りの葡萄」のほうがずっと好きだな。

それにしてもこの作品のヴェラ・マイルズといい、「静かなる男」のモーリーン・オハラといい、フォード映画に出てくる気の強い女性たちは本当に魅力的ですね。芯は強いんだけどアバズレじゃなくて、ワガママそうで実際は淑女といった感じで非常に美しい。時代の流れのなかで、ああいった女性たちは姿を消していってしまいましたね。あとタイプとしては正反対のヴァンプ的女優だけど、マレーネ・ディートリッヒがジョン・ウェインの腕にもたれてタバコに火をつけてる写真をベルリンの映画博物館で見たことがあって、その美しさとウェインのダンディさにえらく衝撃を受けたことがあったっけ。

「HOT FUZZ」鑑賞

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アマゾンに注文してから1ヶ月半、やっとDVDが到着。

いやあ評判通りの大傑作。コメディとして秀逸なのはもちろんなんだが、それ以上にアクション映画として異様に出来が良かったりする。ほのぼのとしたコメディかな?と思わせておいて、後半は怒濤の「ショーン・オブ・ザ・デッド」的展開になっていくのが素晴らしい。いろんな展開が凝縮された内容ながら、ジェリー・ブラッカイマー的編集とはまた違う、素早いカッティングを効果的に使った編集によって観る人を引き込んでいく。あの編集テクニックに俺はイギリス映画の底力を感じましたよ。話の合間に挿入される細かいギャグにも感心。

「ショーン」だと典型的なダメ男を演じてたサイモン・ペッグが、今回は有能で真面目な警察官を立派に演じているほか、マーティン・フリーマンやスティーブ・クーガン、スティーブ・マーチャントといった俺好みの役者たちがちょろっと出演しているのもナイス。日本ではなぜか公開未定らしいけど、どうしてでしょうね。ただ英語の言葉遊び的なジョークが多いんで、そこらへんのニュアンスを伝えるのは難しいかもしれない。「Decaffeinated?」とか「Judge Judy and Executioner!」とか。

ちなみにDVDは特典映像とかコメンタリーとかがたくさん入ってて結構お得。週末またコメンタリーつきで観よっと。

「小人の饗宴」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの出世作(だよな?)「小人の饗宴」を鑑賞。

板東英二みたいな顔した「縦方向に挑戦された人々」が収容所を乗っ取り、ケタケタ笑いながら乱痴気騒ぎをひたすら繰り広げる映画、というのは文章だとひどくアートでアバンギャルドな作品に思えるかもしれないが、実際に観てみるとあんまり面白くない、というよりも正直つまらない映画だった。だって本当に小人たちがチョコマカ騒いでるだけなんだもん。小人だからってお互いに結束力が強いわけじゃなく、盲目の小人をよってたかってイジめたりすんのはあまりにも子供じみていて面白かったけど。

このときの経験がいずれ「アギーレ」や「フィッツカラルド」という傑作を生んだんだな、ということ以外はあんまり印象に残らない作品であった。

「死霊のはらわた」鑑賞

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まだみてなかったので鑑賞。「キャプテン・スーパーマーケット」は先に観てるんだけどね。

徹底的な低予算映画ながら、カメラワークが非常に巧妙なので最初の30分くらいは非常に怖い。最近のCGバリバリのホラー映画なんかよりもずっと怖い雰囲気を醸し出しているんじゃないか。ただし怪物が登場してくるあたりになると、いかんせんメイクがチャチなのでちょっと滑稽な感じがしてしまうかも。まあこのホラーとコメディの微妙なバランスが、「ダークマン」とかにも通じるサム・ライミのセンスなわけですが。あとこの頃のアッシュ(ブルース・キャンベル)って意外と弱々しかったんですね。2度も軽そうな本棚の下敷きになって苦しんでやんの。

ちなみにこうしたゾンビ映画を観て思うのは、主人公って最後には銃(特にショットガン)に頼るんだよね。イギリスが舞台の「ショーン・オブ・ザ・デッド」もそうだったけど、銃規制の厳しい日本だとゾンビに襲われても銃で対抗はできんよなあ。銃の出てこないゾンビ映画というのは作ってみる価値があると思うんですが、もしかしたら既にあるんでしょうか。

「ガタカ」鑑賞

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今更ながら「ガタカ」を初見。期待してたほどではなかったかな。

「知的な近未来SF」というくくりで、どうしてもこないだ観た「トゥモロー・ワールド」と比較してしまうんだが、あちらは世界の状況や主人公の過去とかが非常に巧妙かつささやかに説明されていたのに対し、こちらはなんか全体的に説明くさい感じがしてしまう。SFとしてもフーダニットとしても中途半端なところがあって、「頑張っているんだけど目標に届いていない作品」という気がするのは、やはり「トゥモロー・ワールド」のような傑作を先に観てしまったからかなあ。

それと別人になり変わるのなら、何よりもまず顔を変えるべきじゃないのか、という考えは作品のテーマに相反してるのか?ジュード・ロウになり変わるという点だったら「リプリー」のマット・デイモンのほうがずっと積極的だったぞ。主人公がクールすぎて、星にいきたいという熱意が感じられないのもどうかと。悪い作品ではないんだが、頭でっかちになりすぎてるんだよな。

ちなみにイーサン・ホークやユマ・サーマンといった美形キャラを使ってハイソな雰囲気をふりまいておりますが、アーネスト・ボーグナインやトニー・シャローブ、エリアス・コテアス(およびゴア・ヴィダル)といったいいオヤジたちが出てるんだから、彼らのキャラをもっと立てて欲しかったな。