「小人の饗宴」鑑賞

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ヴェルナー・ヘルツォークの出世作(だよな?)「小人の饗宴」を鑑賞。

板東英二みたいな顔した「縦方向に挑戦された人々」が収容所を乗っ取り、ケタケタ笑いながら乱痴気騒ぎをひたすら繰り広げる映画、というのは文章だとひどくアートでアバンギャルドな作品に思えるかもしれないが、実際に観てみるとあんまり面白くない、というよりも正直つまらない映画だった。だって本当に小人たちがチョコマカ騒いでるだけなんだもん。小人だからってお互いに結束力が強いわけじゃなく、盲目の小人をよってたかってイジめたりすんのはあまりにも子供じみていて面白かったけど。

このときの経験がいずれ「アギーレ」や「フィッツカラルド」という傑作を生んだんだな、ということ以外はあんまり印象に残らない作品であった。

「死霊のはらわた」鑑賞

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まだみてなかったので鑑賞。「キャプテン・スーパーマーケット」は先に観てるんだけどね。

徹底的な低予算映画ながら、カメラワークが非常に巧妙なので最初の30分くらいは非常に怖い。最近のCGバリバリのホラー映画なんかよりもずっと怖い雰囲気を醸し出しているんじゃないか。ただし怪物が登場してくるあたりになると、いかんせんメイクがチャチなのでちょっと滑稽な感じがしてしまうかも。まあこのホラーとコメディの微妙なバランスが、「ダークマン」とかにも通じるサム・ライミのセンスなわけですが。あとこの頃のアッシュ(ブルース・キャンベル)って意外と弱々しかったんですね。2度も軽そうな本棚の下敷きになって苦しんでやんの。

ちなみにこうしたゾンビ映画を観て思うのは、主人公って最後には銃(特にショットガン)に頼るんだよね。イギリスが舞台の「ショーン・オブ・ザ・デッド」もそうだったけど、銃規制の厳しい日本だとゾンビに襲われても銃で対抗はできんよなあ。銃の出てこないゾンビ映画というのは作ってみる価値があると思うんですが、もしかしたら既にあるんでしょうか。

「ガタカ」鑑賞

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今更ながら「ガタカ」を初見。期待してたほどではなかったかな。

「知的な近未来SF」というくくりで、どうしてもこないだ観た「トゥモロー・ワールド」と比較してしまうんだが、あちらは世界の状況や主人公の過去とかが非常に巧妙かつささやかに説明されていたのに対し、こちらはなんか全体的に説明くさい感じがしてしまう。SFとしてもフーダニットとしても中途半端なところがあって、「頑張っているんだけど目標に届いていない作品」という気がするのは、やはり「トゥモロー・ワールド」のような傑作を先に観てしまったからかなあ。

それと別人になり変わるのなら、何よりもまず顔を変えるべきじゃないのか、という考えは作品のテーマに相反してるのか?ジュード・ロウになり変わるという点だったら「リプリー」のマット・デイモンのほうがずっと積極的だったぞ。主人公がクールすぎて、星にいきたいという熱意が感じられないのもどうかと。悪い作品ではないんだが、頭でっかちになりすぎてるんだよな。

ちなみにイーサン・ホークやユマ・サーマンといった美形キャラを使ってハイソな雰囲気をふりまいておりますが、アーネスト・ボーグナインやトニー・シャローブ、エリアス・コテアス(およびゴア・ヴィダル)といったいいオヤジたちが出てるんだから、彼らのキャラをもっと立てて欲しかったな。

「DOCTOR STRANGE」鑑賞

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マーヴェル・コミックスのオリジナルDVDムービー第4弾「DOCTOR STRANGE」を鑑賞。「HOT FUZZ」よりも後に注文したのに先に届いた。今までの3作品の出来がどれも非道いものだったので、まるっきり期待しないでみたけど、やはり内容には失望させられた。

アニメの出来が悪いのは今に始まったことじゃないんで何も言わん。ただストーリーに関しては、前作の「IRON MAN」 のときも感じたことだけど、主人公のオリジン(ヒーローになるまでの話)を長々と描いているために、主人公が終盤間際まで自分のパワーを使いこなせずにオロオロしてるのは観てて何かまどろっこしいんだよな。アイアンマンやドクター・ストレンジをよく知らない人向けの配慮だろうけど、そもそもそんな人はこうした作品を観ないだろうに。俺らみたいなオールドファンは、自らのパワーを最大限に駆使して悪と戦うヒーローの姿が観たいのにさ。その一方でドクター・ストレンジの従者ウォングの設定が原作と大きく異なっていて、ファンを裏切るような内容になっているのにはガッカリ。むしろスティーブ・ディッコ時代の作風に忠実に、ヒッピーっぽいサイケさを出したほうが良かったかもしれない。

ちなみにマーヴェルはここ1年くらい「ドクター・ストレンジ強化運動」を積極的にやっていて、今までは比較的マイナーキャラだった彼が、最近ではいろんなコミックに登場して大活躍していたりする。今回のDVDムービー化もその一環なんだろうけど、なんでドクター・ストレンジなんかをプッシュしてるのかね。魔法使いのキャラクターってのはその能力がはっきりと定義されておらず、その場にあわせて都合のいい魔法を繰り出すことから、むしろ脇役に徹したほうがいいキャラだと思うんだけどね。DCコミックスでは魔法を使うキャラの層が厚く、イギリス人のライターたちが大人向けのストーリーにうまく取り込んだことでキャラクターを活性化できた感があるけど(ニール・ゲイマンの「BOOKS OF MAGIC」は特に秀逸)、マーヴェルにはそうした下地がないからなあ。

とりあえずマーヴェルはアニメーションのスタッフを総入れ替えしたほうがいいんじゃないかと本気で思います。

「Little Dieter Needs to Fly」鑑賞

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こないだやっと劇場公開されたヴェルナー・ヘルツォークの映画「RESCUE DAWN」のもととなった、ヘルツォーク自身によるドキュメンタリー「Little Dieter Needs to Fly」を鑑賞。

これはディーター・デングラーというドイツ生まれのアメリカ人に関する作品で、子供の頃に目撃した飛行機の素晴らしさにとりつかれたディーターは18歳のときに単身アメリカへと渡り、夜学で勉強しながら大学を出て空軍に入り、念願のパイロットとなる。しかし折しもアメリカはベトナム戦争に突入しており、ディーターも戦地へ向かわされて戦闘機に乗るが、ベトナム軍に撃墜されて捕虜になってしまう。そこで地獄のような拷問を半年にわたって受け続けた彼は、ある日ほかの捕虜たちと脱走を決行する…。というのがおおまかなプロット。

いちおう戦争ドキュメンタリーなんだけど、むしろ空を飛ぶという夢にとりつかれたディーターの姿に話の焦点はあてられており、この1つの夢に向かって突き進んでいく男の姿というのは「アギーレ」や「フィッツカラルド」に似たところがなくもない。もっともディーター本人は温厚にベトナム人たちとも会話するような老人で、キンスキーのようにトチ狂ったところはまるでない。飛行する夢、という点ではJ.G.バラードにも通じるところがあるのかな。ディーターが受けた拷問の再現として、彼の手を後ろで縛ってベトナム兵と一緒に走らせるシーンとかがあるけど、よくあんなこと承諾したよなあ。本人も「思い出が甦って心臓がバクバクした」みたいなこと言ってるし。あとジャングルに生きるベトナム兵の知識と、ジャングルでの遭難を軽視したアメリカ軍の教育映画が対照的に紹介されてるのがちょっと面白い。ああいうのを観ると、アメリカ軍がなんで負けたのかがよく分かるような気がする。

ヘルツォークのドキュメンタリーとしては地味な部類の作品だけど、これが「RESCUE DAWN」でどう映画化されてるのか興味深いところです。