「X-MEN:ファイナルディシジョン」鑑賞

517yy5e3g8l_ss500_.jpg「X-MEN:ファイナルディシジョン」を観る。

ダメ。駄作。

最近は星の数ほど作られてるアメコミ映画ですが、そのきっかけとなった「Xメン」を俺は高く評価していて、原作がソープオペラみたいにチャラチャラしてるのに対し、「差別される者同士の争い」という重厚なテーマをきちんと汲み取って前面に据えたのが良かったかなと(そのあと原作もグラント・モリソンが執筆するようになって一気に面白くなったが)。「X2」も政府の強硬派に迫害されるミュータントたちの描写が結構良かったと思うし。要するに人物描写がきちんとしてたんだよね。

しかしこの「ファイナルディシジョン」はプロットを中心に据えてしまったゆえに人物描写に時間が割かれてなくて、登場人物がみんな薄っぺらく感じられてしまう。セリフはみんな説明口調だったり凡庸な一言ばかりで、ハリー・ベリーやヒュー・ジャックマンの演技がものすごく下手に見える。イアン・マッケランの演技さえもが安っぽく見えるのって、とてつもなく演出がヘタなんじゃないの?マグニートーって白昼の住宅地に登場させるようなキャラじゃないと思うけどね。その他の登場人物も適当に出しましたって感じで、あんなサエないジャガーノートなんて誰も見たくないんだけどね。いい年して全身メイクに挑んだケルシー・グラマーには感心するけど。

そして肝心のプロットだが、前作のラストから次は「ダーク・フェニックス」になることは明らかだったのに、そこにミュータント治療薬のプロットを混ぜたおかげでなんかまとまりに欠けたものになっている。「ミュータントであることは病気なのか?」というテーマが深く掘り下げられるのかと思ったらそうでもないし、その一方でジーン・グレイの行動はまったく意味不明。サイクロプスはあまりにも可哀想じゃないでしょうか。

監督の交代劇などでドタバタしてたのには同情するが、ブレット・ラトナーってやはりやっつけ仕事の人なんだなと実感。このあとはマグニートーやウルヴァリンのスピオンオフ作品が製作されるそうだけど、この作品よりかはマシなものを期待してまっせ。

「みんなのうた」鑑賞

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第5代ヘイデン=ゲスト男爵ことクリストファー・ゲストのモキュメンタリー作品「みんなのうた」を観る。彼のこの前の作品「ドッグ・ショウ」はいまいちピンとこなくて、どんな内容だったか正直覚えていないくらいなんだけど、こいつは面白かった。

フォークミュージックのプロモーターが死去したことで、彼に世話になったバンドたちが再結成してコンサートを行うまでの姿を追った作品で、よく観てないと冗談なんだか真面目なんだかよく分からないような、ひたすらシュールなジョークが続いていくところは「ドッグ・ショウ」と同じ。出演者はゲスト自身のほかに、ユージン・レヴィやマイケル・マッキーン、ハリー・シェアラー(スパイナル・タップだ!)などなど、ゲストの作品ではおなじみの面々が顔を揃えている。

特徴的なのはコメディなのに底辺には徹底したペーソスがあることで、それを象徴してるのがレヴィとキャサリーン・オハラが演じるミッチ&ミッキーというフォークデュオ。ずっと前に別れた彼らの片方は平凡な主婦生活を営み、片方は精神を病んでしまっている。そんな彼と彼女が久しぶりに再会して歌をうたう姿ははかなくも美しい。コンサートが成功に終わったからってまたスターになれるとは限らず、その後のバンドたちの微妙な姿までを描いてるのがちょっと酷でもある。

そして劇中でバンドが披露する曲がどれも素晴らしく、コンサートのシーンだけでも十分楽しめるかも。特にバンドが総出演で歌う「A MIGHTY WIND」の光景には圧巻される。これらの曲をすべて出演者たちが自ら作曲して演奏したというんだから、才能あるよなあ。

「スパイダーマン3」鑑賞

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やっと観てきた。劇場で映画を観たのって久しぶりだなあ。

確かに世間一般で言われているように、「まあまあの映画」かなって感じ。登場人物が多すぎるせいで内容が散漫なものになってしまい、ストーリーにメリハリが欠けているような気がする。ステーシー親子は出てくる必要なかったんじゃないかと。ブライス・ダラス・ハワードって思ったよりもブスだっだし。グウェン・ステーシーってもっと清純なイメージがあるんだけどな。でもとりあえずディラン・ベイカーが出ていたのには満足(あとブルース・キャンベルも)。

今回の悪役ですが、ヴェノムって原作だとあまり面白くないキャラクターだと思うんだけど、それなりにうまく映像化してまとめていたかと。もっと大柄だと良かったんだけどね。あのサイズだとジャイアンよりもスネオといった感じで威圧感ないし。サンドマンはいい俳優を使っているからそんなに文句はない。演技するシーンは少なかったけど。もしさらなる続編が作られるとすれば、90年代のゴミキャラであるカーネイジは絶対出して欲しくないなあ。ぜひディラン・ベイカーをトカゲ男にして、ミステリオあたりとタッグを組ませるとか。

前作同様に、アクションだけでなくヒューマンドラマにも重きを置いている点は評価したい。主人公が苦悩する姿が「スパイダーマン」の醍醐味ですからね。ピーターが悪ノリする姿はちょっとやり過ぎかと思ったけど、まあサム・ライミだからB級映画の雰囲気がしてしまうのは仕方ないかも。三角(四角?)関係を描くんだったら、前作に続いてマイケル・シェイボンを起用したらもっと生々しい描写ができたかも。

ちなみに前作でも感じたけど、ピーターはマスクを取りすぎ/取られすぎ。ここらへんはマスクがあっても感情表現のできるコミックと、そうでない映画の違いなんだろうな。あとトビー・マグアイアの微妙なアゴのたるみ具合がずっと気になって…。大金もらってるスターなんだから、あと5キロくらいは落とそうよ。暗黒面に堕ちてゴスっぽい容姿になったときなんて、ロバート・スミスみたいだったぞ。

でもまあ悪い映画じゃないっすよ。

「The U.S. vs. John Lennon」鑑賞

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公民権運動に関わったおかげでアメリカ当局に睨まれたジョン・レノンを扱ったドキュメンタリー「The U.S. vs. John Lennon」を観る。

つまんね。

レノンは平和を愛しました・反戦活動をしました・他の活動家と仲良くなりました・おかげでニクソンやフーバーに嫌われました・盗聴や尾行をされました・パスポートをとりあげられそうになりました、などと既に聞いたことのある話がただ紹介されていくだけ。目新しいことは殆ど聞けない。せめて「マーク・チャップマンはFBIに洗脳されていた!」くらいの新説(?)は聞きたかったぞ。これじゃヒストリー・チャンネルの特集番組レベルじゃん。

当時について語る人たちも、オノ・ヨーコをはじめG・ゴードン・リディやノーム・チョムスキー、ゴア・ヴィダルなど、まあ、予想された面々ばかり。ベトナム戦争とイラク戦争を対比するようなコメントが一切ないのも個人的には不満。この作品を観て感じたことがあるとすれば、

俺はヒッピーが嫌いだ

ということくらいかな。ジョン自身は自分のことをピースニクと呼んでたけど。記者の前でベッドに入るパフォーマンスなんかしても、実際にデモに参加してアジってた人たちに比べれば何か生ぬるい気がするんだけどね。

それにしても、代わりにポールが撃ち殺されてれば良かったのにと最近つくづく思う。

「兵士トーマス」鑑賞

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こないだクライテリオン版DVDが発売になった1975年の映画「兵士トーマス」こと「OVERLORD」を観る。原題の「OVERLORD」とは悪魔にそっくりな宇宙人のこと…では当然なく、  第2次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦のコードネーム。イギリスの片田舎から徴兵された素朴な青年のトーマスが、軍隊で訓練を受けてノルマンディーへと送られていくさまを追った内容になっている。

軍隊における生活の描写が物語の大半を占めていて、冒頭の宿舎のシーンはちょっと「フルメタル・ジャケット」を連想させる。撮影監督のジョン・アルコットはキューブリック作品の常連でもあるそうな。戦争映画なんだけどドンパチやるようなシーンはほとんどなく、軍隊および戦争という非日常的な状況に身をおいた主人公の孤独さがよく表現されていて、むしろ雰囲気はアート映画に近い。「西部戦線異状なし」に通じるものがあるかな。そしてトーマスには常に死の予感がつきまとっており、村で少女と恋に落ちても、家族に手紙を書いていても、もう2度と彼女たちに会えないことを彼は感じ取っている。そして最後に彼は「もう僕には何も残っていない」と語って戦地に向っていくのだ。ここには「プライベート・ライアン」や「バンド・オブ・ブラザース」のような「生きて故郷に還ろう」という希望もないし、石原慎太郎映画のような「お国のために死んできます〜♪」といった幻想もない。ただ淡々と運命に翻弄されて生きていくトーマスの姿だけが、モノクロの映像にのせて映されていく。

そしてこの映画の大きな特徴として、尺の半分近くにおいて第2次大戦当時の記録映像が使用されているということがある。戦争博物館にあった膨大な量のフィルムを検証して編集したそうだが、地を這うくらいに低空で飛行する戦闘機、真夜中に炸裂する爆弾、ミサイルを発射する戦艦などの映像はいずれも非常に迫力があり、そして重々しい。いくらCGIの技術が進歩しても、戦争の映像というのは本物には敵いませんね。なかでも煙を噴いて前進するパンジャンドラムという車輪兵器の光景は圧倒的。これらの衝撃的な映像がトーマスのシーンにうまく重なりあい、戦争の暗さを醸し出すことに成功している。

アメリカでは製作当時は公開がされず、なんと昨年やっと初めて劇場公開されたという作品だが、優れた傑作であることは間違いない。