「注目すべき人々との出会い」鑑賞

ロシアの神秘思想家グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を鑑賞。グルジェフなんて学生時代にちょっとかじったくらいで著作も思想も殆ど知らないんだが、とりあえず観てみた。

どこぞの宗教団体の映画みたいな「うちの師匠はこんな偉いんだぞ」的な描写はまるでなく、啓蒙を求めて謎の「サルムング教団」を探し求めるグルジェフの半生が淡々と描かれている。むしろロードムービーに雰囲気は近いかな。逆に内容があまりにも地味すぎて、グルジェフがなぜ教団を求め、教団から何を学んだのかといったことには殆ど触れてないため、この映画を観てもグルジェフの思想はよく分からなかったりする。

アフガニスタンで撮影されたという映像はなかなかエキゾチックで興味深い。セットもそこそこ凝ってるし、テレンス・スタンプが出てたりするからそれなりに製作費はかかってるみたいだ。残念なのはDVDの画質がものすごく悪いこと。粗悪なテレシネをしたVHSマスターからそのまま起こしたんだろうけど、字幕が映像に焼き付いてるDVDって初めてみたぞ。

なお終盤における舞踏(ムーヴメンツ)のシーンは短いながらもなかなか圧倒的。これだけでも観る価値のある作品だと言えるかもしれない。

「NAPOLEON DYNAMITE」鑑賞

あまりにも非道くてここには名を出すことも憚られる邦題を持った映画「NAPOLEON DYNAMITE」を鑑賞。やはりダメ男が主人公の映画は他人事とは思えんなあ。

まずあのユルさが素晴らしい。近所のビデオ屋で安売りされてた20年前の無名映画をVHSで観ているような、80年代フレーバーに溢れたあの感覚は何なんだろう。カッコ悪い主人公に感情移入させつつも、変に心の葛藤とかを描いてウェットな内容にせず、絶妙な距離をおいてキャラクターを眺めているところが巧いな。主人公や仲間たちだけでなく、学校の人気者たちも結局はみんなチープな田舎者だというのが異様に斬新でもある。去年青森に行ったときも思ったんだけど、車がないとどこにも行けない土地に住む高校生の青春というのはいろいろ面白い題材になるんじゃないのかな。

あの邦題のために日本ではイロモノ扱いされてる作品だけど(俺も同僚に見せたら笑われた)低予算ながらも優れた作品なので多くの人に観てもらいたいもんです。ちなみにアメリカでは人気が高じて今度TVゲーム化されたらしいぞ。何だそりゃ。

「ストーリーテリング」鑑賞

トッド・ソロンズの「ストーリーテリング」を鑑賞。冒頭からセルマ・ブレアーのおっぱいが拝めてラッキー、といった感じ。もっと豊満なイメージを俺は勝手に抱いてましたが。「ダーティ・シェイム」のせいかな。

まあ確かに観ててかなりシンドイところのある作品ではあった。2部構成になってて、第1部は大学における理想と現実の冷酷な衝突という内容が「アートスクール・コンフィデンシャル」に通じるものがあるな。現実をもとにした小説なのにフィクションとしてしか見なされない、というポイントはなかなか興味深い。

そしてポール・ジアマッティがドキュメンタリー作家を演じる第2部は、こないだの「AMERICAN MOVIE」へのアンチテーゼとして作られたという話を聞いたんだが、あまりそれらしきメッセージは感じられなかったかな。マーク・ボーチャートの相棒を出演させてるあたり、かなり意図的なものがあるんだろうけど。撮影の対象をドキュメンタリー内でバカにすんな、ってことですかね。

キツい内容を絶妙なブラック・ユーモアで包んでいた「ハピネス」に比べると直球勝負に出過ぎているような感があるけど、希少価値を持った作品であることは間違いない。北米版のトレーラーではソロンズの意向により第1部からの映像を一切使用してないんだけど、商業的にここまでトンガった監督はそういませんぜ。普通だったらセルマ・ブレアーを使って客の気を引きそうなもんだけどね。

「AMERICAN MOVIE」鑑賞

「素晴らしき映画野郎たち」こと「AMERICAN MOVIE」をやっと鑑賞。ウィスコンシンに住むアマチュア映画監督のマーク・ボーチャートが、何年もの時間と労力をかけてホラー映画を作ろうとする姿を追ったドキュメンタリー。

田舎者まるだしの訛りでしゃべるボーチャートが、誰も映画なんて観ないような小さな町で予算とスタッフをかき集め、何度も障害に出くわしながらも自分なりに目標を持って映画を作ろうとする姿は、最初のころはとても微笑ましい光景に見えるのですよ。それがいつまでたっても本人の変なこだわりによって製作が進まず、幼い子供を3人も抱えてるのに老齢の叔父に予算を無心し、母親や恋人にカメラを回してもらいつつも一向に作品が完成に近づかないのを見てると、自分のはかない夢のために周囲の人を犠牲にするのはどこまで許せることなのか、そもそもボーチャートは熱意がカラ回りしてる「痛い人」なんじゃないかという気がしてしまう。彼がようやく完成させた映画「THE COVEN」を観てみたけど、雰囲気の醸し出し方とか撮影テクニックとかはそこそこの出来になっているのに、ボーチャートの性格そのまんまな偉ぶった台詞が延々と続いているおかげで非常に間延びした意味不明の内容になってしまっていた。あれが5分ほどの作品だったらリチャード・カーンくらいの出来にはなってたかもしれないのに。

まあでも以前にカナダの映画教室で「PROJECT GREENLIGHT」を観たときにも思ったけど、破綻している製作現場ってのは端から見てるととても勉強になりますね。とりあえずこの映画を観て感じたのは、いつまでも完成しない傑作よりも完成した駄作のほうがビジネス的には何十倍もマシだということと、フィルムを使った編集はするなという点ですかね。ファイナルカットとかに慣れた目で見ると、あのフィルムを切って貼って…という編集作業はえらく原始的なものに思えてしまう。

一人のライミやスピルバーグやケヴィン・スミスの裏には、きっと1000人くらいのボーチャートがいるんだろうな。そして彼らが成功するためには何が必要かというと、どうも才能とかコネとかの前にまず「運」が必要なんだという気がしてしかたないのです。

「Harold & Kumar Go to White Castle」鑑賞

数年前にアメリカで公開されてカルト的人気を博したストーナー(ラリパッパ)・コメディ「Harold & Kumar Go to White Castle」を観た。

これはニュージャージーに住む韓国系のハロルドとインド系のクマーが、マリファナをキメてハイになったあと「腹がへったぜ!」ということでアメリカ最古のファストフード・チェーン「ホワイト・キャッスル」まで遠路はるばる車をとばすものの、道中でさまざまなトラブルに見舞われ…といった内容の作品。日本でいえば船橋に住む在日韓国人とイラン人がドムドムハンバーガーを食べに出かける、といった感じになるのかな。

主人公ふたりが白人のにーちゃんだったらフォックス・サーチライトあたりが好きそうな人畜無害のコメディになっていただろうけど、黒人やヒスパニックといったメジャーなマイノリティ(なんだそりゃ)ですらないコンビを主人公にしたことで、人種差別のテーマがかなり前面に出されているのがポイント。銀行員のハロルドは上司に「アジア人は数字が好きだろ」といって大量の仕事をおしつけられ、クマーは「(シンプソンズの)アプー」呼ばわりされながら、白人のゴロツキどもに一晩中迷惑することになるのだ。まあでもシリアスな部分は殆どなくて、基本的には脳天気コメディなんですけどね。

有名人のカメオ出演としてアンソニー・アンダーソンとかクリストファー・メローニとかが出てるけど、一番強烈なのは天才少年ドギー・ハウザーことニール・パトリック・ハリス。ハロルドたちの車に乗り込んでくるなり「バーガーよりもプッシー食いにいこうぜ!イェー!」といった感じで暴走し、裸のおねーちゃんたちをはべらせる熱演ぶりを見せてくれる。あの人ゲイなのによくやるよなあ。

この作品がカルト的ヒットになったことで続編の製作が決定。今度はクマーがテロリストに間違われてグアンタナモに送られた2人が、そこを脱走してブッシュ大統領の自宅に迷い込む・・・というかなり期待できそうなプロットになるらしいぞ。