「The Cabin in the Woods」鑑賞


「アベンジャーズ」で今をときめくジョス・ウィードンが脚本と製作を担当した作品で、監督は「クローバーフィールド」の脚本家のドリュー・ゴダード。2009年に撮影したのがいろいろあって公開が今年まで公開が遅れたらしい。

大学生のダナとその友人のジュールズ、およびその仲間たち計5人の男女が、田舎の山奥にある山小屋へキャンプに行くところから話は始まる。森のなかの山小屋に到着した彼らは湖で泳いだりと楽しいひとときを過ごすものの、やがて周りで奇妙な現象が起きることに気づく。そして彼らは何者かに監視されていたのだった…というようなプロット。

これ以上の設定をバラすと話がいっぺんにつまらなくなるので細かい説明は省くが、要するにホラー映画をとてもメタな視点から語った異色作になっている。典型的なティーン向けホラーを脱構築しているというか。メタな様子があるホラー映画というと「スクリーム」が以前にあったが、あれよりもさらに奇妙なプロットのツイストが加わっている感じ。また同じティーンの主人公たちでも、ケヴィン・ウィリアムソンよりもジョス・ウィードンの作品のほうが活発でいいですね。今回の5人はやはり「スクービー・ドゥ」の登場人物をモデルにしてるんだろうか。

キャストは雷神ソーことクリス・ヘムズワースが出演しているほか、中間管理職的な役をブラッドリー・ウィットフォードが好演。最後にはあのお方もカメオ出演しているぞ。いちばんのめっけものは主人公のダナを演じるクリステン・コノリーという女優で、1980年生まれとは思えない童顔でコケティッシュなスクリーム・クイーンぶりを見せつけてくれるぞ。

ホラーかと言うとそうでもないし、かといってSFやコメディというわけでもないし、なかなか一筋縄ではいかない映画だけに観る人を選ぶかもしれないが、こういう作品を作ってしまえることは凄いと思いますよ。何の前知識も持たずに観に行って、目の前で起きる怒濤の展開に呆気にとられるべき映画かと。

「THE GOSPEL OF US」鑑賞


「ザ・サンドマンの表紙の人」ことデイヴ・マッキーンが監督した映画。ただし彼が細かい演出などをしたわけでなく、ウェールズ出身のマイケル・シーンが同郷の詩人オーウェン・シアーズの小説をもとにした劇をウェールズの町ポート・タルボットで3日にわたって開催した光景を撮影したものらしい。

ベースとなるのはキリストの受難劇で、シーンが演じるのは「教師」と呼ばれるボロをまとった男性。海で洗礼を受けた彼はサンドウィッチを皆に分け与え、テロリストを説得したりして人々に慕われる存在になるものの、やがて警察に連行されて公開裁判にかけられ、頭に有刺鉄線の冠をかぶせられて磔にされることに…というのがものすごく大ざっぱな話の流れ。決して明確なストーリーがあるわけではなく、抽象的なシーンが連なっているような感じか。

ストーリーにおいて聖書の登場人物はすべて現代的になり、ローマ兵は高圧的な警察部隊になり、主人公を裁くのはスーツを着た地元の政治家であり、さらに神は高台から見下ろす工事現場のオッサン、という姿で登場していた。

そして劇といっても町全体が参加した大きなイベントのようなもので、シーン以外の役者はおそらく地元の劇団の人たちかな。それをとりまく人々は一般の市民で、シーンと役者たちのやりとりをビデオカメラとかで撮影してる姿がさらに撮影されているという、ちょっとシュールな映像もあったりします。おまけに地元バンドのマニック・ストリート・プリーチャーズのライブが突然始まったりと、何が何だか。

こうした設定ゆえにマッキーンの前作「ミラーマスク」に比べるとドキュメンタリーっぽい要素が強いものの、映像の加工や音楽などは彼が加えているため、セピアっぽい色調やソフトフォーカスが多用されたマッキーン的な映像は意外と多用されていた。彼の作品のファンなら観て損はしないでしょう。

映画館よりも美術館でかかってるアートフィルムという趣きが強い内容であったが、悪い作品ではなかったよ。

「ザ・レイド」鑑賞


あまり良く知られてないインドネシア映画「ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~」の監督(ウェールズ人)&主演(東南アジアの格闘技シラットの達人)のコンビによる新たなアクション映画。

ストーリーは極めて単純で、ジャカルタの麻薬王とその部下たちが住むスラム街のビルに、彼らの撲滅を計画した機動隊の一隊が奇襲を試みるものの、鉄壁の守りを誇るゴロツキたちの前に彼らのことがバレてしまい、逆に狩られる身になってしまう。そして機動隊の隊員は1人また1人と殺されていき、どうにか生き残った主人公とその仲間たちはビルからの決死の脱出を図るのだが…というようなプロット。

最初の30分くらいは機動隊とゴロツキどもの銃撃戦がメインで、血と肉が飛び散るFPSゲームばりのアサルトライフルによるガンファイトが繰り広げられるぞ。そして機動隊員の数が減り、彼らの弾薬が尽きたところでゴロツキたちも都合よく銃を使わなくなるんだが、そこから先は主人公を中心としたシラットによる肉弾戦が続き、壁を破り床を突き抜けるバトルが堪能できる。当然ながらワイヤーアクションなどは皆無だし、カンフー映画に比べて技がコンパクト(肘打ち・ヒザ蹴りが多い)なものの、主人公の動きがハンパじゃないうえにカメラワークも巧みで拍手したくなるくらいに見事な格闘を見せてくれるぞ。主人公に負けじと機動隊の隊長も熱い戦いをするんだが、あの役者は柔道の選手だったのか。

なおラスボス的な人(すんごく強い)は「タイガーキッド」で準ラスボスみたいな役を演じてた人で(エレベーターの人)、またお前と戦うのかよ!といった感じでしたが、ああいうアクションが出来る人が少ないんだろうね。実生活ではシラットのインストラクターやってる大ベテランらしい。

麻薬王の登場シーンが「白いランニング着てラーメン食ってる」というのはどうもカッコ悪いし、ビルの中に主人公の○○がいるというのは都合良すぎる気もするけど、細かいことは考えずにひたすら続くアクションを楽しみましょう。あと「タイガーキッド」もそうだったけど、敵はたくさんいるのにみんな1人ずつ襲ってくる展開が多かったかな。1人対複数のバトルの演出が今後のさらなる課題かもしれない。

インドネシアはおろかアメリカでもヒットを記録し、続編やアメリカ版のリメークの製作も企画されているとのことで、バイオレンス描写がOKな人は観ておいて損しない作品でしょう。

「プロメテウス」鑑賞


先行上映で鑑賞。ネタバレにならない程度に感想を挙げていくと:

・監督の意向でプロモーションでは曖昧にされてるけど、「エイリアン」(当然第一作ね)の完全なプリクエルです。あれを先に観ておくことを強くお勧めします。
・科学考証とか登場人物の動機とかはツッコミどころが山ほどあるんだけど、細けーことは気にすんなよ!大金がつぎ込まれたであろう驚異のビジュアルと、先の読めない、殆ど行きあたりばったりなストーリー展開を黙って楽しみましょう。
・話の前半はセンス・オブ・ワンダー溢れるハードなSF映画といった感じで、遺跡を捜索する描写はゾクゾクさせてくれる。後半になると当然ながらヌルヌル、ヌメヌメした展開になるのですが、前半のノリでデニケン的な映画になったとしてもそれはそれで面白かったかも。
・ガイ・ピアースに老けメイクを施すよりも、老人の役者を雇ったほうが安上がりだったろうに。あとパトリック・ウィルソンが30秒くらい出演してた。
・スペース・ジョッキーのホログラム映像などは、3Dで観る価値あるかな。ホタルイカとかゲソを食いながら観るとさらに臨場感がアップするでしょう(特に女性)。
・スティーブン・スティルスってアコーディオンなんか演奏したっけ?
・ゴムはつけろよ!

全体的な雰囲気は「エイリアン」よりも、もしかしたら「プレデターズ」に近いかも。あれが許容できる人ならこの映画も好きになれるはず。あと「エイリアン」に便乗したパクリ映画「ギャラクシー・オブ・テラー」に意外とプロットが似ているような?

前述したようにツッコミどころというか疑問点が山ほどある作品だけど、個人的にはかなり楽しめる作品でしたよ。さっそく続編の話がでているようなので、今回の謎がそちらで解明されることに期待しましょう。

「ダークナイト ライジング」鑑賞


一部で言われてるほど悪い映画ではない。というか普通に優れた映画なのだが、必然的にあの傑作「ダークナイト」と比べられてしまうのが損なところか。あっちは悪役の動機やオリジンを説明する必要がなかったし、後味の悪い終わり方も「次があるから」で済ませることができたが、こちらは話をきちんと畳まないといけないわけで、そうなると万人を満足させることはまず無理だったのでは。とりあえずネタバレ気味の雑感をいくつか:

・ベインは話し方が異様にカッコ悪い。なぜパブで一杯やってるオヤジのような話し方をするのかと思ったら、アイリッシュ・トラベラーの拳闘家をモデルにしてたのか。なんか知的なストラテジストのようには聞こえないのよね。そもそも彼の組織は変なアクセントで話す人が多いような。

・3時間近い長尺でありながら、「増長した主人公が痛い目にあう」とか「時限装置付きの爆弾は(悪役が望むようには)爆発しない」といったクリーシェに多くの時間を割いてしまったのが残念。映画で「驚異の新エネルギー」みたいなものが出てくると必ず悪用されるよね。

・前作のラストでバットマンは警察に追われる身となったわけだから、今回のクライマックスで市民とでなく警官たちと蜂起する展開はそんなに変だとも思わなかった。昼間にバットマンを登場させるのは好ましくない演出だと思うが。

・「トーチウッド」のバーン・ゴーマンが意外と出演シーンが多かった。あとは「ザ・ワイヤー」のエイダン・ギレンやロバート・ウィズダムがチョイ役で出ていていい感じ。そしてマシュー・モディーンはあんなに背が高かったのか。

観てて楽しみつつも、「前作ほどではないな…」と頭の片隅で思ってしまうという、複雑な心境にさせる作品であった。このまま「スパイダーマン」みたいにフランチャイズを安易にリブートさせるのは勿体ないから、「彼」を主人公にした新たな3部作を作ればいいのに!