「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」鑑賞


「ロケッティア」のジョー・ジョンストンが帰ってきた!あの人やっぱり真面目な映画撮ってるよりもこういうレトロでちょっとユーモラスな冒険活劇がいちばん似合うんじゃないだろうか(「遠い空の向こうに」もそれに含めることにする)。

ただし「ロケッティア」はあくまでも1人の少年の冒険物語だったのに対し、こちらは大戦中の国の英雄の物語なので、主人公がリーダーへと成長するまでの過程が十分に描かれなかったのは残念。単身もしくは小部隊で闘っている前半はとてもいいんだけど、キャプテン・アメリカとしてのカリスマ性が後半になっても欠けているというか。単に勇気とスーパーパワーだけでなく、洞察力とか思慮深さも身につけていくところが観たかったというか。バッキーがXXされるシーンもやけにサラッと描かれてるし、女性には最後まで弱いままだし。クリス・エヴァンスは口の達者な脇役はよく似合うものの、国のヒーローを演じるのはちょっと力不足だったかもしれない。

あとの役者はやはりトミーリー・ジョーンズがズバ抜けて巧い。ヒューゴー・アーヴィングはドイツ語訛りのせいで損をしていて、スタンリー・トゥッチはその逆。ヒロインは可も不可もなし。ゾラ博士の人が個人的には良かったな。あとリチャード・アーミテジが出てたのには気付かなかったよ。

もう一押しすればもっと面白い作品になったかもしれないが、普通のアクション映画として観れば十分に楽しめる作品。マーヴェル映画としては「アイアンマン2」より上で「マイティ・ソー」よりちょっと下、というくらいの出来かな。

「BATMAN: YEAR ONE」鑑賞


言わずと知れたフランク・ミラー&デヴィッド・マズッケリの同名傑作コミックのアニメーション版。

バットマンことブルース・ウェインと、ジェームズ・ゴードン警部のゴッサム・シティにおける最初の年の活躍を描いたもので、65分という比較的短い尺ながらも原作のセリフや展開を丁寧に映像化していてなかなか楽しめる出来になっている。ラストの「メガネがないと何も見えないんだ」というところは原作以上に思わせぶりな演出になっていて良かったな。なお原作といちばん異なるのは「ゴードンがタバコを吸わない」という点でして、ここらへんはアメリカの表現規制が厳しいんだろうな。原作ではちょっとした小道具的扱いだっただけに残念。

アニメーションの出来も良いんだが、原作に忠実なぶんマズッケリの素晴らしいアートと比べると見劣りしている感があるのは否めない。アクションシーンの決めのポーズとかね。最近はヨーロッパでアートなコミックを描いてるマズッケリですが、スーパーヒーローものにまた戻ってきてくれないかなあ。

声優はゴードン役をブライアン・クランストンが勤めていて、妻子を抱えながらゴッサムの闇と闘うハードボイルドな演技はブレイキング・バッドしていて大変よろしい。それに対してバットマン役のベンジャミン・マッケンジーは滑舌があまり良くないような?バットマンの声優って全てケヴィン・コンロイに任せればいいんじゃないかと思うんですが、もっとセレブな役者を起用していのかね。他にもエリザ・ドゥシュクやケイティー・サッコフなどが声の出演をしてます。

原作コミックを片手に持ちながら鑑賞をしたわけですが、フランク・ミラーって昔はこういう男たちの心情をきちんと書ける人だったんだなあと改めて実感してしまったよ。彼って後期「シン・シティ」あたりから手がけるストーリーがずいぶん大味になってきて、さらに911テロのあとは発言とかが相当ヤバい人になってしまい、監督した映画「スピリット」が大コケしたほか、こないだ久しぶりに出したコミック「HOLY TERROR」はバットマンまがいのヒーローが「イスラム教徒はみなテロリストだ!」といった姿勢で暴力をふるうという相当ヒドい内容になっているらしく、各方面からまんべんなく叩かれているんだよな。こうして「YEAR ONE」が映像化されたり、デアデビルの「BORN AGAIN」も映像化されるという噂があるなか、ミラーが世間からとても遠い所にいってしまった感じがするのは残念なことです。

機内で見た映画

週末から昨日まで海外出張に行ってたので、機内で観た映画の感想をざっと。眠かったんで行き帰りで合計4本しか観てないです。

「カーズ2」
車のディテールなんかは大変美しいと思うんだけどね。やはりストーリーの凡庸さが気になる。ドリームワークスやフォックスの作品だったら許容できたかもしれないが、ピクサーにはそれ以上のものを求めてしまうわけで。スパイアクションに友情の話とかを絡めても何だかなあ、といった感じ。これからピクサーは続編をいろいろ作ってくようだけど、ちょっと不安にさせられるな。

「ブルー 初めての空へ」
それでこっちはフォックスのCGアニメ。人間のデザインが「くもりときどきミートボール」に似てない?飛ぶことを学ぶ鳥の物語なのに肝心の飛翔シーンに躍動感が無いのはどういうことよ。製作者は「ヒックとドラゴン」を100回見直しなさい。ストーリーもおざなりで、いつものブルースカイ作品といったところか。とはいえ日本では全国公開されないのは勿体ないと思う。

「CEDAR RAPIDS」
コメディとして観ると笑えるところとかはあんまり無いんだけど、田舎の保険業界の裏側とか中年の挫折感を描いたドラマとして観るとそこそこ楽しめた。エド・ヘルムズは愚直な若造の役がよく似合うな。とはいえ映画を支えてるのはジョン・C・ライリーの演技力ですが。あとアン・ヘッシュが男好きの役を演じるのにはいまだに違和感を抱いてしまうな。

「SUBMARINE」
「IT CROWD」のモスことリチャード・アヨエイドの初監督作品。火遊びが好きな奇抜な女の子に恋をしたり、両親の不仲を修復しようとするウェールズの15歳の少年の姿を描いたもので、ものすごく美しい映像と絶妙なユーモアで語られていく物語が大変素晴らしい。多感な年頃の不安定な雰囲気がとてもうまく描かれた傑作。飛行機の小さな画面で観たのが勿体ないくらい。

あとは「ワイルド・スピード MEGA MAX」に何度か挑戦したが話のノリにまったくついていけず断念。予告編に出てくる「崖から落ちる車」というシーンのオチが「そのまま川に突っ込んで助かる」というのはズルいんでないかと。「Mr. Popper’s Penguins」も観たけど途中で寝る。過密スケジュールで疲れてたんだよ!

下は「SUBMARINE」の予告編。

「グリーン・ランタン」鑑賞


字幕版3Dにて。3Dの意味なし。というか字幕のエッジが赤くなる現象がたまに起きてたんだけど、あれ何だろう?

いろいろ金かけてるはずなのに残念な出来の映画であったよ。必然的に主人公のオリジンを描いた内容になってるんだが、GLのオリジンなら傑作「エメラルド・ドーン」とか最近のジェフ・ジョンズのやつとか「ニュー・フロンティアー」とかコミックからいくらでも引っ張ってこれるはずなのに、どうも凡庸なものになってしまっている。imdbによるといちおうジョンズがコンサルタントとして関わったり「エメラルド・ドーン」も参考にされたらしいけど、本当かなあ?どうも80年代の特撮映画を観ているというか、あまりコミックに詳しくない人が脚本を書いているような印象を受けたけどね。

出演者はライアン・レイノルズが思ったよりもそんなに悪くなくて、いちばん演技が巧いのは当然ながらピーター・サースガード。完全なミスキャストはキャロル・フェリス役のブレイク・ライブリーで、コミックだと自由奔放に空を飛び回るハル・ジョーダンを地上から見守る大人びた社長令嬢という設定がよかったのに、戦闘機を乗り回す小娘なんかにしてどうするんだよ。あとティム・ロビンスはこうした大作の脇役ばかりやってないで、またインディー映画で主役とかやるべきではないかと思う。それとアマンダ・ウォーラーという(コミックでは)強烈なキャラが出てきたので「これはスーサイド・スクワッドへのスピンオフの布石か?」と一瞬期待したけど、ただのヘタレな役人でしたな。

せっかく大空や大宇宙を自在に飛び回れるヒーローの話なのに、飛行場のまわりをウロウロしてたり、CGのハリボテみたいな惑星が出てきたりと、どうも全体的にショボい作りになっているのも残念。「アイアンマン」くらいの飛翔シーンはやって欲しかった。ハルの父親は離陸時に事故死するし、最後もパララックスと地面に立って勝負するなど、どうもダイナミックさに欠けるんだよな。あとパララックスのデザインがカッコ悪すぎ。黄色いタコみたいだったぞ。ガーディアンズもCGでなく人間の役者を使えば良かったのに。

企画の段階で右往左往してたらこんなの出来ちゃいました、というダメ作品の好例。批評的にも興行的にも失敗してるのは製作側も分かってるはずなので、続編を作るとしたらもっと本腰を入れて作って欲しいところです。

「ライフ いのちをつなぐ物語」鑑賞


なんか公式サイトがとても読みづらいですね、この映画。

何を期待していいのか分からずとりあえず観に行って、とりあえず予想していたものを観せられた、といった感じ。極地のアザラシの親子やアフリカの象の群れ、地面の昆虫や大空の鳥たちといった世界中の動物の映像を紹介し、彼らが生き延びるためにどのような行動をしているのかを描いたドキュメンタリーで、映像はBBCだけあって大変に美しい。氷の下を泳ぐアザラシとか、アリの巣の内部なんてどうやって撮影したのか不思議なくらい。ただし以前にどこかで観たことのある映像も使われてたな。

それと「いのち」という漠然としたくくりの下でいろんな動物の映像が次々と紹介されるだけなので、85分という短い尺ながらも終盤は結構飽きるかも。そういう点ではもっと細かいテーマでくくったBBCアースのテレビ番組の方が観てためになるかもしれない。

松親子によるナレーションは可も不可もなし。「祈る」とか「情熱」といった言葉が用いられてたが、これってどこまでオリジナルのナレーションに忠実なんだろう?動物たちの生き様を観ていると擬人化してわれわれ人間の生活と重ね合わせたくなる衝動はどうしても起きるのですが、それってどこまで正しいんだろうね?イルカがxboxで遊んだりダチョウがアニメにうつつを抜かすことも無いわけで、人間と動物の生き様は大きく離れたものだと思うのですよ(どちらが上というわけではなく)。とはいえ「猿の惑星」の予告編を観たあとに、道具を使ってヤシの実を割る猿の姿を観せられたりすると、いずれ人間は彼らにとって代わられるのではないかという気にもなりましたが。