「DEADLY CLASS」鑑賞

HAPPY!」に続く、イメージ・コミックス原作のSYFYチャンネルの新シリーズ。放送開始は1月だが第1話が先行配信されていた。

舞台は1987年のアメリカ。レーガン大統領の政策によって精神異常者は病院で保護されずに街へ放り出され、その一人に両親を殺された少年マーカスは、入れられていた孤児院を放火したという嫌疑をかけられて街をさまよっていた。そんな彼はバイクに乗って日本刀を操るヤクザの娘サヤと出会い、彼女が住む施設キングズ・ドミニオンへと連れてこられる。そこはリン校長のもと、さまざまなバックグラウンドをもった生徒たちが一流の暗殺者になるよう教育される「学校」だったのだ。行くあてもないためにリン校長の招きを受け入れて「生徒」となったマーカスだが、彼には多くの試練が待ち受けていた…というあらすじ。

製作にルッソ兄弟が関わっているほか、コミックのライターであるリック・リメンダーも少なくとも第1話にはいろいろ携わっているようで、「HAPPY!」に比べても概ねコミックの展開になってるかな?アーティストのウェス・クレイグの絵はマーカスの両親が死ぬところのフラッシュバックで用いられてました。

なお舞台が80年代ということでサントラにはニューウェーブ系のバンドの曲がコテコテに使われていて、キリング・ジョークにダムドにエコバニにザ・キュアーなどなど。そこまでガンガン流すか?といった感じだったけど。

キングズ・ドミニオンのリン校長は原作だと白ヒゲの小男だが、こちらでは「アベンジャーズ」のベネディクト・ウォンが演じている。実質的な主人公はベンジャミン・ワズワース演じるマーカスなものの、アジア系のウォンがクレジット上ではトップに出てますよ。あとは有名どころだと「X-MEN: アポカリプス」でジュビリーを演じたラナ・コンドルがサヤを演じているほか、先生役でヘンリー・ロリンズが出ています。

第1話の前半はマーカスが自分の生い立ちと境遇をナレーションで延々と語る形になっていて、まあコミック通りではあるのだが映像としては単調だな。後半はキングズ・ドミニオンにおけるさまざまな先生と生徒たちが紹介されていき、多くの生徒たちは自分のバックグラウンドにあったグループに属していて、ヒスパニックや黒人のギャング、サヤ率いるヤクザの組、白人至上主義者などなど。

マーカスは孤児院を焼いたという嫌疑で他の生徒にも白い目で見られ、ゴスやパンクの生徒とともにつまはじきにされているのだが、いかんせん登場人物が多すぎるなあ。ヒスパニックのギャングのメンバーとのケンカも盛り上がらずに、第1話は状況説明だけで終わってしまったような。今後はシリアルキラーなども登場するようで、話がだんだんこなれてくることに期待しましょう。

「ドクター・フー」シリーズ11開始


というわけでついに登場しましたよ、13代目にして初の女性ドクター。いろいろ論議を呼んだキャスティングだけど、正直なところ今までのドクターに比べてそんなに違和感がなかった。そもそもドクターって性的なものに興味がないというか、アセクシュアルなキャラクターであるわけで、男が女になったからといって性格がそんなに変わるわけでもなし。劇中でも女性になったことは簡単に触れられる程度で、あとはおなじみの冒険が始まっていく。

今回のドクターを演じるジョディ・ウィテカーって素はヨークシャー訛りが結構キツいので、セリフが何言ってるか分からないんじゃないかと心配してたが、劇中ではそんなに訛ってなかったような。団地の中というか室内に入ると、以前の出演作「アタック・ザ・ブロック」の人、のように見えてしまうのはご愛嬌。第1話は例によって前のドクターであるピーター・カパルディの衣装で大半を過ごすのだが、若くて活発的なこともあり、むしろ11代目のマット・スミスを彷彿とさせるかな?肉体が再生したばかりでも味覚は11代目にくらべて普通なようで、エッグサンドウィッチを欲しがったりします。全話で最後に発した「Aw, Brilliant!」が新キャッチフレーズになるかと思ったけどそうでもないみたい。

主役交代に加えて番組のショウランナーも、長年勤めたスティーブン・モファットから「ブロードチャーチ」のクリス・チブナル交代。「ドクター・フー」の初心者でも楽しめるような内容にされているとうことで、あまり過去の歴史などへの言及はなし。日本でも「ドクター・フー」入門編としていいんじゃないですか(日本でいつ放送するかは知りませんが)。第1話は意外にも最後までターディスが登場しなくて、前話の終わりで行方不明となったターディスを探すのが今シーズンのテーマになってくるのかな?ターディスがないため、ドクターは身近にある素材を用いて新しいソニック・スクリュードライバーを自作したりしてます:

話は冒頭からグングン進んでいって、なんとオープニング・クレジットもなし。シェフィールドに謎の物体が落ちてきて、それに関わった男女数人が謎の機械生物に遭遇。そこにドクターが登場し、さらに別のエイリアンが現れて…といった展開。製作予算が増えたのか、特殊効果もかなり迫力のあるものになってるぞ。今回のコンパニオンは、運動障害があって自転車に乗れない少年ライアン、その義理の祖父のグレアム、ライアンの元同級生で警官のヤスミンになるみたい。従来のドクターに比べてコンパニオン(BBCのサイトによると「フレンズ」が新しい呼び名になるのかな?)の数が多いあたり、ウィテカーだけでは番組を支えられないと製作陣が考えたのかと勘ぐってしまうが、真相はわかりません。

シーズンの予告編では、アラン・カミングやクリス・ノスといった今後登場する役者が紹介されるだけで、ダーレクをはじめとするおなじみの敵役などが登場するのかは一切不明。新規ファンが楽しめるようにした一方で、オールドファンには少し物足りない気もするが(オープニング・クレジットはつけて欲しかった!)、新しいドクターは十分魅力的だし、これからどんな冒険が待ち受けているのかに期待しましょう。

新作シットコム6本レビュー

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アメリカでは秋の新作ドラマシーズンが始まったのに、いろいろ忙しくて殆どチェックしてないのですが、それではいかんと思って新作コメディを6作ほど一気見したのですよ。以下はその簡単な感想:

「SINGLE PARENTS」(ABC)
「NEW GIRL」のプロデューサーふたりによるシングルカメラ作品。子育てに奮闘するシングルペアレント5人の生活をテーマにしたもの。「NEW GIRL」が若者の恋愛と結婚までを描いたものとすれば、まあこれに続きますかね。「キリング・ガンサー」タラン・キラムが能天気なパパで、ブラッド・ギャレットが無愛想なパパを演じている。「NEW GIRL」に比べれば凡庸な作品かな?
(評価:B-)

「THE NEIGHBORHOOD」(CBS)
「NEW GIRL」のシュミットを演じたマックス・グリーンフィールドが出演。黒人だらけの地区に白人家族が引っ越してきたことで、慌てふためく隣の黒人家庭を主人公にしたもの。その一家の父親にセドリック・ザ・エンターテイナー。そんなにキツい人種ネタなどはなくて、まあ穏やかな感じ。でもテーマとしてはまあまあ面白いか。
(評価:B)

「HAPPY TOGETHER」(CBS)
同じく「NEW GIRL」に出ていたデイモン・ウェイアンズJr.主演。平凡な会計士とその妻のもとに、彼のクライアントである超有名なポップスターがスキャンダルを逃れて転がり込んできたことで生活が一転するという内容。今回のなかでこれがいちばん典型的なシットコム(居間が舞台のマルチカメラ)っぽかったかな。それはつまり凡庸という意味ですが。
(評価:B-)

「THE COOL KIDS」(FOX)
クリエーターは「フィラデルフィアは今日も晴れ」のチャーリー・デイ。題名とは裏腹に、老人ホームで暮らす男3人と女1人が、管理人の目を盗んで巻き起す騒動を描いたもの。ちょっとだけネタがキツめかな?俺は主演のデビッド・アラン・グリアーが好きなので点を甘くする。
(評価:B+)

「REL」(FOX)
「ゲット・アウト」で主人公の親友を演じてたリル・レル・ハウリーが主役。シングルカメラっぽいけどラフトラックがついている。床屋に自分の妻を寝取られた主人公が、男としての威厳を取り戻そうと頑張る内容。主人公の父親をシンバッドが演じていて、久々に顔を見たな!コメディとしてはまあまあ。
(評価:B)

「I FEEL BAD」(NBC)
老いを感じつつも、仕事と子育てを頑張るママさんが主人公のシングルカメラ作品。ヒスパニックの両親がいる家庭の部分と、ゲーム会社でオタクどもと働く職場の部分がなんかつながってなくて、2種類のコメディを見ているような感じ。幼い娘が「MY HUMPS」にあわせてエロく踊るのを見て仰天する、って10年前のネタかよ!
(評価:C)

というわけで全体的にパッとしない作品ばかりでございました。シットコムって話数が進むうちにスタイルがこなれていって面白くなるケースも多いので、第1話で評価するのは酷kもしれないが。あとはやはり子育てのネタになったりすると、個人的には全くピンとこないのよね…。

「KIDDING」鑑賞


ジム・キャリー主演のSHOWTIMEの新作TVシリーズ。

主人公のジェフは「ミスター・ピックルズ」というキャラクターとして、30年にわたって「セサミ・ストリート」のような子供向け番組のホストを演じてきた中年男性。その番組は子供たちに絶大な人気を誇り、膨大な利益を生み出す一大ブランドに成長していた。その一方で実際のジェフの生活は決して楽しげなものではなく、妻とは離婚したばかりか双子の子供のうちひとりを交通事故で失ってしまう。番組でパペットを制作しているジェフの妹ディードラも、夫がゲイであるらしいことを知って気落ちしていた。ジェフとディードラの父親であるセブは番組のプロデューサーでもあって、公私ともにわたってジェフの行いを支配しており、番組で「死」をテーマにしようと望んだジェフの願いをにべもなく却下する。こうして仕事でも家庭でも追い詰められたジェフは徐々に正気を失っていく…というあらすじ。

SHOWTIMEに限らずHBOとかの有料ケーブル局のコメディ番組って、なぜかダウナーなノリのものが多いのだが、これもその1つ、というか内容が暗すぎてコメディ番組と呼んで良いのか…?SHOWTIMEはちょっと前にスティーブ・クーガン主演で「Happyish」というダークなコメディ番組を作ってまして、視聴率が稼げなくて1シーズンで打ち切りになってたりするのですが、これも大丈夫かな…?

とはいえ主演はジム・キャリーですからね。ジェフの頭のタガが外れていく演技は彼だからこそできるものがあって、今度それがエスカレートしていくのなら結構面白い展開になるかもしれない。さらにこれ監督とキャストがえらく豪華で、全エピソードの監督は「エターナル・サンシャイン」でキャリーと絶妙なコンビを組んだミシェル・ゴンドリー。第1話を見た限りではゴンドリーっぽい奇妙な描写は少なかったけど、ジェフの住んでいるアパートの住人が両手にペットボトルをくくりつけている、というのがそれっぽいかも。

キャストはジェフの父親のセブ役にフランク・ランジェラで、妹のディードラがキャサリン・キーナー。ジェフの元妻で、なんかちょっと育児疲れしているようなジルの役は、最近どの映画でもちょっと育児疲れしているような母親の役ばかり演じているジュディ・グリアー。あと第1話ではコナン・オブライエンとダニー・トレホが本人役でちょっと出ていました。このように鉄壁の監督とキャスト陣だが、クリエーターが「WEEDS」のデイブ・ホルステインだというのがちょっと不安だな。かれ最近はHBOの「BRINK」がコケているので。

何にせよ「エターナル・サンシャイン」以来のジム・キャリーとミシェル・ゴンドリーのコンビというのは多くのファンが待っていたものだろうし、大化けしてくれることに期待。

「YELLOWSTONE」鑑賞


「ボーダーライン」「最後の追跡」といった無骨なサスペンス映画の脚本家で、いま公開中の「ウインド・リバー」(おれ未見)の監督でもあるテイラー・シェリダンが脚本・監督を手掛けた、パラマウント・ネットワークの新シリーズ。

舞台はその名のごとく、イエローストーン国立公園に接したモンタナの街。そこで家族代々、莫大な広さの牧場を運営してきたダットン家の長であるジョン・ダットンは子供たちとともに土地を守ろうとするものの、その土地の開発を狙っている資産家や、保留地に住むインディアン(ネイティブ・アメリカンね)たちとの利権争い、街で起きる犯罪などに頭を悩ませていた。さらに彼の子供たちも決して仲が良いとはいえず…というあらすじ。

第1話は90分の長尺だが、いろんなキャラクターが登場して好き勝手に行動しているだけで、意外と話の方向性が定まらない内容であった。ジョン・ダットンは家畜組合の会長ということらしいが、街の警察をヘリコプターに乗って指揮していたりして、かなり偉い警察官という設定なのかな?キャラクターの背景がきちんと語られないまま話が進んでいくので、内容をつかむのがしんどかったよ。

早くして妻を亡くしたジョンには3人の息子とひとりの娘がいて、息子のひとりはジョンとともに家畜の世話などをして、もうひとりは弁護士として土地の管理をしている。最後のひとりは家族と疎遠になって、インディアン保留地で妻子とともに住んでいるという設定。娘は土地のビジネス面の管理をしているみたい。これに加えてジョンの土地を狙う資産家や、インディアンの利権を拡大させようとする酋長などが登場する。

上にも書いたようにね、どういう番組にしたいのかいまいち方向性がわからんのよな。テイラー・シェリダンの他の作品のようなハードなサスペンスになるかと思いきや、メロドラマみたいな要素もふんだんにあるし、警察ドラマでも権力争いのドラマでもないし。広大な田舎を舞台にしたメロドラマっぽいサスペンス、ということでドン・ジョンソンが数年前に主演した「Blood & Oil」をどことなく連想したけど、あれ1シーズンで打ち切りになったしな。

ジョン・ダットンを演じるのはこれがTVシリーズ初出演となるケビン・コスナー。他にもウェス・ベントリーとかルーク・グライムス、・ライリー(例によって精神的に不安定な娘の役)、ダニー・ヒューストンなどが出演しているほか、第1話にはジル・ヘネシーがゲスト出演していた。

出演は豪華なんだけどね、やはり内容がメロドラマっぽいためかアメリカでの評判はイマイチのようで。テイラー・シェリダンって最近は日本でも高く評価されているようだけど、彼が関わっているからといってすべてが傑作になるとは限らないようで。(つうか何故「ウインド・リバー」は彼の初監督作品であるように宣伝されてるんだろう?2011年に「VILE」という映画を監督してない?)