「FEED THE BEAST」鑑賞

Feed the Beast, Season 1
AMCの新シリーズ。デンマークの番組のリメークらしい。

ワインの知識にかけては右に出る者がいないソムリエのトミーは、妻のリーと親友のシェフであるディオンとともにブロンクスにレストランを開く予定だったが、リーがひき逃げにあって死亡してしまい、事故を目撃した二人の息子のTJはショックで失声症になってしまう。さらにヤク中であったディオンがハイになっているうちにレストランを燃やしてしまい、トミーの夢は脆くも崩れてしまう。それから1年後、リーのことを忘れられずアル中気味になっていたトミーのもとに、出所したディオンが戻ってくる。彼は過去にとらわれているトミーを説き伏せ、新たにレストランを開くことを決心させるのだが、実はディオンはポーランド系ギャングに多額の借金をしており、このレストランの収益を彼らに渡すという約束をしていたのだった…というあらすじ。

グルメとミステリーの組み合わせは過去にもいくつかあったが、クライム・サスペンスとの組み合わせは珍しいかも。ディオンは地中海料理を得意とする腕利きのシェフという設定であるものの、暗くて閉め切られたレストランのなかで料理を作ってるため、あまり美味しそうには見えず。彼はギャングだけでなくギャングを狙う刑事にも目をつけられているわけだが、得意の料理も彼らにとっては関係ないわけで、いまいち料理とサスペンスの食い合わせが良くないんだよな。

肝心のサスペンスも、登場人物が無能であるために物事が悪い方向に向かっていく展開が雑な印象を受けた。トミーの息子が口をきかないため意思疎通ができず、周囲の人が勝手に勘違いしていくさまも、見ていてなんかまどろっこしいのよな。息子を失声症にさせた必要ってあったのだろうか。

ちなみに劇中では、ブロンクスって白人がいなくて誰もレストランなんかに行かないような土地だけど、だんだん洗練されてきていて第2のブルックリンのようになってきている。だからいまレストランを開けば人気がでるぞ、といった点が強調されてるのだが、ブロンクスってそんなところなのか?

主演は「フレンズ」のデビッド・シュワイマーで、今回はシリアスな演技を見せてくれます。ディオン役はイギリス出身のジム・スタージェス。あとは「ザ・ワイヤー」のジョン・ドーランなんかが出演していた。

アメリカでの評判もイマイチなようで、成功するにはもうちょっと既存のドラマのスタイルから抜け出す必要があるんだろうなあ。コンセプト自体は悪くないと思うんだけどね。

「ANIMAL KINGDOM」鑑賞

Animal Kingdom, Season 1
オーストラリアの同名映画(日本でも公開?)を元にしたTNTの新シリーズ。

ヤク中の母親がオーバードースで死亡したため、17歳のジョシュアは仕方なしに疎遠になっていた祖母(「スマーフ」の愛称で呼ばれている)のところに連絡し、彼女と3人の叔父たちのところに移り住むようになる。しかし彼らは強盗などを行って生計を立てている一家であった。さらに出所したばかりのもう一人の叔父ポープにジョシュアは目をつけられ、犯罪の手助けをするように強要されるのだった…というあらすじ。

元の映画は見てないのですが、ウィキペディアのあらすじを読む限りではかなり映画に近い内容になってるのかな?舞台は当然ながらオーストラリアからカリフォルニアに移っているが、昼間からビール飲んでサーフィンやったりして遊んで、その一方で結構えげつない犯罪に手を染めたりしてる一家の姿がリアルに描かれてます。

荒くれ者の叔父たちを統括してるのが一家の母親であるスマーフで、演じるのはエレン・バーキン。祖母なんて演じられるような年齢だったっけと思ったら実際にそんな年齢でした。もともと下町育ちのタフな女性という感じだったから、優しいようで情け容赦ない母親の役がよく似合ってます。あとの出演者はあまり知られてない人ばかりかな。

しかし設定がテレビシリーズに向いていないような気がするのだが、そこはどうするんだろうね?映画は2時間ほどで結末を持ってくることができるが、テレビではジョシュアが一家のなかでしんどい目に遭う展開が何話も続くとは思えないし…まあプロデューサー(および第1話の監督)はベテランのジョン・ウェルズなので、そこらへんはきちんと考えてるんでしょう。少なくとも第1話は手堅い作りの作品であった。

「PREACHER」鑑賞

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アメリカでも今夜初放送ですが、某所で第1話を観てしまったので。日本でも近日やるそうな。

原作のファンだというセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグが頑張ってシリーズ化にこぎつけた作品だが、内容はコミックと結構変わってたりもする。チューリップが黒人になってるのはいいとして、キャシディはサングラスをよく外すし、吸血鬼を狙う組織?に追われているという設定みたい。またロードムービー的な要素が無くなっていて、主人公のジェシー・カスターは地元の町で牧師の業務を続け、彼の能力を狙った天使たちが町にやってくるというような内容になっている。まあ第1話ではセイント・オブ・キラーズやザ・デュークといった主要なキャラクターも出て来ないわけだが、さすがにジェシーが生まれた農場とかには旅するよね…?

まあこれだけ原作と違うとそれなりの不安を抱いてしまうわけですが、上記したように原作を熟知してる人たちが製作に関わってるわけで、まあ原作のエッセンスは保存されてる、ということに期待しましょう。キャシディの度を越した暴力描写などは原作に近いし、テレビ映えもするかと。あとはアースフェイスが特殊メークによって見事にアースフェイスなのですが、こちらはテレビ映えしないだろうな。

主役を演じるドミニク・クーパーはかつて「エージェント・カーター」でハワード・スタークを演じてたりしたが、ジェシー・カスターの雰囲気(ちょっと切れ長の目とか)をうまく出していていい感じ。キャシディ役のジョセフ・ギルガンは「パレードへようこそ」などにも出てたが、もともと「ミスフィッツ」とかでサイコな役を演じてたのですね。チューリップ役のルース・ネガもアイルランド育ちということで、主役3人はみんなアメリカ人ではないのか。

同じ局の「ウォーキング・デッド」に比べ、原作を知らないととっつきにくい部分が多々あるため、あれほどのヒットにはならないと思う。とはいえそれなりに話題になって、ガース・エニスの他のコミックが多くの人の目に触れられることを期待します。

「OUTCAST」鑑賞

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「ウォーキング・デッド」が大成功して、いまやコミック・ライターというよりもハリウッドの売れっ子という感の強いロバート・カークマンのコミックを原作にしたシネマックスの新シリーズ。おれコミックは第1話だけ読んだけどあまり覚えてないな…。最初のエピソードが放送前にyoutubeなどで公開されたのだが、オープニング・クレジットで「エグゼクティブ・プロデユーサー」「原作者」「クリエーター」「脚本」と4回続いてカークマンの名前が出てくるのを見ると、ロバート・カークマンというのが一つのブランドになったということを実感しますね。

舞台となるのはアメリカの片田舎のロームという町。カイル・バーンズは妻子の元を離れてこの町の実家に戻り、近所に住む妹(姉?)の半ば強制的な援助を受けつつ、廃屋と化した家に一人で籠っていた。しかし町の少年が悪魔に取り憑かれ、アンダーソン神父が悪魔祓いを試みているという話を耳にした彼は、神父を助けるために少年の住む家に向くのだったが…というようなあらすじ。

カイルは悪魔を退散させることのできる能力を持っていることが示唆されるのだが、ジョン・コンスタンティンみたいに手際よく魔術を行うわけでもなく、なんか戦ってるうちに悪魔が去っていく、みたいな感じ。カイルの母親や妻もかつて悪魔に憑かれていたという事実や、悪魔たちが何か大きな出来事を画策しているようなことが仄めかされるものの、ここらへんは話を追って明らかにされていくのでしょう。

カイルを演じるのは「あの頃ペニー・レインと」のパトリック・フュジットで、アンダーソン神父役は「Life on Mars」のフィリップ・グレニスター。彼がアメリカの番組に出るのはこれが初めてかな?あとはレグ・E・キャシーなんかが出てます。エンドクレジットにはザ・キュアーの曲が使われてるがなんか似合わなかった。

今年は「エクソシスト」もテレビシリーズ化される予定だが、こっちのほうが有料ケーブル局なので過激な描写が多いのかな。冒頭から子供がゴキブリをむしゃむしゃ食べたり、悪魔に憑かれたことで大人にビシバシ殴られたりと、なかなかしんどい描写があります。全体的に手堅い作りになっているものの、映画のほうではこういうエクソシズムものが流行ってるわけで、あまり目新しさは感じられなかったな。「ウォーキング・デッド」並みのヒットになるとは思えないが、とりあえず今後の話の展開次第では面白くなる可能性もあるんじゃないかと。

「HOUDINI & DOYLE」鑑賞

Houdini & Doyle, Season 1
ITVの新シリーズ。ミニシリーズ扱いになるのかな?

舞台は1901年のロンドン。シャーロック・ホームズを「最後の事件」で葬って、ボーア戦争に関する執筆を行っていたアーサー・コナン・ドイルは、修道院で幽霊による殺人が行われたとの新聞記事を目にし、これこそ心霊が存在する証しだとして警察署にやってくる。しかし一方ではロンドンで公演中のハリー・フーディーニも事件のことを知り、幽霊はトリックだということを示すために警察に来ていた。警察に迷惑がられた彼らはお目付け役として女性刑事のストラッットン刑事をあてがわれ、お互いが正しいことを証明するために事件の調査を始めるのだが…というあらすじ。

コナン・ドイルということで「SHERLOCK」みたいなブロマンスのミステリーものを期待する人もいるかもしれないが、ここのドイルは心霊現象に傾倒しているという設定なので(本格的にハマったのは第一次大戦後だったと思うが)、物的証拠をもって生身の犯人を突き止めるのではなく、何でも心霊のせいにしてしまう人物という設定になっている。しかし当然ながら「殺人は幽霊のせいでした!」というオチにするわけにもいかないので、結局は自分のミスを認めるという損な役回りになっているかな。

対するフーディーニは実際にインチキ霊媒師のデバンカーでもあったから心霊現象にはすべて懐疑的で、あくまでも合理的に事件を捜査していくのに加え、錠前を開けたりするのも朝飯前、というカッコいい役になっている。ほかに実在の人物としてはチャーチルやイェーツなどもチョイ役で出てきてたが、今後はエジソンやブラム・ストーカーなんかも登場するとか。

フーディーニを演じるのが「HOUSE」のマイケル・ウェストンで、ドイル役が「EPISODES」のスティーブン・マンガン。「EPISODES」ってまだアメリカで撮影が終わってないんじゃなかったっけ?あとはあまり有名な役者は出てないみたい。

さすがにドイルが毎回ミスをしているようでは示しがつかないから、あとのエピソードではもっと心霊的な要素が増えてくるのかな?心霊現象にハマったあとのコナン・ドイルって例の妖精写真などであまり評判が良くない印象があるけど、個人的には唯物論者の科学者であるチャレンジャー教授がラストで霊魂の存在を認めることになる「霧の国」とか結構好きなので、うまーくスーパーナチュラルな要素を絡めてほしいところです。