「The Art of More」鑑賞

poster-the-art-of-more
ソニーがアメリカで展開している無料配信サービスCRACKLEの初のオリジナルシリーズ。

軍隊上がりのグレアムは、アートに関する膨大な知識と、イラクに派遣されていた際に略奪した財宝をもとに、美術品のオークション・ビジネスで成り上がろうとしていた。まず彼はアート・コレクターで金持ちのダヴェンポートをクライアントにしてオークションハウスに入社し、さらにはエキセントリックな大富豪のサム・ブラクナーの信頼を得ようと策略を張り巡らせる。しかしライバルのエージェントが彼を妨害しようとするほか、イラク時代の好ましからぬ仲間が現れたことで事態は意外な方向へと進んで行く…というようなあらすじ。

金持ちが数億円の美術品をポンポン競り落とすリッチな世界を舞台にしたサスペンスだが、ゴージャスなセットとかが作られてそれらしき雰囲気は良く出ていた。これ製作費が結構かかってそうだな。美術品のほかにロックのメモラビアなどといった品が扱われ、さらに偽物や闇ルート経由の品なども出てくる内容になるみたい。

主人公のグレアムを演じるのは「Cemetery Junction」のクリスチャン・クック。最近見てないな…と思ったら意外と多くのアメリカのTVシリーズに出てるんだな。そんな彼のビッチなライバルを演じるのがケイト・ボズワースで、ダヴェンポートを演じるのがケイリー・エルウィス。そしてドナルド・トランプみたいな金持ちのブラクナーを演じるのがデニス・クエイドと、かなり豪華なキャストが顔を揃えていた。CRACKLEってどれだけの人気があるのか知らないけど、これはキャストもセットデザインも、地上波ネットワークの番組に負けないくらいのレベルに達しているかと。

上流階級の世界を舞台にしたドラマかと思いきや、イラク時代の知り合いによる殺人事件とかも出てきたりして、今後の話の方向性がいまいち見えにくいところはあったものの、話の続きが気になるくらいの出来の作品であった。

「INTO THE BADLANDS」鑑賞

into-the-badlands
AMCの新シリーズ。クリエーターは「ヤング・スーパーマン」の人たち。

舞台は大戦争のあとの世界における、バッドランズという名の地域。世の中の秩序は乱れ、権力を握ったバロンと呼ばれる豪族たちが屈強な部下たちを従え、お互いに覇権を争っていた。バロンの一人であるクインの腹心の部下で、武術の達人であるサニーはクインの土地の住民が虐殺された現場に遭遇し、唯一逃げ延びた少年をゴロツキたちから助け出す。実はその少年には神秘的な力が備わっており、別のバロンが彼を狙っていたのだ。さらに少年がバッドランズの外にあるという伝説の土地の遺品を持っていることを知ったサニーは、少年とともにバッドランズを出ようとするが…というあらすじ、のはず。

第1話の展開が遅いので、クインの土地での話が続くのか、それともロードムービー的な展開になるのかが分かりにくいんだよな。ウィキペディアにはストーリーは『西遊記』をベースにしてあると書いてあるけど、あまり類似点はない感じ。

主人公のサニーは剣術とマーシャルアーツの達人という設定で、いわゆるクンフーアクションが推しの内容になっている。格闘シーンにおいてCGは(たぶん)控えめで、ワイヤーアクションと生身のスタントがメインになっているものの、カット割りが多いのでアクションの爽快感が削がれてしまっているのが残念。TVシリーズとしてはかなり頑張っているほうだと思うけど、ジャッキー・チェンなどのレベルを期待してはいけないよ。

主演は中国系アメリカ人のダニエル・ウー(呉彦祖)。ここ2年ほどのあいだにアジア系(およびインド系)の役者がTVシリーズの主役を演じるケースが増えてきておりまして、「FRESH OFF THE BOAT」のようなコメディだけでなく、こういったシリアスなドラマの主人公をアジア人が務めるようになったというのは良いことなんじゃないですか。

第1話を見た限りではすごく面白いという出来ではないんだけど、今後アジア人の役者がさらに台頭するためにも、ちょっと健闘を期待したい作品。

「Ash Vs Evil Dead」鑑賞

eds1_keyart_downloadable_full
サム・ライミの「死霊のはらわた」のTVシリーズ版だよ。リメイクのほうでなくオリジナル版の続編という扱いだが、権利の関係で「キャプテン・スーパーマーケット」は無かったことになってるのかな?

主人公は映画版と同じく、ブルース・キャンベル演じるアッシュ。森の一軒家でネクロノミコンによって召喚された悪霊たちとの戦いで一人生き残った彼は、トラウマを抱えつつトレーラーハウスで一人暮らす中年になっていたが、その一方では酒場に出かけて年増の女性をひっかけるボンクラでもあった。しかし彼の周りに悪霊たちがふたたび現れるようになる。実はアッシュが女性を家に招いたとき、マリファナをキメてハイになった彼は、「俺は詩が朗読できるんだぜ」とカッコつけて、保管していたネクロノミコンに書かれた呪文を読んでしまったのだ(アホ…)。悪霊たちは彼の住んでる町に現れ、アッシュ以外の住人も攻撃するようになる。そこでアッシュは仕事先の電気屋で働くパブロとケリーという二人の若者を仲間にし、悪霊たちに立ち向かっていくのだった…というあらすじ。

第1話の監督はサム・ライミだし、音楽も劇場版と同じくジョセフ・ロデュカが担当と、昔の仲間が集まって作ったという雰囲気で非常にこなれた作りになっている。アッシュがチェーンソーを装着するシーンとかね、やっぱカッコいいのよ。ライミ映画のトレードマークである黄色いオールズモビルも健在だし。ボンクラだったアッシュが突然強くなったり、そもそも悪霊退治って何をするんだよといったツッコミはいくらでもできるものの、いいんだよ細けえことは!基本的なノリはコメディだけど、有料ケーブルチャンネルの作品なのでスプラッター描写も惜しみなく使われてるぞ。

第1話は約45分あって、悪霊に仲間を殺された女性警察官と、彼女が出会う謎の女性のプロットがアッシュたちの話に絡まないので少し冗長な感じもしたが、2話以降は30分になるので短くてパンチのある展開になることに期待。この謎の女性を演じるのがサム・ライミ製作の「Xena: Warrior Princess」のルーシー・ローレスなので、そのままアッシュvsジーナをやってくれても良さそうなんだけど、さすがにそういう展開にはならないみたい。

第1話の評判は良いようで、早くもシーズン2の製作が決定したらしいし、近いうちに日本でも観られるといいですね。

「SUPERGIRL」鑑賞

Supergirl, Season 1
CBSの新シリーズ。「マン・オブ・スティール」とは別のユニバースの話だと思うが、スーパーマン(顔は出さずに背後しか見えない)以外はあちらと同じキャラクターが登場するようではないので、それなりに棲みわけはするつもりなのかな?あと放送局が違うので「アロー」や「ザ・フラッシュ」とも別のユニバースになってるみたい。

スーパーマンことカル・エルのいとこであるカラ・エルは13歳のとき、故郷のクリプトンが崩壊するにあたって、地球に送られた幼児のカルを見守るためにカルの後からロケットで飛び立つものの、事故によって時の流れないファントムゾーンに幽閉されてしまい、24年間にやっと地球に到着する。そしてすでに成人してスーパーマンとなっていたカルに見つけられ、デンバース夫妻の養子となって普通の女の子として育てられる。やがて姉のアレックスとともにナショナル・シティーで働くことになるものの、困った人たちを助けて街を守るために、いとこと同様にスーパーヒーローとなって活躍するのでした…というようなあらすじ。

スーパーガールはスーパーマンよりも年長だった!という意外な事実が明らかにされるわけだが、カラ・エルことカラ・デンバースは舌足らずでドジなメガネっ娘という設定で非常にカワイイでやんすよ。新米のスーパーヒーローという雰囲気がよく出ていると思う。危機に陥った人々を救うために走りながらシャツを開いて胸の「S」のマークを出すシーンにはね、やはり「マン・オブ・スティール」には欠けていた爽快感があるよな。

コミックからのキャラクターも数多く登場していて、ジミー・オルセン(黒人)がメトロポリスから引っ越してきているほか、カラが働く新聞社のボスはキャット・グラントだし、あとはマックスウェル・ロードとかレッド・トルネードなんかも出てくるみたい。エイリアンの監視組織であるDEOの司令官がハンク・ヘンショウだというのが気になるが、やはり原作どおりいずれ悪に転じてサイボーグ・スーパーマンになるのか?つうかDEOが出てくるということはボーンズ長官やキャメロン・チェイスが登場する可能性もあるのか?

気になるのは「ザ・フラッシュ」もそうだけど、主人公の正体を知っている人がやたら多いこと。ジミー・オルセンや職場の同僚のテック野郎(トイマンの息子という設定らしい)はまだしも、DEOのスタッフもみんな知ってるような感じで、正体がヴィランにばれたら一大事だろうに。なおカラがファントムゾーンを抜けたときに、クリプトンの罪人を載せた監獄船も一緒に地球に到着していたという設定になっており、ヴィランは「マン・オブ・スティール」同様に悪のクリプトン人が多くなるみたい。

スーパーガールを演じるのはメリッサ・ベノイスト(発音は「ブノワ」ではないよ)。「セッション」とかにも出てたけど今回はコケティッシュな魅力があって非常に良いです。あとはキャット・グラントをキャリスタ・フロックハートが演じていて、ちょっとコメディっぽい演技がやはり彼女には似合いますね。主人公の養父母はディーン・ケインにヘレン・スレイターと、過去にスーパーマンやスーパーガールを演じた役者が起用されてるのがニヤリとさせられるところだが、カメオ出演的な扱いなのかな?

アクションシーンもよく出来てるし、主人公の姿が日本の男女にも受けると思うので、これはぜひ日本でも放送してほしい作品。

「Fargo」シーズン2鑑賞

fargo-season-2-cast
「コーエン兄弟の作品、しかも『ファーゴ』なんてTVシリーズ化できんだろ」という大方の予想を見事にくつがえし、展開の読めない大傑作となったシリーズの第2シーズン。今回の舞台は1979年のミネソタとサウスダコタが舞台になっていて、前シーズンのプリクエルという扱いになっている。

1979年のサウスダコタはスーフォールズではゲルハルト一家が町の裏ビジネスを仕切っていたが、家長のオットーが心臓発作を起こしたことから外部のギャングたちが町を狙おうとしていた。そんななかゲルハルト家の末子のライは自分のビジネスの邪魔になりそうな判事を町から離れたダイナーで脅迫しようとするが、予定が狂って判事および二人の店員を射殺してしまい、自分は夜道をやってきた車に轢かれてしまう。ダイナーの事件を聞いて調査にあたる保安官のルーとハンク。一方で肉屋のエドはいつもどおり家に戻るが、そこでは妻のペギーが轢いたライが半死の状態でガレージに転がっていた…という設定。

シーズン1は雪の町での殺人という「ファーゴ」っぽさがまだ残ってたけど、今回は舞台が70年代ということもあり、かなり雰囲気の異なった内容になっている。スプリットスクリーンを多用した演出はずっと続くのかな?ライによる要領の悪い殺人とか、死体の片付けに四苦八苦するさまなどはむしろ「ブラッド・シンプル」に似ていると思う。しかし突然UFOが出てきたりして(いやホントに)、「ツイン・ピークス」っぽい展開もあるのだが、今後はたしてどうなっていくんでしょ。

前シーズンからキャストは一新されていて、パトリック・ウィルソン演じる保安官のルーが、シーズン1でキース・キャラダインが演じたダイナーの主人の若き頃、という設定。人を轢いても動じないサイコな人妻を演じるキルスティン・ダンストがクレジット上ではトップの扱いなので、彼女が主人公的な存在になるのかな。他にもジェフリー・ドノヴァンやテッド・ダンソン、ニック・オファーマン、ジェシー・プレモンズ、ブラッド・ギャレットといった他の番組なら主役を務めてるレベルの役者が勢ぞろいしてて結構すごい。さらにロナルド・レーガン役としてブルース・キャンベルも登場するらしいぞ。

話の展開がまったく分からないし、キャストも誰がどこまで生きてるのかも謎だが、前シーズンよりもさらにブラックなユーモアが増えているし、本国の批評家には絶賛されているようなので、今回もまた見逃せないシリーズになることは間違いないでしょう。