「FOREVER」鑑賞


ABCの新作シリーズ。

ヘンリー・モーガンはニューヨークで働く検死医だったが、彼には大きな秘密があった:実は彼は200年以上前に生まれており、医者として奴隷船に登場していたところを船員に狙撃されて海に投げ込まれたのだが、謎の理由によって甦り、不老不死の身になってしまったのだ。それ以来彼は、自分がなぜそのような力を身につけたのかと、死ぬことができる方法を探るため長年にわたって研究をしていたのだが、彼に興味を抱いたニューヨーク市警の女刑事に招かれて彼女の事件の捜査を手伝うことになる…というようなプロット。

ニューヨークにおける不老不死の男性が事件を解決してく物語って、2008年の「New Amsterdam」とそっくりだな。あちらは短命に終ってしまったけど、こちらはもっと長続きできるのだろうか。役者はどうしても年をとっていくわけで、不老のキャラクターをTVシリーズで演じさせるのは無理があると思うのだけど。「スター・トレックTNG」でもアンドロイドのはずのデータが後半ではしっかり老けてたし。

このようにファンタジックな要素があるものの内容は比較的ストレートな捜査もので、主人公は200年にわたる知識と不死の身をもって犯罪に立ち向かうためかなりのチート状態。毒殺に使われた毒を試すために自分で注射して死んでたりします。死ぬとマンハッタン橋のふもとの川に全裸で復活するという設定なのだが、前の死体はどうなってしまうのかとか、国外で死んでもニューヨークで復活するのかといった説明は第1話ではされていなかった。よく死んでよく復活する主人公という点では「トーチウッド」のジャック・ハークネスに通じるものがあるな。

その主人公を演じるのは眠そうな顔をしたヨアン・グリフィズ。演技はまだしもナレーションが棒読みっぽいな。あとは「ロー&オーダー」のアラナ・デ・ラ・ガーザとか「アバター」のジョエル・ムーアなんかが出演してます。例によって主人公と同じ能力を持った謎の黒幕の存在が示唆され、後々の展開への伏線が張られているものの、本国での評判はまちまちのようで、番組がどのくらい長生きできるかはかなり不明なところですな。

「Z NATION」鑑賞


SYFYチャンネルの新シリーズ。貧乏人向け「ウォーキング・デッド」。

アメリカでゾンビが大量発生してから3年。大統領も殺害され文明が崩壊したなか、残された兵士や民衆たちは最後の抵抗を続けていた。そんなとき研究所の実験によって、人がゾンビに感染することを防ぐかもしれない抗体を持った男性が登場する。その彼をニューヨークからカリフォルニアまで移送するよう命令を受けた兵士のハモンドは、途中で出会った市民たちと一緒に大陸横断を試みるのだが…というプロット。

作ってるのがC級のパクリ映画を乱発することで名高いアサイラム社で、「シャークネードのプロデューサーが製作!」と宣伝しているのだが自慢できることかそれ。やたら説明的なセリフや狭そうなセット、チープなCGなどはアサイラムのお家芸ですな。せめて「シャークネード」よろしく竜巻に乗って空飛ぶゾンビとか出せばいいのに、話はゾンビ作品のクリーシェがひたすら続くだけ。盛大なドンパチをやってれば爽快感くらいは得られただろうに、登場人物が無駄に多くて話がややこしくなってるのもいただけない。

その登場人物は大半は知らない役者ですが、トム・エベレット・スコットやDJ・クオールズ、ハロルド・ペリノーなど知った顔もちらりほらり。もうちょっと仕事選んだほうが…というかハロルド・ペリノー演じる兵士が主人公だと思ってたら第1話の最後であっけなくやられてまして、結局主人公は誰なのかという。第1話の監督はピーター・ハイアムズの息子のジョン・ハイアムズだが、親子そろって凡作撮ってんなあ。

いちおうロードムービー的な内容になるみたいなんだけど、限られた予算でアメリカ横断なんて描けるのかな(撮影は珍しくワシントン州で行なっている)?ゾンビものが好きで好きで仕方なくて、「ウォーキング・デッド」の続きが待ってられない人がしょうがなく観るような番組といったところ。

「HAND OF GOD」鑑賞


なんか第一波第二波もまるで世間で話題になってない感のある米アマゾンの新作シリーズのパイロット群ですが、いつのまにか第三波が来ていて、これはその中の1つ。ほかにもソダーバーグ製作のコメディとか、ミーナ・スヴァーリ主演のスリラーとか、ウィット・スティルマンのドラマとかが揃ってるみたい。

この番組の主役となるのは、地元の有力な一家の出身であり、厳しい判決を下すことで知られている判事のパーネル・ハリス。彼は妻子がありながらもオフィスに娼婦を呼ぶような堕落した判事だったが、息子の嫁がレイプされ、それを苦にした息子が銃で自殺を図って昏睡状態に陥るという悲劇を経験して神経衰弱に陥ってしまう。意識が朦朧としていたときに怪しげな元俳優が運営する教会に多額の献金をしてしまった彼だが、息子の病室にて彼の「声」を耳にするようになり、それを神からのメッセージだと考えた彼は、それをもとにレイプ犯らしき男をつきとめ、自分が釈放させた犯罪者を使って復讐を試みるが…というようなプロット。

うーん。法廷ものなのか、復讐劇なのか、スピリチュアルなものなのか、何をしたいのかよく分からない内容だなあ。神の声を聞いてひとりで奮闘している主人公の空回りっぷりがなんか痛々しいのな。いちおう事件の裏には陰謀があることが示唆され、ほかにも市政に関わるパワーゲームとかが詰め込まれてるのだが、無駄に複雑に絡んだプロットを説明的なセリフで解説しようとしてるから、どうも観ていてしんどい内容であった。

主人公を演じるのはロン・パールマン。彼の妻を演じるのがダナ・デラーニーで、ほかにもアンドレ・ローヨとかギャレット・ディラハントとかが出演してて、キャストはやたら豪華なんですよ。地上波ネットワークで主役を演じられそうな役者を揃えた点はすごいが、やはりストーリーがなあ。あと観てて気づいたがアンドレ・ローヨって意外と滑舌が悪くて、「ザ・ワイヤー」でのジャンキー役はそれが似合ってたのだが今回の市長役には合ってないような。またパイロットの監督はマーク・フォースターが務めてます。

これからVODサービスが台頭していくなか、各サービスがオリジナル番組を製作する流れはさらに顕著になっていくと思うが、アマゾンの番組ってなんでこんな地味なんだろ。ネットフリックスもすべてが成功しているとは言わないが、アマゾンの番組はことごとく失敗しているような。でも今後はフィリップ・K・ディックの「高い城の男」の映像化とか、パトリック・ワーバートン主演のカルト番組「THE TICK」の復活とかが噂されているようなので、とりあえずそっちに期待しておきましょう。

「THE INTRUDERS」鑑賞


BBCアメリカの新シリーズ。

いわゆる怪奇ものでして、こないだの「THE LEFTOVERS」もそうだったけどケーブル局の怪奇ものは初回で謎をバラまくだけバラまいておいて全く回収しないので、なんか思わせぶりな雰囲気は伝わってくるものの、話の筋はさっぱり分からず…これも何となく分かったプロットを箇条書きしていくと:

・主人公は元刑事の作家で、妻とワシントン州の田舎に住んでいたが、昔の同僚が突然彼のもとを訪れる。
・不死の秘密を解明した集団がおり、それは肉体的な不死ではなく、他の人間の精神と入れ替わることで、その人間の身体(子供のものが多い)を乗っ取って精神的な不死を保っている(らしい)。
・この集団の存在に気づいた音響学者がいて、彼はいま行方不明になっている。
・さらに乗っ取られた人間をつきとめ、彼らを暗殺している謎の男がいる。
・主人公の妻も身体を乗っ取られたらいく、突如として行方不明となった。

という設定でいいのかな?西海岸のあちこちに話が飛び、加えて意味ありげなシンボルとか、陰謀論とか出てきてもうお腹いっぱい。「AVクラブ」では「『Xファイル』の冒頭部分が1時間に引き延ばされた感じ」などと評されていたが、番組のクリエーターは「Xファイル」のライターだった人だそうなのでさもありなん。

主演はジョン・シムにジェームズ・フレイン、ロバート・フォースター、さらにアカデミー賞女優のミラ・ソルヴィーノとやけに豪華。ミラは失踪した妻の役なので出番は少なそうだな。あとは身体を乗っ取られた9歳の女の子が話の要になってくるみたい。

主演がジョン・シムということだけでも見続ける価値はあるとは思うが、いかんせん話の方向性が全く分からず…。こういうのってあまり謎ばかり重ねていくと視聴者がついて来れないだろうし、加減が難しいところだな。とりあえず第2話の評判を待つことにします。

「ドクター・フー」シリーズ8開始


放送前に流出した映像をもとにしたレビューでは叩かれていたのでちょっと心配したが、普通に面白かったぞ。

ただし主役の役者が若者から50代へと一気に移ったこともあり、全体的なトーンが必然的に変わったものになっている。いちばん顕著なのはドクターが暗くて謎めいた存在になったことであり、再生によって朦朧としたドクターのまわりでコンパニオンたちが慌てふためく第1話の展開は、10代目ドクターが登場した「Chrismas Invasion」によく似てるけど、陰のあるドクターの雰囲気はクリストファー・エクレストンの9代目に通じるところがあるな。コンパニオンどころかドクター自身も自分をよく分かっていないことが示唆されており、それの謎解きが今シリーズのテーマになるのかな?

自分を見失っているドクターがいる一方で、コンパニオンのクララたんは彼の変化に戸惑いながらも事件を解決しようと奮闘するわけで、話の焦点がうまく彼女にあたったのではないでしょうか。でもクララたんは年末で降板という噂もでてるんだよな…。前シリーズからの続きとしてはマダム・ヴァストラたちも登場するけど、なんか最近彼女たちの出番が多い気がして少し食傷気味。新しいファム・ファタールも登場したし、リバー・ソングなんかの登場も控え目にしたほうがいいんじゃないでしょうか。

例によって伏線らしきものもいろいろ張られていて、前述のファム・ファタール的女性は今後もいろいろ話に関わってくるでしょう。ドクターとクララをレストランに呼び出したのも彼女かな?あとはドクターが今回なぜこのような外見になったのかという話も出てくるのだが(「この顔は前に見たことがある」)、これってピーター・カパルディが以前に別の役で出演したこととつながってくるのかな?スティーブン・モファットは伏線を張るだけはってきちんと回収しない傾向があるので、ちょっと謎は軽めにしておいてほしいところですが。

カパルディのドクターは当然ながら前任者のような若々しさはないものの、渋さがあって良いですよ。ただ第1話ではストーリー的にまだ本調子ではないので、今後どのようなキャラクターになるか期待。意外だったのは地のスコットランド訛りをそのまま用いているところで、アメリカをはじめ世界中でこれだけ人気がある番組ながら、そこらへんは地元にこだわったかモファット。

新たな展開に多少の戸惑いを憶えるものの、奇抜な発想が次々と飛び出す最高のSF番組であることは変わらないわけで、このシリーズも早々に日本で提供されることを臨みます。「ドクター・フー」人気では韓国に大きく水をあけられているぞ。

「新聞をお渡しします」

「私はカラオケとマイムが嫌いだ」