「LEGENDS」鑑賞


TNTの新作シリーズ。

マーティン・オダムはFBIの覆面捜査チームに属するエージェントで、偽の人物像(レジェンド)を作り上げ、それに扮して必用とあれば何ヶ月にもわたる潜入捜査を行なうことを専門としていた。今回も政府転覆を狙う民兵組織の一員に扮して組織に潜入し、そのボスの正体を探っていたが、謎の男より突然、マーティン自身の人格が偽のものであり、裏では大きな陰謀が動いていることを告げられる。彼の言葉を真に受けたマーティンは、自分自身に関する真相を探ろうとするのだが…というプロット。

偽の人格を演じているうちに自分自身が誰だか分からなくなる、という設定はピーター・ミリガンがライターやってたときの「ヒューマン・ターゲット」(むろんアメコミのほう)に似てなくもないが、この番組はロバート・リテルの小説を基にしているらしい。

主人公は覆面捜査のプロで、偽の人格になりきってしまうという設定なんだけど、その割にはやたら正体がバレそうになるのはご愛嬌。その都度アドリブで自分の経歴をデッチあげ、それにあわせてFBIのコンピューターチームが病院のデータベースとかに偽の経歴をカタカタと入れ込んで、裏付けされてもバレないようにしているわけだが、あの何でも出来るコンピューターチームというのが出てきたおかげで、最近の捜査サスペンスものはめっきりツマらなくなったと思うのは俺だけでしょうか。

主人公のマーティンを演じるのはショーン・ビーン。話の途中でとてもよく死ぬことで有名なショーン・ビーン。おかげでこの番組にあわせたパロディまで作られているほどですが、いちおう主人公なのでこの番組では死にません。たぶん。ただ彼って存在感はあるものの決して幅の広い演技をする人ではないので、いろんな人格を器用に演じ分けられることができるのかな、と不安に感じたりもする。あとは彼の上司役で「プラクティス」のスティーブ・ハリスなんかが出演してます。

決して突出したサスペンスやアクションがあるわけでもなく、登場人物のセリフもなんか説明口調で、全体的に地味な感じ。評論家の受けもあまり良くないらしいので、これから頑張らないとあまり長続きできないかも。

「The Honourable Woman」鑑賞


イスラエルとパレスチナの紛争をテーマにしたBBCのミニシリーズ。実にタイムリーなネタを…と思ったがあそこの地域のネタは50年くらい常にタイムリーなんだよな。

ネッサ・スタインは9歳のときに、イスラエルへ武器を販売していた父を目の前で暗殺された経験を持つ女性。父親の企業は兄(弟?)のエフラが引き継いでいたが、数年前に突如としてエフラが退任し、それからネッサが企業のトップとして、中東へ和平をもたらすべく貢献を続けていた。しかしパレスチナの取引先の人物が謎の死を遂げ、彼女の周りにはMI6をはじめとする怪しげな連中が現われるようになる。そしてネッサ自身も、公表できない暗い秘密を抱えていた…というようなプロット。

THE SHADOW LINE」のヒューゴー・ブリックが脚本と監督を務めており、あの番組と同様に臨場感はたっぷりあるものの話の展開が遅いような…登場人物も多くて話を追うのがちょっと大変だったぞ。あの地域の紛争についても最低限の知識は持って観たほうが良いでしょう。

ネッサを演じるのはマギー・ジレンホール。イギリス訛りをとてもいい感じでマスターしていますな。暗い過去を抱え、大きな陰謀のなかで翻弄される主人公を身体を張って演じている。あとは彼女を探る定年前のMI6のエージェントをスティーブン・レイが演じていた。

非常にセンシティブなテーマを使っているだけに公平にレビューされるのも難しいようで、imdbのコメントでは例によって「これはイスラエルのプロパガンダだ!」なんて書かれてたし、イギリスのレビューでも「ヒューゴー・ブリックは(イスラエルとパレスチナの)どっち寄りなのか?」というのが論じられていた。とはいえ概ね評判は良いようだし、アメリカでも放送が始まったので、これからもっと話題になる作品かもしれない。

「MANHATTAN」鑑賞


ウディ・アレンの同名映画のテレビドラマ…では当然なくて、原爆を開発した「マンハッタン計画」に関わった人々を描いたWGNの新作シリーズ。登場するキャラは殆どが架空の人物になるのかな?

舞台は1943年。第二次世界大戦の戦火が多くの犠牲者を出しているなか、ドイツよりも先に原子爆弾を完成させるためにアメリカ政府はロバート・オッペンハイマーの指揮の下、ニューメキシコのロス・アラモスに優秀な物理学者たちを招集して「マンハッタン計画」を立ち上げる。しかし砂漠の中の村という劣悪な条件のなかで働かされる科学者たちのストレスは、その家族たちにも影響を及ぼすようになり…というプロット。

副大統領さえも知らないという極秘のプロジェクトに関わる科学者たちが、当然その仕事の内容を妻たちにも明かせず、家族関係がどんどんギクシャクしてくという設定が面白いかも。また計画内では2つのチームが独自に原爆を開発しており、その駆け引きが話にスリルを加えている。あとは計画の秘密がどこかから漏れているらしいとか、科学者やロス・アラモスの土壌が放射能で汚染されているといった伏線が張られているのだけど、今後の展開はどうなっていくのだろう。

なお結果的に原爆が投下される日本についての言及は殆どなし。このシリーズのメイキング番組みたいなものも観たのだけど、当時の科学者たちはみんなドイツ相手に原爆を作ってるのだと思い込んでいて、日本に投下されたことを知ってショックを受けた人が多かったのだとか。

主役の科学者を演じるのがジョン・ベンジャミン・ヒッキーで、その妻をオリヴィア・ウィリアムスが演じている。彼女ってなんか恵まれない人妻の役ばかり演じているような。あと音楽を担当してるヨンシー&アレックスって、シガー・ロスの人?

日本人としてはちょっと微妙な気持ちになる題材だが、映像も美しくてよく出来た作品。WGNのシリーズとしてはこないだの「SALEM」よりもずっと面白いかと。

「SATISFACTION」鑑賞


USAネットワークの新作シリーズ。

ニールは投資信託の会社でバリバリ働くビジネスマンで、プール付きの邸宅に住み、若くして結婚した妻のグレースとの間には16歳になる娘のアニカもいて、それなりに成功した人生を送っていたものの、何かしら満たされない気分を感じるようになっていた。そして大口の顧客を得るために出張中、飛行機で長らく待たされたことから彼は突然ブチ切れ、空港でひと騒ぎ起こしてしまう。それがもとで会社でもブチ切れた彼は会社を辞め、家に帰るのだがそこでグレースが男娼と不倫しているさまを目撃してしまう。怒った彼は男娼を追いかけ、彼の携帯電話を手に入れる。そしてその電話に「注文」がかかってくることを知った彼は、自分も男娼のふりをして女性たちに会いにいくのだが…という話。

人生が嫌になったニールが、禅に興味をもって仏僧のもとを訪れたりするのがアメリカっぽいのかな?仕事中心の夫に不満を抱いてグレースが不倫に走ったことも彼女の視点できちんと描かれていた。一方ではアニカが教師の不倫を告発した歌を学校で歌って退学になるなど、家庭が崩壊する寸前までいって逆に皆が結束し、それでもニールが妻のことを疑わしく思っているなどといった家族の描写が、絶妙なバランスで描かれている。

これから先はニールが男娼を続けていくのか、グレースが不倫を続けていくのか、それともグレースの不倫相手が復讐をしてくるのか、どう話がつながっていくのか全く分からないのですが(コメディになるという説もあり)、第1話はCM入りで90分の長尺ということもあり、良く出来たTVムービーを観ているようで意外と面白かった。主人公が男娼になる番組と言えばHBOの「HUNG」があったけど、むしろ妻の不倫に悩む夫という意味では映画の「ファミリー・ツリー」に似てたかな。

ニールを演じるのは「GLADES」のマット・パスモア。真面目な役もちゃんとできるじゃん!そしてグレース役は「アイアンマン3」のステファニー・ショスタク。また最近のTVシリーズの常としてアトランタで撮影をやってます。

USAネットワークの番組としては毛色が違うのであまり長続きしないと思うけど、第一話の出来が良かったことはここに記しておく。

「The Strain」鑑賞


ギレルモ・デル・トロ とチャック・ホーガンの小説(邦題は「沈黙のエクリプス」)が原作の、FXの新シリーズ。これミニシリーズだよね?第1話はデル・トロが監督していた。アメリカでは上のイメージのビルボードが悪趣味だと抗議が殺到して撤去する騒ぎになったらしいが、まあ仕方ないわな。

ニューヨークのJFK空港に着陸したドイツからのジャンボ機。しかし機内からは何の反応もなく、周囲に警戒態勢が敷かれる。機内に入ったCDC(疾病対策センター)のイーフリアムたちが目にしたのは、席に座ったまま外傷もなく死亡している200人以上の乗客の姿だった。紫外線のライトには粘液のようなものが映し出され、機内の貨物室からは謎の巨大な棺桶と、線虫のような生物が発見される。一方ではマンハッタンの大富豪がその棺桶を手に入れる画策を始め、スパニッシュ・ハーレムではホロコーストの生存者である老人が事件のことを知り、再び「その時」がやってきたことを感じていた。そして棺桶を格納した倉庫には巨大な怪物が現われ、乗客の死体を置いた安置所では死体が動き出していた…というプロット。

いちおうヴァンパイアものらしいのだが、もっとモンスターパニック的な内容になっていて、犠牲者の喉を割いて血を吸い取る吸血鬼のような怪物が、線虫を使って仲間を増やしていくという展開になるみたい。ナチス・ドイツのときにもこの怪物が現われたらしく、ここらへんの設定は「ヘルボーイ」っぽいですな。

CDCの職員であるイーフリアムが何でも調査しすぎだろとか、大富豪の手配が用意周到すぎるだろといったパニック映画のクリーシェが少なくはないのですが、何かヤバそうな荷物がマンハッタンに運び出される展開はスリルがあってなかなか面白かったぞ。

出演者はあまり良く知らない人たちばかりで、ちょっとした脇役をショーン・アスティンが演じてるみたい。あとナレーションをランス・ヘンリクセンが担当していた。

当然ながらグロい描写も出てくるので、万人向けの作品ではないですが、次も観たいなと思わせるような作品。似たような内容の「Helix」よりも良い出来かと。