帰国

モナコより帰国。あー疲れた。明日からすぐ仕事だってのに時差ボケ残りまくり。
彼の国の感想についてはまた改めて書くが、とりあえず機内で観た映画の感想を少々:

「M:I-3」
冒頭はケリ・ラッセルが惨めな死に方をするので良かったものの、その後はどんどんメロドラマ風になっていくのがダメ。秘密工作部員が結婚なんぞして、嫁を人質にとられてオロオロするでねえ。基本的に作りがTVドラマ風なんだよね。JJエイブラムスに比べ、前作のジョン・ウーがいかに映画職人であったかがよく分かる。悪役(に見えない)のP・S・ホフマンはあんな最期でいいのか?

「アイス・エイジ2」
前作は子供を親に届けることとか、ディエゴの心の葛藤といった明確なプロットや見せ場があったのに対し、今回はなんかダラダラと話が続いてくだけ。メスのマンモスのキャラクター付けも弱いね。なんか子供ダマシといった感じ。

「インサイド・マン」
スパイク・リーの作品というよりも、(元来監督するはずだった)ロン・ハワード風の映画であることは否めない。でもプロットとか撮影スタイルは手堅い。しかし刑事が最後まで強盗に翻弄されてるので、なんか観ててスキッとしないところがあるのが難点か。出演者はやけに豪華だけど、あまりその恩恵は感じられない。ウィレム・デフォーは相変わらずいい感じだけど。

「ゴジラ(オリジナル版)」
実は初見なのです。マッド・サイエンティストの芹沢博士が実に怪しくてナイス。ゴジラよりも目立ってしまっている。後の商業化したゴジラ・シリーズとは全然違う、モノクロならではの重々しい雰囲気が新鮮であった。

機内向け映画ってカットされてるシーンがあったりしてあまり取り上げたくないんだが、まあとりあえず観ましたということで。

更新停止

いろいろ忙しくってろくにブログを更新できない状態だってのに、仕事で明日からモナコに行くはめに。今週は何も書き込めないかも。

モナコと聞いて、ピーター・フックの小汚い顔が頭に浮かぶ俺って…。

アップルの最近のCM

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アップルの最近のCMに出てる人ってジョン・ホッジマンとジャスティン・ロングだったのか。

サエないオタク少年を演じれば右に出る者のいなかったジャスティン・ロングも、今は立派な大人になったのであります。肝心のCMがつまらないのには閉口するが。

「アメリカを斬る」鑑賞

ニュー・アメリカン・シネマの隠れた傑作「アメリカを斬る」こと「MEDIUM COOL」を鑑賞。「警察の暴動」があったことで悪名高い1968年のシカゴ民主党大会をリアルに描いた作品である。

ロバート・フォースター(このころから渋い!)が演じる主人公はテレビ局の報道カメラマン。彼は事件性のある物語を追うためならゲットーに乗り込むことも厭わない男だったが、ふとしたことからベトナムで夫を失った子持ちの女性と知り合い、恋仲になっていく。そんなある日、彼はテレビ局が勝手に取材用の映像を警察やFBIに見せていたことを知り、激怒して上司に挑もうとするものの逆に局を解雇されてしまう。それでも彼は民主党大会を取材するために会場へ向うが、その周辺では反戦を訴えるデモ隊と警官隊が一発触発の状態になっていた…。というのが主なストーリー。

冒頭から報道関係者のモラリティが議論されたり、黒人の主張が途中で述べられたりするなど、全体的に少し説教めいた感じがしなくもないが、撮影も兼ねている監督のハスケル・ウエクスラーの映像作りが上手なので観ていて気にならない。シーンのセグエの仕方とか、小道具(ポスター)の使い方、画面の構成などはまるで映画の教科書を見てるかのよう。ロバート・ケネディの暗殺の描写も実に見事。また暴動の映像などはすべて本物を使っており、現場の緊迫した雰囲気が十分に伝わってくる。暴動が起きることを予期して、本物のデモ隊の間に役者を歩かせて撮影したというその手腕には脱帽するしかない。

なお原題の「MEDIUM COOL」というのはマーシャル・マクルーハンのメディア論からとったもので、ラジオが「ホット」な媒体なのに対しテレビは「クール」な媒体(与える情報量が少なく、より積極的に視聴することが求められる)だというわけだが、同時にテレビが「冷酷な」メディアであることを示唆しているのは間違いない。テレビ批判、という意味では後年の「ネットワーク」と通じるものがあるかな。それにしてもあのラストは…。こないだの「ミーン・ストリート」もそうだったけど、あの当時の観客はバッドエンドが観たくて映画館に足を運んでたんだろうか?

ちなみに劇中で「最近のニュースはみんな事前に筋書きが決められてしまってる」なんてセリフが吐かれるんだが、これっていまのニュースも同じだよな。よく分かんない理由で戦争が行われてて、兵士がどんどん死んでってるところも同じ。時代は繰り返すというか何というか。もし60年代と現在とで違う点があるとすれば、暴動を起こすような若者がいなくなってしまったことか。

「ノミ・ソング」鑑賞

ドイツ出身のニューウェーブ・シンガー、クラウス・ノミの生涯を追ったドキュメンタリー「ノミ・ソング」を観る。

いやもうやっぱクラウス・ノミ最高。「奇抜」とか「前衛的」といった表現が失礼に思えるくらい。従来のアートの概念を粉々にするようなパフォーマンスを、しれっとした顔でやってのけてる姿が実に衝撃的だ。俺みたいな凡人の頭を100回トンカチで叩いたって出てきそうにないコンセプトのファッションで踊り、超音波のごときファルセット・ボイスで歌う姿は、もはやこの世のものとは思えないほどに神々しい。

このドキュメンタリーでは彼の生い立ちや私生活が語られ、彼のイメージ作りに関わった人たち(コントーションズのマネージャーなんてものいたらしい)にインタビューすることによって良くも悪くもノミの「非神格化」が行われているものの、それでも彼の独創性はビクともしない。多くの人が述べているように、ニューヨークに移ってきたばかりの無名時代から彼はすでに特殊な存在であって、周囲の人はあくまでも彼に手を貸していっただけのような気がする。パイを焼くのが趣味だったとかツィステッド・シスターの前座をしたとかいう「ちょっといい話」を聞かされても、彼が普通の人間であったということは信じ難いわけで、作品中でも言及されているように、実は宇宙から来た存在だったとしても何ら不思議はない。誰もエイズなんて病気を知らなかったときに(1983年)エイズで死んだというのも、彼がいかに時代を先取りしていたかを象徴しているんじゃないかな。

あと300年くらいすれば、我々人類はノミの真の素晴らしさをやっと理解することになるだろう。

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