「GNOME」鑑賞

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こないだの「DEALBREAKER」と同様に、「グラマー」誌が企画した短編映画である「GNOME」を観てみる。これもiTunesストアで無料で入手したもの。

「DEALBREAKER」は「セックス&ザ・シティ」の粗悪なパクリみたいな作品だったけど、こちらはその「SATC」の脚本を書いてたジェニー・ビックスなる女性が脚本と監督を担当した作品で、結構面白かった。

主演は「ギルモア・ガールズ」のローレン・グラハムで、とある主婦がひょうなことからクロスドレッサーの3人組の車に相乗りすることになり、彼らの話を聞きながら家まで送ってもらうというもの。短いながらもロード・ムービーの雰囲気があっていい。相変わらずスタッフがやたら多いのが理解できないけどね。これぐらいの作品だったら裏方が10人もいれば作れそうな気がするけど。

「スーパーマン・リターンズ」鑑賞

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「スーパーマン・リターンズ」をやっと観る。今年ダントツで観たかった映画なんだけど、やっぱり1800円も払って劇場で観るというのが嫌だったので、米アマゾンでDVDを購入した次第です。でも日本でも今月DVDが発売されるんだってね。送料入れてもアメリカ版のほうが安いのがよく分からんけど。

全体的には俺の過剰なる期待を満たすほどには至ってないけど、それでも良く出来た作品といった感じ。一番の特徴としては、「バットマン・ビギンズ」がバットマンの歴史を最初から語り直していたのに対し、こちらはオープニング・シーケンスからも分かるように70〜80年代の「スーパーマン」映画の続編という設定になっているわけで、過去の作品へのオマージュがちょっと強すぎるかなあとも思う。良くも悪くも登場人物の背景説明が殆どされてないので、スーパーマンのキャラクターに詳しくない人は少なくとも「スーパーマン2」(レスター版であれ、ドナー版であれ)は前もって観といたほうがいいかもしれない。このように初心者に優しい作りにはなってない反面、シャトル事故からロイスを救出するところとか、「アクション・コミックス#1」の表紙そっくりのシーンが登場するなど、マニア受けしそうなところはいろいろあるんだよね。

あと「Xメン」もそうだったけど、ブライアン・シンガーはアクションよりもドラマ部分を強調するきらいがあって、これは「Xメン」だと実にうまく役立ってたんだけど、今回はちょっとメロドラマ的なところが多いかな。メロドラマといえば、スーパーマンを面白くしていた要素の1つに「クラーク → ロイス → スーパーマン」といった三角関係があって、実はクラークがスーパーマンであるというスーパーヒーローものならではのヒネリが非常に面白かったんだが、今回はロイスの夫というよく分かんないキャラクターが出てきて四角関係になってしまい、ロイスに恋慕するクラークというアングルが希薄なものになってしまったのが残念。ちなみにコミックスではとうの昔にクラークとロイスは結婚してるんだけど、あれはあれでまた違った人間関係があって面白かったりする。

キャスティングに関していえば、ブランドン・ラウスは合格点。クリストファー・リーブには及ばないとはいえ、クラークもスーパーマンもうまく演じている。少し無表情すぎるところもあるかな。ケイト・ボズワースは可愛いんだけど、ロイスのような女性を演じるには線が細すぎる感じ。熱血レポーターという意味ではマーゴ・キダーやテリ・ハッチャーのほうが似合ってた。そしてレックス・ルーサー役のケヴィン・スペイシー。彼は好きな役者なんだけど、いつもなら彼の魅力であるややオーバーかつコメディックな演技が今回は災いして、ちょっと滑稽な悪役になってしまったかな。全体的にジーン・ハックマンとダブってるところがあるんだけど、個人的にはルーサーってもっと冷徹なキャラクターだと思うんだけどね。まあこれに関しては演出側に咎があるのかもしれない。

なんか不満をダラダラと書いてるようになってしまったけど、あくまでも俺の期待が大きすぎただけで(予告編の出来が良すぎるというのもある)キャラクターの魅力をきちんと理解している、十分に楽しめる作品ではあったことは間違いない。前にケヴィン・スミスが書いたという脚本を読んだことがあるけど、あれはプロデューサーの意向によりスーパーマンが飛ぶシーンがないというシロモノで、あれが映画化されてたらこの「スーパーマン・リターンズ」よりもずっと劣ったものになってたんじゃないの。とりあえず続編の製作が決定したらしいので、これを凌ぐ作品になることを期待したいところです。

ヴァーティゴ作品が無料でダウンロード可能に

DCコミックスのサイトで、新旧のヴァーティゴ作品の第1号が無料で多数ダウンロードできるという、なかなか太っ腹なサービスをやっている。

このブログで何回も言及している「ヴァーティゴ」というのはDCコミックスのレーベルの1つで、概して大人向けの作品(エロに非ず)を扱っており、スーパーヒーローなんかの枠に捕われない、独創的かつ芸術的な作品を多数出してきたことで有名なレーベルなのです。最初はイギリス人作家によるホラー/ファンタジー作品が多かったんだけど、それがやがてSFや犯罪もの、さらにはウェスタンと様々なテーマの作品を出版するようになっていったのも、ヴァーティゴの成功の証といえるだろう。また「コンスタンティン」をはじめ、こないだ書いた「PREACHER」や撮影がそろそろ終了する「STARDUST」など、それなりに多くの作品が映像化されている。

提供されている作品のうち、個人的なお勧めはクリス・バチャロがまだ上手な絵を描いてたころの「DEATH: THE HIGH COST OF LIVING」や「TRANSMETROPOLITAN」、「100 BULLETS」あたりかな。アメコミといえばスーパーヒーローしか思い浮かばない人たちには、ぜひ読んで欲しい作品群。タダでっせ。

「The Nine」鑑賞

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ABCの今年の新作ドラマ「The Nine」を観る。これもiTunesストアで無料配布されてて、今まで観てなかったもの。

話の発端となるのはロサンゼルス市内の銀行。ある日ここに強盗が押し入り、従業員や客を人質にして篭城をしてしまう。そして52時間後に事件は無事解決するのだが、その52時間のあいだに銀行の中では何が起きたのか?そしてこの事件に影響を受けた9人の男女たち(強盗も含む)の人生は、この事件によってどう変わっていくのか?というのがシリーズのおおまかなプロット。まあ要するに、「LOST」の成功によって雨後のタケノコのごとくボコボコ出てきた「最初に大きな謎があって、それがゆっくりゆっくりゆっくり解明されていく」という作品のひとつ。こないだ紹介した「HEROES」とか「JERICHO」みたいなもんすね。

特筆すべき点があるとすれば、「ボストン・パブリック」のチー・マクブライドや「サード・ウォッチ」のキム・レイヴァー、「エンタープライズ」のジョン・ビリングズリー、そしてスーパーマンの声優ことティム・デリーなど、実に微妙なキャリアを持った、しかし俺好みの役者たちが出演してるところか。

でも第1話を観た限りでは、あまりにも話の展開が遅いというか、これから「LOST」みたく超常現象っぽいものになってくのか、それとも心理サスペンスっぽいものになるのか、何をやりたいのかよく分からない感じ。だから次の話も観てみたいなという気にならないんだよね。このもどかしさは視聴率にも反映されてるようで、アメリカでは放送が一時休止され、再開されるかどうかは未定なんだとか。キャストがいいだけに、もうちょっと作りに工夫が欲しかった作品。

「Leonard Cohen: I’m Your Man」鑑賞

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カナダの誇る吟遊詩人、レナード・コーエンのトリビュート・コンサート兼ドキュメンタリーを収めた「Leonard Cohen: I’m Your Man」を観る。 名前から分かるようにコーエンはユダヤ人だけど、ユダヤ人嫌いのメル・ギブソンがプロデューサーに名を連ねていた。まあいろいろあるんでしょう。

シドニーのオペラハウスで催されたコンサートの映像のあいまに、参加ミュージシャンやコーエンのインタビューが挿入されるような形式の作品。コンサートにはニック・ケイヴやジャーヴィス・コッカー、ルーファス・ウェインライトといった有名どころから、アントニーやハンサム・ファミリーのような「あんた誰?」といったミュージシャンまでが顔を揃え、コーエンの曲を歌っていく。

個人的にレナード・コーエンの曲って、本人がやると女性コーラスとかをコテコテに入れて変なアレンジをしがちなので、他人が歌った方が良い場合が多いと思うんだが、今回のコンサートでもなかなか出来のいい歌を聞くことができる。個人的なお気に入りはケイヴの歌う「スザンヌ」やベス・オートンの「シスターズ・オブ・マーシー」あたりかな。あと最後にU2をバックにコーエンが「タワー・オブ・ソング」を歌う映像が入っていて(コンサートとは別収録)、これもなかなかカッコいい。

そしてインタビューの部分ではコーエンによって自らの生い立ちが語られていくんだが、あの人って普通に話していても言葉使いがどことなく詩的になっていて、言ってることがひどく抽象的になってるんだよね。だからコーエンのことを何も知らない人が見たら、かなり分かりにくい内容になってるかもしれない。でも父親が他界した時の逸話とか、禅寺に入門したときの話といった興味深い話をいろいろ聞くことができる。

それにしてもモントリオールで詩人たちに囲まれて育ち、ギリシャで小説を書き、後年には禅寺にこもって修行したなんて、ずいぶん羨ましい人生を送ってるよなあ。