「FAST FOOD NATION」鑑賞

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最近は日本でも食肉の不衛生さが暴露された騒動があったけど、アメリカのファストフードのヤバい裏側を暴いたエリック・シュローサーのベストセラー「ファストフードが世界を食いつくす」にリチャード・リンクレイターがストーリーをつけて映画化した「ファスト・フード・ネイション」を観る。脚本にはシュローサーも関わっており、プロデューサーはなぜかあのマルコム・マクラーレン。

原作はファストフードの不衛生さや精肉工場の労働環境の悪さ、ファストフード店が強盗に狙われやすいことなどについて多角的な方面から解説し、非常に興味深い内容になっていたものの、多くのテーマを取りあげたことでやや散漫な印象を与える本だったと思う。それが映画になってストーリーがついたことでもっと統一感が出たかというと、実はそうでもなくて、精肉工場を視察に来たファストフード会社の社員、その工場で働くメキシコからの違法移民、そして近所のファストフード店で働く学生の3者を中心に陰気な話が、あまり絡みあうこともなく淡々と続いていく作品になっている。

出演はグレッグ・キニアをはじめボビー・カナベイルやカタリーナ・サンディーノ・モレノ、ルイス・ガスマン、ポール・ダノ、クリス・クリストファーソンといった実に手堅い連中が揃い、さらにはブルース・ウィリスやイーサン・ホーク、ついでにクリスティーナ・アギレラまでが出演しているものの、なんかみんなセリフが説明的で演技が堅苦しいものになっている。エコロジーについて語るアギレラなんてセリフ棒読みって感じ。知性派(だと思う)のリンクレイターにしては、ちょっと詰めが甘い作品ではないでしょうか。精肉工場や屠殺場の光景なんかは衝撃的だし、あの原作を映画化した努力は認めるものの、普通にドキュメンタリーを製作すればよかったのにと思わずにはいられない作品。

JIMMY CORRIGAN日本語版VOL.1

51ib94qgmpl_aa240_.jpgクリス・ウェアの代表的作品「Jimmy Corrigan: The Smartest Kid on Earth」の日本語版なんてあったんだ。最近はダニエル・クロウズの作品とか、インディペンデント系のコミックがよく日本語化されているようで。

実物は見てないけど「VOL.1」とあるように、どうも数巻に分けられて売られてるみたい。アメリカ版が全384ページで、この「VOL.1」が104ページということは3巻に分けられて出るのかな。あれは一気に読んだほうが面白い作品だと思うので、ちょっと残念。

あと前にも書いたかもしれないが、アメコミの日本語化ってあまり個人的には好きじゃないんだよね。頑張って翻訳をしていただいている方々にはすまないのですが、あのフキダシという限られたスペースのなかで英語を日本語にしてしまうと、どうしても原文のニュアンスが失われてしまうような気がして。英語の「HAIKU」が決して「俳句」なりえないのと同様だと思うんだけど、違うかな。

「カスパー・ハウザーの謎」鑑賞

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新作「RESCUE DAWN」が今度やっと公開されるヴェルナー・ヘルツォークの初期の作品「カスパー・ハウザーの謎」を観る。

日本でも有名なカスパー・ハウザーの謎についてはウィキペディアあたりを読めば分かるが、この作品では彼にまつわる陰謀論などは殆ど取りあげられず、長い監禁状態から突然としてドイツの町なかに置き去りにされたカスパーの姿をひたすら淡々と追っていく。主人公がアグレッシヴでなく受動的という意味での「アギーレ」や「フィッツカラルド」よりも「神に選ばれし無敵の男」に通じるものがあるかな。カスパー同様に精神状態がアレだったミュージシャンのブルーノ・Sが演じるカスパーは非常に印象的なものの、いかんせん話にメリハリがないのがキツい。「文明社会におけるタブラ・ラサな人物」というテーマが奥にあるんだろうが、ヘルツォークが2年前に撮った大傑作「アギーレ」(こないだポスター買っちゃいましたよ)に比べるとひどく地味な感じがするのは否めない。室内や市街地での撮影が多くてヘルツォークの素晴らしい自然描写もあまり見られないし、音楽もポポル・ヴーではないのが残念なところ。

IMDBなんかではやけに高い評価を得てるみたいだけど、ヘルツォークの作品としてはあまりオススメではないと個人的には思う。

今シーズンの「ドクター・フー」が素晴らしすぎる事について

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(以下ネタバレ注意)
イギリスでこないだシーズン3(伝統主義者にとってはシーズン29か。イギリス風に言うなら「シリーズ29」だな)が終了した「ドクター・フー」だが、もう各エピソードの質が素晴らしいのなんのって。

以前にも書いたけど「時間と空間を自在に行き来できるドクターとその連れ」というシンプルなコンセプトを最大限に活かし、多種多様な世界を舞台にSFあり、コメディあり、ホラーあり、ミステリーありと実に見事な展開を毎回にわたって見せつけてくれたのです。新たなコンパニオンのマーサはドブスのローズと違って俺好みの美人でいい感じだし、「LIFE ON MARS」のジョン・シム演じる宿敵「マスター」との対決につながるまでの伏線も、以前の「BAD WOLF」や「トーチウッド」よりもさらに巧妙に織り込まれていて話に統一感を与えてくれている。

このように傑作揃いのシーズン3だったけど、特に「GRIDLOCK」「FAMILY OF BLOOD」「THE SOUND OF DRUMS」あたりのエピソードは非常に面白かった。そして個人的な最優秀エピソードは何と言っても「BLINK」。大人をビビらせるくらいの怖さ満点な演出と、「動かない敵」と「過去からのメッセージ」を巧妙に使ったアイデアの見事さ。思わず画面に向って拍手しちゃいましたよ。本当に。

果たしてシーズン4はシーズン3を超えるくらいのものになるんだろうか?とりあえずいま分かっている情報を挙げると:

●年末のクリスマス・スペシャルはタイタニック号を舞台に、カイリー・ミノーグがゲスト出演するらしい。
●新コンパニオンとして昨年のクリスマス・スペシャルに出たドナが復帰。
●マーサは「トーチウッド」に3話ほどゲスト出演したあと、シーズン4の後半から復帰。

ちなみに「トーチウッド」といえば、キャプテン・ジャックの将来をバラしちゃったのはどうよ、という感じ。あれはちょっと…。