「マルホランド・ドライブ」鑑賞

これから年末にかけて、見逃していた00年代の名作をいろいろ観ようかと思っているのです。そういう作品に限って長尺で観るのに時間かかったりするわけだが、この「マルホランド・ドライブ」もその1つで長尺ゆえに観るのを敬遠していたものの、いざ観てみると先が全く読めない展開のおかげでいっさい中だるみするようなこともなく、あっと言う間に観終わってしまった。こういう理解不能なストーリーであっても観る人を引き込むデビッド・リンチ(とアンジェロ・バダラメンティ)の手腕は流石だなあ。

ストーリーに関しては最初からもう理解しようとする気は放棄してるんだが、IMDbの解説を読んでなるほどーと合点がいった次第です。「XXは○○の夢だった」というのはやや安直な気がしないでもないが、今まで田舎を舞台にした作品が多かったリンチがハリウッドの虚栄を描くとこうなる、という意味では非常に興味深い。

あと冒頭のジルバのシーンとか観て感じたけど、リンチってジョン・ウォーターズに通じるものがあるんじゃないだろうか。どちらの作品も健全な50年代がベースにあって、それが何らかの理由で歪みに歪みまくってスクリーンの上に顕在しているような。そう思って調べてみたら彼らって同い年なんですね。

役者的にはナオミ・ワッツが素晴らしい。彼女こんないい演技ができるとは知らなかった。あとロバート・フォースターとかダン・ヘダヤといった俺好みの役者も出ているけど、どちらも出番が1シーンしかなかったのが残念。でもヘダヤの怪演は良かったな。

デビッド・リンチの凄さを再び実感させてくれた作品。こうなると「インランド・エンパイヤ」も観なきゃあかんな…でもあれは3時間もあるんだよな…。

デフ・レパード、アニメ化!

何だこれは!デフ・レパードが、自分たちが主人公のアニメ番組、テレビゲーム、さらに携帯アプリの製作を企画しているらしいぞ!

人気が絶頂期にあった80年代ならまだしも、現代にこんな企画を立てられても。対象世代はどこなんだろう。おまけにデフ・レパードは醜男の集団として有名で、基本的にベタ褒め記事しか書かなかったアイドル雑誌の「ミュージック・ライフ」にもそう書かれてたんだからそのルックスは相当なものだと思われるんだが、「アダムス・ファミリー」みたいな内容になるんでしょうか。

ここはいっそ片腕ドラマーのリック・アレンのためにも、腕一本で遊べるテレビゲームとかを作って欲しいところです。

「G.I.ジョー」鑑賞

なぜかDVDが手元にあったので。変な訛りのある人たちがいろいろ出てくる映画ですね。本来ならいちばん訛りがあるはずのバロネスに訛りがないのはヒロイン扱いだからか。

とりあえずダメ大作映画の見本のような作品。ストーリーは予定調和というか盛り上がりに欠けるし、CGはショボいし出演者の演技がみんな下手だし。いちばん生き生きと演技してたのがよりによってマーロン・ウェイアンズだったというのは憂慮すべき事実であろう。世界を救えるかという重要な事態が、元恋人たちの痴話ゲンカによって左右されるという展開も最近のハリウッドのトレンドをを象徴しているようで嫌だな。そして原題のようにコブラ軍が勃興して次回に続くのかと思ったら、そのあとすぐ首領が捕まってるのはバカかと。

いちおうラリー・ハマがクリエイティヴ・コンサルタントに就いてたらしいけど、それでこの出来じゃなあ。ラリー・ハマというのは日系のアメコミ作家で、80年代にマーヴェルで「G.I.ジョー」のコミックのストーリーをずっと担当したことで知られ、「G.I.ジョー」における人物設定とかの殆どを創作した偉い人なんですが、映画の設定はコミック版とずいぶん違ってない?特にコブラ・コマンダーの過去については『しがない中古車セールスマンだったが、不幸に見舞われたことでブチ切れて悪の道を進むようになった』というコミック版の設定が完全に無視されたのが至極残念。世界制服をたくらむ元中古車セールスマンなんてのが首領だったら、俺は間違いなくコブラ軍に入隊してるね!

「Sita Sings the Blues」鑑賞

アメリカの漫画家ニナ・ペイリーがほぼ独力で作った大傑作アニメーション。インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をもとに、恋人に捨てられた女性の悲哀を描いた作品になっている。

インドのラーマ王子は訳あって王国を14年のあいだ追放されることになり、妃のシーターを連れて森のなかに住んでいた。しかしラークシャサ(悪魔)の王ラーヴァナがシーターを気に入り、ラーマが不在のときに彼女を誘拐してしまう。ラーマから放され、嘆き悲しむシーター。そこでラーマは猿の大群を率いてラーヴァナのもとに攻め入り彼を倒し、無事にシーターを奪還して王国へと帰還する。しかしその後すぐにシーターが妊娠したことから彼女の不貞が人々のあいだで噂されるようになり、それを気にしたラーマによってシーターは再び森のなかへと追放されてしまう…というようなお話。

本編はインドの伝統画のスタイルで語られ、それに絡めて1920年代の歌手アネット・ハンショウによるジャズ/ブルースをシーターが歌うフラッシュ調のアニメ、およびインド神話の詳細が影絵人形によって解説されるアニメ、そしてラーマとシーターの話と対をなす現代のカップルを描いたラフ・スケッチ調のアニメと、合計4つ(以上)のスタイルのアニメが入れ替わり用いられていくわけだが、アニメの特性を十分に活かした演出がもう美しいのなんのって。こういうのは3Dアニメではまだまだ出来ないですね。スタイルだけでなく歌に合わせたストーリーテリングも女性の気持ちをうまく描いていて非常に秀逸。

例によって音楽の使用権でモメたあげく、クリエイティブコモンズのもと公式サイトから無料ダウンロードできるようにされたんだが(高画質版もあり)、このたびめでたくDVD発売となったそうな。これはぜひ多くの人に観て欲しい作品。上映会とかも無料で行えるらしいので、誰か日本でも開催してくれないかな。日本語の字幕をつけた偉い方がいるようなので、ぜひご覧あれ:

「The Increasingly Poor Decisions of Todd Margaret」鑑賞

デビッド・クロスにウィル・アーネットというアメリカの有名コメディアンを使って、なぜかイギリスのチャンネル4が製作したコメディ番組のパイロット。加えてスパイク・ジョーンズや「Being Human」の狼男君が出てたり、ほんの一瞬だけクリステン・シャールが登場したりと出演者がやたら豪華なのは何なんだろう。ライターはクロスと「Extras」のショーン・パイ。

デビッド・クロス演じるトッド・マーガレットは内気でサエないサラリーマンだったが、自己啓発のCDを聴いて威勢のいい言葉を発していたのをたまたま上司に聞かれて度胸のある人物だと勘違いされ、高給に釣られてエネルギードリンクを売る業務に就くためイギリスへとやってくる。しかし彼の荷物は不審物と間違えられて爆弾処理班に爆破され、さらに彼を待ち受けていたのはズボラな職員が一人だけいるカラっぽのオフィスと、不味すぎて売れそうにないエネルギードリンクの山だった。どうにかこれを販売しようとトッドは街に出るものの、さらなる不運に見舞われることになる…というのが大まかなプロット。

異国で災難に遭うサラリーマン、というコンセプト自体は目新しくないものの、エネルギードリンクでハイになってセールストークをぶちまけるデビッド・クロスの熱演がなかなか楽しい。あとこれを観てるとアメリカとイギリスのコメディのセンスの違いが何となく分かるような。イギリスのほうがもっとシニカルというか登場人物の扱いが冷酷なような気がする。言葉遣いもけっこうキワどいし、アメリカだとケーブル局で放送されるような内容の番組がイギリスだと地上波局でも流されるといった感じなのかな。「The Office」もアメリカ版はキャラクターにもっと親近感をもたせて描いてるし。

全体的には面白い作品なのでぜひ続きも観たいんだけど、もしシリーズ化されることになったらデビッド・クロスはイギリスに移って働くことになるんだろうか?