「ALPHA HOUSE」鑑賞


米アマゾンのオリジナル番組。こないだの「ゾンビランド」のときにパイロットが作られたものの1つで、それがシリーズ化されることになったのかな?最初の数話は日本からでも視聴可能だぞ。

主役となるのはワシントンDCで同じ家に暮らしている4人の共和党の議員たち。彼らは地元の選挙運動のことについて頭を痛めながら、魑魅魍魎のはびこるワシントンにおいて、アフガンへの使節団派遣について協議するが物事はあらぬ方向へ…というようなプロット。

各話の脚本を書いているのが、老舗風刺漫画「ドゥーンズベリー」の作者であるギャリー・トゥルードー。議員たちがシェアする家が学生寮みたいなのは初期「ドゥーンズベリー」に通じるところがあるかな。

民主党の議員が家をシェアしていたのをモデルにしたらしいが、主人公たちは共和党の議員になっていて、同性婚などに反対しつつオバマ叩きのネタを集める側として描かれている。また民主党を相手に選挙運動をするだけでなく、さらに右寄りのティーパーティーの連中の脅威を感じているあたりが最近の風潮を表してますね。あと議員が自分をアピールするための場として「コルベアー・レポー」が登場するよ。

主演はジョン・グッドマンで、「ザ・ワイヤー」のクラーク・ピーターズも出演しているほか、第1話ではビル・マーレイがちょっとだけ出演していた。あとハーレイ・ジョエル・オスメントも出ているらしいがよく分からず。オリジナル番組にこれだけのキャストを揃えられるとはアマゾンやはり金持ってんなあ。

ただ右も左も関係なしに政治家の無能っぷりをテンポ良く描いていく「Veep」に比べると共和党へのバイアスが強い内容になっているほか、ライター(というか漫画家)が脚本を書いてるせいかちょっとセリフが多く、話の展開が鈍重になっているような。ここらへんは改善の余地ありでしょう。でもとりあえず1話以降の無料エピソードもチェックしてみます。

たぶん、あまり、知られてないであろう90年代の名曲

たまには音楽のお話しをちょっと。

ここ最近の映画、例えば「ヤング=アダルト」とか「ワールズ・エンド」とかではアラフォーのぼっちな主人公が、大人になりきれずに過去の青春にしがみついていることを表すのに『未だに90年代の曲を聴いている』という実に分かりやすく、そしてイヤミな表現が使われているのであります。それに対して、アラフォーでぼっちでそこらへんの曲を未だに聞いている自分としては何の反論もできず、ただうなだれて枕を涙で濡らすことしかできないわけですが、でもまあ90年代って良い曲あったよね、ということで後の世代に伝えるべく(何を偉そうに)、たぶんあまり知られてないであろう90年代の名曲をいくつかここに記すことにします:

MC Tunes Vs. 808 State – The Only Rhyme That Bites

「ワールズ・エンド」の冒頭で使われてる曲。このあとすぐに「MC Tunesって誰だったっけ」という状態になりましたが、最近では「808ステイトって誰だったっけ」という感じになってしまったよな。

Soup Dragons – “I’m Free”

これも「ワールズ・エンド」で使われてる曲。R・ストーンズのカバーね。スープ・ドラゴンズってプライマル・スクリームとかのダンスっぽいロックが流行ったときにこういう曲を出して、そのあとシューゲイザーとかが台頭してきたときにギター・ポップをやって、その変わり身の早さがあざとくて決して好きなバンドではなかったが、アメリカのカレッジ・ラジオではギター・ポップになった後でウケて、しまいにはパブリック・エネミーともジョイント・コンサートをやってたとか?

Animals That Swim – Faded Glamour

日本での知名度は皆無に等しいと思うけど、最初の2枚のアルバムとかは本当に名盤だと思うバンド。アイルランドに留学してたときに大学のパブにライブやりに来ていて、俺以外だれも真っ当に観ていないなか、黙々と演奏する場末な感じがね、このサウンドにぴったりだったのですよ。

dEUS – Suds & Soda

本国では絶大な人気を誇る(らしい)、ベルギーのバンド。アバンギャルドな曲からフォークっぽい曲まで幅広い音楽性をもったバンドで、最初のアルバム3枚からのシングルはどれも名曲だと思う。

the Wolfgang Press – Kansas

4ADレーベルのバンドってピクシーズを除けばアート気取りな感じがしてあまり好きではないんだが、このバンドのこの曲は好きです。ケネディのお面は別の曲のビデオでも使ってたような。

The Mock Turtles – Can You Dig It?

『マッドチェスター』のころの一発屋バンド、と言ってしまえばそれまでだが、この曲は好きなんだよなあ。同郷の似たようなバンド(THE HIGHとか)よりも好きだ。ちなみにボーカルはスティーブ・クーガンの兄。

Buffalo Tom- For All To See

今回紹介するなかでは唯一のアメリカン・バンド。他にも良い曲があるのだけど、これが一番好きだな。「Glee」でカートのお父さん役立ったマイク・オマリーは彼らの長年のファンだそうです。

他にも、今となっては恥ずかしいようなバンドも聴いてたりするんですけどね、それは内緒ということで。90年代にはさ、「今の音楽はクソだ!50〜60年代のロックこそ本物だ!」とか言ってる人がいたわけですが(ソニック・ユースのドキュメンタリー「1991: The Year Punk Broke」を観よ)、今になってこれらの曲のyoutubeのコメントを読むと「今の音楽はクソだ!90年代のロックこそ本物だ!」みたいなことを書いてる人がたくさんいるわけで、まあそういうものの見方はいつの時代にもあるんだろう。

あとはじゃあ現代の音楽シーンに追いつくために、スネ毛でも剃って若作りしてアーケード・ファイアとかフォール・アウト・ボーイといったナウなバンド(だよね?)を聴けば良いのかというと、もはやそんな時間も気力も無いわけで、将来の自分に一抹の不安を抱きながらも、ティーンエイジ・ファンクラブを聴きつつ今日も眠りにつく次第であります。

「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」鑑賞


原題「Parkland」。こないだの東京国際映画祭でも披露されたの、これ?

ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺が、当時ダラスにいた周囲の人々にもたらした影響を描いた群像劇で、狙撃されたケネディ(そしてその数日後にはリー・ハーヴェイ・オズワルド)が運び込まれたパークランド記念病院のスタッフたちをはじめ、狙撃を阻止できなかったシークレットサービス、『ザプルーダー・フィルム』を撮影したエイブラハム・ザプルーダー、オズワルドの兄や母親、そしてオズワルドを調査していたFBIエージェントたちの動揺が映し出されていく。

ケネディ暗殺を扱っているものの陰謀論などはいっさい紹介しておらず、あくまでもオズワルドが単独でやったこととし、事件の際にグラシーノールに駆けていく人たちも出てこない。それはそれで構わないんだけど、どうも話が淡々と進みすぎるというか、「大統領が暗殺され、みんなが驚いた」という至極当然のことが語られ、中心となるキャラクターが存在しないことからどうも締まりがない感じがしてしまう。ケネディの棺を入れるのに飛行機の座席を取り外したとか、オズワルドの母親もちょっとキ印だったとか、少なくとも自分は知らなかった小ネタもあるんだが、それを知ったところで話が面白くなるわけでもないし。

監督のピーター・ランズマンはこれが初の作品。もともとジャーナリストだったのかな?出演している役者は無駄に豪華で、ポール・ジアマッティ、ビリー・ボブ・ソーントン、マルシア・ゲイ・ハーデン、コリン・ハンクス、ロン・リビングストンなどなど。マーク・デュプラスもちょっと出てるよ。ただやはり1人それぞれの出演時間が短く、これといった演技を見せていないような。

ケネディ家の暗殺に対する周囲の反応といえば個人的に印象的なものが2つあって、1つは「アメリカを斬る」におけるボビー・ケネディの暗殺シーン(暗殺そのものは描かれず、ホテルの厨房になだれ込んでくるスタッフの動揺だけを映している)で、もう1つはベトナム戦争のドキュメンタリーで観た、同じくボビー・ケネディの暗殺をラジオで聞いて驚くユージーン・マッカーシーの選挙スタッフたち(事が大きすぎてすぐに理解できず、ラジオのニュースを聞いたあとに一瞬間ができ、それから皆が一斉に息をのむ)というもの。前者は巧みな演出、後者はそのリアルな驚き方がとても記憶に残っているのだけど、この「パークランド」にはそんなシーンがまるで無いのが残念なところです。

「ソウルガールズ」鑑賞


いちおう実話をもとにしたオーストラリア映画。

舞台は1968年。アボリジニたちはまっとうな市民権を与えられておらず白人に差別されながら暮らし、肌の白い子供たちは勝手に親元から連れ去られ、白人としての教育を受けさせられていた。そんなときでもアボリジニの少女ゲイルとジュリーとシンシアは歌を歌いながら育ち、町の小さな歌謡コンテストに出場する。観客の露骨な偏見により勝つことはできなかった彼女たちだが、司会兼キーボード奏者のデイヴは彼女たちに興味を持つ。そしてベトナム戦争の慰問団としてシンガーの求人広告を見つけた彼女たちは、デイヴに頼み込んでオーディションの機会を作ってもらう。さらに彼女たちは白人の家庭で育てられていたいとこのケイを見つけ出し、4人のソウル・シンガーとして「ザ・サファイアズ」と名乗るようになり、オーディションにも合格してベトナム行きの切符を手にすることになる。しかしそこで彼女たちが目にしたものは…というプロット。

上のようにDVDのジャケットとかではクリス・オダウドが大々的にフィーチャーされてて、確かに有名なキャストは彼だけなんだけど、主役はあくまでもザ・サファイアズの4人の少女たちですよ。このジャケットにはオダウド自身も不快感を示していて、今後のリリースでは修正が加えられるのだとか。

オダウド演じるデイブは架空のキャラクターであり、ベトナムに行ったシンガーも4人のうち2人だけ、しかもバックコーラスとして参加だったということで、事実にかなりの脚色が加えられているみたい。シンガーのモデルとなった女性の息子が脚本を書いていることもあり、かなり身内に甘いような話になっているな。アボリジニへの差別の描写は「裸足の1500マイル」のドライさには遠く及ばないし、ベトナム戦争とかカウンターカルチャーとかの描き方ももっと深くつっこんでも良かったと思うけど、オーストラリアの低予算映画にあまり多くを求めるのは酷かな。

演出が全体的にユルい感じがするものの、差別に立ち向かうテーマを扱っていることもあり観ていて悪い気にはならない作品。そういう意味では「42 〜世界を変えた男〜」に似ているかも。

「ゼロ・グラビティ」鑑賞


試写会でちょっと早めに観ました。ネタバレにならない程度に感想をいくつか:

・というか1つ重要なネタバレをビル・マーが自分の番組でしっかりバラしやがってて、本人は「もう公開から数週間たってるんだからいいだろ!」といった弁明をしていたのだが、公開が数ヶ月遅れる日本という国もあるんだよ!
・ディザスター映画というよりもアトラクション映画のような雰囲気。確かに最初から最後までスリルがあるものの、脚本が一本調子であることは否めない。年末になって今年のベスト映画のリストにもチラホラと見受けられるようになってきたけど、やはり脚本が弱いのが気になるな。
・その一方で無重力の空間の臨場感とかはやはり見事ですよ。破片がチョロチョロ飛んできて、あーなんかヤバいなと思ううちに大惨事が起きる流れなどは手に汗にぎって楽しめる。
・音楽も効果的に使われていてスリルを高めているものの、その反面終始音楽が鳴っていて、宇宙の無音さが強調されていなかったような。音がしない漆黒の宇宙に飲み込まれていく描写は「2001年宇宙の旅」のほうがずっと印象的であった。
・いちおう3Dで観たけど、必須というわけではないかな?でも大画面で観ることをおすすめします。
・ロシアがダメな奴らで中国は役立つ、という図式が最近のハリウッドのゴマスリ感を象徴してますね。
・サンドラ・ブロックの体をはった演技はなかなかすごい。無重力なのに髪型がピタっとしてるのはご愛嬌。
・あと補足のような短編映画があるので、本編を観たあとはこっちも観ましょう。

今年のベストというわけではないものの、映画館で観て損はしない作品ですよ。