「SPRING」鑑賞

Spring
※かなりネタバレ注意。

末期ガンの母親の死を看取ったエヴァンは、カリフォルニアのさえない暮らしから離れようと決心し、衝動的にイタリアへと向かう。そして海辺の町をうろついていた彼はルイーズという女性に出会い、彼女に惚れ込んでしまう。しかし彼女には隠された秘密があったのでした…というストーリー。

まあ予告編を観れば明らかなんだけど、これヨーロッパが舞台のラブストーリー…ではなくてホラー映画な。好きになった女の子が実は…というやつで、ルイーズが尋常でないことは視聴者にはかなり早い時点で明らかになるものの、話がかなり進まないとエヴェンはそのことを発見しないため、そこらへんは観ていてまどろっこしく感じられるかもしれない。

あとルイーズの状態については科学的(医学的)な説明が一応されているものの、何かあまり説明になってなかったような。どうせフィクションなんだし、あくまでも幻想的な存在として扱っておけばよかったのに。どうも監督(二人いる)の片方は医学生だったらしく、それでやけに専門的な説明がされているのかもしれない。それよりもイタリアに来て数週間しか経っていないのに、エヴァンが移民管理局に追われる理由がよく分からなかった。観光ビザだって半年は滞在できるだろうに。

このようにストーリー上はいくつかノイズがあるものの、イタリアの美しい光景をバックにした恋物語として楽しむこともできますよ。時々ハッとするような空撮映像もあったが、あれってドローン飛ばしてるのかな。低予算映画でも空中撮影ができてしまう世の中になったのですね。なおスプラッター的な作品ではないが、動物の死骸などが随所に登場するので、そういうのがダメな人はお気をつけください。

他にもいろいろあるんだが、ネタバレになりそうなのでここまでにしておく。その美しい映像などは高い評価を得ているようで、日本でもどこかの会社が配給するんじゃないかな?監督たちの次回作はアレイスター・クローリーの伝記映画になるらしいので、今からそっちのほうにも期待しておく。

「Thunderbirds Are Go!」鑑賞

Thunderbirds Are Go - Scott, Virgil, Alan, Gordon and John
英ITVによる往年の番組のリメークな。舞台設定は2060年?感想を箇条書きで:

・キャラクターはスーパーマリオネーションではなく今風に全部CG。デザインは不気味の谷の界隈にいるので最初は違和感があるものの、観てるうちに気にならなくなってくる。ただ髪が動かないのでペネロペはどうもフランス人形みたい。
・マシンのデザインは5号がちょっと変わったくらい。3号のウィング(?)がアームになったりと、細かい変更はいろいろ加えられている。
・キャラクター以外は基本的にCGでなくミニチュアで撮影されてるらしいが、最近はCGの進化が目まぐるしいのでミニチュアもみんなCGに見えてしまうのが損なところか。台湾の街とかはミニチュアっぽくて良かったけどね。
・登場人物で一番大きな変更はパパことジェフ・トレーシーの不在で、悪役ザ・フッドが絡んだ事故により、死去したか行方不明になったことが示唆されている。よって話は5人の子供たちを中心に話が進むのだが、彼らについてはあまり設定は変わってないかな。アランが相変わらず末っ子扱いされて不満を抱いているという感じ。
・ブレインズがインド系(?)になっていて、話し方にまだ少し吃りがある。グランマはいるけどシェフのキラノは不在。ティンティン(ミンミン)はケイヨーという名前になって(エルジェの「タンタン」とごっちゃになるのを避けたらしい)、セキュリティ係についているほか、サンダーバードSという新型マシンを操縦している。ペネロペとパーカーは相変わらずで、愛車FAB1は実写映画版のように飛行します。
・キャラクターがCGになったことで、マリオネットではできなかった動きが自在にできるようになり、宇宙遊泳や成層圏ジャンプなど好き勝手にやってます。その反面2号が運ぶコンテナメカの登場が一切なかったのだけど、今後は出てくるのかな?キャラクターのアクションだけでなくメカの活躍も観たいのよ。
・声優はスコットとアラン、ヴァージルとゴードンの人がそれぞれ同じというのがちょっと…主役くらいは個別の声優をあててほしかった。ペネロペをロザムンド・パイクがやっていて、パーカー役はオリジナルと同じデビット・グラハム。あとシルヴィア・アンダーソン演じるキャラクターも今後登場するみたい。

オリジナルが好きな人にとってはCGのキャラクター使ってる時点で受け入れ難いだろうし、それはそれで理解できるんだけど、オリジナルから50年経ってるわけでもう別物として観るべきかと。各マシンの発射シーケンスとかはやはり鳥肌ものだし、4号の座席がぐるんと廻ってそのまま船外(海中)に出られるところとか、マリオネットでは出来なかったスピーディーな動きに対応していてよく出来てますよ。TVシリーズなので劇場映画のようなCGのクオリティは期待できないし、ストーリーも子供向けではあるものの、そこらへんを割り切って観ればけっこう楽しめる番組ですよ。

「Force Majeure」鑑賞

force-majeure
昨年高い評価を受けたスウェーデンの映画。東京国際映画祭でも「ツーリスト」という題で公開されてたのか。

山奥のスキーリゾートへ一家でやって来た父親と母親、そして二人の子供たち。スキーを楽しんだ彼らがホテルのテラスで昼食をとっていると、山の向こうで計画的な雪崩が起こされる。しかし雪崩は想定以上にホテルへ近づいてきて、客たちはパニックに。結局はすこし雪をかぶっただけで済んだものの、そのとき父親は一人で逃げ出してしまっていた。自分と子供たちを置いて逃げた彼を軽蔑する母親と、逃げたわけではないと弁明する父親。二人のいさかいは翌日も続き、周囲の人たちも巻き込むことに…という内容。

プロットは「ロンリエスト・プラネット」(未見)っぽいのかもしれないけど、リゾート地におけるパパさんの不遇を描いたブラックコメディ、という点では「エスケイプ・フロム・トゥモロー」を連想したよ。男性の威厳がショボンと萎えさせられるような展開が巧みに出てきます。個人的にはダメ男には共感せざるを得ないので父親の行為は十分理解できるのだけど、女性が観るとそこらへんは結構違うのかも。ラストの展開もちょっと考えさせられたな。

ヨーロッパ映画ゆえか会話シーンが多くてちょっと長ったらしい気もするが、悪い映画ではないですよ。ジュリア・ルイ=ドレイファス主演・製作でハリウッドでのリメークも決定したようなので、気まずい系のコメディとして彼女がうまくアレンジしてくれるんじゃないだろうか。

「BLOODLINE」鑑賞

bloodline
「ダメージ」のクリエーターによる、Netflixのオリジナルシリーズ。

舞台となるのはフロリダキーズの湿地帯。そこではレイバーン家がホテルを経営しており、一家は地元の名家として扱われていた。そして親族の集いが開かれるのだが、借金や麻薬中毒を繰り返していた長男のダニーも久々に地元へと帰ってくる。保安官をしている次男のジョンは、パーティーが終わったあとにダニーがまたどこかへ去ることを臨んでいたが、ダニーは地元に残ってホテル業を手伝うことを希望し、一家の暗い過去が彼によってぶり返されることになる…というプロット。

第1話の話の展開がなかなか遅くて、ストーリーの方向性が見えないのだが、沖で死体となって発見された16歳の少女も関係し、別の殺人が起きることも示唆され、いろいろ暗い話が待ち構えているみたい。陽光の降り注ぐフロリダにおける南部ゴシックということになるのかな。例によって13話がいっぺんに公開されてるのですが、観てる時間がありません。

出演者はかなり豪華で、カイル・チャンドラーにリンダ・カーデリーニ、サム・シェパードにシシー・スペイセクなど。今やネット番組でもこれだけのキャストを集められるようになってしまったんだなあ。チャンドラー演じる次男のジョンがいちおう主人公だけど、ベン・メンデルソーン演じる長男のダニーが完全に主役を食ってしまっている。この番組の効果かどうかは知らないけど、彼は「スター・ウォーズ」のスピンオフ作品への出演も決まったそうで。

手堅いキャストによる重厚なドラマということで見応えはあるけど、日本人向けというわけではないかな。こんどNetflixが日本にやってくるとき、どこまでオリジナルシリーズを日本でも公開していくんだろ?

「インヒアレント・ヴァイス」鑑賞

Inherent Vice
トマス・ピンチョンの同名小説(邦題は「LAヴァイス」)を原作にした、ポール・トーマス・アンダーソンの新作。

おれピンチョンの小説って高校の時から好きで読んでるのですが、「メイスン&ディクソン」の冗長さに冒頭で挫折し、あれよりも長い「逆光」も当然ながら読んでおらず、長年彼の著作からは遠ざかっていたものの、今回の映画化にあたって原作を読んでみたのですよ。ピンチョンの小説にしては結構分かりやすい内容のものだったと思う。とはいえ話がちょっと進むたびに登場人物がどんどん増えてくるし、探偵小説のようで話があらぬ方向に進むなど、決して映像化しやすいような作品ではないけどね。

映画のプロットは原作に忠実で、舞台は1970年のカリフォルニア。ヒッピーまがいの私立探偵であるドック・スポーテッロのもとに昔の彼女が現れ、彼女のいまの愛人である不動産業の大物の失踪について調べて欲しいと依頼する。さらに別の案件も抱えたドックは調査にあたった店で何者かに殴られて昏倒。目覚めたら警察に囲まれており、しかも横に何者かの死体があって…というプロット。

でも普通の探偵ものではないからね、事件のまっとうな解決などを求めてはいけないよ。原作のマイナーなキャラクターにナレーションを行なわせてプロットの説明をしてるものの、原作をかなり端折っている部分もあるため、ストーリーを理解するのは結構厳しいと思う。小説だと登場人物について「あれこいつ誰だったっけ?」とページを戻して再確認することができるものの、映画だとどんどん話が進んでいってしまうのがデメリットだよな。

あとピンチョンの小説ってドタバタしてるようで、人知を超えた集団や組織(今回は麻薬カルテルの『黄金の牙』)が世界を乗っ取っていくことに対するペーソスと、過去の戻らぬ幸せに対する諦めのようなノスタルジア(警察に駆逐されるヒッピー文化、になるのかな)が根底にあると思っているんだが、映画版では『黄金の牙』の存在が控え目になっていることもあり、登場人物のもっとパーソナルな部分に話が終始していたような。夢が醒めたような原作ラストの文章は本当に素晴らしかったんだけど、映画の終わりはちょっと異なってましたね。

また原作は小説ながらも例によって当時の音楽やテレビ番組や映画が羅列され、音楽に至っては100曲くらい言及がされているけど、映画では版権の関係か意外と使用曲は少なめ。ニール・ヤングやカン、あとは「上を向いて歩こう」など。音楽自体はアンダーソン作品の常連であるジョニー・グリーンウッドが担当してるが、クラシックっぽくってあまり映像に合ってないような気もするのよな。

主演はホアキン・フェニックスで、ほかにジョシュ・ブローリン、リース・ウェザースプーン、ベネチオ・デル・トロなどなど。原作だと主役のドックは30手前だし、いろいろイメージが異なる役者もいたものの、みんな良い演技をしてるのではないでしょうか。マーティン・ショートが意外なくらいの怪演をしてたな。なお出てくる女性がみんなブスというか田舎臭いメークをしてるのは70年代を意識して?それとも監督の趣味?

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ほどの傑作ではないものの、画面の構成とか斬新だし、悪い作品ではないですよ。でもやはり個人的には原作の方が良かったな。